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ウタと愉快な盗賊くん
カーターの居場所
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「……はぁぁぁぁぁ?!」
『勇気』の説明を聞いたあと、ポロンくんは驚愕の声をあげ、僕に詰め寄ってきた。
「100?! 100って言ったか!?」
「うん、100って言った」
「い、意味がわかんねーよ! なにそれ!? 100って!」
うんうん、叫んじゃうその気持ちはよーく分かるよ。僕もアリアさんもそうだったもんね。100だもん。こういう反応しなさそうな人と言えば……アイリーンさんくらいか。
「ていうか、どうしておいらに教えてくれなかったんだよ」
「あー、ごめんごめん」
少し唇を尖らせ、へそを曲げたように言うポロンくんをアリアさんがなだめる。
「あのときはほら、お前からキルナンスに情報が渡ってる可能性が強かったし、お前だって何か隠してただろう?」
「う、そ、それは……だって……」
「やっぱりな。……ちなみに、とりあえず全部終わったから聞くが、何を隠してたんだ?」
ポロンくんは言いにくそうにしながらも、ぽつりぽつりと話してくれた。
「おいら……気づいてたんだ。もしかしたら、頭領がおいらたちを監視するためのスキルとか持ってるんじゃないかって。
おいらが二人から聞き出した情報とか、作戦とか、全部通じてるんじゃないかって」
「……そっか」
「……お、怒るなよ?
だ、だからおいら……途中まで、いざとなったら一人で逃げればいいやって……さっきあいつが言ってたみたいに、二人のこと売って逃げればいいやって、どっかで、思ってて……」
生まれたときから盗賊だっただけ。初めてあったときにポロンくんがそう言っていたのを思い出した。
盗賊として今までの一生を生きてきたポロンくんにとって、『仲間を想って』という方が無理難題だったのかもしれない。
……でも、
「でも結果として、ポロンくんは逃げなかったじゃん」
「だっておいら! ……その、一緒に戦ってるうちに、お前らのこと! 大好きになっちまったから!」
「ははっ、大好きだってさ。困ってなぁウタ。私たち、同時に告白されてるぞ?」
「ちがっ、そういう好きじゃなくて!」
「そうですねー、ということは、僕とアリアさんは浮気相手同士、ってことなんですかね」
「ちがーーーう!!!」
ひとしきり笑ったあと、ポロンくんが僕の右の袖を引いた。
「……? どうしたの?」
「……さっき、怒ってくれて、ありがと」
「…………」
僕は左手で自分の頬をおもいっきりつねった。
「いだいいだいいだい……」
「な、なにやってんだウタ」
「夢かと思って」
「夢じゃないやい! なんだよ! おいらがせっかく…………」
「……ぷる?」
「あっ! スラちゃん!」
ポロンくんの腕の中でぐったりと眠ったままだったスラちゃんがキョロキョロと周りを見渡し、僕を見つけると嬉しそうに肩に飛び乗ってきた。
「ぷるるっ!」
「よかったぁ、心配したんだからね。おかげで助かったけど……無理はしちゃダメだからね」
「ぷーるるー!」
「よかった。これで全員無事生還だな」
「そうだな!」
「……じゃあ、最後に」
僕らは階段をゆっくりと下っていった。
◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈
「…………」
たった一人で大きなぬいぐるみに向かうその子に、アリアさんはそっと近づき、優しく頭を撫でた。
振り向いたその子は、とたんに嬉しそうな声をあげる。
「あっ! お姉ちゃん!」
「遅くなったな、カーター」
「ううん! 大丈夫だよ!」
にこにこと笑うその子は、さっきとは全く違う表情をしていた。それは、僕らを殺そうと迫ってきた猟奇的な表情とも、そのあとの寂しげな表情とも違っていた。
「……ねぇ、お姉ちゃんお兄ちゃん、聞いてもいーい?」
「ん? いいぞ」
「どうして、私だけ助けたの?」
「あ、それおいらも思ってた。どうしてカーターだけ助けたんだ?」
僕はアリアさんと顔を見合わせた。幼いというのももちろん理由だったが、僕もアリアさんも、どこかでその不安定な精神状態を見抜いていた。
どうしてかと言われたらよく分からないけど、なんとなく、この子を一人にしておいてはいけないと思ったのだ。しかし、それを言っていいのか……。
「…………お前は、他のやつと違って幼かったからな」
アリアさんが言う。
「だから、少しでも助けてやれないかって思って」
「…………」
カーターは黙りこむと、ぼそっと呟く。
「……嘘だ」
「え」
「嘘だよね……? ねぇ、何隠してるの? なんで教えてくれないの? ねぇ、ねぇ!」
様子がおかしい。ドキッとして自分のステータスを確認する。……勇気は切れている。
そうしている間にもカーターの体はがくがくと震え始め、ひどく恐怖した表情で僕らを見る。
「私をどこに連れてくの? ま……また、変なところに連れてくの? そっか! また売り飛ばすんだね!?」
「違う! 私たちはお前を」
「黙れ……黙れ黙れ黙れっ! 結局私には居場所なんてなかった! 売られるのが落ちなんだ! でもね、私は簡単に思い通りになんてなってあげない! お姉ちゃんもお兄ちゃんもみんな殺して、私は逃げてやるんだから!」
「待って! 僕らは」
「水龍っ!」
危ない。本能的にそう感じた。僕らではなく、カーターが。
魔法を使うときはそれなりの集中力を使う。僕でもそうなんだ。属性魔法だと、もっとだろう。それなのに、あんな状態で……。
現れた水龍は歪な形をしていた。上手く操作出来ないのか、動きがひどく荒っぽい。このままじゃ、まずい。
「死んでっ!」
完全な力不足。水で出来た巨大な龍が、僕らを襲った。
『勇気』の説明を聞いたあと、ポロンくんは驚愕の声をあげ、僕に詰め寄ってきた。
「100?! 100って言ったか!?」
「うん、100って言った」
「い、意味がわかんねーよ! なにそれ!? 100って!」
うんうん、叫んじゃうその気持ちはよーく分かるよ。僕もアリアさんもそうだったもんね。100だもん。こういう反応しなさそうな人と言えば……アイリーンさんくらいか。
「ていうか、どうしておいらに教えてくれなかったんだよ」
「あー、ごめんごめん」
少し唇を尖らせ、へそを曲げたように言うポロンくんをアリアさんがなだめる。
「あのときはほら、お前からキルナンスに情報が渡ってる可能性が強かったし、お前だって何か隠してただろう?」
「う、そ、それは……だって……」
「やっぱりな。……ちなみに、とりあえず全部終わったから聞くが、何を隠してたんだ?」
ポロンくんは言いにくそうにしながらも、ぽつりぽつりと話してくれた。
「おいら……気づいてたんだ。もしかしたら、頭領がおいらたちを監視するためのスキルとか持ってるんじゃないかって。
おいらが二人から聞き出した情報とか、作戦とか、全部通じてるんじゃないかって」
「……そっか」
「……お、怒るなよ?
