悪役令嬢、猛省中!!

***あかしえ

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学園編

49.正しい悪役令嬢の作法

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 ――リナウド卿の説教はまるで効果がなかった。

 その後も、彼女の蛮行はとどまるところを知らない。
 マリー・トーマン本人のみならず、ルームメイトにまで被害が及び始めている。
 ナナミも完全にマリー・トーマンの一味と思われているようで、見つかる度に絡まれる始末。真面目に相手をするのが面倒になってきたので、最近は速攻で武力を行使し逃げたりうっかり返り討ちにして反省したりの毎日だ。

 気付けば、マリー・トーマンのそばには常に、殿下やパトリックをはじめとした殿下の学友がいるようになっていた。主に男性のご友人だったけど。だが、それも仕方のないことだろう。これは最早、予告されている傷害事件だ。

 ――見覚えのあるヒロイン軍団はこうして出来上がっていたのか。
 あの頃の私は、その光景を見てマリー・トーマンが殿下を誑かしている! と憤っていた。自分で自分の首を絞めていたという事実に、気付くことはついぞなかった。


 ミーシャとして何度か彼女に釘を刺したが、それが更に彼女を狂気に駆り立ててしまったらしい。彼女はミーシャである私には反発しない。その場では大袈裟に怯え、しおらしい態度をみせる。
 圧倒的な恐怖で彼女の心を破壊するわけにはいかないし、相手の心をあやつ……改心させるのは素人では無理だ。

 ひとまず、彼女がかつてののように、取り返しが付かないことを仕出かさないよう、目を光らせておかないとまずいな。



 ◇◆◇ ◇◆◇


 ランチ時、私ミーシャ・デュ・シテリンはグニラ・オレーンを伴い食堂へ赴くと、早速デリア軍団が近づいてきた。
 ……飛んで火に入る、かな?

「ミーシャ様! こちらへいらっしゃるならばお声をかけて下さればよろしかったのに!」
 食堂エントランスに立った私の元へ、デリアが下品とも取れるほどに大きな声で足早に寄ってきた。しかも大量の取り巻きを引き連れて……!

 ぞろぞろと現れる軍団におののいている間に、食堂内の馬鹿みたいに飾り立てられた席に連れて行かれてしまった。……グニラ・オレーン共々。席に着くなり、デリア・リナウドの口からマリー・トーマンに関する愚痴があふれ出して止まらない。周囲の生徒たちの同調率と言ったらない。

「……貴女たち、少しは静かにできないの?」

 あの子の何がそんなに気に入らないといのか。
 前回の私は、殿下の婚約者だったから……彼が好きだったから、どうしてもマリー・トーマンを見過ごすことができなかった。私を拒絶する彼に認められ、愛されているあの子が……憎かった。

「もっ申し訳ございません! ミーシャ様!!」
 デリア・リナウドが大袈裟なまでに恐縮している。個人名を特定して手を出すなと言ってしまうと関わり合いを勘ぐられるだろう。
 ここはうまく事を運ばないと――。
 ・
 ・
 ・
「誤解ですミーシャ様! わたくし、そのようなことは行っておりませんわ!」
 ――その方式でくるとは思わなかった。私に怯えているような演技をしつつ、息をするように口から出任せを言ってきた。ミーシャ=ナナミであることを知らないから当然か。

「そうですわ、ミーシャ様! それに、あの平民は貴族の序列を無視してわたくしたちのコミュニティを壊そうとしているのですわ!」
「これはいさめるのもわたくしたちの勤めでございましょう?」

 名も無き取り巻き娘まで参戦してきた!
 にらみが弱すぎたか? ――って、平和的に解決しないとダメなんだって。彼女たちはこちらの動きを真似まねるから。

「ミーシャ様が静かにされているからですわ! もっと強く表に出て頂かなくては!」
「そうですわ! クリストフ殿下の婚約者はミーシャ様なのですから!」
「先日の舞踏会では、クリストフ殿下御自ら、ミーシャ様へファーストダンスを申し込まれたと言うではありませんか」
「そうですわよ、それに……」
 何だか話が面倒な方向に転がり始めたな。うん、潮時だ。


「お前たちの愚行を、わたくしの責任とするつもり? まさか、このわたくしが名も知らぬ小娘相手に狂態きょうたいを演じると、そう仰りたいのかしら……?」


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