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届かない想いに身を寄せて
してはいけないこと
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個性の塊'sのサポートを受けられなくなった僕らだが、ここで立ち止まっているわけにもいかないのだ。一刻も早くレイナさんとロインが生きていることをクラーミルの国民に伝えないと。
「……行きましょうか」
「あぁ。……ポロン、フローラ、スラちゃん。下は頼んだぞ」
「はい! もちろんです!」
「おいらたちがいれば、だいじょーぶだって!」
頼もしい仲間だ。僕らがその言葉にうなずくと、三人は下に向かって走っていった。それを見送って、僕らも顔を見合わせる。
「……アリアさん、レイナさん、ロイン、大丈夫?」
「あぁ、私は問題ないさ」
「僕も大丈夫。姉さんは?」
『うん、平気』
そういえば、ジュノンさんは悪魔と対峙したときに『してはいけないこと』というよを一つ、教えてくれていた。二人はこの事を知っているのだろうか?
「ねぇ二人とも。悪魔と戦うとして……しちゃいけないことが一つあるんだ。何か知ってる?」
「いや、知らないけど……。何をしちゃいけないの?」
「あのね」
その瞬間、足元が黒く光る。僕はそれに気づいて、咄嗟に足元に風魔法を放って地面から全員を浮き上がらせた。
「ストリーム!」
「すまないウタ殿! ……来たか」
少し視線をあげれば、そこには悪魔が笑っていた。僕らを見下し、嘲笑い、手には黒い剣を携えて、
「……来たな、ブリス」
「完全な敵になったとしても名前を呼ぶ……その精神、嫌いじゃないぜ? マルティネス・アリア」
「なにしに来た。私たちは、お前が思ってるほど弱くはないぞ」
「何をしに? レイナ・クラーミルとロイン・クラーミルを殺しに来たにきまってるだろ?
二人が死んでしまえば、お前らが殺していない証拠はどこにもない。そのまま戦争になって……どちらかの国はつぶれるだろうな」
「どうしてそこまで……どうしてそこまでして、マルティネスとクラーミルの戦争を望むんですか」
僕は訊ねた。……ブリスにとっても、面倒なはずだ。だって、もし失敗すれば、マルティネスとクラーミル両方の国をその一瞬で敵に回す。いくら悪魔でも、完全に信用を失った状態では心をコントロールするのも難しいはず。
「そうだなぁ……。一番やり易くて、一番、狂う様を見ていて楽しそうな二国を選んだってだけで、戦争そのものが起こせればよかったのさ、俺は」
「利点はなんだ? お主にとってのデメリットに勝るほどのメリットが、そこにはあったはずだ」
「……あったぜぇ?」
ブリスはゆっくりと笑う。その顔はどこまでも続くような狂喜に満ち、しかし目は完全に硝子人形のそれと一致した。
「魔王様の力になれる……だけじゃない。この目の前で! 人間が狂う様をじっくり観察できるんだ! 最高じゃないか!
……操影」
影の中から、無数のとげが生まれて、僕らを射抜こうと鋭く迫る。……とたんに、アリアさんの動きが鈍くなったのは、言うまでもないだろう。
「……アリアさん」
聞こえていない。ただ、一歩後ずさった。僕はその、細くて白い手に触れる。……一瞬だけ、小さく震えた。
「ウタ……?」
「大丈夫です」
現れたとげは、優先的にロインとレイナさんを狙う。……『あれ』の威力と恐ろしさは、僕とアリアさんが、痛いほど分かっている。本当に……痛いほど、分かっているのだ。
「シャインランスっ!」
槍を放ってとげと相殺させる。酷く怯えるアリアさんに……みんな、気づいていないはずがないのだ。
「大丈夫ですかアリア姫!?」
「……あ、あぁ、ロインか…………」
「僕の後ろにいてください! 無理は」
「大丈夫だ。……絶対」
『私たちも戦うから、無理しないで』
僕らは、この瞬間、忘れていた。
してはいけないこと……それを、このときに伝えなければいけなかった。
◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈
どこまでも白いその空間を破壊せんばかりの黒い槍が、強い殺意をもって放たれた。それはあるかと思われた壁をすり抜け、どこかに消えていく。
「……つまり、どういうことを言いたいのかな?」
そしてその槍を放った張本人……ジュノンは、目の前の神を、笑顔のまま睨み付ける。
ここは、神と勇者たちの世界。ここにいるのは個性の塊'sのメンバー五人と、彼女らをこの世界に呼び出した、女神だけだった。
「いきなり槍放たないでくれます? ……そのままのことですよ」
「だって……それは、簡単に言えば、ウタくんたちを助けるなってことですよね?」
ドロウの問いかけに、神は頷かない。代わりに別の言葉を紡ぐ。
「……ヤナギハラ・ウタと、ディラン・キャンベル。その二人が、二人とも生きていたとしたら……世界は、確実に滅びます。二人ともを助けるなんて不可能です」
「なんで? その理由は?」
「二つの『勇気』が強すぎるからです。……それがたとえ、一瞬のことだったとしても、『勇気』は勇者の力を越える。もしもその二つがぶつかったら」
「でもさー? そうなるかどうかは分かんないじゃん?」
「私たちだって、その事を気にしてなかった訳じゃないけどー……」
難しい顔で考え込む五人。……手出しをしない、というのは難しいことなのだ。少なからず情は生まれている。そしてこの言葉に従うとすれば最悪の場合……。
(二人を殺すことになる、か……)
その事実を、ゆっくりと租借する。不意に、ジュノンが小さく微笑んだ。
「……ま、いいよ。ほっとこ」
「え、でも」
「とりあえず今回の件は。……大丈夫、そう簡単に死なないよ、Unfinishedは。
……ところでさ」
ジュノンは女神を見る。
「ウタくんに『勇気』を与えた神様って、何者なの?」
「……行きましょうか」
「あぁ。……ポロン、フローラ、スラちゃん。下は頼んだぞ」
「はい! もちろんです!」
「おいらたちがいれば、だいじょーぶだって!」
頼もしい仲間だ。僕らがその言葉にうなずくと、三人は下に向かって走っていった。それを見送って、僕らも顔を見合わせる。
「……アリアさん、レイナさん、ロイン、大丈夫?」
「あぁ、私は問題ないさ」
「僕も大丈夫。姉さんは?」
『うん、平気』
そういえば、ジュノンさんは悪魔と対峙したときに『してはいけないこと』というよを一つ、教えてくれていた。二人はこの事を知っているのだろうか?
