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声にならない声を聞いて
私の意思
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……嫌だ。止めてくれ。
鎖をめいっぱい引っ張って、外を見る。ミーレスとウタは激しく打ち合っている。ミーレスの真っ赤な炎と、透き通ったウタの水と。美しくも残酷に、それはウタに襲いかかる。
……同じ能力だから、イコール均衡した戦いになるわけではない。剣術や魔法の質はミーレスの方が上だ。その差は、大きい。
さらに、ウタの一番の強みである光魔法と反発する闇魔法。熟練度までは分からないが、あのとき街を襲ったときの様子を見ると、9か10くらいはあるだろう。
このままだと、いずれウタは殺されてしまう……。それも、父上のように、あまりにも無惨に、残酷に。もしかしたら、もっと酷く…………。
(……鎖、壊してもらえばよかった)
鎖のせいで動けない。剣は、ミーレスが残していったのが置いてある。動ければなんとか出来たかもしれないのに……私はそれを、資格がないからと拒絶してしまった。
それでもこの距離なら……肉眼で二人を見ることができるこの距離なら、鎖はちぎれずとも魔法なら届くかもしれない。雷魔法なら麻痺させることもできる。どうにかしてウタに加勢して…………。
「…………」
――どうして。
どうして……声が、出ない。これじゃあ魔法が使えない。
守るために身に付けた力を、使うことが出来ないなんて。
使うことさえできなくて、ただ味方がやられるのを、遠くから見ることしか出来ないのか?
満足に、泣くこともできなくて……。
嫌だ……嫌だ嫌だ嫌だ! ウタまで奪われたら、私は……本当に、光が見えなくなってしまう。そうすれば、舌を噛みきって死ぬことだって出来なくなるだろう。
あいつの目的がそれだったとしても、私は、そうならざるを得なくなってしまう。
「…………」
そもそも……あぁ、やっぱり私は身勝手で、わがままだ。ここから逃げる資格はない。だから動かない。でもウタを死なせたくない。傷つけたくない。助けたい。動きたい……。
声を、出したい。
悔しい。
声を出すことが出来なければ、泣けない。叫べない。助けを呼べない。自分の心を、意思を、伝えることが出来ない。
……というか、私は、何をしたいんだろう? 何を思っているんだろう?
もう、しばらく分からないままだ。
「…………」
ウタは……どうして、私の言葉が分かったのだろう?
声が出なくなり、筆談をするようになった。しかし、先程のやりとりや、声が出なくなったその日のこと、咄嗟に何か言おうとしたときなど……私が声を発せず、筆談もしなかったのに、ウタが私の言葉を理解したことは数えきれないほどある。
私自身でさえ分からない気持ちを、ウタは引き出し、口に出させてみせた。音にはなっていないのだが、言葉を聞いて、その通りに理解してくれた。正直、私はそんなこと出来るとは思わない。だって、喋っていないのだ。それなのに一言一句分かるなんて……。
一体、なぜ?
「…………」
…………答えは、とっくに出ているじゃないか。
簡単だ。そうしようと、ウタが努力したからだ。
そうしたいと、強く思ったからだ。
文字通り声にならない声を、聞こうと思ったからだ。
勇気の発動時間は、とっくに越えている。それなのにまだ戦えているというのは、勇気が継続して発動されているからだ。
それだけ、ウタの想いは強いということだ。
「…………」
――助けなければ。
ウタを、死なせるわけにはいかない。
ここまで来るのにだって、ウタは、十分すぎる努力をしてきただろう。私の、まさに目の前でボロボロにされ、意識を失い、瀕死の状態になった。……それからまだ一日も経ってたいのに、こうして私を助けに来て、ミーレスと対峙しているのだ。
それなのに、私がなにもしないわけにはいかない。
この間まで当たり前に出来ていたことだ。……出来ない理由がない。出来なきゃいけない。助けるんだ、絶対。
出来る出来ないじゃない。やらなきゃいけないんだ。
「――――っ!」
ダメだ、諦めるな! ここで諦めたら、二度と光は帰ってこない。
声を出そうとしても、息がつかえるようになって、そこから先に出てこない。たった一言が出てこない。鎖が腕に食い込む。ぷつっと皮膚が破れる感覚がした。血が滲む。
……これくらいの傷、なんだっていうんだ。助けるんだ。絶対、助けるんだ!
「――――っ! ――、――――っ!!」
諦めるな……。諦めるな……っ!
……知らないうちに、私の心は真っ黒に汚されていたのだろう。父上を殺され、エドも敵わず倒された。街を襲われ、後悔を押し付けられ、頼れるのはウタしかいない。そのウタも、一度は奪われ、閉じ込められ、無力な私は、ここで絶望する他なかった。
……でも、ウタは戻ってきてくれた。
どれだけ私が拒んでも、私を、私の幸せを、本心を望んだ。
ミーレスの炎が黒く変化する。闇魔法を含んだ炎はその威力をさらに増し、ウタに襲いかかる。あんなの、普通だったら即死だ。ウタだからこそ耐えられているだけなのであって、その魔法を受け、とても生きられるようなものじゃない。苦痛にその表情が歪む。
……それでも、私が口にすら出来ない本心のために、ウタはこうして戦っているのだ。
――諦めて、たまるか!
「……――――っ!」
自分の限界を越えろ、マルティネス・アリア!
「――――セイント、エレキテルっ!!!」
――――。
――声が――――。
目の前が白くフラッシュし、雷がミーレスの上に落ちる。
それと同時に、私の腕と、心を縛る鎖は引きちぎれた。
出来る。
今なら、なんでも出来る。
そう、直感的に思っていた。
鎖をめいっぱい引っ張って、外を見る。ミーレスとウタは激しく打ち合っている。ミーレスの真っ赤な炎と、透き通ったウタの水と。美しくも残酷に、それはウタに襲いかかる。
……同じ能力だから、イコール均衡した戦いになるわけではない。剣術や魔法の質はミーレスの方が上だ。その差は、大きい。
さらに、ウタの一番の強みである光魔法と反発する闇魔法。熟練度までは分からないが、あのとき街を襲ったときの様子を見ると、9か10くらいはあるだろう。
このままだと、いずれウタは殺されてしまう……。それも、父上のように、あまりにも無惨に、残酷に。もしかしたら、もっと酷く…………。
(……鎖、壊してもらえばよかった)
鎖のせいで動けない。剣は、ミーレスが残していったのが置いてある。動ければなんとか出来たかもしれないのに……私はそれを、資格がないからと拒絶してしまった。
それでもこの距離なら……肉眼で二人を見ることができるこの距離なら、鎖はちぎれずとも魔法なら届くかもしれない。雷魔法なら麻痺させることもできる。どうにかしてウタに加勢して…………。
「…………」
――どうして。
どうして……声が、出ない。これじゃあ魔法が使えない。
守るために身に付けた力を、使うことが出来ないなんて。
使うことさえできなくて、ただ味方がやられるのを、遠くから見ることしか出来ないのか?
満足に、泣くこともできなくて……。
嫌だ……嫌だ嫌だ嫌だ! ウタまで奪われたら、私は……本当に、光が見えなくなってしまう。そうすれば、舌を噛みきって死ぬことだって出来なくなるだろう。
あいつの目的がそれだったとしても、私は、そうならざるを得なくなってしまう。
「…………」
そもそも……あぁ、やっぱり私は身勝手で、わがままだ。ここから逃げる資格はない。だから動かない。でもウタを死なせたくない。傷つけたくない。助けたい。動きたい……。
声を、出したい。
悔しい。
声を出すことが出来なければ、泣けない。叫べない。助けを呼べない。自分の心を、意思を、伝えることが出来ない。
……というか、私は、何をしたいんだろう? 何を思っているんだろう?
もう、しばらく分からないままだ。
「…………」
ウタは……どうして、私の言葉が分かったのだろう?
声が出なくなり、筆談をするようになった。しかし、先程のやりとりや、声が出なくなったその日のこと、咄嗟に何か言おうとしたときなど……私が声を発せず、筆談もしなかったのに、ウタが私の言葉を理解したことは数えきれないほどある。
私自身でさえ分からない気持ちを、ウタは引き出し、口に出させてみせた。音にはなっていないのだが、言葉を聞いて、その通りに理解してくれた。正直、私はそんなこと出来るとは思わない。だって、喋っていないのだ。それなのに一言一句分かるなんて……。
一体、なぜ?
「…………」
…………答えは、とっくに出ているじゃないか。
簡単だ。そうしようと、ウタが努力したからだ。
そうしたいと、強く思ったからだ。
文字通り声にならない声を、聞こうと思ったからだ。
勇気の発動時間は、とっくに越えている。それなのにまだ戦えているというのは、勇気が継続して発動されているからだ。
それだけ、ウタの想いは強いということだ。
「…………」
――助けなければ。
ウタを、死なせるわけにはいかない。
ここまで来るのにだって、ウタは、十分すぎる努力をしてきただろう。私の、まさに目の前でボロボロにされ、意識を失い、瀕死の状態になった。……それからまだ一日も経ってたいのに、こうして私を助けに来て、ミーレスと対峙しているのだ。
それなのに、私がなにもしないわけにはいかない。
この間まで当たり前に出来ていたことだ。……出来ない理由がない。出来なきゃいけない。助けるんだ、絶対。
出来る出来ないじゃない。やらなきゃいけないんだ。
「――――っ!」
ダメだ、諦めるな! ここで諦めたら、二度と光は帰ってこない。
声を出そうとしても、息がつかえるようになって、そこから先に出てこない。たった一言が出てこない。鎖が腕に食い込む。ぷつっと皮膚が破れる感覚がした。血が滲む。
……これくらいの傷、なんだっていうんだ。助けるんだ。絶対、助けるんだ!
「――――っ! ――、――――っ!!」
諦めるな……。諦めるな……っ!
……知らないうちに、私の心は真っ黒に汚されていたのだろう。父上を殺され、エドも敵わず倒された。街を襲われ、後悔を押し付けられ、頼れるのはウタしかいない。そのウタも、一度は奪われ、閉じ込められ、無力な私は、ここで絶望する他なかった。
……でも、ウタは戻ってきてくれた。
どれだけ私が拒んでも、私を、私の幸せを、本心を望んだ。
ミーレスの炎が黒く変化する。闇魔法を含んだ炎はその威力をさらに増し、ウタに襲いかかる。あんなの、普通だったら即死だ。ウタだからこそ耐えられているだけなのであって、その魔法を受け、とても生きられるようなものじゃない。苦痛にその表情が歪む。
……それでも、私が口にすら出来ない本心のために、ウタはこうして戦っているのだ。
――諦めて、たまるか!
「……――――っ!」
自分の限界を越えろ、マルティネス・アリア!
「――――セイント、エレキテルっ!!!」
――――。
――声が――――。
目の前が白くフラッシュし、雷がミーレスの上に落ちる。
それと同時に、私の腕と、心を縛る鎖は引きちぎれた。
出来る。
今なら、なんでも出来る。
そう、直感的に思っていた。
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