チート能力解放するにはヘタレを卒業しなきゃいけない

植木鉢たかはし

文字の大きさ
136 / 387
声にならない声を聞いて

恨み

しおりを挟む
「……やぁ、やっと見てくれたね、アリア」

「気安く名前を呼ぶなっ!」


 アリアさんは叫びながら剣を手に持つ。剣の先はぶるぶると震え、その震えを押さえるように、左手で右手を押さえる。


「あ、アリアさん! 危ないですよ!」


 なんたって、エドさんがやられた人だ。詳しいステータスは知らないけど、エドさんだってマルティネスの騎士だ。強いはずなのだ。
 しかしアリアさんは僕の話を聞いていない。いや……聞こえていない、というのが正しいかもしれない。僕は、万が一の時のために身構えた。


「どうしてだい? アリア。私はただ、君に愛してほしいんだよ」

「黙れ……! 黙れ黙れ黙れっ!! …………人殺し」


 アリアさんの恨みが、溢れ出す。


「人殺しっ! 父上をっ……父上を返せっ!」


 そうして振り下ろされた剣は、むなしく空を切る。そのまま、アリアさんの右腕は彼に捕らえられた。


「アリアっ、様……!」

「やっ……は、離せ……離せ人殺しっ! 私にさわるなっ! 私の前から消えろっ!」


 アリアさんを見る彼の目は、狂喜に満ちている。僕は背筋がぞくりと凍るのを感じた。
 なんなんだ……こいつ。


「あぁ……アリア、君は本当に美しいよ……。この白い肌、赤い瞳に唇、金色の髪はキラキラと輝いて……。
 そんな君を、血で汚したくて仕方なかったんだ」

「っ!」


 彼は右手にナイフを持ち、アリアさんに突き立てようとした。が、それは敵わない。僕だって黙ってみてられるわけないんだから。


「シャインランスっ!」


 光の槍は的確に男の右腕をとらえた。思わずといった感じでアリアさんから離れたのをいいことに、僕は左手でアリアさんの手を引き、男から引き剥がした。


「ウタ…………っ」

「下がっててください」


 こくりと頷いたアリアさんを見て、僕はわずかに微笑むと、彼に剣の先を向けた。


「あっははは! バカだなぁ。私を恨んだって、どうしようもないんだよ? だって、そもそもこの結果を生んだのはアリア自身じゃないか!」

「ぇ……」

「何、言ってるんですか……。アリアさんは何も!」

「君が身勝手に国を出てしまっていたから、私は君を探し出すことが出来なくなってしまったんだよ。どうにかして呼び戻そうとしたんだ。それで、思ったのさ。
 ……父親が死ねば、帰ってくるだろうなぁって」


 僕の後ろで、アリアさんが震える気配がする。


「わ……私が、ここに、いれば……。私が、身勝手なことを、しな、ければ……?」

「アリア様! ……それは、ちが……」


 と、屋敷の中からエマさんが出てくる。一瞬にして事を察したエマさんは、がくがくと震えるアリアさんの体を後ろから抱き締め、そして、彼を睨み付ける。


「アリアっ……!
 ……なるほど、あなたね。国王を殺したのは」

「そうさ。すべては、アリアの心を手に入れるためさ」

「心を手にいれる……ですって? 笑わせてくれるわね。
 さっさと消えなさい。そうでなければ、私があなたを徹底的に潰す」


 すると、その人は嘲笑うように声をあげ、そして、紫色の瞳を真っ黒に光らせる。


「そーかいそーかい! へぇ、私を倒せると思っていると。はははっ! 面白い」


 そして、後ろを向き、にたりと不気味に笑う。


「アリアにも消えろと言われてしまったからね、一旦は身を引こう。私はミーレス。また来るよ。以後、お見知りおきを」


 そうして、そのまま消えてしまった。……ミーレス。エヴァンさんを、殺した人。


「アリアっ!」


 エマさんが叫ぶ。その声に振り返ると、ミーレスが消えたことで緊張の糸が切れてしまったのか、気を失い、倒れてしまったアリアさんがいた。


「エマさんっ! ……アリアさんは?」

「……ひどい熱があるわ」

「俺が、お部屋までお連れしましょうか?」


 壁に手をつきながら、フラフラしながらエドさんが言う。


「エドさんは休んでくださいよ。さっき、かなり無理してたじゃないですか」

「俺は回復薬も持っている。それを飲めば大丈夫です」


 そう言って回復薬を取り出すが、本当に大丈夫なのか? なんとなくエドさんからアリアさんと同じオーラを感じる。

 それに……目の前の光景に囚われていたから忘れていたけど、あいつがこの場所に来てエドさんと対峙したということは、他の護衛についていた騎士の人たちもやられてしまっているということだ。


「……なら、回復薬飲んだあとに他の騎士の人たちを助けてあげてください。そっちは僕らじゃ無理なので」


 いいながら、僕はエドさんと回復薬をこっそりと鑑定する。



名前 エド

種族 人間

年齢 49

職業 騎士

レベル 89

HP 8767/15000

MP 8000

スキル アイテムボックス・剣術(超上級)・体術(超上級)・威圧(上級)・初級魔法(熟練度7)・光魔法(熟練度6)・炎魔法(熟練度5)・雷魔法(熟練度5)・土魔法(熟練度5)・回復魔法(熟練度4)

ユニークスキル 剣術の心得

称号 王室騎士団長・剣術の申し子・騎士の鑑



 色々と見るのは今はやめておこう。エドさんがもってる回復薬は、せいぜいHP2000くらいしか回復できない。
 僕はアイテムボックスからテラーさんにもらった回復薬を取り出して、エドさんに渡した。


「これ飲んでくださいよ。これ、一本丸々で300000回復するんで、7000くらい余裕で回復しますから。そしたら、全回復できますよね」

「お前なんで俺のステータス……まさかレベル90以上」

「詳しくはあとで話します。とりあえずこれ、貰い物なんですけど使ってください」


 少し黙ったあと、エドさんは回復薬を受け取って外に向かった。


「ウタくん……。アリアを部屋につれてくの手伝ってくれる?」

「はい」


 恐る恐る抱きあげたアリアさんの体は、異常なほどに軽かった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

3点スキルと食事転生。食いしん坊の幸福無双。〜メシ作るために、貰ったスキル、完全に戦闘狂向き〜

幸運寺大大吉丸◎ 書籍発売中
ファンタジー
伯爵家の当主と側室の子であるリアムは転生者である。 転生した時に、目立たないから大丈夫と貰ったスキルが、転生して直後、ひょんなことから1番知られてはいけない人にバレてしまう。 - 週間最高ランキング:総合297位 - ゲス要素があります。 - この話はフィクションです。

【本編完結】転生令嬢は自覚なしに無双する

ベル
ファンタジー
ふと目を開けると、私は7歳くらいの女の子の姿になっていた。 きらびやかな装飾が施された部屋に、ふかふかのベット。忠実な使用人に溺愛する両親と兄。 私は戸惑いながら鏡に映る顔に驚愕することになる。 この顔って、マルスティア伯爵令嬢の幼少期じゃない? 私さっきまで確か映画館にいたはずなんだけど、どうして見ていた映画の中の脇役になってしまっているの?! 映画化された漫画の物語の中に転生してしまった女の子が、実はとてつもない魔力を隠し持った裏ボスキャラであることを自覚しないまま、どんどん怪物を倒して無双していくお話。 設定はゆるいです

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

御家騒動なんて真っ平ごめんです〜捨てられた双子の片割れは平凡な人生を歩みたい〜

伽羅
ファンタジー
【幼少期】 双子の弟に殺された…と思ったら、何故か赤ん坊に生まれ変わっていた。 ここはもしかして異世界か?  だが、そこでも双子だったため、後継者争いを懸念する親に孤児院の前に捨てられてしまう。 ようやく里親が見つかり、平和に暮らせると思っていたが…。 【学院期】 学院に通い出すとそこには双子の片割れのエドワード王子も通っていた。 周りに双子だとバレないように学院生活を送っていたが、何故かエドワード王子の影武者をする事になり…。  

第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。

黒ハット
ファンタジー
 前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。  

悪徳領主の息子に転生しました

アルト
ファンタジー
 悪徳領主。その息子として現代っ子であった一人の青年が転生を果たす。  領民からは嫌われ、私腹を肥やす為にと過分過ぎる税を搾り取った結果、家の外に出た瞬間にその息子である『ナガレ』が領民にデカイ石を投げつけられ、意識不明の重体に。  そんな折に転生を果たすという不遇っぷり。 「ちょ、ま、死亡フラグ立ち過ぎだろおおおおお?!」  こんな状態ではいつ死ぬか分かったもんじゃない。  一刻も早い改善を……!と四苦八苦するも、転生前の人格からは末期過ぎる口調だけは受け継いでる始末。  これなんて無理ゲー??

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

侯爵家の愛されない娘でしたが、前世の記憶を思い出したらお父様がバリ好みのイケメン過ぎて毎日が楽しくなりました

下菊みこと
ファンタジー
前世の記憶を思い出したらなにもかも上手くいったお話。 ご都合主義のSS。 お父様、キャラチェンジが激しくないですか。 小説家になろう様でも投稿しています。 突然ですが長編化します!ごめんなさい!ぜひ見てください!

処理中です...