チート能力解放するにはヘタレを卒業しなきゃいけない

植木鉢たかはし

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信じるべきは君か悪魔か

明日から

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 その後、僕らは宿に戻り、やるべきことを早く終わらせ、少し早めに眠ることにした。……明日から、遺跡に向かう。そうして、ロインを探さなくてはいけない。気を引き締めないと。

 ……でも。


「…………」


 僕は夜中にそっと起き出して、寝巻きのまま、物音をたてないように、外に出た。
 ……夜の風が気持ちいい。大きく息を吸って、吐いて、なんとなく気持ちが落ち着いてくる。


(……これで、よかったん、だよな)


 僕は、信じた。自分が信じられる人のことを、信じた。自分の勘を信じた。これで裏切られたとしてもそれでいい。僕は、僕がやれることはしてきたんだ。今さら後悔なんてない。

 だけど……。


(放っておくって言ってた塊'sが、思わず様子を見に来ちゃうくらいには……ヤバイ選択をしてたのかな)


 それならそれで、『僕は』いいのだ。僕自身は、なんでも構わないのだ。自分に嘘をつくよりは何百倍もましなのだ。……死ぬ前の世界で、それを学んだ。

 だけど、みんなは? 本当にこれでよかった?
 アリアさんは? ポロンくんは? フローラは? ドラくんもスラちゃんも、僕についてくるしか選択肢はないのだ。僕が……勝手に決めた道を、一緒に歩くしかないのだ。


「……大丈夫かな。いいのかな、これで」


 ……こっちに来てから、雨を見るのが減った気がする。なんでも、こっちでは、魔法で天気を管理しているんだとか。だから、上を見上げれば、高確率で星空が見える。……街の灯りで少し見にくいけど、それでも、一等星や二等星は、ちゃんと見える。
 ふと、強い風が通りすぎ、思わず身震いした。……まだこの時期は冷えるらしい。でも、もう少しだけ外にいたい。

 ……何て思っていた僕の耳に、柔らかい声が当たる。


「……おい」

「え」

「風邪引くぞ?」


 はっと後ろを振り向くと、薄い上着を羽織ったアリアさんが、片手に僕のベストを持って立っていた。


「ほら、これ。持ってきてやったから羽織っとけ」

「……え、あの」

「ほーら」

「……ありがとう、ございます」

「ん、気にすんな」


 アリアさんは僕の隣に立ち、同じように空を見上げる。そして、ちょっとだけいたずらっぽくクスクスと笑うのだった。


「……なに、笑ってるんですか?」

「いやなに……ふらっと外に出ていったから何事かと思えば、星を見ていただけ、なんてな。肩透かしを喰らったみたいだよ」

「答えになってます? それ」

「なってないか?」

「なってませんよ。……微妙に」

「お前は嘘ってものが吐けないのか?」

「……吐けますよ、嘘くらい。
 で、本当はどうしてここに来たんですか? 単についてきた訳じゃないですよね?」

「どうしてそう思う?」

「連れ戻しに来ただけで、すぐに戻るんだったら、まず上着はいりませんね」

「そうだなぁ……私がすっごく寒がりだったかもしれないぞ?」

「僕の分、いりませんよね、それ」


 アリアさんは、はぁ、と一つため息をついて、それから柔らかい笑顔をこちらに向けた。


「……深い意味はないんだ。本当だ」

「…………」

「……ただ、お前が一人で抱え込みすぎているような気がしてならなくてな」

「抱え込みすぎ……ですか?」


 アリアさんは、宿の前の、少し段になっているところに腰掛け、僕に隣に座るように目で訴える。僕がそこに座ると、「これは独り言だ」と前置きしてから、話始めた。


「私は……一度は、声を失った。強い悲しみと、そこからくるストレスによるものだったという」


 あのときのアリアさんは、普通じゃなかった。……無意識とはいえ、自ら命を絶とうとさえしていた。あれほどまでに弱ったアリアさん、それまで見たことなかったし、これからも……見たくはない。


「声を失った私が思っていたのは、ひどく単純なことだった。『父上の代わりに私は何を出来るのか』『父上の代わりは本当に私でいいのか』『父上ではなくて、私が死ねば』……なんて、そんなことばかり考えていたんだ」

「…………」


 知っている。よく知っている。痛いほどに……知っている。


「でもな、違ったんだよ」


 そう、その考えは、100%間違いだった。


「父上の代わりじゃない。私は、私として……マルティネス・アリアとして、これからこの国を支えていけばよかったんだって、やっと気づけた。やっと認められた。

 私は私として、ちゃんと国民に受け入れられていたんだ。不安だったのは私だけなんだ。
 例えば今すぐに二年たって、このまま成人して、ディランがいない状態だとしても、私のことを、国民はみんな受け入れてくれるんだろうなって」


 ……もしかしてアリアさん?


「……もしかしてですけど、アリアさん、僕のこと励ましに?」

「さぁどうだろうな?」

「……これも、独り言ですけど」


 僕は少し顔を伏せて、苦く笑った。


「本当にこれでよかったのかなって」

「…………」

「僕は……Unfinishedのリーダーですから、それなりに責任はあると思っています。僕が、感情に流されてした判断が、本当に正しいのか、間違ってたとしても、身になるものなのか……分からないんです」

「……勘違いをしているな」


 驚いてアリアさんの方を見ると、にっこりと優しく微笑みながら、アリアさんは髪を耳にかけた。


「私たちは、『Unfinishedのリーダー』に従っているんじゃない。『ヤナギハラ・ウタ』に従っているんだ。
 ……だから、責任とか、そんなものは気にするな」


 夜空に映える金色の髪と、それを束ねる紫色の蝶が、あまりにもきれいに美しく見えた。
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