チート能力解放するにはヘタレを卒業しなきゃいけない

植木鉢たかはし

文字の大きさ
225 / 387
おばけ? 妖怪? 違います!

人影

しおりを挟む
 おさくさんとの一件、気になることは多かったけど、ひとまず忘れよう。塊'sのことだ。最終的に、僕らに悪いようにはしないだろう。そう、どこかで過信していたのかもしれない。

 そんな僕らが向かったのは森の中。ギルドで依頼も受けてきたのだ。B級になっているから、受けることができる依頼は山ほどある。その中で、僕らが……僕が選んだのは、森の魔物討伐!


「……ウタ。お前は本当にぶれないなぁ」

「本当に……大丈夫かな? ぼくが言うのも変だけど」


 ……なわけないです。僕が自ら進んで魔物討伐を選ぶなんてまずあり得ないです。
 いくら最初に比べて戦うことや、魔法と剣を扱うことになれたって、僕はやっぱり、出来る限りなにも殺したくない。それが魔物でも、だ。

 選んだのは『薬草採集 個数(100)』というものだ。報酬は金貨2枚。なかなかだ。でも、薬草は高く売れるそうだから、妥当な値段より少し安めかもしれない。
 鑑定で群生しているところを見つけて、みんなで一生懸命採集しています!


「そういえばウタ殿」

「ん? なぁにドラくん」


 ドラくんは少し僕に近づき、控えめに声をかける。


「アリア殿が捕らえられていたときだと思うのだが……」

「……あぁ、うん」


 だから小声で……でもなんだろう。今さら……。


「お主に遣えたワイバーンたちはどうするつもりだ?」

「あー、えっとね……ん? ワイバーン?」

「戦って助けたのだろう? ずいぶん感謝していたぞ? 正気を取り戻すことも出来たし、ミーレスを倒してくれたお陰で自分達を縛っていた鎖も簡単にちぎれるようになって逃げられたってな」

「待ってドラくん僕……使役したつもりなかったんだけど。え? じゃあ例えば……例えばだよ? 今呼べば来ちゃうの?」

「来るぞ? まぁ、名前はつけられていないから正規の主従関係とは違うがな。あいつらはお主に誠意をもって接するだろう」

「……? なんの話をしているんだ?」


 この話は……悪いけど、アリアさんにも聞いてもらわないとダメだな。僕はみんなを集め、ざっくりと今ドラくんから聞いたこと、あのとき、あの場所で起こったことを話した。


「え……ウタさん、そろそろすごくないですか? 使役している魔物がスライムとダークドラゴンとワイバーン×5って……ドラゴンキラーじゃないんですから」

「しかもそのうち二体は人になってるしな」

「それは僕のせいじゃない」


 まぁどちらにせよ、使役したくない理由もないんだよなぁ。せっかく慕ってくれてるんだし、僕にとっての利点も多い。


「僕は使役しようかなーって思うんですけど、どう思います?」

「いいんじゃないのか? そもそも、決めるのはお前だ」

「じゃあ使役しよう……。さすがにここで呼んだらまずいよね」

「クラーミル内の森だからな。まずいだろ」

「今度船で海に出ましょうか! 海上なら誰の迷惑にもなりませんし」

「そうだね。じゃあ、次海に出ることがあったらその時に使役するよ。
 ドラくん、その子達に伝えることってできたりするのかな?」

「今から我が行ってこようか? ここからマルティネスならば10分もかかるまい」

「え、人じゃん! 大丈夫なのドラくん」

「ポロン殿。心配には及ばん。向こうの川を下っていけば5分ほどで海に出られる。そこから元の姿でマルティネスまで戻ればいいことだ」

「なるほど、そういうことか」

「して、どうするウタ殿」

「うん、じゃあお願いしようかな。ドラくんから僕らのいる場所は分かるの?」

「ウタ殿のいるところならな」

「それじゃ、問題なしっと。お願い!」

「では行ってくる」


 にこりと微笑み、ドラくんはたたっと川の方に走っていった。そしてすぐに見えなくなる。
 さすがドラくん。人間になってもけた違いに強そうだ。……個性の塊'sはその更に上を余裕で行くのだけれど。

 ……その時不意に、突き刺さるような視線を感じた。
 咄嗟に後ろを振り向くが、誰もいない。今のは……なんだったんだろう。視線だけしか感じ取ってはいないが、そこから確実に伝わる『悪意』そしてそれは確実に……


「……ウタ?」


 スラちゃんに向けられていたものだった。それに気づかなかったのか、スラちゃんは僕に近づき、下から顔を覗き込む。水色の、スライム色の優しい瞳に、不安げな僕の顔が映り込む。


