261 / 387
信じるべきは君か悪魔か
詰めが甘い
しおりを挟む
……まだ、1分も経っていない。
あいつが火をつけ出ていってから、まだ、1分も経っていないのだ。
しかし僕らは、すでに限界を向かえようとしていた。
扉は壊れない。アリアさんやロイン、レイナさんが魔法をぶつけたりしていたけれど、壊れる気配はない。炎はどんどん勢いを増し、遺跡の中の酸素を減らしていく。
『化学』で酸素を作ろうともした。しかし、僕にはそれだけの力は残っていない。その上、酸素は炎が燃えるエネルギーとなる。炎を消してからでないと、自分の首を絞めることになる。
「っ……くそ……びくともしないな」
「これ……結構、ヤバイんじゃないですか?」
「天井に穴を開けて脱出……とか」
「開けたところでだ。ドラくんもウタもあの状態。上までいけない」
圧倒的な力不足……。僕らにはもう、なすすべがない。反対の壁際に寄って、炎からなるべく離れることくらいしかできない。
『だから言ったのに』
耳元で声が聞こえた……気がした。この熱い炎が起こした幻聴か。あの、最強パーティーのリーダーの、あの落ち着いた声が聞こえた。
『ウタくんの選択にみんなついていく。一人の問題じゃない。生かすも殺すも、君次第だよって意味で……言ったつもりだったんだけどなぁ』
あぁそうだ、確かに、ジュノンさんはそんなことを言っていた。しかし僕は頑なに聞こうとせず、目を背け、信じることを選び、その結果、あまりにも簡単に裏切られた。
『何があっても知らないからねって、ちゃんと言ったのに』
僕らは……いや、僕は、個性の塊'sの言葉よりも、自分の考えの方を選んだ。その結果が……これだ。
炎に包まれ、逃げ道もなく、こんな状況に仲間を追い込んだ僕自身は、一歩も動くことが出来ずにいる。
「アリアさん……私、息が……」
「体勢を低くするんだ。喋るな。ゆっくりと息をしろ」
『一酸化炭素中毒ってやつだね。このままだとみんな死んじゃうなぁ。まぁでも、この選択をしたのは自分なんだけど』
みんなは悪くない……。僕のせいだ。ポロンくんもフローラも、ロインとレイナさんを信じきることは出来ないと言っていた。しかし、僕を信じてついてきてくれたのだ。
ドラくんもスラちゃんも、僕を信じるからついてきたのだ。
僕が間違ったことを信じさせたから、みんなは、今、こうして、苦しんでいるのだ。
『退路は……ないね。一酸化炭素中毒で意識を失って、呼吸困難か何かで死ぬことしかできないのが、今の現状かな。
どうするの? ヤナギハラ・ウタくん? このまま見殺しにする?』
僕には何ができる……?
今の僕に、一体何ができると言うのだ。
答えは明白。……なにも、出来ない。何一つ出来ないのだ。
ステータスをわざわざ見なくても、仲間のHPが減っていくのが嫌でもわかる。ポロンくんが、フローラが……次々に意識を失っていく。
「ごめ……ね……」
レイナさんがしゃがみこんだまま、小さく口にする。その、ほんの少しの言葉を聞いたアリアさんは同じように膝をつき、優しくその白い手を包みこんだ。
「……悪くない。レイナ、謝るな。だって……まだ、死ぬには、早すぎる」
「…………」
無情にも、時間は流れる。酸素は減っているはずなのに、なぜか炎は勢いを留めることなく、僕らに迫ってくる。
僕も……もうすでに、限界を向かえていた。息をするのも辛くて、意識を保つので精一杯だ。頭も働かない。しかし、どこか達観したようなジュノンさんの声だけは、響き続けていた。
『私は知らないって言ったから、本当になにもしないよ。私らのせいじゃない。どう考えても、そっちに非があるでしょ?』
その通りだ。その通りなのだけど……。
ついに、全員が倒れ込んだ。アリアさんはギリギリ意識を保ってるのか……しかし、ギリギリだ。
全員の限界が、近づく。
『詰めが甘いんだよ、全体的に。
何があっても対応できるくらいの力と心持ちがないなら、自分勝手に動いちゃダメだよね』
意識が、飛びかける。
『でもまぁ――知らないからねって言ったのは、私だけだから』
瞬間、僕が光りだす。
否、僕ではない。僕の胸の辺り、そこから、金色に輝く魔方陣が現れ、その場を強い光で照らし始めたのだ。
「……ウタ?」
魔方陣が僕から飛び出し、巨大化し、そこから、一人の女性が飛び出してきた。一つにまとめた黒髪が揺れ、その隙間から見えた横顔がふっと微笑んだとき、なんだか……急に、泣きそうになった。
「全く……バカじゃないの? ここまでやられるなんてさ」
僕らを守るようにシエルトが張られる。と同時にその人は炎の中に、一歩、踏み込んだ。
「――凍れ、永遠に」
瞬間、あれだけ熱く燃え盛っていた炎が一瞬にして凍りついた。そして、砕け散る。
「……もう、いいよ。よく頑張ったよ」
意識を……手放す。朦朧とした意識の中で笑う魔法使いを見て、僕らは後先考えず、ただ、目の前の一つのことだけを見て、安心して、意識を手放したのだ。
(……あぁ、よかった)
生きてる。助かったんだ……と。
本当に、このあとのことは一切考えずに、思っていた。
あいつが火をつけ出ていってから、まだ、1分も経っていないのだ。
しかし僕らは、すでに限界を向かえようとしていた。
扉は壊れない。アリアさんやロイン、レイナさんが魔法をぶつけたりしていたけれど、壊れる気配はない。炎はどんどん勢いを増し、遺跡の中の酸素を減らしていく。
『化学』で酸素を作ろうともした。しかし、僕にはそれだけの力は残っていない。その上、酸素は炎が燃えるエネルギーとなる。炎を消してからでないと、自分の首を絞めることになる。
「っ……くそ……びくともしないな」
「これ……結構、ヤバイんじゃないですか?」
「天井に穴を開けて脱出……とか」
「開けたところでだ。ドラくんもウタもあの状態。上までいけない」
圧倒的な力不足……。僕らにはもう、なすすべがない。反対の壁際に寄って、炎からなるべく離れることくらいしかできない。
『だから言ったのに』
耳元で声が聞こえた……気がした。この熱い炎が起こした幻聴か。あの、最強パーティーのリーダーの、あの落ち着いた声が聞こえた。
『ウタくんの選択にみんなついていく。一人の問題じゃない。生かすも殺すも、君次第だよって意味で……言ったつもりだったんだけどなぁ』
あぁそうだ、確かに、ジュノンさんはそんなことを言っていた。しかし僕は頑なに聞こうとせず、目を背け、信じることを選び、その結果、あまりにも簡単に裏切られた。
『何があっても知らないからねって、ちゃんと言ったのに』
僕らは……いや、僕は、個性の塊'sの言葉よりも、自分の考えの方を選んだ。その結果が……これだ。
炎に包まれ、逃げ道もなく、こんな状況に仲間を追い込んだ僕自身は、一歩も動くことが出来ずにいる。
「アリアさん……私、息が……」
「体勢を低くするんだ。喋るな。ゆっくりと息をしろ」
『一酸化炭素中毒ってやつだね。このままだとみんな死んじゃうなぁ。まぁでも、この選択をしたのは自分なんだけど』
みんなは悪くない……。僕のせいだ。ポロンくんもフローラも、ロインとレイナさんを信じきることは出来ないと言っていた。しかし、僕を信じてついてきてくれたのだ。
ドラくんもスラちゃんも、僕を信じるからついてきたのだ。
僕が間違ったことを信じさせたから、みんなは、今、こうして、苦しんでいるのだ。
『退路は……ないね。一酸化炭素中毒で意識を失って、呼吸困難か何かで死ぬことしかできないのが、今の現状かな。
どうするの? ヤナギハラ・ウタくん? このまま見殺しにする?』
僕には何ができる……?
今の僕に、一体何ができると言うのだ。
答えは明白。……なにも、出来ない。何一つ出来ないのだ。
ステータスをわざわざ見なくても、仲間のHPが減っていくのが嫌でもわかる。ポロンくんが、フローラが……次々に意識を失っていく。
「ごめ……ね……」
レイナさんがしゃがみこんだまま、小さく口にする。その、ほんの少しの言葉を聞いたアリアさんは同じように膝をつき、優しくその白い手を包みこんだ。
「……悪くない。レイナ、謝るな。だって……まだ、死ぬには、早すぎる」
「…………」
無情にも、時間は流れる。酸素は減っているはずなのに、なぜか炎は勢いを留めることなく、僕らに迫ってくる。
僕も……もうすでに、限界を向かえていた。息をするのも辛くて、意識を保つので精一杯だ。頭も働かない。しかし、どこか達観したようなジュノンさんの声だけは、響き続けていた。
『私は知らないって言ったから、本当になにもしないよ。私らのせいじゃない。どう考えても、そっちに非があるでしょ?』
その通りだ。その通りなのだけど……。
ついに、全員が倒れ込んだ。アリアさんはギリギリ意識を保ってるのか……しかし、ギリギリだ。
全員の限界が、近づく。
『詰めが甘いんだよ、全体的に。
何があっても対応できるくらいの力と心持ちがないなら、自分勝手に動いちゃダメだよね』
意識が、飛びかける。
『でもまぁ――知らないからねって言ったのは、私だけだから』
瞬間、僕が光りだす。
否、僕ではない。僕の胸の辺り、そこから、金色に輝く魔方陣が現れ、その場を強い光で照らし始めたのだ。
「……ウタ?」
魔方陣が僕から飛び出し、巨大化し、そこから、一人の女性が飛び出してきた。一つにまとめた黒髪が揺れ、その隙間から見えた横顔がふっと微笑んだとき、なんだか……急に、泣きそうになった。
「全く……バカじゃないの? ここまでやられるなんてさ」
僕らを守るようにシエルトが張られる。と同時にその人は炎の中に、一歩、踏み込んだ。
「――凍れ、永遠に」
瞬間、あれだけ熱く燃え盛っていた炎が一瞬にして凍りついた。そして、砕け散る。
「……もう、いいよ。よく頑張ったよ」
意識を……手放す。朦朧とした意識の中で笑う魔法使いを見て、僕らは後先考えず、ただ、目の前の一つのことだけを見て、安心して、意識を手放したのだ。
(……あぁ、よかった)
生きてる。助かったんだ……と。
本当に、このあとのことは一切考えずに、思っていた。
0
あなたにおすすめの小説
3点スキルと食事転生。食いしん坊の幸福無双。〜メシ作るために、貰ったスキル、完全に戦闘狂向き〜
幸運寺大大吉丸◎ 書籍発売中
ファンタジー
伯爵家の当主と側室の子であるリアムは転生者である。
転生した時に、目立たないから大丈夫と貰ったスキルが、転生して直後、ひょんなことから1番知られてはいけない人にバレてしまう。
- 週間最高ランキング:総合297位
- ゲス要素があります。
- この話はフィクションです。
【本編完結】転生令嬢は自覚なしに無双する
ベル
ファンタジー
ふと目を開けると、私は7歳くらいの女の子の姿になっていた。
きらびやかな装飾が施された部屋に、ふかふかのベット。忠実な使用人に溺愛する両親と兄。
私は戸惑いながら鏡に映る顔に驚愕することになる。
この顔って、マルスティア伯爵令嬢の幼少期じゃない?
私さっきまで確か映画館にいたはずなんだけど、どうして見ていた映画の中の脇役になってしまっているの?!
映画化された漫画の物語の中に転生してしまった女の子が、実はとてつもない魔力を隠し持った裏ボスキャラであることを自覚しないまま、どんどん怪物を倒して無双していくお話。
設定はゆるいです
悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる
竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。
評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。
身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。
御家騒動なんて真っ平ごめんです〜捨てられた双子の片割れは平凡な人生を歩みたい〜
伽羅
ファンタジー
【幼少期】
双子の弟に殺された…と思ったら、何故か赤ん坊に生まれ変わっていた。
ここはもしかして異世界か?
だが、そこでも双子だったため、後継者争いを懸念する親に孤児院の前に捨てられてしまう。
ようやく里親が見つかり、平和に暮らせると思っていたが…。
【学院期】
学院に通い出すとそこには双子の片割れのエドワード王子も通っていた。
周りに双子だとバレないように学院生活を送っていたが、何故かエドワード王子の影武者をする事になり…。
第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。
黒ハット
ファンタジー
前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。
悪徳領主の息子に転生しました
アルト
ファンタジー
悪徳領主。その息子として現代っ子であった一人の青年が転生を果たす。
領民からは嫌われ、私腹を肥やす為にと過分過ぎる税を搾り取った結果、家の外に出た瞬間にその息子である『ナガレ』が領民にデカイ石を投げつけられ、意識不明の重体に。
そんな折に転生を果たすという不遇っぷり。
「ちょ、ま、死亡フラグ立ち過ぎだろおおおおお?!」
こんな状態ではいつ死ぬか分かったもんじゃない。
一刻も早い改善を……!と四苦八苦するも、転生前の人格からは末期過ぎる口調だけは受け継いでる始末。
これなんて無理ゲー??
バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。
その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。
「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
侯爵家の愛されない娘でしたが、前世の記憶を思い出したらお父様がバリ好みのイケメン過ぎて毎日が楽しくなりました
下菊みこと
ファンタジー
前世の記憶を思い出したらなにもかも上手くいったお話。
ご都合主義のSS。
お父様、キャラチェンジが激しくないですか。
小説家になろう様でも投稿しています。
突然ですが長編化します!ごめんなさい!ぜひ見てください!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる