溺愛魔王は優しく抱けない

今泉 香耶

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ついにキレる(未遂)リーエン

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 ごめんなさい、ごめんなさい、とリーエンは何度も繰り返し、それへアルフレドは何度も「大丈夫だ、お前のせいではないから落ち着いて話を聞いてくれ」と言い聞かせたが、珍しく彼女には彼の声が届かなかった。彼女は感情豊かではあるが、そこまで感情優位で自分に振り回されるタイプではない。いつでも人の言葉に耳を傾けようと心掛けている。だからこそ、今日の巡礼の失敗がどれほどまでに彼女にとって大きな痛手だったのかがわかろうものだ。

「リーエン、落ち着いてくれ。大丈夫だ。多分、お前のそれは……俺のせいだ。お前のせいではない」

 アルフレドは何度もそう言い聞かせるがなかなかリーエンは落ち着かない。彼女の頭痛は、記憶操作による頭痛だと彼とヴィンスは推測をした。何故初日でそれに気付かなかったのかとアルフレドは自分の間抜けさに呆れる。いや、少しだけ「もしかしたら」とは思っていたが、4日目までの報告でその懸念は彼の中ですっかり消えてしまっていたのだ。

「アルフレド様の……せい……?」

「ああ。お前のせいではない、と思う。今、調査させている」

「え……?」

「言っただろう。しきたりなんか、くそくらえだと」

 くそくらえ、だとは言っていなかった気がするが……と、涙が止まらない状態でリーエンはアルフレドを見る。ようやくアルフレドの言葉を聞ける程度に落ち着いたようだ。

「だが、難関ではあった。石扉を物理的に開けようとしても駄目だったので、俺が無理矢理扉の向こうに数人と転移した。一旦入ってしまえば問題はないようだったが、いや、確かにあれは相当な代物だ。少し前の、魔力が安定していなかった俺では片道通行になってすぐに戻って来るのは困難だったかもしれない……それぐらい守られていた。ああ、気にしなくていい。お前は吐いたと今言っていたが、あそこは一定時間が経過すると『状態が戻る』おかしな術がかかっているようだった」

 最初から話が難し過ぎて、起き抜けのリーエンはきょとんとするだけだ。

「今、ヴィンス師が解析をしてくれているが、途中経過を先程聞いて……概ね、俺が原因だろうと推測されている。お前の話を聞いて、より一層その説が濃厚になった。ああ、俺が原因だ」

「アルフレド様が……?」

「登録失敗と言われたということは、登録起動をするための石碑の文言は問題なく読めたということだ。それが出来ていたからこそ、魔王の眷属として登録するための身体走査が動き出したのだと思うしな」

 ぐすぐすとリーエンは鼻をすすりながら、よくわからないながらこくこくと頷き返す。はい、聞いています、という意思表示だろうか、とアルフレドは思いながら言葉を続けた。

「あそこは大層な術がかかっていて、俺ですらあの石碑情報を持ち出すことは出来なかった。が、身体走査を行う術式は持ち出しが出来たので、ほどなくヴィンス師がすべてを解析してくれるだろう。安心しろ。大仕事で大喜びをしていたぞ。最近は俺の魔力の解析しかしていなかったから、久しぶりに腕が鳴ると言って、お前が目覚めたら礼を言いたいと飛びあがっていたからな」

 そう言ってアルフレドはリーエンの頬の涙を拭ってやる。ようやくリーエンは少し落ち着いたようだった。

「どういうことですか……? 話が全然わからなくて……」

「そうだろうな。調子はどうだ? 頭痛はまだするのか?」

「いえ、頭痛は……今残っているのは泣いたせいだと思います……少しお腹が減っています……」

「食べ損ねた木いちごのパイを持ってきてもらうか?」

「! どうしてそれを!」

「まあまあ……解析にはそう時間がかからないとヴィンス師も言っていたし、もしお前が大丈夫ならばこのまま起きて少し食事した方が良い。きっと、ヴィンス師がやってくることだろう。大丈夫だ。お前は、何一つ悪くないし……俺と結婚出来るから、安心しろ」

 そう言ってアルフレドが笑えば、折角泣き止んだリーエンは両眼に涙を浮かべて「わ、わたし……」と再び泣き出した。彼女の肩を軽く抱きながら、アルフレドは「10年前もよく泣いていたな」とあの夜のことを思い出すのだった。




 心配をして眠れなかったらしいバーニャが木いちごのパイとポタージュスープを運んで来たので、2人は寝室からリーエンの自室に移動をして、向かい合わせのソファに座って共に食べた。すると、ほどなくしてヴィンスがやってくる。

