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第五章
第125話
しおりを挟む頑張って1時間以内に完成させたのはアクセサリーです。
たぶん、いま起きているのは『魔物の襲撃』でしょう。・・・だから、屍食鬼という知識の高い魔物が現れたのでしょう。
虫の襲撃に襲われたのは偶然だと思います。ですが、その被害者たちはもちろん『自分の死』に納得していないでしょう。それに屍食鬼となった彼女は、嫁いで1年も経っていません。幸せか否かは分かりません。ですが、生まれ故郷から離れた場所で死んだことは悲しかったでしょう。最愛の夫は一緒に亡くなっていません。まだ助かる見込みがあったため、治療院に運ばれたのです。・・・その途中で亡くなったと報告されています。
もしかすると、屍食鬼になった彼女は、夫を探しているのかもしれません。だから、夫の知る『人の姿』で行動しているのかも知れません。
では彼女は『被害者』でしょう。夫を求めて死んだ彼女の『最期の願い』を悪用された形ではないでしょうか。魔物の襲撃で生まれた知恵を持つ黒幕が、この騒動を引き起こしているのでしょう。
「人を惑わせる魔物が黒幕じゃないかな・・・」
そう考えたけど、対策用のアクセサリーを完成させたら安心して疲れがドッと出てしまい、食堂まで話に行けそうもありません。
思いついたことを紙に書いてアクセサリーと一緒に置いていたら、誰かが様子を見に来た時に持って行ってもらえるでしょう。
休憩室に入る前に、使っていた錬金室と調合室をそのままテントに移しました。目が覚めても、体調が戻るまではテントから出られないでしょう。あの、ルーフォートにいた時に、料理しただけで体力切れを起こしたように。
フラフラ状態でテントに戻り、真っ先に入浴へ。頭を洗っている時は睡魔に襲われてウトウトしましたが、お湯に浸かったら睡魔は離れて行きました。冬の日の温泉は気持ちがいいです。
浴室から出て最初にしたのが、調合室と錬金室の設置です。『何やってんだ。早く寝ろ』と言われそうですが、気掛かりがあるとそれが頭から離れず、目が冴えて眠れなくなるのです。
空き部屋には、施設に置いてあったのをそのままの順番で並べていきました。ちゃんと写真も撮ってきたので、間違いなく並べていきます。慣れた場所に道具がないと、それを探すのに時間がかかってしまうからです。
問題になっていたのは、錬金室の『密閉型部屋』でした。通常の作業は問題ないのですが、密閉型の部屋に一番必要な『魔力吸収』が、テントの壁では使えないのです。そのため、色んな職人さんたちの製品などを確認していたら武器や盾に『魔力吸収』が付与されているのがありました。それを知ったポンタくんが「結界石に付与出来るか」と聞いてくれました。回答は「結界石に付与出来ないが、結界には魔力吸収や衝撃吸収が備わっている」と言うことでした。
そのため、テント内で密閉型部屋を作る時は結界石で結界を張ることにしました。部屋の四隅に結界石を置き、四隅と四隅の間にも結界石を置く『八点結界』です。これなら、ドアの前に置かれた結界石ひとつを動かすだけで結界を張ったり解除したりが簡単に出来ます。
そして『もしも』のために、錬金をする時は『結界の指輪』を身に着けることにしました。
錬金部屋の設置に満足したら、追い払ったはずの睡魔が大挙で押し寄せてきました。気掛かりだったことをすべて片付けたから安心出来て、張り続けていた緊張が、気持ちが緩んだのでしょう。
睡魔に負ける前に寝室まで辿り着きベッドに潜り込むと、そのまま泥のように眠ってしまいました。
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