「ねぇ二人とも。悪魔と戦うとして……しちゃいけないことが一つあるんだ。何か知ってる?」
「いや、知らないけど……。何をしちゃいけないの?」
「あのね」
その瞬間、足元が黒く光る。僕はそれに気づいて、咄嗟に足元に風魔法を放って地面から全員を浮き上がらせた。
「ストリーム!」
「すまないウタ殿! ……来たか」
少し視線をあげれば、そこには悪魔が笑っていた。僕らを見下し、嘲笑い、手には黒い剣を携えて、
「……来たな、ブリス」
「完全な敵になったとしても名前を呼ぶ……その精神、嫌いじゃないぜ? マルティネス・アリア」
「なにしに来た。私たちは、お前が思ってるほど弱くはないぞ」
「何をしに? レイナ・クラーミルとロイン・クラーミルを殺しに来たにきまってるだろ?
二人が死んでしまえば、お前らが殺していない証拠はどこにもない。そのまま戦争になって……どちらかの国はつぶれるだろうな」
「どうしてそこまで……どうしてそこまでして、マルティネスとクラーミルの戦争を望むんですか」
僕は訊ねた。……ブリスにとっても、面倒なはずだ。だって、もし失敗すれば、マルティネスとクラーミル両方の国をその一瞬で敵に回す。いくら悪魔でも、完全に信用を失った状態では心をコントロールするのも難しいはず。
「そうだなぁ……。一番やり易くて、一番、狂う様を見ていて楽しそうな二国を選んだってだけで、戦争そのものが起こせればよかったのさ、俺は」
「利点はなんだ? お主にとってのデメリットに勝るほどのメリットが、そこにはあったはずだ」
「……あったぜぇ?」
ブリスはゆっくりと笑う。その顔はどこまでも続くような狂喜に満ち、しかし目は完全に硝子人形のそれと一致した。
「魔王様の力になれる……だけじゃない。この目の前で! 人間が狂う様をじっくり観察できるんだ! 最高じゃないか!
……操影」
影の中から、無数のとげが生まれて、僕らを射抜こうと鋭く迫る。……とたんに、アリアさんの動きが鈍くなったのは、言うまでもないだろう。
「……アリアさん」
聞こえていない。ただ、一歩後ずさった。僕はその、細くて白い手に触れる。……一瞬だけ、小さく震えた。
「ウタ……?」
「大丈夫です」
現れたとげは、優先的にロインとレイナさんを狙う。……『あれ』の威力と恐ろしさは、僕とアリアさんが、痛いほど分かっている。本当に……痛いほど、分かっているのだ。
「シャインランスっ!」
槍を放ってとげと相殺させる。酷く怯えるアリアさんに……みんな、気づいていないはずがないのだ。
「大丈夫ですかアリア姫!?」
「……あ、あぁ、ロインか…………」
「僕の後ろにいてください! 無理は」
「大丈夫だ。……絶対」
『私たちも戦うから、無理しないで』
僕らは、この瞬間、忘れていた。
してはいけないこと……それを、このときに伝えなければいけなかった。
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どこまでも白いその空間を破壊せんばかりの黒い槍が、強い殺意をもって放たれた。それはあるかと思われた壁をすり抜け、どこかに消えていく。
「……つまり、どういうことを言いたいのかな?」
そしてその槍を放った張本人……ジュノンは、目の前の神を、笑顔のまま睨み付ける。
ここは、神と勇者たちの世界。ここにいるのは個性の塊'sのメンバー五人と、彼女らをこの世界に呼び出した、女神だけだった。
「いきなり槍放たないでくれます? ……そのままのことですよ」
「だって……それは、簡単に言えば、ウタくんたちを助けるなってことですよね?」
ドロウの問いかけに、神は頷かない。代わりに別の言葉を紡ぐ。
「……ヤナギハラ・ウタと、ディラン・キャンベル。その二人が、二人とも生きていたとしたら……世界は、確実に滅びます。二人ともを助けるなんて不可能です」
「なんで? その理由は?」
「二つの『勇気』が強すぎるからです。……それがたとえ、一瞬のことだったとしても、『勇気』は勇者の力を越える。もしもその二つがぶつかったら」
「でもさー? そうなるかどうかは分かんないじゃん?」
「私たちだって、その事を気にしてなかった訳じゃないけどー……」
難しい顔で考え込む五人。……手出しをしない、というのは難しいことなのだ。少なからず情は生まれている。そしてこの言葉に従うとすれば最悪の場合……。
(二人を殺すことになる、か……)
その事実を、ゆっくりと租借する。不意に、ジュノンが小さく微笑んだ。
「……ま、いいよ。ほっとこ」
「え、でも」
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