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第十章
第484話
しおりを挟む「ほら、みんなは誰かが『宝石の聖獣を目的にきているが、それだけを会議に参加する目的にはしていない』って声に次々と同意したよね。その言葉を最初にあげたのはだ~れだ」
すると次々と顔が左右の人たちを見回して、誰が最初に言ったのかを探していく。しかし、誰もたどり着けないだろう。
「はーい、最初に言ったの手をあ~げて」
私がはーいって手をあげると、中央に近い机の下から《 はーい 》と手をあげて出てきたのは庁舎で働く妖精。
《 それに同意したのは私だよ~ 》
次にシーズルの前へ手をあげて出てきたのは会計部にいる計算が得意な妖精だ。
「何でそんなことを……」
困惑している人たちだったが、シーズルが気がついたようで大きな声をあげた。
「あっ、彼らは人ではない!」
そう、発言権がないのは『宝石の聖獣だけを目的として参加しているのではない人』であって、妖精たちには発言権があったのだ。
「いまと同じように誰かの発言に惑わされて……。それが間違った選択だった場合、全員が死出の旅に向かう。道連れにされたいか?」
「いまシーズルは選択を間違え、大半が間違った選択の道連れになったな」
アルマンさんとダイバの言葉に黙って俯く。シーズルを責める声はあがらない、自分たちも間違いに気付かなかったのだから。責める権利があるのは気付いて声をあげたものだけ。
《 オラオラ。だから『発言権がないんだから黙ってろ』って言ったじゃないか 》
《 だ~れだっけ~? 『邪魔をするならお菓子をやらんぞ』って脅したヤツは。ウリウリ、ウリウリ。もう一丁、ウリウリ 》
顔の横にいる妖精に、人差し指で頬をグリグリされて青ざめている職員もいる。
《 なんか言ってみ? 》
「すみません、二度と偉そうな口を利きません」
《 ボクたちが信仰する神を一緒に崇めるか 》
「え⁉︎ ……それは」
《 エミリア教だー! 》
妖精たちがいっせいに声をあげて私に集まり正座して手を合わせる。
《 今日も清く正しく美しい心で一日を過ごせることに感謝します 》
《 今日も清く正しく美しい心で一日を過ごす努力を怠りません 》
《 今日も私たちを見守りください 》
最近はこれが毎日朝早く…………私が寝ている時間から始まる。発端はピピンとリリンの二人だ。
「また始まった」
「そろそろ慣れたな」
ダイバとコルデさんが苦笑する。
「おい、ダイバ。『エミリア教』というのはなんだ」
「ああ、エミリアを御神体にしてピピンを教祖、リリンを女王様として妖精たちの信仰を集めている。信奉者はここ、ダンジョン都市に住む妖精全員。ああ、白虎はエミリアを癒す聖母らしい」
「リリンの称号は絶対『違う意味の女王様』だろう?」
「それでも連中はそれで結束を固めている。実際に妖精たちがこの都市を整備し管理している。街路樹の世話をしているのは妖精たちだ」
ダイバの言葉に、職員たちが次々に私の周りに集まりひざ立ちになると、妖精たちのように両手を合わせた。
「「「エミリア様~」」」
「入信をお許しください」
「入信をお認めください」
「我らも清く正しく美しい心で日々を過ごせるよう見守りください」
ここでなぜかピピンが私の横に立ち、軽く手をあげて厳かに口を開く。
「許す。エミリア様を崇めよ」
「「「はっはー。ありがたき幸せ」」」
「教祖様、ありがとうございます」
……勝手に信者が増殖しているよ。
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