チート能力解放するにはヘタレを卒業しなきゃいけない

植木鉢たかはし

文字の大きさ
260 / 387
信じるべきは君か悪魔か

ピンチ

しおりを挟む
 僕が振り下ろした剣を、悪魔は真っ黒い剣で受け止める。
 ……強い。感覚でわかる。お互いにせめぎあう中、僕はダメもとで鑑定する。



名前 ブリス

種族 悪魔

年齢 322

職業 ――

レベル 571

HP 34500

MP 20600

スキル アイテムボックス・偽装・剣術(超上級)・体術(超上級)・初級魔法(熟練度10)・炎魔法(熟練度9)・土魔法(熟練度7)・闇魔法(熟練度10)

ユニークスキル 空虚・漆黒

称号 炎と漆黒の悪魔・愉快犯



 鑑定できた……ということは、今僕は、勇気を……。
 感情に流され過ぎるな。でも、『勇気』は発動させたままにしろ。難しくはないはず。だって、今まで僕はそれが出来ていたのだから。……なんで難しくなっている?

 戦いに慣れた?

 首を振る、目の前に集中しよう。


「へぇー……聖剣か。まぁ確かに『悪』魔である俺を殺すには丁度いい武器だってことだな。
 それを普通の人間が、そうやすやすと手に入れられるとは思えないが……どこかのお節介にもらったのか?」

「……答える義理は無いです」

「はっ……ま、いいけどな。お前らはここで俺が殺すから」

「何が目的なんですか……? 僕らを、レイナさんとロインを騙していたのは!」

「なーに、簡単なことさ」


 悪魔は僕の剣を押し返し、黒炎の槍を飛ばしてくる。僕はそれを避け、光の槍を打ち返す。
 ……僕はいいけれど、他のみんなを巻き込むわけにはいかない。ちらりと後ろを見ると、ポロンくんとフローラは言った通りゴーレムを倒していた。アリアさんはドラくんの治療をして、ロインをレイナさんが支えていた。


「俺がわざわざこんなところに潜り込んであいつらを陥れたのは、マルティネスとクラーミルが、再び仲良くなっちゃ困るからだ」

「どうしてですか……なんで!」

「理由は単純さ。何十年か前の戦争……あれを起こしたのは、俺だからさ」


 ……エヴァンさんが、必要なかったと言っていたと言う、マルティネスとクラーミルの戦争。まさに地獄絵図。誰もが正気を失い、お互いを殺すことしか考えていなかった、その戦争。
 ブリスさんは……悪魔は、それを起こしたのは自分だと言った。確かに、悪魔が関わっているのはドラくんも予測していた。でも……本当に?


「……まぁ、いいさ。お前がどう感じたところで、俺には一切合切関係ないことだ」

「ウタ兄! こっちは大丈夫だぞ!」


 ゴーレムが崩れる音がする。二人がうまくやってくれたようだ。それに安心した瞬間、黒い剣が僕に迫る。間一髪でそれを避けるが、髪の先を切られる。黒い髪が、舞う。


「っ……とにかく! 僕はみんなを無事にここから出さないと」

「それは出来ねーよ」

「出来ないわけ――」


 文字通りに、足元が崩れる。足場にしていた土魔法で作った階段が、サラサラと静かに音を立てて崩れ落ちる。僕はそれに引きずられるようにして足から、頭へ。真っ逆さまに地面へと落ちる。
 一瞬、意識が飛びかけた。恐怖からじゃない。とてつもない勢いで力が抜け落ちて、一瞬、意識を保っているのさえ難しいくらいに頭が真っ白になってしまった。

 体に強い衝撃がくる……かと思ったが、感じたのは、思っていたよりもずっと優しいあたたかさだった。


「ウ……タ……!」

「……レイナ、さん……?! ごめっ……さい…………」


 レイナさんは全身をつかって僕が地面に頭から落ちるのを防いだ。おかげで僕はレイナさんの上に乗っかっている形だ。誰であろうと女性の上に乗っているというのは気が引ける。すぐに退こうとした。

 ……でも、まるで体が動かない。精一杯力を入れて、指をほんの少し動かせるだけだ。腕を動かすなんて無理だ。本当に動けないのだ。
 レイナさんは僕の下から這い出て、そっと床に寝かせる形にすると、簡単に手話をする。


