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異世界
試行錯誤
マーサちゃんが帰り際、彼女の母が色々と書き留めていた本を貸してくれた。
私は使えないので、と快く差し出してくれたがその本はとても古いのにシミ、シワ一つなく、とても大切にされていたのだと言うことがわかる。
ーーー《付与》は大きく分けて《加護》と《能力》と分けられるが、一般的に《付与》と呼ばれているのは《能力付与》の事である。
ーーー《能力付与》も大きく分けて二つある。物に能力を付与する《物質付与》と生き物に能力を付与する《生物付与》の二つだ。
《物質付与》は込めた魔力の量に比例して付与の効果が上がり、《生物付与》は込めた魔力量に比例して効果時間が決まる。
この、“魔力”というのがマーサちゃんの言っていた“想いの力”の事なのだとしたら何となくだが出来る気がした。
ーーー聖属性の還元率の高い素材で作られた物は聖属性の能力を《付与》しやすく、また効果も高くなる。このように使う素材によっても《付与》の種類や能力値は左右される。
本の内容はまさに今求めていた物で、《付与》については勿論だが、《付与》の種類や属性、能力値などについても詳しく解説されていた。
「…ターゲットは冒険者で…」
マーサちゃんのお陰で何となく《付与》と言うものの大枠を理解した。ただ、決意変わらず貴族とは関わりたくない。
そうなると私の商品を買ってくれそうなのは冒険者ぐらいだろう。そうなれば作る物は自ずと絞られてくる。
「鞄だね」
私自身も前々から鞄がなく不便を感じていたので鞄から作ることにした。
「まずは型紙」
こちらの世界では“鞄”は余り需要がなく、主婦の買い物鞄といえば籠で、その他の人たちも使うのは基本的に麻袋らしい。
冒険者の人達はと言うと多くは腰巻の革鞄を身に付いている人が多かった。職業柄両手が空く方が良いのだろう。そこでリュックも一案に浮かんでいたのだが、腕輪の件のように動きの妨げになる物は扱いにくいかもしれない。
郷に入れば郷に従え、だ。珍しい物よりも使い易さを優先することにして、今回作るのは革製のボディバックだ。
ただ、今から作る分は自分用なので入れる物は少ないから大きさはそこまでなくて良い。とにかくハンカチや湯花の時のように大切な物をポケットから取り出すのを梨沙は辞めかった。
型紙が出来たら、裏面の毛羽立ちの処理のため、丁寧にワックス処理をする。均一にワックスを伸ばしガラスを押し当てて磨いていく。
「良い色のヌメっぽい革だから、使えば使うほど良い色になりそう」
そして、革と裏地用の布を型通りにカットしていく。
流石革用の鋏と言うだけある。今まではカッターやたちナイフを使っていたが、鋏なのにズレることもなく、それ以上に使いやすい。
「こんなもんかな…?」
出来上がった綺麗な革布に針を通しやすいように穴を開けていく。この作業は見た目にも左右するので綺麗に均等に行うのが重要だ。
それが終わったら次にそれらを綺麗に縫い合わせていく。
やはり針もかなり使いやすい。いつもなら完全に穴が空いていなかった場所などは苦労していたのだが、今はそんなのお構いなしにスルスルと糸が通っていく。
レザーバックなので出来れば金物の留め金が欲しかったが、金物は金物屋じゃないと売っていないそうで、現段階で他の店で買い物をするのは怖かったのでルーペリオさんに頼むことにして今日は辞めておいた。
なので、今回はボタンに紐を巻き付ける簡単な形にする。
これは自分用の試作品なのでこれで良いが冒険者用に商品化するなら使い勝手の良い金属製の留め金にした方が見た目も丈夫さも良くなるだろう。
最後にその辺で売っていたベルトのバックルを少々拝借して腰に巻けるようにベルト穴も開ける。
「…出来た!」
出来栄えはなかなか。仕上がりも綺麗で満足のいく物になった。
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