110 / 387
ワクワク! ドキドキ! 小人ライフ!
雨宿り
しおりを挟む
本格的に雨がひどくなってきた。どしゃ降りの雨を避けるように、人々は家へと入っていき、やがて、ほとんどいなくなってしまった。
僕らは傘を持ち合わせていなかったので、ずぶ濡れになって歩く他なかった。
「……、くしゅっ……」
「アリアさん……? 大丈夫ですか? 寒いんじゃ」
「……大丈夫だよ。心配しなくても」
にこりと微笑んでみせるが、自分の腕をさすり、寒さに身震いする。僕は少し辺りを見渡して、少し薄暗い路地を指差した。
「あそこ、家の屋根で少し雨宿りできそうですよ」
「いや、別に平気だから」
「でも、ちょっと寒くなってきたし、僕も走って疲れたんで。休んでいきません?」
すると、はぁ、と、深くため息をついて、アリアさんが笑った。
「全く……しょうがないな、お前は」
諦めたようにそういうと、路地の方へと向かった。そして、屋根の下に入り、アイテムボックスからタオルを取り出すと、濡れた髪や、体を拭く。
どこをどう見たらいいのか分からなくて、僕はなんとなく空を見上げた。
未だに雨はざんざん降り注いでいる。僕もアリアさんと同じようにタオルを取り出して体を拭いた。完全にとはいかないが、いくらか楽になった。
「そういえば……スラちゃんはどうした?」
タオルを片手に持ったまま、アリアさんが訊ねる。もちろん、どこかで落としてきたとか、そんなことはない。
「城を出るとき、ポロンくんの肩に飛び移ってましたよ。僕の肩に乗ってたら、振り落とされると思ったっぽくて」
「そうか。ならよかった」
しばらくの間が空く。お互いに、何を話したらいいのか、分からなかった。
「……なぁ、ウタ」
「なんですか?」
「…………」
「どうしたんですか……?」
少しためらいながらも、アリアさんは、はっきりと口にした。
「私は……信じて、いいんだよな?」
「え……?」
「姉さんを」
そして、足元を見つめる。水溜まりになっているそこは、雨が降る度にわっかが生まれ、色を、形を、変えている。
「姉さんは……信じてくれているのかな、私たちを」
「…………」
「もう分からない。昔から信じていたそれが本当なのか、今の……この状態が、本物なのか」
……この国に来てから、アリアさんは、それまで僕らに見せなかった色んな顔を見せている。それは、ここが安心できる場所だったからかもしれない。
無防備に笑ったり、泣いたり、怒ったり……。でも、もしもそこが信頼してはいけない場所で、本当は笑ってなんていけない場所で、国王も女王も、サラさんも、信じてはいけない人だったなら……?
「……ディランが、前に言っていたんだ。人を簡単に信じすぎだって。
なぁ、教えてくれ。今なら大丈夫だから。姉さんは、信頼していい人なのか? お前を……信じても、いいのか?」
ドキッとした。なににって……僕のことを、信じていいのか……?
「……いいと、思いますよ。サラさんのこと、信じても」
だから、とりあえず、わかってる答えを出す。
「だってサラさん……言ってることや、やってることは厳しいけど、でも、それも全部……僕らのためだって、どこかで分かるから。
だから、サラさんは信じて大丈夫ですよ、きっと」
「…………そうか」
微かに微笑んだあと、アリアさんは僕の目を見た。
「……お前のことは?」
「…………」
…………。
「僕には……分かりません」
自分のことを信じてもいいのか? そりゃ、約束とかは守りたいし、嘘だって極力吐かないようにはする。でも……自分が、信頼に値する人物なのかどうか、それは、分からない。
「……どう、思います?」
アリアさんは考えた。考えた末に……僕に、手を差し出した。
「え……?」
「手、握ってくれないか? やっぱり寒くてな。……ダメか?」
「いや、ダメじゃないですけど……」
「じゃ、握ってくれ」
僕は、アリアさんの左手を、右手で握る。そして、アリアさんの左側にそっと立つ。……ちょっと冷たい。でも、細くて、柔らかくて、あたたかくて……。
