チート能力解放するにはヘタレを卒業しなきゃいけない

植木鉢たかはし

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闇夜に舞う者は

嫌だ

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「……あ、れか…………」


 僕はフローラを抱えて走り続け、ようやく、声が聞こえないところまで来た。目の前にはひときわ大きな建物があり、それがパレルのお城だと気づくのは容易かった。


「う、ウタさん……もう、私、歩きますよ?」

「いや、中に入るまで」

「でも」

「お願いだから。……僕が、心配で仕方なくなるから。ね?」

「…………分かりました」


 しぶしぶ、といった感じでフローラがうなずく。そして、それならばといった感じで、僕に軽くしがみついた。
 僕はそれを確認すると、その体制のままお城の前へ行き、門番の人に声をかける。


「すみません、Unfinishedの柳原羽汰とセリエ・フローラです。先にアリアさんたちが入ってると思うんですけど、入れていただけませんか?」

「確認をとりますので、少々お待ちください」


 そう言って中に入ったその人はすぐに出てきて、僕らを中へと促した。そこで僕はやっとフローラを下ろし、先に進むことにした。


「……ウタさん、さっきは、その……やっぱり、いたんですか?」


 誰が、とは聞かずにフローラが聞いてくる。僕はそれに、確かにうなずいた。


「……うん」

「…………」


 重苦しくなった空気を嫌ったのか、不意にフローラが声をあげる。


「あ、そういえば」

「ん?」

「ウタさん、私のこと抱き上げられるくらいに筋肉あったんですね」

「えぇっ?! 逆にないと思われてた!?」

「だってウタさんですし」

「さ、さすがに僕だって、フローラくらいは持てるって! ど、ドラくんは無理かもしれないけど、女性一人くらいなら」

「アリアさんもですか?」

「別の意味で無理だけど多分できる」


 フローラはクスクス笑いながら、いたずらっぽく、僕にこんなことを訊ねてきた。


「ウタさん」

「なに?」

「ウタさんは、アリアさんのこと好きですか?」

「そりゃ好きだけど」

「そうじゃなくて、恋愛的な意味として、ですよ」

「恋愛的…………ん、ん?」

「どうなんですかー?」

「え、えー……待って、考えたことなかったっていうか考えをあえて排除していた問題っていうかなんというか……!」


 ぎ、逆に考えろ柳原羽汰! アリアさんはめっちゃ美人で、ちょいちょいかわいくて天然っぽくて、優しくて、頼りになって、助けてくれて、激しく鈍感だ。
 こういう女性が、いるとする。いやいるんだけど……目の前にいたとして、好きにならないってこと……ある? ないよねぇ?
 でもなんか、こう、付き合いたい的な想いというか、そういうの……抱いたこと…………ないな、うん。無いはず。


「……激しく思案してますね」

「恋愛の方の好き……で、は、ない……はず」

「多分?」

「き、きっと」

「もしかして」

「フローラ……不確かにしないで……」


 ……そんなフローラとの話に、ほんの少しだけ心が軽くなった気がした。そしてそのままの気持ちで、二階に上がる。確か、二階の突き当たりといっていたはずだ。そちらに視線を向けてみれば、前に兵士が二人立っている、周りと比べてかなり豪華で頑丈そうな扉が見えた。
 僕らがそちらに近づくと、兵士の一人が僕に声をかけた。


「ヤナギハラ・ウタか」

「はい」

「すまないが、本人であると確認するためにアリア姫から一つ問題を出してもらった。これに答えてもらう」

「……はい」


 僕なら答えられる問題だってことだろう。逆に、僕じゃなきゃ答えられない問題なのかもしれないが。


「声を取り戻したときに、姫が最初に使った呪文、が問題だそうだ」

「…………」

「……ウタさん?」


 簡単だ。簡単すぎる。あの声を……あのときのアリアさんの声を、忘れろと言う方が無理がある。
 忘れられるわけがない……大切な人の、叫びを。僕を助けてくれた魔法を。


「セイントエレキテル……です」

「……なるほど。正解だ。
 確かにあなたはヤナギハラ・ウタ本人のようだな。中へ」

「あ、あの、私はいいんですか?」

「『ウタが本人なのにフローラが偽物なはずがない、あいつはそれくらい見抜ける』……だそうだ」

「…………」


 そのまま僕らは促されるように、扉を開けて中に入った。瞬間、アリアさんの声が響く。


「それは嫌だ!」

「しかし姫、確実な方法となると」

「でもそれは嫌だ。なにか……確実じゃなくてもいい、なにか別に方法はないのか!?」

「あ、アリアさん……! どうしたんですか?」

「あ、フローラ! ウタ兄!」


 扉の先、僕らが最初に見たのは必死に国王に何かを訴えるアリアさんと、それを止めるドラくん。そして驚き固まっていたポロンくんとスラちゃん、そして青い顔をして立っているリードくんだった。


「……ウタ。実は」

「君がウタくんか」

「……国王陛下、ですね。一体何が……僕の主観になってしまうかもしれませんが、アリアさんが目上の人に向かってこんなに声を荒らげるって言うのはなかなかないっていうか……異常、っていうか」


 国王陛下は、青い瞳をゆっくりとこちらへ向け、そして告げた。


「ニエルのことを聞かれてな。奴は神出鬼没で、捕まえることなんて出来ない。本気でどうにかするならそこにいる子供を囮にすればいいと言った。
 リードというその少年は、自分では家出したと言っているが……あまりの出来の悪さに棄てられたことにも気づいていないバカだと」


 ……僕もアリアさんに続いて叫びそうになった、が、それを押し止めた。
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