私は聖女ではないですか。じゃあ勝手にするので放っといてください。

アーエル

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第十章

第477話

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元の会議室に戻った者たちは清々しい笑顔で帰っていった。各々の心に残った蟠りを、ある者は爆発させ、ある者は泣きながら訴え、ある者は……その身に宿した。
シエラのお腹にはノーマンが宿った。
それを聞かされて、営業を終えていたバラクルでは飲めや騒げやの大騒ぎ。

「すみません。うちのバカ息子が、最後の最後まで……」
「いやいや。一緒にいたダイバやエミリアちゃんの話では、『状態回復』の魔法をかけたのはシエラの方だと聞いております」
「いえ、息子の不甲斐なさから……」
「いーえ。うちのシエラはしっかりしているくせに、肝心なところでそそっかしくて」

母親同士で『不出来な子供の不出来な点をあげて相手の子を持ち上げるぞ』合戦が開戦している。面白いから見ていたいけど、この後の展開が列を成して待っている。

「じゃあ、親の許可もなくシエラのお腹に勝手に入り込んで息子として生まれようと画策したノーマンは流しちゃってもいい?」
「「ダメ~!」」

私の言葉に母親'S が声をそろえる。

「エミリアちゃん! なんでそんな悲しいことをいうの」
「そうよ、エミリアさん。もう一度ノーマンをこの手に抱けるのよ!」
「……のわりに、シエラに『おめでとう』とか声をかけた?」
「それは……」
「普通の妊娠とは違うし……」
「じゃあ、望まれない妊娠だから流す?」
「「それはダメ~‼︎」」

私がクスクス笑ってると、ダイバがコチンと頭を拳で叩いてきた。

「エミリア、ノーマンで遊んでいるな?」
「……え? ノーマン?」

周囲はすでに気付いている。気付いていないのは目の前の二人だけだ。もちろんシエラも気付いている。さっきから微笑んでいるだけで私に反論はしてこない。

「ああ、エミリアはさっきからノーマンをからかっているだけだ」
「まったく。こういうときは『ノーマンを頼む』でいいだろ」

コルデさんの言葉に父親'S+スワットはグラスを持ち上げて何十度目かの乾杯を交わす。

「それで? エミリアちゃんの頼みできてるんだけど。『エルフの祝福』を与えてもいいの?」

エリーさんが早くしたいのは、祝福を授けるのではなく飲み会に参加だ。

「シエラはどうしたい? お腹のノーマンは違う魂だよ。いずれ成長して、シエラ以外の女性と結婚する。シエラも、いつかはノーマンから息子という立場を受け入れて、誰かと再婚する。それを受け入れられる?」

エリーさんの言葉に、シエラは笑顔で頷く。シエラの心は決まっているのだ。だからあのとき、宿。……そう、私は聖女の力を使っていない。シエラは竜人の能力を発揮したのだ。『弱き者を守る』という竜人の持つ元々の能力を。

「はい、私はもう一度彼に『家族の素晴らしさ』を、身をもって知ってもらいたいのです。今度は間違いなく。ひとりぼっちではありません。だから、女神に惑わされることなく生きていけるでしょう」
「あ……シエラ、怒ってる」
「ノーマンの裏切りがよほど許せなかったようだな」
「さっきさあ、シエラに言われたのよ。この指輪の男性向けはあるかって」
「それってノーマンとの思い出にっていうわけではなく……」
「今、この場に遅れて登場した誰かさんにってことだよね」
「それであるのか?」
「そりゃあ、だもん」
「…………究極の嫌がらせだな」

ダイバが苦笑する。そしてまだ事情を把握していないその誰かさんに説明しに行った。

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