あぁ、女の子なんだなぁって、分かるような手で。
「……お前の手は、あったかいなぁ」
ふと、アリアさんがそういう。
「そう……ですか?」
「そうだよ。本当にあったかい。……ありがとな」
「なんですか? 急に」
「追いかけてきてくれて……ありがとう」
ふと見たアリアさんの横顔は、今にも崩れ落ちてしまいそうなほどに儚く、泣き出しそうな顔をしていた。
「私は……お前を、信じたい」
「…………」
「だから、信じても大丈夫だって、言ってくれ。裏切らないって……絶対、裏切らないって、言ってくれ」
僕だって……アリアさんを裏切りたくなんてない。
「…………当たり前じゃないですか。何で僕が、アリアさんのこと、裏切らないといけないんですか」
「……本当に、大丈夫なんだな?」
不安そうに揺れる、赤い瞳が優しい。
「大丈夫ですよ」
少しだけ、雨が弱まってきた。僕は繋いだ手を軽く引いて、アリアさんに、できるだけ明るく笑いかける。
「帰りましょうか。雨も弱まりましたし。あんまりながいこと外にいたら、またポロンくんとフローラに怒られちゃいます」
アリアさんは、それに答えるように、少し強く手を握り返した。
「……あぁ、そうだな」
僕らは傘を持ち合わせていなかったので、ずぶ濡れになって歩く他なかった。
「……、くしゅっ……」
「アリアさん……? 大丈夫ですか? 寒いんじゃ」
「……大丈夫だよ。心配しなくても」
にこりと微笑んでみせるが、自分の腕をさすり、寒さに身震いする。僕は少し辺りを見渡して、少し薄暗い路地を指差した。
「あそこ、家の屋根で少し雨宿りできそうですよ」
「いや、別に平気だから」
「でも、ちょっと寒くなってきたし、僕も走って疲れたんで。休んでいきません?」
すると、はぁ、と、深くため息をついて、アリアさんが笑った。
「全く……しょうがないな、お前は」
諦めたようにそういうと、路地の方へと向かった。そして、屋根の下に入り、アイテムボックスからタオルを取り出すと、濡れた髪や、体を拭く。
どこをどう見たらいいのか分からなくて、僕はなんとなく空を見上げた。
未だに雨はざんざん降り注いでいる。僕もアリアさんと同じようにタオルを取り出して体を拭いた。完全にとはいかないが、いくらか楽になった。
「そういえば……スラちゃんはどうした?」
タオルを片手に持ったまま、アリアさんが訊ねる。もちろん、どこかで落としてきたとか、そんなことはない。
「城を出るとき、ポロンくんの肩に飛び移ってましたよ。僕の肩に乗ってたら、振り落とされると思ったっぽくて」
「そうか。ならよかった」
しばらくの間が空く。お互いに、何を話したらいいのか、分からなかった。
「……なぁ、ウタ」
「なんですか?」
「…………」
「どうしたんですか……?」
少しためらいながらも、アリアさんは、はっきりと口にした。
「私は……信じて、いいんだよな?」
「え……?」
「姉さんを」
そして、足元を見つめる。水溜まりになっているそこは、雨が降る度にわっかが生まれ、色を、形を、変えている。
「姉さんは……信じてくれているのかな、私たちを」
「…………」
「もう分からない。昔から信じていたそれが本当なのか、今の……この状態が、本物なのか」
……この国に来てから、アリアさんは、それまで僕らに見せなかった色んな顔を見せている。それは、ここが安心できる場所だったからかもしれない。
無防備に笑ったり、泣いたり、怒ったり……。でも、もしもそこが信頼してはいけない場所で、本当は笑ってなんていけない場所で、国王も女王も、サラさんも、信じてはいけない人だったなら……?
「……ディランが、前に言っていたんだ。人を簡単に信じすぎだって。
なぁ、教えてくれ。今なら大丈夫だから。姉さんは、信頼していい人なのか? お前を……信じても、いいのか?」
ドキッとした。なににって……僕のことを、信じていいのか……?