「おや、美味しそうなものを真夜中に」

「ヴィンス師も食べるか?」

「いえいえ、解析中にクッキーをいただきましてな。毎日毎日沢山の焼き菓子を厨房の者達が製造していたそうですな、リーエン様」

 ヴィンスにまでバレていたのか、とリーエンは恥ずかしそうに頬に手を当てた。

「あの、外出が初めてでしたし……みなさんが……わたしを緊張させないようにと色々用意してくださって……」

「愛されておられる」

 うんうん、とヴィンスは頷きながら、いつものようにロッキングチェアに座ったまま2人のテーブルの近くに浮いてやってきて、すとん、と床に着地する。着地するとロッキングチェアが前後に揺れて「おっととと」と声を出す彼の様子がコミカルで面白い、とリーエンはようやく笑顔を見せた。

「アルフレド様、リーエン様にお話しても?」

「そのために同席させている」

「あなた様がそうおっしゃるのであれば。遅かれ早かれ話すことになることはわかっておりましたし。問題は山積みですが、ええ、ええ、まずはリーエン様に安心していただくことが一番でしょうしな」

 ヴィンスはわずかながらアルフレドに憐憫の視線を向ける。それを彼も感じているようで、居心地が悪そうに口元を歪めてみせた。

「リーエン様。順を追って話す前に、まずは結論から申し上げます。本日の巡礼は失敗でしたが、その責任はあなた様にはございません。そして、あるべき形でもう一度行えば、間違いなくあなた様はつつがなく巡礼を終えることが出来ます。ご安心くださいませ」

「あるべき形で……?」

「左様。まず、最初に1つ。リーエン様、初日に頭痛、そして本日は比較にならないほどの頭痛、2日目から4日目はほぼ頭痛はなかった、あるいは少しはあった……のではないかと思いますがいかがでしょうか」

「え、あ、はい……2日目以降はほんの一瞬……あったはず……なのですが、あったことを忘れてしまっていましたね……そうです。あった、はずです。でも、ほんの一瞬」

「なるほど。これは、魔族の手癖のようなものでして。複数回必要な術は最初と最後だけ厳重に施して真ん中の術は最低限の術しか施さない、という方法が多くてですね……それゆえのことと思われまする」

「……?」

「次に、本日何が起こったのかをお伝えいたします。本日、あなた様はこの先アルフレド様の奥方となるために5つめの石碑の文言を読み、魔王の眷属の一員となる権利を得ました」

 権利を得た。それは、得ただけでまだなっているわけではないということだ。リーエンは敏感にその言葉の意味を察知したが、彼の説明を遮らない。

「石碑の文言を読み、4回行った身体走査と同じ術式を起動して、同一人物であること、権利を得た者であること、まあその他色々と細々した何やらがあるのですがそれは割愛して……あなた様はすべてクリアして……当然ですね。4日すべて正しく巡礼を行ってきたのですし。ええ、ええ、あとは、魔王の眷属としての登録と同時に石扉のあちらの情報を曖昧にする記憶操作を施されるはずでした」

「記憶操作……」

「ところがところが。いざ、魔王の眷属の1人としてあなた様を登録をしようとしましたら。並行して行われていた記憶操作の術式側から、記憶操作が不可能という回答が登録の術式側に送られまして」

「え、えっと……」

 ヴィンスはわかりやすく説明しようと、左右の人差し指をそれぞれから反対側へ動かしたりと手振りを交えたが、リーエンにはあまりそれが伝わらない。

「これは、相互に関連する術式でしてな。登録をしてから記憶操作、という順番ですと、登録された時点のあなたは記憶操作を施していない状態ですし、しかし、巡礼を終えれば記憶操作を施された状態のあなたが魔王の眷属となりますので。術式を組んだものは、最終登録は出来る限り最新の情報で登録をしようと考えていたのでしょうなあ」

「ん、ん、お話が少し難しいのですが、このまま聞いていても差し支えないでしょうか」

「ええ、ひとまずはそのままで。要するにですね……あなた様の記憶操作を失敗してしまったので、一緒に登録も失敗したということです。なので、実際はあなた様が眷属として認められなかったわけではない。悪いのは、記憶操作を邪魔する術を強くかけすぎていた誰かさんということです」

「え……?」

 ヴィンスはリーエンににこにこと説明してから、わざとらしくゆっくりとアルフレドの方へ、目線だけではなく顔を向けてあからさまにリーエンに気取らせた。

「アルフレド様……?」

「……すまなかった……」

 アルフレドは消え入りそうな声でそう言って、リーエンに頭を下げる。一体どういうことなのか、何も理解していないリーエンはきょとんとしてヴィンスを見て、アルフレドを見て、またヴィンスを見て、ひとまず「アルフレド様、頭をあげてください」と言うことが精一杯だった。