『謝らなくていい。謝るのは、死ぬときだってアリアも言った』

「ウタっ……! 大丈夫か!? 怪我は」


 僕は力なく首を振る。少し気を抜けば、今にも意識を手放してしまいそうなほどに力が入らない。


「はっ……だから言っただろう? 無理だってさ」

「お前、ウタに何をしたんだ!」

「何ってほどなにかしてないよ。ただ、自分のスキルをちょっと使っただけさ。
 安心しな。死にはしないさ。……今は、な」


 悪魔は不敵な笑みを浮かべながら、背後に炎を放つ。メラメラと燃え上がる炎は、ほんの数秒でこの狭い空間に広がり、僕らを包み込む。
 熱い……。悪魔は、僕らを嘲笑うように見下しながら、遺跡の出口へと向かう。


「そうだなぁ……このまま焼け死んでもらおうかな」

「待て! お前、一体何をするつもりなんだ!」

「ロイン様ぁ……!
 ――そんなの、あなたが知るようなことじゃないんですよ?」


 入り口が、土魔法で閉じられる。僕の体は相変わらず動かない。ドラくんの意識はない。


「……ウタっ…………」

「スラちゃ……」

「ぼく……なんか、変だよ…………。怖い……目の前、チカチカして……」


 瞬間、スラちゃんも気を失う。まだ動けたのか、僕は片肘をついてスラちゃんの体を受け止める。が、それ以上は持たずにスラちゃんを抱える形で倒れ込む。


「……これは、」


 ピンチってやつだな。
 そう、アリアさんが呟いた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

3点スキルと食事転生。食いしん坊の幸福無双。〜メシ作るために、貰ったスキル、完全に戦闘狂向き〜

幸運寺大大吉丸◎ 書籍発売中
ファンタジー
伯爵家の当主と側室の子であるリアムは転生者である。 転生した時に、目立たないから大丈夫と貰ったスキルが、転生して直後、ひょんなことから1番知られてはいけない人にバレてしまう。 - 週間最高ランキング:総合297位 - ゲス要素があります。 - この話はフィクションです。

【本編完結】転生令嬢は自覚なしに無双する

ベル
ファンタジー
ふと目を開けると、私は7歳くらいの女の子の姿になっていた。 きらびやかな装飾が施された部屋に、ふかふかのベット。忠実な使用人に溺愛する両親と兄。 私は戸惑いながら鏡に映る顔に驚愕することになる。 この顔って、マルスティア伯爵令嬢の幼少期じゃない? 私さっきまで確か映画館にいたはずなんだけど、どうして見ていた映画の中の脇役になってしまっているの?! 映画化された漫画の物語の中に転生してしまった女の子が、実はとてつもない魔力を隠し持った裏ボスキャラであることを自覚しないまま、どんどん怪物を倒して無双していくお話。 設定はゆるいです

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

御家騒動なんて真っ平ごめんです〜捨てられた双子の片割れは平凡な人生を歩みたい〜

伽羅
ファンタジー
【幼少期】 双子の弟に殺された…と思ったら、何故か赤ん坊に生まれ変わっていた。 ここはもしかして異世界か?  だが、そこでも双子だったため、後継者争いを懸念する親に孤児院の前に捨てられてしまう。 ようやく里親が見つかり、平和に暮らせると思っていたが…。 【学院期】 学院に通い出すとそこには双子の片割れのエドワード王子も通っていた。 周りに双子だとバレないように学院生活を送っていたが、何故かエドワード王子の影武者をする事になり…。  

第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。

黒ハット
ファンタジー
 前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。  

悪徳領主の息子に転生しました

アルト
ファンタジー
 悪徳領主。その息子として現代っ子であった一人の青年が転生を果たす。  領民からは嫌われ、私腹を肥やす為にと過分過ぎる税を搾り取った結果、家の外に出た瞬間にその息子である『ナガレ』が領民にデカイ石を投げつけられ、意識不明の重体に。  そんな折に転生を果たすという不遇っぷり。 「ちょ、ま、死亡フラグ立ち過ぎだろおおおおお?!」  こんな状態ではいつ死ぬか分かったもんじゃない。  一刻も早い改善を……!と四苦八苦するも、転生前の人格からは末期過ぎる口調だけは受け継いでる始末。  これなんて無理ゲー??

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

侯爵家の愛されない娘でしたが、前世の記憶を思い出したらお父様がバリ好みのイケメン過ぎて毎日が楽しくなりました

下菊みこと
ファンタジー
前世の記憶を思い出したらなにもかも上手くいったお話。 ご都合主義のSS。 お父様、キャラチェンジが激しくないですか。 小説家になろう様でも投稿しています。 突然ですが長編化します!ごめんなさい!ぜひ見てください!

処理中です...