39 / 50
呼ぶ人
呼ぶ人20魔術師の見解
しおりを挟む「わかってる。けれど、遠慮するってのは、俺が貴族だからってことに違いはないんだろ?」
「…それは…」
他にも理由はあるが、そこは大きな理由なだけにクルクは否定できない。
「いいさ。少しづつ、俺の誠意を理解してもらうから、ひとまずはいい。…これからも今まで通りに接してはくれるんだろ?」
「は、はい。僕でよければ」
「よかった。では、ウィンレイ様、お話とはなんでしょう」
「分かってると思うけど、クルクのことだ」
「え。僕ですか…? そういえば、ウィンレイ様はリンメルのお知り合いですか?」
「うん。仲良しだよ。ちょうど、クルクとセルツァーみたいな感じかな」
「へー。そうなんですか」
クルクはほわほわと納得するが、セルツァーは目を大きくして驚く。たしかにリンメルへの執着から予想はできたが、本当にアレがいいのかと思ってしまう。
「あ。セルツァー。失礼なこと考えたろ?」
「い、いえ。それはっ」
「ふふっ。確かにあんなお馬鹿な子のどこが気に入るんだって思うのも分かるから、そんな動揺しなくても大丈夫だよ。俺も不思議」
完全に思考がばれて焦るセルツァーだったが、優しいウィンレイの目を見て、本当に好きなんだなと理解して、リンメルの魅力は分からないものの、納得できた。
「それで、あの、クルクのことというのは、呼ぶ人のことですか…?」
呼ぶ人という言葉にクルクの身体がわずかに震える。今はまだ得体の知れないものだ。
「まーねー。クルク、そんなに身体を強ばらせなくても大丈夫だよ。そのぶんだと多少の話は聞いているみたいだけど、ただ召喚の才能があったってだけの話だよ? 俺が魔術や魔法使えるのと一緒」
「そ、う、なんですか?」
まだ受け入れるのが怖いながら、ただ才能あるだけという言葉に縋る。
「そう。召喚師はすっごく少ないけど、珍しい才能って他にもあるでしょ。それだけのことだよ」
「そうなんですか…。でも、呼ぶ人って言われてるのは何故なんでしょう? それに儀式はどういう意味が…?」
「おお。リンメルとは全然違うね。さすがリンメルに勉強を教えられるだけのことはある」
「え、あの…?」
「ようはクルクは神に愛されて召喚の才能が多めだったんだよ。それを利用しようとして悪い人が儀式をしたんだ。巻き込まれて災難だったね。これからは、俺や、君の騎士が守るから、何も心配いらないよ」
「えと、ありがとうございます。呼ぶ人というのは、そういう召喚の才能が多い人のことですか?」
「賢いと話しやすくて助かるよ。詳しくはいい伝えでしかないことだから、分からないけど………。というか、そんないい伝えなんかよりも、俺からの言葉だ。呼ぶ人である君は腕にその印があるだろう? それは使命の印。君にはしないといけないことがある」
ウィンレイにしては少し躊躇って言葉を口にする。
「…そうですか…」
クルクは怖がっていたわりにはウィンレイの言葉を受け入れられた。なんとなく分かっていたからこそ、怖がっていたのかもしれない。
逆に知っているつもりで全く知らなかったセルツァーが動揺する。
「ど、いうことですか、ウィンレイ様…」
「そんな顔しなくても大丈夫だよ。すんごく面倒ではあるけど、さらに面倒になるのは困るから、俺が導くんだから、何も心配することはない」
「…ウィンレイ様のことは信じてます。しかし、俺は、一体どんな…」
「セルツァー…」
動揺の酷いセルツァーが心配になったクルクは近くにある腕にそっと触れる。そのせっかくの好機な温もりにセルツァーは気づかなかったが。
「んー。君のほうがそんなに動揺すると話が進まないんだけど。…まあ、待ってもしかたないか。簡単に言うと、魔物退治だ。たまにある天災のように、魔物が活発に動きだす時期がくる。それを鎮める為には呼ぶ人の力が必要だ」
「魔物…。そんな…。なんでクルクが…」
「そんなに苦悩することはないよ? 俺の考えとしては、呼ぶ人は神に使命を押し付けられてるというよりは、魔物に対抗できる力をもらっているだけだ。愛されてるって、基本はそういうことでしょ。ただ、これまでの呼ぶ人はそれで魔物を倒す使命を自ら選んだんじゃないかと、俺の見解だけどそう思ってる。つまりは、嫌ならなんにもしなくていいよ? でもそれじゃ後味悪いだろうし、少しは手伝ってくれるとありがたいかな」
「………え?」
ウィンレイ的な考えにセルツァーはついていけない。
10
あなたにおすすめの小説
転生したようだけど?流れに身を任せていたら悪役令息?として断罪されていた――分からないまま生きる。
星乃シキ
BL
発作の後に目覚めたら、公爵家嫡男の身体だった。
