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呼ぶ人
呼ぶ人20魔術師の見解
しおりを挟む「わかってる。けれど、遠慮するってのは、俺が貴族だからってことに違いはないんだろ?」
「…それは…」
他にも理由はあるが、そこは大きな理由なだけにクルクは否定できない。
「いいさ。少しづつ、俺の誠意を理解してもらうから、ひとまずはいい。…これからも今まで通りに接してはくれるんだろ?」
「は、はい。僕でよければ」
「よかった。では、ウィンレイ様、お話とはなんでしょう」
「分かってると思うけど、クルクのことだ」
「え。僕ですか…? そういえば、ウィンレイ様はリンメルのお知り合いですか?」
「うん。仲良しだよ。ちょうど、クルクとセルツァーみたいな感じかな」
「へー。そうなんですか」
クルクはほわほわと納得するが、セルツァーは目を大きくして驚く。たしかにリンメルへの執着から予想はできたが、本当にアレがいいのかと思ってしまう。
「あ。セルツァー。失礼なこと考えたろ?」
「い、いえ。それはっ」
「ふふっ。確かにあんなお馬鹿な子のどこが気に入るんだって思うのも分かるから、そんな動揺しなくても大丈夫だよ。俺も不思議」
完全に思考がばれて焦るセルツァーだったが、優しいウィンレイの目を見て、本当に好きなんだなと理解して、リンメルの魅力は分からないものの、納得できた。
「それで、あの、クルクのことというのは、呼ぶ人のことですか…?」
呼ぶ人という言葉にクルクの身体がわずかに震える。今はまだ得体の知れないものだ。
「まーねー。クルク、そんなに身体を強ばらせなくても大丈夫だよ。そのぶんだと多少の話は聞いているみたいだけど、ただ召喚の才能があったってだけの話だよ? 俺が魔術や魔法使えるのと一緒」
「そ、う、なんですか?」
まだ受け入れるのが怖いながら、ただ才能あるだけという言葉に縋る。
「そう。召喚師はすっごく少ないけど、珍しい才能って他にもあるでしょ。それだけのことだよ」
「そうなんですか…。でも、呼ぶ人って言われてるのは何故なんでしょう? それに儀式はどういう意味が…?」
「おお。リンメルとは全然違うね。さすがリンメルに勉強を教えられるだけのことはある」
「え、あの…?」
「ようはクルクは神に愛されて召喚の才能が多めだったんだよ。それを利用しようとして悪い人が儀式をしたんだ。巻き込まれて災難だったね。これからは、俺や、君の騎士が守るから、何も心配いらないよ」
「えと、ありがとうございます。呼ぶ人というのは、そういう召喚の才能が多い人のことですか?」
「賢いと話しやすくて助かるよ。詳しくはいい伝えでしかないことだから、分からないけど………。というか、そんないい伝えなんかよりも、俺からの言葉だ。呼ぶ人である君は腕にその印があるだろう? それは使命の印。君にはしないといけないことがある」
ウィンレイにしては少し躊躇って言葉を口にする。
「…そうですか…」
クルクは怖がっていたわりにはウィンレイの言葉を受け入れられた。なんとなく分かっていたからこそ、怖がっていたのかもしれない。
逆に知っているつもりで全く知らなかったセルツァーが動揺する。
「ど、いうことですか、ウィンレイ様…」
「そんな顔しなくても大丈夫だよ。すんごく面倒ではあるけど、さらに面倒になるのは困るから、俺が導くんだから、何も心配することはない」
「…ウィンレイ様のことは信じてます。しかし、俺は、一体どんな…」
「セルツァー…」
動揺の酷いセルツァーが心配になったクルクは近くにある腕にそっと触れる。そのせっかくの好機な温もりにセルツァーは気づかなかったが。
「んー。君のほうがそんなに動揺すると話が進まないんだけど。…まあ、待ってもしかたないか。簡単に言うと、魔物退治だ。たまにある天災のように、魔物が活発に動きだす時期がくる。それを鎮める為には呼ぶ人の力が必要だ」
「魔物…。そんな…。なんでクルクが…」
「そんなに苦悩することはないよ? 俺の考えとしては、呼ぶ人は神に使命を押し付けられてるというよりは、魔物に対抗できる力をもらっているだけだ。愛されてるって、基本はそういうことでしょ。ただ、これまでの呼ぶ人はそれで魔物を倒す使命を自ら選んだんじゃないかと、俺の見解だけどそう思ってる。つまりは、嫌ならなんにもしなくていいよ? でもそれじゃ後味悪いだろうし、少しは手伝ってくれるとありがたいかな」
「………え?」
ウィンレイ的な考えにセルツァーはついていけない。
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