「大丈夫? なんか、怖い顔してたよ……?」

「いや……うん、大丈夫」


 答えたところで、また視線を感じて振り向く。そこには、一つの人影があった。
 ……どこかで見た、人影だ。あぁそうだ。確かギルドの野次馬の中にいた男性だ。でもなんで? どうして僕らつけてくる? あのとき特にめぼしい情報なんて……。

 …………スラちゃんが、僕の腕をぎゅっと、少し痛いくらいにつかんだ。ハッとして振り向くと、その体はガクガク震え、小さな体で、僕に助けを求めているのがわかった。
 僕はその目の前にしゃがみこみ、視界を隠すようにスラちゃんを抱き締めた。


「ウタ……ウタ……。ぼく、あの人、やだ…………!」

「大丈夫、大丈夫だよ。僕がいるから。守ってあげるから、大丈夫だよ……」

「ウタ……、スラちゃん……? どうした、なにかあったか?」

「……アリア姉、あの人」


 ポロンくんがその人に目をやると、その人はパッと後ろを振り返り、そのまま走り出した。


「あっ……!」

「ポロン、追いかけよう!」

「おう! アリア姉たちはそこにいて! なんかあったら蔦伸ばすから!」

「分かった……!」


 ガクガク震えるスラちゃんを抱き締めたまま、僕は二人の背中を見送った。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

3点スキルと食事転生。食いしん坊の幸福無双。〜メシ作るために、貰ったスキル、完全に戦闘狂向き〜

幸運寺大大吉丸◎ 書籍発売中
ファンタジー
伯爵家の当主と側室の子であるリアムは転生者である。 転生した時に、目立たないから大丈夫と貰ったスキルが、転生して直後、ひょんなことから1番知られてはいけない人にバレてしまう。 - 週間最高ランキング:総合297位 - ゲス要素があります。 - この話はフィクションです。

【本編完結】転生令嬢は自覚なしに無双する

ベル
ファンタジー
ふと目を開けると、私は7歳くらいの女の子の姿になっていた。 きらびやかな装飾が施された部屋に、ふかふかのベット。忠実な使用人に溺愛する両親と兄。 私は戸惑いながら鏡に映る顔に驚愕することになる。 この顔って、マルスティア伯爵令嬢の幼少期じゃない? 私さっきまで確か映画館にいたはずなんだけど、どうして見ていた映画の中の脇役になってしまっているの?! 映画化された漫画の物語の中に転生してしまった女の子が、実はとてつもない魔力を隠し持った裏ボスキャラであることを自覚しないまま、どんどん怪物を倒して無双していくお話。 設定はゆるいです

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

御家騒動なんて真っ平ごめんです〜捨てられた双子の片割れは平凡な人生を歩みたい〜

伽羅
ファンタジー
【幼少期】 双子の弟に殺された…と思ったら、何故か赤ん坊に生まれ変わっていた。 ここはもしかして異世界か?  だが、そこでも双子だったため、後継者争いを懸念する親に孤児院の前に捨てられてしまう。 ようやく里親が見つかり、平和に暮らせると思っていたが…。 【学院期】 学院に通い出すとそこには双子の片割れのエドワード王子も通っていた。 周りに双子だとバレないように学院生活を送っていたが、何故かエドワード王子の影武者をする事になり…。  

第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。

黒ハット
ファンタジー
 前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。  

悪徳領主の息子に転生しました

アルト
ファンタジー
 悪徳領主。その息子として現代っ子であった一人の青年が転生を果たす。  領民からは嫌われ、私腹を肥やす為にと過分過ぎる税を搾り取った結果、家の外に出た瞬間にその息子である『ナガレ』が領民にデカイ石を投げつけられ、意識不明の重体に。  そんな折に転生を果たすという不遇っぷり。 「ちょ、ま、死亡フラグ立ち過ぎだろおおおおお?!」  こんな状態ではいつ死ぬか分かったもんじゃない。  一刻も早い改善を……!と四苦八苦するも、転生前の人格からは末期過ぎる口調だけは受け継いでる始末。  これなんて無理ゲー??

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

侯爵家の愛されない娘でしたが、前世の記憶を思い出したらお父様がバリ好みのイケメン過ぎて毎日が楽しくなりました

下菊みこと
ファンタジー
前世の記憶を思い出したらなにもかも上手くいったお話。 ご都合主義のSS。 お父様、キャラチェンジが激しくないですか。 小説家になろう様でも投稿しています。 突然ですが長編化します!ごめんなさい!ぜひ見てください!

処理中です...