前世の記憶だけを抱えたまま生きるレイは、ある夜、男の聖女への嫌がらせの罪で断罪される。
だが図書室の記録が冤罪を覆す。
そしてレイは知る。
聖女ディーンの本当の名はアキラ。
同じ日本から来た存在だった。
帰りたい聖女と、この身体で生きるレイ。
秘密を共有した二人は、友達になる。
人との関わりを避けてきたレイの人間関係が、少しずつ動き始める。
デコボコな僕ら
天渡清華
BL
スター文具入社2年目の宮本樹は、小柄・顔に自信がない・交際経験なしでコンプレックスだらけ。高身長・イケメン・実家がセレブ(?)でその上優しい同期の大沼清文に内定式で一目惚れしたが、コンプレックスゆえに仲のいい同期以上になれずにいた。
そんな2人がグズグズしながらもくっつくまでのお話です。
光と瘴気の境界で
天気
BL
黒髪黒眼の少年・はるは、ある日下校途中にトラックに轢かれると、瘴気に侵された森で倒れていた。
彼を救ったのは、第二騎士団長であるアルバート。
目を覚ましたはるは、魔法や魔物も瘴気も知らず…
アルバートの身に危険が迫ったその瞬間、
彼の中で眠っていた“異質な力”が覚醒する。
古来より黒目黒髪は“救世主の色”であり、膨大な力を持っているとされている。
魔物と瘴気で侵されているエクリシア王国の国王ははるの存在を知るとその力を彼の体が壊れようとも思うがままに使おうとする。
ーー動き始めた運命は、やがて大いなる伝承の核心へと迫って行く。
逃げた弟のかわりに溺愛アルファに差し出されました。初夜で抱かれたら身代わりがばれてしまいます💦
雪代鞠絵/15分で萌えるBL小説
BL
逃げた弟の身代わりとなり、
隣国の国王である溺愛アルファに嫁いだオメガ。
しかし実は、我儘で結婚から逃げ出した双子の弟の身代わりなのです…
オメガだからと王宮で冷遇されていたので、身代わり結婚にも拒否権が
なかたのでした。
本当の花嫁じゃない。
だから何としても初夜は回避しなければと思うのですが、
だんだん王様に惹かれてしまい、苦しくなる…という
お話です。よろしくお願いします<(_ _)>
もう一度言って欲しいオレと思わず言ってしまったあいつの話する?
藍音
BL
ある日、親友の壮介はおれたちの友情をぶち壊すようなことを言い出したんだ。
なんで?どうして?
そんな二人の出会いから、二人の想いを綴るラブストーリーです。
片想い進行中の方、失恋経験のある方に是非読んでもらいたい、切ないお話です。
勇太と壮介の視点が交互に入れ替わりながら進みます。
お話の重複は可能な限り避けながら、ストーリーは進行していきます。
少しでもお楽しみいただけたら、嬉しいです。
(R4.11.3 全体に手を入れました)
【ちょこっとネタバレ】
番外編にて二人の想いが通じた後日譚を進行中。
BL大賞期間内に番外編も完結予定です。
【8話完結】強制力に負けて死に戻ったら、幼馴染の様子がおかしいのですが、バグですか?
キノア9g
BL
目が覚めたら、大好きだったRPGの世界に転生していた。
知識チートでなんとか死亡フラグを回避した……はずだったのに、あっさり死んで、気づけば一年前に逆戻り。
今度こそ生き残ってみせる。そう思っていたんだけど——
「お前、ちょっと俺に執着しすぎじゃない……?」
幼馴染が、なんかおかしい。妙に優しいし、距離が近いし、俺の行動にやたら詳しい。
しかも、その笑顔の奥に見える“何か”が、最近ちょっと怖い。
これは、運命を変えようと足掻く俺と、俺だけを見つめ続ける幼馴染の、ちょっと(だいぶ?)危険な異世界BL。
全8話。
【完結】かわいい美形の後輩が、俺にだけメロい
日向汐
BL
続編・番外編はTwitter(べったー)に載せていきますので、よかったらぜひ🤲
⋆┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈⋆
過保護なかわいい系美形の後輩。
たまに見せる甘い言動が受けの心を揺する♡
そんなお話。
⋆┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈⋆
【攻め】
雨宮千冬(あめみや・ちふゆ)
大学1年。法学部。
淡いピンク髪、甘い顔立ちの砂糖系イケメン。
甘く切ないラブソングが人気の、歌い手「フユ」として匿名活動中。
【受け】
睦月伊織(むつき・いおり)
大学2年。工学部。
黒髪黒目の平凡大学生。ぶっきらぼうな口調と態度で、ちょっとずぼら。恋愛は初心。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる