チート能力解放するにはヘタレを卒業しなきゃいけない

植木鉢たかはし

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ワクワク! ドキドキ! 小人ライフ!

今は

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 兵士の知らせを聞いて、僕らは国王陛下と一緒に、大急ぎでサラさんがいるという方へ向かった。
 大広間に行くと、そこにいたのは、あのときの女性と、ラトさんだった。


「貴様だな! サラ様を傷つけたのは! おのれー、成敗してくれるわ!」

「いやー、あのー、どちらかというと助けた部類に入るんですけどー。あの、見つけて魔法使っただけで」

「魔法でサラ様をぎったぎたのめっためたにしたんだな!?」

「使ったのは回復魔法なんですよ……」


 そんなラトさんの様子を見かねて、サラさんのことが気になるはずの国王陛下が足を止めた。


「ラト、何をしているんだ」

「陛下っ! この人! 俺の知らない人がここにいるんですよぉ!」


 そして、彼女の顔を見て、申し訳なさそうに言う。


「…………確か、ドロウ、と言ったな。サラを助けてくれたのだろう? 悪いな、こいつが」

「あ、いや、大丈夫ですー、はい。知らない人ってのは本当ですしね」

「ええええっ?! また陛下のお知り合い!? 最近俺ってついてない!」


 苦笑いしながら、「お大事にー」と、城をあとにしようとしたその人に、アリアさんがとっさに声をかけた。


「ま、待ってくれ!」

「あれ? …………あぁ、あのときの……。あとから知ったんですけど、マルティネスの姫だったんですね。うちのウルフがご迷惑お掛けしまして」

「いや、そんなことはもういい。なぁ、どうしてサラ姉さんがこんなことになった! どこでだ?! 誰にやられた!」


 一気に捲し立てるアリアさんを制止ながらも、僕も訊ねる。


「落ち着いてください、アリアさん。……サラさんは、強いです。そう簡単にやられるとは思いません。相手は、魔物? それとも、人?」

「まぁ……間違いなく、人ですね。それも人間。小人族じゃないですよ」


 ドロウさんがそう断言する。


「……何でそういえるんだ? サラ姉を倒せる魔物だって、いないとは言えないじゃないか」

「そうだね……そもそも、サラさんはどこにいたんでしょうか?」

「はいはいはい、ちゃんと話しますよ。
 まず、人だって断言できる理由は二つあります」


 ドロウさんは腰に手をあてながらそういう。僕らはじっと聞いていた。


「一つ目は、サラ様がいた場所。国の北の方にマルティネスやクラーミルにまたがる山があるのは……分かる?」


 僕らはうなずく。森でレベリングをしていたとき、サラさんの背後にあった山だ。……そういえば、そのあたりにドロウさんは住んでいると言っていた。


「まさか……山に?」

「そうです。あのー、私は麓の辺りに住んでて、一日何回か山に上って使役した魔物たちの世話をしてるんですけど……。その時に見つけまして」


 サラさんは、山にいたってことか……でも、どうしてそれが人にやられたってことの理由になるんだろう。


「山は、我が領土ではないんだよ」


 僕の疑問に答えるかのように、国王陛下が言う。


「そうなんですか?」

「あぁ、森もそうだ。ここの森と山はどこの国のものでもない。
 森に関しては川を挟んだこちら側は、縮小化の魔法が効いている。国民がふらっと出掛けた先で、魔物と鉢合わせても大丈夫なようにな」

「でも山には、基本的に私の使役してる子達しかいないし、人は襲わないけど、他の魔物が入ってきても退治しちゃうんですよー。
 だから、山にいて、魔物にやられたってことはあり得ないも同然なことで」

「えー、でも、使役してる魔物ってどれくらいなんですか?」


 正直、使役してるのが30とかいたとしても、山は大きい。どこからか入ってきてしまうことがあったり


「ざっと10万くらい……?」

「他の魔物いませんね」


 それともう一つ、と、ドロウさんは言う。


「……傷口、なんですけど。あぁ、今見てもたぶん塞がってるんで分からないかと」

「……なにか、おかしいところがあったのか?」


 ドロウさんはしっかりとうなずいた。


「えっとですね――撃たれてたんですね、銃で」

「……撃たれて、た?」

「それも、小人族じゃ、絶対に扱えないような大きさの」

「それって……」


 僕はそれだけをポツリといって、絶句した。銃で撃たれた……。何がそんなに驚くかって?

 鳥を打ち落とすのは、小人族では至難の技。しかしそれが人間だったら?
 縮小化の魔法が効かない山で、銃を持ち、鳥を撃っていたとしたら?
 そしてそれをサラさんは知っていて、止めようと、その人のもとへと行ったのだとしたら?

 と、急にアリアさんが走り出す。僕はとっさに追いかけた。城を出て、まだ人が溢れる街を抜けて、森の、さらにその先を目指すアリアさん。
 僕はやっとの思いでアリアさんに追い付くと、その手を強くつかむ。


「離せっ! 場所が分かったんだ。今すぐ行かないと!」

「それはいくらなんでも無謀ですよ! 空を見てください。もうとっくに日が沈んでるんですよ……? 暗視のスキルもないのに、何も見えないなか、山を登るんですか!?」


 アリアさんは空を見上げる。真っ暗な空はどこまでも続き、昨日は見えていた月も星もない。
 分厚い雲が星空を覆い隠し、気がつくと、頬を濡らす冷たい粒をこぼしていた。


「で、でも!」

「それに! ……サラさんは、確かに小人族で、力では人に劣るかもしれない。でも! 魔法は、すごく強いはずです! そのサラさんが負けてしまった相手に、何の策もなく無防備のまま乗り込むんですか?!」


 アリアさんの言葉がつまる。ここで言い負かせないと、アリアさんは山に登ってしまう。そして、そのまま――。
 雨はどんどん強くなる。昼間晴れていたのが嘘のようだ。真っ暗な視界には、アリアさんがいた。雨に濡れるその人は、泣いているようにも見えた。


「アリアさんが行くなら、僕はもちろんついていきます、でも! ……『勇気』だって、100%発動するとは限りません。ここで行くのは、死にに行くようなものです! だから」

「死ににいって何が悪い! サラ姉さんも、お前も、敵わないと分かってて行ったんだぞ!? なのに、どうして私はダメなんだ!」

「サラさんの判断は間違ってます! ……僕は、命は二つあります。でも、アリアさんもサラさんも、一つしかないんです。
 今回だって、もしもドロウさんが助けていなかったら、サラさんは、死んでたかもしれないんですよ……? もしも敵が、もう一発魔法を当てていたら、本当に…………」

「…………」

「ひとまず、帰りましょう。ちゃんと体制を整えたあとなら、どこにでもついていきますから」


 悲痛な表情を浮かべたまま、アリアさんは唇を噛み、両手をぎゅっと握りしめ、黙ったまま、うなずいた。
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