だ、だからおいら……途中まで、いざとなったら一人で逃げればいいやって……さっきあいつが言ってたみたいに、二人のこと売って逃げればいいやって、どっかで、思ってて……」
生まれたときから盗賊だっただけ。初めてあったときにポロンくんがそう言っていたのを思い出した。
盗賊として今までの一生を生きてきたポロンくんにとって、『仲間を想って』という方が無理難題だったのかもしれない。
……でも、
「でも結果として、ポロンくんは逃げなかったじゃん」
「だっておいら! ……その、一緒に戦ってるうちに、お前らのこと! 大好きになっちまったから!」
「ははっ、大好きだってさ。困ってなぁウタ。私たち、同時に告白されてるぞ?」
「ちがっ、そういう好きじゃなくて!」
「そうですねー、ということは、僕とアリアさんは浮気相手同士、ってことなんですかね」
「ちがーーーう!!!」
ひとしきり笑ったあと、ポロンくんが僕の右の袖を引いた。
「……? どうしたの?」
「……さっき、怒ってくれて、ありがと」
「…………」
僕は左手で自分の頬をおもいっきりつねった。
「いだいいだいいだい……」
「な、なにやってんだウタ」
「夢かと思って」
「夢じゃないやい! なんだよ! おいらがせっかく…………」
「……ぷる?」
「あっ! スラちゃん!」
ポロンくんの腕の中でぐったりと眠ったままだったスラちゃんがキョロキョロと周りを見渡し、僕を見つけると嬉しそうに肩に飛び乗ってきた。
「ぷるるっ!」
「よかったぁ、心配したんだからね。おかげで助かったけど……無理はしちゃダメだからね」
「ぷーるるー!」
「よかった。これで全員無事生還だな」
「そうだな!」
「……じゃあ、最後に」
僕らは階段をゆっくりと下っていった。
◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈
「…………」
たった一人で大きなぬいぐるみに向かうその子に、アリアさんはそっと近づき、優しく頭を撫でた。
振り向いたその子は、とたんに嬉しそうな声をあげる。
「あっ! お姉ちゃん!」
「遅くなったな、カーター」
「ううん! 大丈夫だよ!」
にこにこと笑うその子は、さっきとは全く違う表情をしていた。それは、僕らを殺そうと迫ってきた猟奇的な表情とも、そのあとの寂しげな表情とも違っていた。
「……ねぇ、お姉ちゃんお兄ちゃん、聞いてもいーい?」
「ん? いいぞ」
「どうして、私だけ助けたの?」
「あ、それおいらも思ってた。どうしてカーターだけ助けたんだ?」
僕はアリアさんと顔を見合わせた。幼いというのももちろん理由だったが、僕もアリアさんも、どこかでその不安定な精神状態を見抜いていた。
どうしてかと言われたらよく分からないけど、なんとなく、この子を一人にしておいてはいけないと思ったのだ。しかし、それを言っていいのか……。
「…………お前は、他のやつと違って幼かったからな」
アリアさんが言う。
「だから、少しでも助けてやれないかって思って」
「…………」
カーターは黙りこむと、ぼそっと呟く。
「……嘘だ」
「え」
「嘘だよね……? ねぇ、何隠してるの? なんで教えてくれないの? ねぇ、ねぇ!」
様子がおかしい。ドキッとして自分のステータスを確認する。……勇気は切れている。
そうしている間にもカーターの体はがくがくと震え始め、ひどく恐怖した表情で僕らを見る。
「私をどこに連れてくの? ま……また、変なところに連れてくの? そっか! また売り飛ばすんだね!?」
「違う! 私たちはお前を」
「黙れ……黙れ黙れ黙れっ! 結局私には居場所なんてなかった! 売られるのが落ちなんだ! でもね、私は簡単に思い通りになんてなってあげない! お姉ちゃんもお兄ちゃんもみんな殺して、私は逃げてやるんだから!」
「待って! 僕らは」
「水龍っ!」
危ない。本能的にそう感じた。僕らではなく、カーターが。
魔法を使うときはそれなりの集中力を使う。僕でもそうなんだ。属性魔法だと、もっとだろう。それなのに、あんな状態で……。
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