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おばけ? 妖怪? 違います!
一歩引いて
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その後、僕らは適当なレストランに入った。材料を買って作る予定だったのだが、色々あったせいで、もう一時半だ。お腹もすいたし、これから作るのは大変だからって、レストランをチョイスした。……それに、
「んー、何しよっかなー」
と、うきうきしながらメニューを見るこの人がいたのも、一つの理由になる。
各々好きなものを注文し、店員さんが一礼して去っていくと、ドラくんが不思議そうに口を開く。
「……ところでおさく殿」
「おー、ドラくん人になってその口調だとだいぶ面白いね。どした?」
「いや……あんな簡単にカードが作れてしまってよかったのかと思ってな。そんなに効力のあるものなのか? ジュノン殿の書面は」
「まぁ……確かにそうだな。ジュノンは今の本職は化学教師だろう? ウタもしごかれたって言ってたし」
「シゴカレマシタ」
「一化学教師の言葉を、普通は……普通は、ギルドは鵜呑みにはしないんだが」
するとおさくさんは、ひっそりとほくそ笑み、僕らを見据えた。
「……気づいているんだろう? マルティネス・アリア」
「え……え?」
「空気変わったな」
「普通は、鵜呑みにはしない。だが、我々は決して『普通』ではない。そうだろう?」
「ま、まぁ、そうだが?」
「ちょっとめんどいから戻すねー」
「戻った」
「ほらー、魔王城ってクラーミルに近いじゃん? 先代の王様たちから、万が一の時に国を守ってほしいーって言われちゃって、結果、ジュノンの研究所があそこにあるわけよ」
なるほど……、よくよく考えれば頼まれてもいないのにジュノンさんがあの場所にずっと留まっているわけないのだ。なんてったって自由すぎる個性の塊'sのリーダーなのだから。
「もっと言っちゃえば、うちらはもっと自由にしたいわけだけど、それを無理矢理留めてるわけじゃん? んで、うちらから……というより、ジュノンが出した交換条件が、『この国最高の権力を個性の塊'sに与える』ってことだったわけ」
「国の最高権力って……え!? じゃあおさくさんも、クラーミルではすごく偉い人なんですか!?」
「フローラいいねぇ、その反応。そーなのよ。だからさらっと書類受け取ってもらえたのさ。
ま、クラーミル国内でジュノン直筆のサインがついた書面ほど効力を持つものはないってことよ。さらに私の証言もあったんじゃ、なにも言い返せないよね」
少しして、頼んだ飲み物が運ばれてきた。それを飲みながら、どこか僕らから視線を逸らし、おさくさんがこんなことを言い出した。
「……最近さぁ、レイナとロイン? と仲良くなってるって、ほんと?」
「え? ……まぁ確かに、アリアさんとかウタさんとか、前より仲良さそうですけど」
「いやね? ジュノンがそんなこと言ってたから、そうなのかなーって」
……なんとなく、だ。
なんとなくなのだけど、おさくさんが言ったその言葉は、本当だけど、嘘なのだと。……そう、感じていた。
料理が運ばれてくる。それをゆっくりと咀嚼しながら、その言葉の、裏の意味を考えた。
「……そっか。
これ……何て言えばいいんだか」
ぽつりとおさくさんが呟いたその言葉。みんなも、それになにかを感じ取って、なにも言えないで、黙ってご飯を食べた。きっと、いつも通りならおさくさんが何かしら言うんだろうけど、それもない。あまりに……静かな、食事だった。
「……仲が良いのはいいことだけどさ」
ふと、フォークとナイフを置いて、おさくさんが呟く。いつもとどこか違うその表情には、暗い影が見えた。思わずみんながそちらに視線を向ける。
「……おさく、さん?」
「うちらもさ……ここまで情が移るとは思ってなかったわけで。ちょっと動揺してるんだよね」
何を言いたいのか、掴めない。いや、いつもおさくさん……だけに限らないか。個性の塊'sは掴み所がなくて僕らを振り回してばかりだった。前からそうだったのだけど……それでも、どこか雰囲気か違いすぎて、一種の恐ろしさを覚えながら、僕は次の言葉を待った。
「……少しは時間の猶予をあげるよ。その間に……一歩引いて考えて。主観的になりすぎると、なにも見えなくなる。そもそも見えていたはずのものが、全く、見えなくなるから」
それだけ言うと、戸惑う僕らに「じゃ!」と笑いかけ、おさくさんは店から出ていってしまった。入り口の方で「ごちそーさまー!」と、いつもの声が聞こえ、扉が閉まる音がして、また沈黙が流れた。
「……何が言いたかったんだ、おさくは」
アリアさんが口を開く。それに同意するような形で、ポロンくんもうなずいた。
「全然わかんない……一歩引いて考えるって、つまりどういうことなんだ?」
「身近なものを、信じすぎるなってこと……なんでしょうか?」
「ぼく、みんなのこと信じたいよ!?」
「我だってそうだ。しかし……今まで、個性の塊'sが我らにかけた言葉で、無駄だったことなどないだろう?」
「…………」
分からないことを、いつまでも考えてもしょうがない。ひとまず頭の隅に置いて、また考えよう。
「とりあえず店を出て……あ」
「どうしたウタ殿」
「これ……」
おさくさんが去った席には銅貨が二枚。おさくさんが頼んだものより、少し多めのお金が置かれていた。
(……どうしても、僕らにこれを伝えたかった?)
まだ、分からない。
「んー、何しよっかなー」
と、うきうきしながらメニューを見るこの人がいたのも、一つの理由になる。
各々好きなものを注文し、店員さんが一礼して去っていくと、ドラくんが不思議そうに口を開く。
「……ところでおさく殿」
「おー、ドラくん人になってその口調だとだいぶ面白いね。どした?」
「いや……あんな簡単にカードが作れてしまってよかったのかと思ってな。そんなに効力のあるものなのか? ジュノン殿の書面は」
「まぁ……確かにそうだな。ジュノンは今の本職は化学教師だろう? ウタもしごかれたって言ってたし」
「シゴカレマシタ」
「一化学教師の言葉を、普通は……普通は、ギルドは鵜呑みにはしないんだが」
するとおさくさんは、ひっそりとほくそ笑み、僕らを見据えた。
「……気づいているんだろう? マルティネス・アリア」
「え……え?」
「空気変わったな」
「普通は、鵜呑みにはしない。だが、我々は決して『普通』ではない。そうだろう?」
「ま、まぁ、そうだが?」
「ちょっとめんどいから戻すねー」
「戻った」
「ほらー、魔王城ってクラーミルに近いじゃん? 先代の王様たちから、万が一の時に国を守ってほしいーって言われちゃって、結果、ジュノンの研究所があそこにあるわけよ」
なるほど……、よくよく考えれば頼まれてもいないのにジュノンさんがあの場所にずっと留まっているわけないのだ。なんてったって自由すぎる個性の塊'sのリーダーなのだから。
「もっと言っちゃえば、うちらはもっと自由にしたいわけだけど、それを無理矢理留めてるわけじゃん? んで、うちらから……というより、ジュノンが出した交換条件が、『この国最高の権力を個性の塊'sに与える』ってことだったわけ」
「国の最高権力って……え!? じゃあおさくさんも、クラーミルではすごく偉い人なんですか!?」
「フローラいいねぇ、その反応。そーなのよ。だからさらっと書類受け取ってもらえたのさ。
ま、クラーミル国内でジュノン直筆のサインがついた書面ほど効力を持つものはないってことよ。さらに私の証言もあったんじゃ、なにも言い返せないよね」
少しして、頼んだ飲み物が運ばれてきた。それを飲みながら、どこか僕らから視線を逸らし、おさくさんがこんなことを言い出した。
「……最近さぁ、レイナとロイン? と仲良くなってるって、ほんと?」
「え? ……まぁ確かに、アリアさんとかウタさんとか、前より仲良さそうですけど」
「いやね? ジュノンがそんなこと言ってたから、そうなのかなーって」
……なんとなく、だ。
なんとなくなのだけど、おさくさんが言ったその言葉は、本当だけど、嘘なのだと。……そう、感じていた。
料理が運ばれてくる。それをゆっくりと咀嚼しながら、その言葉の、裏の意味を考えた。
「……そっか。
これ……何て言えばいいんだか」
ぽつりとおさくさんが呟いたその言葉。みんなも、それになにかを感じ取って、なにも言えないで、黙ってご飯を食べた。きっと、いつも通りならおさくさんが何かしら言うんだろうけど、それもない。あまりに……静かな、食事だった。
「……仲が良いのはいいことだけどさ」
ふと、フォークとナイフを置いて、おさくさんが呟く。いつもとどこか違うその表情には、暗い影が見えた。思わずみんながそちらに視線を向ける。
「……おさく、さん?」
「うちらもさ……ここまで情が移るとは思ってなかったわけで。ちょっと動揺してるんだよね」
何を言いたいのか、掴めない。いや、いつもおさくさん……だけに限らないか。個性の塊'sは掴み所がなくて僕らを振り回してばかりだった。前からそうだったのだけど……それでも、どこか雰囲気か違いすぎて、一種の恐ろしさを覚えながら、僕は次の言葉を待った。
「……少しは時間の猶予をあげるよ。その間に……一歩引いて考えて。主観的になりすぎると、なにも見えなくなる。そもそも見えていたはずのものが、全く、見えなくなるから」
それだけ言うと、戸惑う僕らに「じゃ!」と笑いかけ、おさくさんは店から出ていってしまった。入り口の方で「ごちそーさまー!」と、いつもの声が聞こえ、扉が閉まる音がして、また沈黙が流れた。
「……何が言いたかったんだ、おさくは」
アリアさんが口を開く。それに同意するような形で、ポロンくんもうなずいた。
「全然わかんない……一歩引いて考えるって、つまりどういうことなんだ?」
「身近なものを、信じすぎるなってこと……なんでしょうか?」
「ぼく、みんなのこと信じたいよ!?」
「我だってそうだ。しかし……今まで、個性の塊'sが我らにかけた言葉で、無駄だったことなどないだろう?」
「…………」
分からないことを、いつまでも考えてもしょうがない。ひとまず頭の隅に置いて、また考えよう。
「とりあえず店を出て……あ」
「どうしたウタ殿」
「これ……」
おさくさんが去った席には銅貨が二枚。おさくさんが頼んだものより、少し多めのお金が置かれていた。
(……どうしても、僕らにこれを伝えたかった?)
まだ、分からない。
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