「……いいと、思いますよ。サラさんのこと、信じても」
だから、とりあえず、わかってる答えを出す。
「だってサラさん……言ってることや、やってることは厳しいけど、でも、それも全部……僕らのためだって、どこかで分かるから。
だから、サラさんは信じて大丈夫ですよ、きっと」
「…………そうか」
微かに微笑んだあと、アリアさんは僕の目を見た。
「……お前のことは?」
「…………」
…………。
「僕には……分かりません」
自分のことを信じてもいいのか? そりゃ、約束とかは守りたいし、嘘だって極力吐かないようにはする。でも……自分が、信頼に値する人物なのかどうか、それは、分からない。
「……どう、思います?」
アリアさんは考えた。考えた末に……僕に、手を差し出した。
「え……?」
「手、握ってくれないか? やっぱり寒くてな。……ダメか?」
「いや、ダメじゃないですけど……」
「じゃ、握ってくれ」
僕は、アリアさんの左手を、右手で握る。そして、アリアさんの左側にそっと立つ。……ちょっと冷たい。でも、細くて、柔らかくて、あたたかくて……。
あぁ、女の子なんだなぁって、分かるような手で。
「……お前の手は、あったかいなぁ」
ふと、アリアさんがそういう。
「そう……ですか?」
「そうだよ。本当にあったかい。……ありがとな」
「なんですか? 急に」
「追いかけてきてくれて……ありがとう」
ふと見たアリアさんの横顔は、今にも崩れ落ちてしまいそうなほどに儚く、泣き出しそうな顔をしていた。
「私は……お前を、信じたい」
「…………」
「だから、信じても大丈夫だって、言ってくれ。裏切らないって……絶対、裏切らないって、言ってくれ」
僕だって……アリアさんを裏切りたくなんてない。
「…………当たり前じゃないですか。何で僕が、アリアさんのこと、裏切らないといけないんですか」
「……本当に、大丈夫なんだな?」
不安そうに揺れる、赤い瞳が優しい。
「大丈夫ですよ」
少しだけ、雨が弱まってきた。僕は繋いだ手を軽く引いて、アリアさんに、できるだけ明るく笑いかける。
「帰りましょうか。雨も弱まりましたし。あんまりながいこと外にいたら、またポロンくんとフローラに怒られちゃいます」
アリアさんは、それに答えるように、少し強く手を握り返した。
「……あぁ、そうだな」
0
あなたにおすすめの小説
3点スキルと食事転生。食いしん坊の幸福無双。〜メシ作るために、貰ったスキル、完全に戦闘狂向き〜
幸運寺大大吉丸◎ 書籍発売中
ファンタジー
伯爵家の当主と側室の子であるリアムは転生者である。
転生した時に、目立たないから大丈夫と貰ったスキルが、転生して直後、ひょんなことから1番知られてはいけない人にバレてしまう。
- 週間最高ランキング:総合297位
- ゲス要素があります。
- この話はフィクションです。
【本編完結】転生令嬢は自覚なしに無双する
ベル
ファンタジー
ふと目を開けると、私は7歳くらいの女の子の姿になっていた。
きらびやかな装飾が施された部屋に、ふかふかのベット。忠実な使用人に溺愛する両親と兄。
私は戸惑いながら鏡に映る顔に驚愕することになる。
この顔って、マルスティア伯爵令嬢の幼少期じゃない?
私さっきまで確か映画館にいたはずなんだけど、どうして見ていた映画の中の脇役になってしまっているの?!
映画化された漫画の物語の中に転生してしまった女の子が、実はとてつもない魔力を隠し持った裏ボスキャラであることを自覚しないまま、どんどん怪物を倒して無双していくお話。
設定はゆるいです
悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる
竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。
評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。
身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。
御家騒動なんて真っ平ごめんです〜捨てられた双子の片割れは平凡な人生を歩みたい〜
伽羅
ファンタジー
【幼少期】
双子の弟に殺された…と思ったら、何故か赤ん坊に生まれ変わっていた。
ここはもしかして異世界か?
だが、そこでも双子だったため、後継者争いを懸念する親に孤児院の前に捨てられてしまう。
ようやく里親が見つかり、平和に暮らせると思っていたが…。
【学院期】
学院に通い出すとそこには双子の片割れのエドワード王子も通っていた。
周りに双子だとバレないように学院生活を送っていたが、何故かエドワード王子の影武者をする事になり…。
第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。
黒ハット
ファンタジー
前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。
悪徳領主の息子に転生しました
アルト
ファンタジー
悪徳領主。その息子として現代っ子であった一人の青年が転生を果たす。
領民からは嫌われ、私腹を肥やす為にと過分過ぎる税を搾り取った結果、家の外に出た瞬間にその息子である『ナガレ』が領民にデカイ石を投げつけられ、意識不明の重体に。
そんな折に転生を果たすという不遇っぷり。
「ちょ、ま、死亡フラグ立ち過ぎだろおおおおお?!」
こんな状態ではいつ死ぬか分かったもんじゃない。
一刻も早い改善を……!と四苦八苦するも、転生前の人格からは末期過ぎる口調だけは受け継いでる始末。
これなんて無理ゲー??
バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。
その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。
「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
侯爵家の愛されない娘でしたが、前世の記憶を思い出したらお父様がバリ好みのイケメン過ぎて毎日が楽しくなりました
下菊みこと
ファンタジー
前世の記憶を思い出したらなにもかも上手くいったお話。
ご都合主義のSS。
お父様、キャラチェンジが激しくないですか。
小説家になろう様でも投稿しています。
突然ですが長編化します!ごめんなさい!ぜひ見てください!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる