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第六章
第172話
しおりを挟む「あなたがエミリアちゃんね。はじめまして、私はシシィ。ミリィの友だちよ」
「私はアンジー。同じくミリィとは昔馴染みよ。よろしくね」
「えっと、……エミリア、です」
ミリィさんの後ろに隠れるように立つ私に、二人は姿勢を下げて目線を合わせてくれる。
ミリィさんから「みんなを紹介したいんだけど」と言われて了承した。よければ、改めて友だちとして始めたいと思っているようだ。
「ミリィたいちょー! 何なんですか。この可愛い子はー!」
「ミリィ隊長! いつの間に、こんな可愛い娘ができたんですか!」
冒険者の皆さんと私は『はじめまして』の挨拶から始まった。そんな彼らからの質問に呆れたミリィさんの声が重なる。
「お前らなー。エミリアちゃんに手を出すなよ」
「可愛いだろー。でも俺とミリィのだから、手を出すんじゃねーぞ」
「ちょっと、ルーバー!」
『鉄壁の防衛』の皆さんも、相変わらずのようだ。そして、何故か私はミリィさんとルーバーさんの娘、というか秘蔵っ子になっていた。ミリィさんがルーバーさんに注意するものの、本人は馬耳東風で聞き流して笑っている。
問題は、ミリィさんがルーバーさんのいる厨房に入ってしまったため、無防備になった私はシシィさんとアンジーさんに「「カワイイ~!」」と言われて両側から抱きつかれた。
「可愛いお嬢さん、俺たちとパーティ組みませんか?」
「イヤイヤ。いっそのこと、俺たちの誰かと結婚して嫁に来ませんかー?」
「やーん! ミリィさあーん!」
「あー! お前らー!」
気付いたミリィさんが駆け寄ってきて、揶揄う冒険者さんたちと一緒に私に抱きついている二人も追い払って抱きしめてくれる。それだけで安心できた。……やっぱり、私はこの温もりを覚えている。思い出ではなく身体で。
「キャー!」
「ごめんなさ~い!」
「うわー!」
「揶揄って悪かった!」
「……店を壊すなよ」
私がミリィさんの腕の中で癒されている間、周囲は阿鼻叫喚……とまでいかなくても、悲鳴があがっていた。触手を伸ばしたピピンが、教育的指導をしているのだ。
パシンッ! バチンッ! ドカッ!
ピピンの触手が鞭のように振られるたびに、一人、また一人、たまには複数が文字通り倒されていく。
「ピピンちゃん、店内も壊していいわよ」
「おい……」
「状態回復で直せばいいでしょ、ルーバーが」
ミリィさんの言葉に返事をするように振り返って上下に揺れるピピン。直後から攻撃力が上がったようで、触手がブンッという空気を斬り裂く音まで聞こえるようになった。
「エミリアちゃんを揶揄うとどうなるかわかったわね」
「「「ばび。ボブビバベ、バビバベブベビバ」」」
何往復もビンタを受けて顔を腫らした冒険者さんたちは床に正座している。ビンタという制裁を加えたのは仲間の冒険者さんたち。
「お前らがエミリアさんを揶揄うから、俺たちまで叱られたじゃないかー!」
「私たちまで被害を受けたのよ!」
ピピンの教育的指導がひと通り終わって、意識を取り戻した皆さんは、私を揶揄った冒険者……ネルトさんとフォーグさん、サリーさんに怒りの矛先を向けた。
「すまん! 悪かった! 痛い! 痛いって‼︎」
ルーバーさんは床に伏せられている。背中に乗った白虎に前肢で頭を、後肢で背中をフミフミされている。ミリィさんから「死ななければいいからね」と言われて、すでに背骨がバキボキと悲鳴をあげている。
「大丈夫よ、エミリアちゃん。あれは使っていない骨が鳴っているだけ。白虎ちゃん、ルーバーは「肩が痛い」って言ってたから、関節が外れるくらい踏んでやって」
ガウッ
返事をした白虎がリズム良く足踏みをすると、背中の上にいるピピンとリリンがユラユラと揺れる。時々、白虎の背からコロコロと落ちるが、それも遊びの一つだ。以前から、ピピンたちや妖精たちを背に乗せたまま白虎は突然座る。すると、《 キャー♪ 》と喜びながら床まで転がり落ちていく。滑り台で遊ぶ子供のように楽しそうだ。
テント内の庭に丘を作り、斜面の一部に滑り台を作ったら、白虎の背に乗って滑って遊んでいる。白虎も、丘の上で滑り台に背を向けて座り、みんなを落としてから滑り落ちる。
私も白虎の背に乗って一緒に滑っている。……滑り台というよりジェットコースターのようでスリル満点。白虎も私を落とすことはないし、落ちても飛翔で浮かべばいい。草は柔らかいから、落ちても痛くはないし。
ちなみに海岸にも滑り台を作って、ウォータースライダーにした。……私以上に妖精たちが喜んでいる。
ガゴンッ!
…………あ、顔を上げようとしたルーバーさんが、床にアゴを打ち付けた。
「いい音がしたね」
「気持ちいい音だな」
「……誰か、俺の心配をしてくれ」
ルーバーさんの涙の訴えに、白虎がてしてしと軽くルーバーさんの頭を叩いた。
「白虎……。お前は俺の心配をしてくれるのか」
ガウッ
《 この頭、まだ壊れてないから大丈夫、だって 》
地の妖精の通訳に、私とミリィさん、アンジーさんたち四人は同時に吹き出した。
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