チート能力解放するにはヘタレを卒業しなきゃいけない

植木鉢たかはし

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声にならない声を聞いて

青い髪

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 それから時間がたって、夜になった。僕らは食事をとるためにダイニングに集まっていた。
 エヴァンさんにあんなことがあって、まだ時間がたっていない。警備、護衛用として何十人もの騎士がお屋敷の周りを固めている。中にも何人か立っているし……やはり、どこか物々しい。

 食事は昨日と同じく出張五月雨の料理だ。彰人さんが厨房で料理しているが、そこにも監視がいるらしい。気が散ってしょうがないと文句を言っていた。


「…………」


 口数は、多いとは言えない、必要なことを口にして、それ以外はみんな一人でなにか考え込んでいる。それは、僕もアリアさんも……。
 アリアさんの前では、決して口にはしない。けれど、やはりみんな、考えているのだ。

 ――エヴァンさんを殺したのは、誰なのか。

 その答えを求める上で僕が気になっているのは、おさくさんの言葉。確か、『青い髪に気をつけろ』みたいなことだったと思う。


(青い髪、か……)


 そりゃ日本と違うから、見渡せばみんなカラフルな色の髪をしている。無論、青い髪の人だってたくさんいるわけで。ただ『青い髪だから』ってだけで疑えないのだ。


 そのとき、コンコン、と、どこかの扉を叩くような音が聞こえた。音がした方を見ると、どうやら表の方らしい。正面の門の方から音がした気がする。


「……ん? 誰か、来たのか?」

「騎士の方でしょうか? 僕、見てきますよ」


 僕がそう言って立ち上がろうとすると、それをエドさんが止めた。


「…………騎士じゃない」

「え?」

「警備につけてるのは、信頼のおける、俺の部隊のやつらだ。そいつらなら、ノックの仕方で誰なのかわかる。でも……今のは、誰でもなかった」

「じゃ、じゃあ……」

「……俺が見てこよう」


 そう言って、剣を抜き、そのままダイニングを出て、正門のほうへと歩いていった。


「……エド…………」


 アリアさんが、そう心配そうに呟く。そして、エドさんがダイニングを出てから、ほんの数秒後のことだった。
 外で、なにかが叩きつけられるような、強い衝撃音が響いた。その衝撃はそのまま屋敷に伝わり、壁が揺れ、パラパラと壁の欠片が落ちる。


「エドっ……?!」


 アリアさんが飛び出すよりも先に、僕は外に出た。ダイニングを飛び出し、門を押して開き、そして、目を見開く。
 僕がそこで見たのは、闇魔法で出来た鎖で、壁に押さえつけられるように、地面に足もつかないまま首を締め上げられるエドさんと、それを嘲笑するように笑う術師の姿だった。


「エドさんっ!」

「……あれ、」


 その人は僕を見ると、闇魔法を解除した。突然解放されたエドさんは重力に従い、そのまま真っ直ぐ地面に落とされ、くぐもった声をあげた。


「ぐっ……」

「もっと強い人、いたんだ」

「エドさん! 大丈夫ですか!?」

「逃げっ……こいつ、つよ……いぞ」


 ……かなり無理をしたみたいだ。首もとにはくっきりと鎖のあとが残っている。体にも叩きつけられた傷が無数にある。……僕が何とかしなきゃ。


「……目的が果たせないので、とっとと死んでくれるかなぁ? ファイヤランス」


 飛んでくる無数の炎の槍。とっさに避けようとしたエドさんは飛び出し損ねた。
 僕しかいない。今ここには、僕しか!


「っ、シエルト!」


 灼熱の槍が、真っ白いバリアに弾かれる。なぜシエルトが使えたのか、それは分からないが、恐らく『勇気』だ。シエルトが破られることはなかったので、僕はひと安心した。……と思ったが、そうでもなかった。


「おい! なにがあった!」


 視線の先には、アリアさんがいた。その場を見て混乱しながらも、エドさんに駆け寄り、回復魔法をかける。


「ケアル……おいウタ、なにがあった!?」

「それが」

「あぁ……! やっと、やっとだ……!」


 突如、男が嬉しそうに声をあげた。狂気にまみれたその声に、ぞくりと体が震えた。


「会いたかったよ、アリア」

「…………お前は、誰だ」

「私かい? 私はアリアの婚約者だよ」


 ……何をいってるんだこいつ。思えば、青い髪に紫の瞳。容姿の条件はクリアしている。が、この人のことをアリアさんが好きになるなんて、そんなの考えられなかった。


「何をいっている。私の婚約者はディラン・キャンベルただ一人。お前じゃない。
 エドを助けなくちゃならない。帰ってくれ」


 それから、男から目をそらすと、僕に声をかける。


「ウタ、エドに肩を貸してやってくれ」

「アリアさん……」

「大丈夫。まだ死んでいない。死んでいないなら、助けられる」


 そして、アリアさんがエドさんを助けようと、完全に男に背を向けた瞬間だった。


「なぁんだ。結局君は、私のことを見てくれないんだね。君に見てもらうために、髪を染めて、瞳の色も変えて……。

 ――国王さえも、殺したというのに」


 辺りの空気が凍りつく。僕は、自分の心臓が跳ね上がるのを感じた。……この人が、エヴァンさんを殺した。この人が殺した。この人が、エヴァンさんを、エヴァンさんは、この人に――。


「アイスランスっ!」


 瞬間、僕の横を氷の槍が通りすぎた。槍は的を逸れ、奥にある門にぶつかり消える。振り向くと、アリアさんは肩で息を切りながら、体を震わせながら、瞳を潤ませながら、手のひらを彼に向けていた。
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