チート能力解放するにはヘタレを卒業しなきゃいけない

植木鉢たかはし

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自分の声は聞こえますか?

笑え

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「それでも懲りずに、俺が、やめねぇっつったら……どうすんだよ?」


 彰人さんが呆れたように言う。僕はそれを、黙って聞いていた。


「やめないで、お前の『勇気』が切れるのを待って、奇襲したら? ……お前、負けちまうんじゃねぇのか? 俺らにさ」

「……この『勇気』は、あなたがスキルを切るまで続きます」

「なら三時間経過して死んで終わりだな」


 ははっと、乾いた笑いをこぼした彰人さんは、僕を見た。……まっすぐな瞳で、じっと、僕を……。


「…………でも、俺の敗けだな」

「……いいん、ですか?」

「仕方ねぇよ。……生きたいって思っちまったんだから」


 ふわりと、あたたかい光が彰人さんを包み込んだ。光は、ほんの数秒で消えてなくなる。……それを確認した彰人さんは僕を見て、微笑んだ。いつも通りの、やさしい眼差しで。


「……わりぃけど、もう一回、回復魔法、かけてくれ。体動かなくってよ……」

「いいですよ、もちろん。……ケアル」

「ウタ殿」

「ん、なに?」

「まぁ、さっき言ったみたいに、俺が奇襲するんじゃって思ってるんだろうな、ドラくんは。Unfinishedで一番慎重で、臆病なドラゴンだからな」


 彰人さんがけらけらと笑う。そこには、もう戦おうと言う意思は見えなかった。それを見て警戒を解いたのか、ドラくんは大きくため息をつき「余計なお世話だ」と呟く。


「……アキヒト、もう大丈夫?」


 スラちゃんが心配そうに僕と彰人さんを交互に見る。僕はそんなスラちゃんに笑いかけ、彰人さんを見た。


「おうよ! もう元気だ! ピンピンしてるぜ?」

「ほんと!? よかったぁー!」

「…………」


 彰人さんは、もう大丈夫そうだ。僕は立ち上がり、サラさんたちの方へ目をやる。フローラの新しいスキルで、HPやMPは全回復しているようだ。アリアさんと、サラさんと、エドさん。それからポロンとフローラ。五人で話している。


「……お、ウタ。全く、お前にはしてやられたな」


 サラさんが僕を見ると、そう垢抜けた様子で笑う。エドさんは呆れきっているようで、その隣で頭を抱えていた。


「全く……アリア様もウタも、考えが浅い……行ったところでどうしようもないはずだというのに」

「だーかーら! おいらたちさっきから言ってるだろ? おいらたちは、成長してるんだい! どうしようもないことないし、自分の心に嘘ついて、やりたいことをやらないより、やってから後悔する方がずっといいんだい!」

「私たちは、一人じゃありませんしね」

「それでも心配なんだよ。なー? エド」

「サラ様までからかわないでいただけますか? 俺は真剣なんですが」

「悪かった悪かった」


 はははと軽く笑ってから、小さく息をつき、サラさんは僕らを見た。


「あー……えっとな。エマに、声、かけてやってくれないか? たぶん……それがないと、立ち直れないと思うんだ」

「エマ……」

「俺に声をかけたのは、他でもないエマだ。危険をおかしてでも止めよう、傷ついても止めよう、傷つけても止めよう、その命を守ろう……ってな」

「自分で提案して、自分で決めた『作戦』だったんだ、一世一代の。……結果、それを破られちゃったんだから、しんどいだろうな」


 ……僕は、ただ先に進みたい、みんなを助けたいって思いで、その作戦を破壊した。けど……それと同じか、それ以上の想いをもって、エマさんはこの作戦を決意していた。

 ……壊してしまった僕らは、ここから先に進んで、例え死んだとしても……やるだけのことはやったからと、自分にいいわけが出来るんだろう。
 しかし……エマさんは、もしこの先僕らが死ぬようなことがあれば、強い自己嫌悪に苛まれるだろう。自分の力不足で、僕らの命を奪うことになってしまったと。


「ウタ、行こうか」

「…………」


 アリアさんの声に、僕は小さくうなずいた。
 エマさんは僕らから少し離れた木の影に座り込み、顔を埋めていた。表情は読み取れないけれど……声は、痛いほどに良く聞こえた。


『ごめんなさい……ごめんなさい、ごめんなさい……守れなかったの……守りたかったのに、死んでしまう。死なないなんて言葉……希望にならないって、わかってたのに……』

「エマ……」


 アリアさんが、エマさんの肩にそっと手を置く。……その体が、ほんの少しピクリと震えた。


「すまない、エマ……お前の気持ちを、裏切るようなことをしてしまった」

「で、でも……僕ら、本当に、生きて帰ってきますから、だから」

「分からないわ、そんなの」


 ピシャリといい放たれて、なにも返せなかった。


「格上の相手に挑んで、大丈夫? 死なない? そんな不確かなことに頼れない。……だからこの手で止めようとしたの手で」


 でも、と、エマさんは顔をあげ、自虐的な笑みを浮かべる。


「守られてたのは……結局私の方」


 それから、僕らを見て、すがるように言う。


「ひとつだけ、お願い聞いてくれる?」

「……聞けることなら」

「ありがとう。……Unfinishedに、お願い」


 エマさんは、願った。僕らに。


「私がここで絶望しないように、私が朽ちて消えないように……どうか、笑って。
 辛くても苦しくても、笑ってください」


 僕らは、この悲痛な願いに、うなずくしかなかった。
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