チート能力解放するにはヘタレを卒業しなきゃいけない

植木鉢たかはし

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声にならない声を聞いて

特殊職

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「あ、アリア、ちゃんと食べられたのね」


 僕が空になったお皿を持ってくると、エマさんが食器を洗いながらそう笑う。


「まぁ、あのときは熱もあって食欲ないみたいでしたからね。昨日今日は食べられてるんで、体力の回復も早くなるはずですよ!」


 エマさんは、あの日からアリアさんの顔を見ていないようだ。アリアさんが会いたがらないからというのが主な理由だが、その意思を尊重し続けると言うのもなかなかだ。エマさんだって、アリアさんのことが心配なはずなのに……。
 台所にならんで、一緒にお皿を洗う。洗いながら、僕はさっきの会話を思い出して、こんなことを聞いてみた。


「アリアさんのお母さんって、蘇生師だったんですよね?」

「なぁに、急に」


 そんな風に笑いながらも、エマさんはうなずいた。


「そうよ。世界で一人だけの、ね」

「かなり特殊ですよねー、そういうの。普通は……えっと、僕が見たことあるのだと、村人とか、冒険者とか、そういうのばっかりで。そもそも世界に一人だけなんて」

「そりゃそうよ。蘇生師は特殊職だもの」

「特殊職? ……特殊な職業ってことですか?」


 洗剤の泡を水で洗い流す。水をきって食器をかごに立てていく。あまり数は多くなかったから、あっという間に終わった。
 終わってしまうと、エマさんは置いてあったふきんで手を拭き、テーブルの椅子に腰かける。僕も同じように手を拭いて、椅子に座った。


「そうそう、特殊職業。単純に数が少ないとかそういうのじゃなくて、なるために条件が何重にもあったりとか、なり方が分からなかったりとか、そもそも存在しているのかすら怪しいのとか。そういうののことをいうの」

「へぇ……。例えば、どんなのがあるんですか?」


 少し顎に手を当てて考えたあと、エマさんが言う。


「例えば……そうね、『勇者』なんてのは特殊職よ。存在はしていたけれど、その職に就くための手順とかは誰も知らない。本人もね」


 そういえば個性の塊'sは勇者パーティーだったんだよな。急に神様に呼び出されたとかで。……確かに、なり方は分からない。


「あとは『翻訳師』とかね。言語能力に異常なほど長けていて、全世界の言葉どころか、魔物や動物、植物の言葉まで分かるなんて言われてるわ」

「へぇー! それすごいですね!」

「私も会ったことないのだけど、会えたら、仕事を頼みたいわ。会話してみたい子がいるのよ」

「……魔物ですか?」

「まさか。魔物じゃないわよ」


 よ、よかった。エマさんのことだから魔物とかと話しててもおかしくないような気がしてしまった。杞憂だったか。


「鬼よ」

「わぁーお」


 逆にもっとすごいのきた。あ、あれか。疑心暗鬼の鬼さんか。そういえば鬼とか使役できましたねこの人。


「いざということもあるだろうし、一度話してみたくてね」

「でもまぁ……気持ちは分かりますけどね」


 僕もスラちゃんと話してみたいし。……スラちゃんもドラくんみたいにお話しできたらいいのになぁ。


「スラちゃんのこと? でも、ウタくんはスラちゃんの言ってること、分かるんだと思ってたわ」

「なんとなくですよ。アリアさんとは違いますし、ちゃんと一言一句分かってる訳じゃないです」

「アリアのは分かるのね」

「まぁ……はい」


 このときエマさんの頭に過ったのは、やはりアリアさんへの心配だろう。僕だって逆の立場だったら心配で心配で仕方なかったと思う。


「まぁ、そんな感じでね。特殊職は山のようにあるわ。こういう職業ないかなーって思い付くものはきっと全部あると思うの。
 人によっては、神様も特殊職の発展型か、その一つなんじゃないかって言ってるくらいなのよ」

「へぇ……」


 ……僕を送り出した神様は、今、どこで何をしているんだろう? 僕みたいな人をどこかに送り出しているのかな? それとも、なにもせずにぼんやりとこっちを見ているのかな? それか、ペットに餌やったりとか?

 個性の塊'sは、言動から察するに、なんどか神様と会っているようだ。まぁ、あんな人たちを放っておくわけにもいかないってのも理由としてあったのかもしれないが、それでも僕は、神様に会えるのが、少なからず羨ましかった。


「……僕、神様ともう一回会ってみたいです」

「どうしたの急に」


 エマさんは少しからかうようにそう言って笑ったけど、僕は真剣だった。


「色々聞きたいことがあります。どうして僕を転生させたのかー、とか。どうして何も言ってくれなかったのかー、とか。
 もしかして転生初日にドラゴンと出くわしたのはわざと?! とか。聞きたいこと一杯あるんです。僕の『使命』とか『役割』についても、僕はなにも聞かされていませんから」


 それに……と、僕は言おうとして、躊躇ってしまって、声に出すのはやめた。

 ……本当に僕の神様が神様だったなら、どうか教えてほしい。

 自分を犠牲にして笑うアリアさん。
 責任を感じつつも、必死に前に進もうとしていたアリアさん。
 一つの壁を壊して、外に出たアリアさん。

 そんなアリアさんが、なぜ、こんな想いをしなければならないのか。


 神様なら…………知ってる、でしょう?

 アリアさんになにか罪があるのか?
 ないならなんで?
 なんでここまで……アリアさんを追い詰める必要があるんですか。
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