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囲まれました。
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――先生が、この箱を焼却炉のそばまで運んでほしい、とおっしゃってたのですって。
てっきり同級生だと思った誰かの、そんな伝言めいた言い分にあっさり騙されて、おびき出されてしまったようです。
気がつけば、見覚えのあるようなないようなご令嬢三人ほどに、わたしは囲まれていました。
「ねえあなた。グロリア様に取り入る気?」
第一声がこれでした。
――なるほど、そっち方面でしたか。
心中ひそかに頷きます。
アレクサ嬢、というより某殿下の息のかかった連中か、と疑わないでもなかったのですが、その線ではない様子。
また、グロリア様の親しい方なら見分ける自信がありますが、心当たりがありません。どうやらグロリア様の親衛隊志願者といったところでしょうか?
皮肉というかなんというのか、
この方たちにとってはわたしも”ポッと出”のご令嬢の一人ということですか。たかだかモブがアレクサ嬢と同じ扱いというのは、感激すべき点なのかはわかりませんが。
無言でいるのをどうとったのか、
「ご機嫌とりに一生懸命のようだけど」
「人前でもキャンキャン吠えたてて、まるで躾のなってない犬のよう」
「じゃあ、躾の一つもしてあげないと」
「いやだわ、手でも噛まれそう」
ほほほほ、と笑われたところでいっそ感心しました、悪い意味で。
――これはまた見事な連携ではないですか。よどみないのに、台詞がまったくかぶらない。
しかも、仲間内でのやりとりのようにとりつくろって、つけ入る隙を与えない。ねっとりじっとりいやらしい粘度の高いなめくじのよう。
なめくじのほうが、案外さっぱりしてるかもですね!
わたしのいびり道とは真っ向真逆のやり口ですね。
「身の程をご存じないのはどちらかしら」
聞き流していた言葉の中のその一言にすっと真顔になるのが自分でもわかりました。
それは幾重にも突き刺さる言葉だったのです。おそらくは発した当人が想像している以上の鋭さで。
かつてアレクサ嬢に放った言葉が返ってきただけではなく。
この方たちには思いも及ばないだろう現実をわたしだけが知っている。
なぜ、作戦に選ばれたのがわたしなのか。
侯爵閣下がすでに同じ学園に通っている生徒に声をかけなかった理由はなにか。
彼女たちが選ばれなかったのは、”やんごとないお家のご令嬢”だからです。
わたしが選ばれたのは、”使い捨てにしてもいい家の娘”だからです。
なぜならば。
侯爵閣下は、わたしの家族をきっとまだ許していないから――
一瞬怯んだわたしに気づいたのか、令嬢たちが一歩にじり寄ったその時です。
「なにを、してる――?」
突然、声をかけられました。
てっきり同級生だと思った誰かの、そんな伝言めいた言い分にあっさり騙されて、おびき出されてしまったようです。
気がつけば、見覚えのあるようなないようなご令嬢三人ほどに、わたしは囲まれていました。
「ねえあなた。グロリア様に取り入る気?」
第一声がこれでした。
――なるほど、そっち方面でしたか。
心中ひそかに頷きます。
アレクサ嬢、というより某殿下の息のかかった連中か、と疑わないでもなかったのですが、その線ではない様子。
また、グロリア様の親しい方なら見分ける自信がありますが、心当たりがありません。どうやらグロリア様の親衛隊志願者といったところでしょうか?
皮肉というかなんというのか、
この方たちにとってはわたしも”ポッと出”のご令嬢の一人ということですか。たかだかモブがアレクサ嬢と同じ扱いというのは、感激すべき点なのかはわかりませんが。
無言でいるのをどうとったのか、
「ご機嫌とりに一生懸命のようだけど」
「人前でもキャンキャン吠えたてて、まるで躾のなってない犬のよう」
「じゃあ、躾の一つもしてあげないと」
「いやだわ、手でも噛まれそう」
ほほほほ、と笑われたところでいっそ感心しました、悪い意味で。
――これはまた見事な連携ではないですか。よどみないのに、台詞がまったくかぶらない。
しかも、仲間内でのやりとりのようにとりつくろって、つけ入る隙を与えない。ねっとりじっとりいやらしい粘度の高いなめくじのよう。
なめくじのほうが、案外さっぱりしてるかもですね!
わたしのいびり道とは真っ向真逆のやり口ですね。
「身の程をご存じないのはどちらかしら」
聞き流していた言葉の中のその一言にすっと真顔になるのが自分でもわかりました。
それは幾重にも突き刺さる言葉だったのです。おそらくは発した当人が想像している以上の鋭さで。
かつてアレクサ嬢に放った言葉が返ってきただけではなく。
この方たちには思いも及ばないだろう現実をわたしだけが知っている。
なぜ、作戦に選ばれたのがわたしなのか。
侯爵閣下がすでに同じ学園に通っている生徒に声をかけなかった理由はなにか。
彼女たちが選ばれなかったのは、”やんごとないお家のご令嬢”だからです。
わたしが選ばれたのは、”使い捨てにしてもいい家の娘”だからです。
なぜならば。
侯爵閣下は、わたしの家族をきっとまだ許していないから――
一瞬怯んだわたしに気づいたのか、令嬢たちが一歩にじり寄ったその時です。
「なにを、してる――?」
突然、声をかけられました。
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