「10年前の自分の術が稚拙すぎたので、今ならもっとうまく出来るぞといい気になって調整をした俺が悪かった。そういうことかと……」

「そうでございますな……あなた様は、リーエン様が魔界にいらしてから、一度リーエン様の認識阻害のあたりをいじくったでしょう」

「ああ」

「以前のままであれば、そこまで大した術ではなかったのに。どうしてまた」

「その……手違いで……過去の術を自分で破ってしまって……そのままでは、俺もリーエンも取り消しのペナルティを喰らってしまうので……慌てて構築し直して……ついでにちょっと、他の魔族に余計な記憶操作をされないようにと保護を強めに……」

 アルフレドはそう言いながら、片手で頭を掴んでソファに体を預けて溜息をついた。穴があったら入りたいとはこのことだ。だが、当のリーエンは2人の会話についていけず、ただただ「どういうことですか……?」と困っているだけなのだし、彼が恥ずかしさでもぞもぞしている場合ではない。

「あの……じゅ、10年前、とは、何のお話ですか……」

「おお、リーエン様はなかなか着眼点が鋭くいらっしゃる、どうしてどうして」

 ヴィンスは「いいところに気が付いた」と言いたげだったが、ただ単にリーエンからすれば彼らの会話が高度すぎて、わかる部分がそこだけだったというだけだ。

「アルフレド様。わたくしがそこはお答えしましょうか。ここだけ、あなた様に情けをかけてあげてもよろしいですよ」

「……卑怯者と罵られる覚悟は出来ている。ヴィンス師……ここだけ頼む……ちょっと……説明するとっかかりが俺には難しい……」

「そうですね。ご自分でお伝えすることが一番でしょうが、さすがに拗らせては最初の一歩は難し過ぎるというもの」

「うう……嫌だ。聞きたくない」

「あなた様は今我儘を言える立場ではございませんからね」

 ヴィンスは容赦なくアルフレドにそう言ってから、リーエンに微笑んだ。

「リーエン様。驚かずに、いや、驚くなというのはとても無理だとは思いますが、冷静に受け止める努力をしていただきたいのですが」

「はい」

「10年前、あなた様が、どこぞやの森で助けた神官……」

 ヴィンスのその言葉にリーエンは驚いて「どうしてご存知なんですか!?」と一瞬で声を荒げてかぶせ気味になる。ここにいるアルフレドが当事者という立場でなければ「どうしてそこだけ察しが悪いんだ」と突っ込んだところだろうが、当のアルフレドはついにこの時が来たかと悶え苦しんでおり、突っ込み役になることは出来なかった。

「それは、もちろん存知ておりますよ。だって、その青年はそこにおりますので……」

 そう言うと、再びヴィンスはアルフレドを見た。アルフレドは恐れてリーエンを見ることが出来ずに固まっている。そして、リーエンはヴィンスが明らかにアルフレドの方を見ているということを理解しているのに、何故かそれを受け入れることが出来ず「アルフレドを見ているヴィンス」をただただ凝視するだけだ。

 その、わけのわからない3すくみ(?)の時間は秒にして20。沈黙を最初に破ったのは、耐えかねたアルフレドだった。

「……あの時は、あのっ……た、助けていただいて……心から……うう……」

 あまりのプレッシャーで言葉遣いが当時のものになってしまっている。その声に反応して、リーエンはどうにかこうにか、漸くヴィンスではなくアルフレドに視線を向けることが出来た。切れ切れにそう言いながら頭を下げるアルフレドを見て、リーエンは「もう駄目だ」と思う。

 ああ、本当にもう駄目だ。今日は巡礼に失敗して、あんなに具合が悪くなって、そして、泣いて泣いて泣いて、それから。

 それから。今度は、何を話されているのだろう。アルフレド様があの時の神官様? どいうことだろう……あまりの情報過多に混乱をしたリーエンは、突然ソファからバッと立ち上がると、淑女であることを重んじたい彼女にしては大股でドカドカと部屋のドアに突然向かった。

 バンッ、とドアを開けると護衛騎士が2人立っており、彼らは「リーエン様!」と彼女の姿に安堵の声をあげた……のだが……

「……て、ください……」

「は、はい?」

「こんな真夜中で申し訳ありませんが……木いちごのパイのおかわりをください……! ありったけ! それから、お茶を! もう、もう、情緒が、もう、何が何やら……でも、駄目です、話を聞き終わるまではっ、ね、眠れませんっ……ま、真夜中のティータイムです……! 今日だけは我儘をお許しください!」

 その彼女の剣幕に護衛騎士は慌てて夜番の女中達に伝えに行き、アルフレドは「うう……」とソファに倒れこみ、室内にはヴィンスの笑い声が響いたのだった。
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