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自分の声は聞こえますか?
カウントダウン
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時間は、限りなく短い。
なんせ、彰人さんがあのスキルをもらったのは転生するとき。つまり、今から30年も昔のことだ。そのときと今と、ステータス的には変化がなくとも、根本的な肉体は衰えてきているのだろう。
だからこそ、このスキルは危険だ。
その当時でさえ、三時間がリミットだった。68という年齢で、発動させるようなスキルではなかったはずだ。……きっと、サラさんたちも止めただろう。こんな危険なこと、普通だったらさせられないし、出来ない。
彰人さんは、発動させた。
他のなんでもない、僕らUnfinishedのために、この危険なスキルを発動させた。
……前に、彰人さん、やるときゃやるんだよって言ってたな。……その通りだ。やるときは、本気でやる。それが彰人さんなんだ。僕よりも、個性の塊'sよりも、ずっと前にここにやってきた転生者。きっと……その胸には、大きな意思があるのだろう。
「ファイヤーウェーブ!」
僕はそれを、焼き尽くす。
ただ、自分の意思を貫くために、目の前の人間の意思を焼く。……残忍で、自分勝手だ。でも……例えそれを元に、恨まれ殺されたとしても、世間から冷たい視線を浴び続けたとしても、Unfinishedにいられなくなったとしても……彰人さんが死んでしまうより、ずっとずっといいと思った。
「ウタっ! アキヒトは頼んだぞ!」
アリアさんが僕に声をかけ、倒れこんだ、サラさんとエドさんの方へと向かう。僕はスラちゃんとフローラに目配せしてから、彰人さんの方へと向かった。
……横たわる体は、年を刻んだ老人のものだ。僕はその体に、手を翳した。
「……ケアル」
「…………羽汰……お前」
「スキル……解いてください。お願いします……」
「…………」
「お願いです彰人さん……スキル、解いてください……!」
彰人さんは、地面に仰向けに寝転がり、自虐を含む、乾いた笑いをこぼした。それから、僕らと目を合わせず空を見上げたまま、「なぁ」と話し始めた。
「それで俺が……『嫌だ』って言ったら……どうするつもりだ?」
「…………」
「説得を続けるか? 金や物でつるか? 痛めつけるか? ……どれも俺には効かないね」
「……なら」
「あぁ、Unfinishedが傷ついたところで俺はやめねぇ。心はUnfinishedなら簡単に癒せるし、体は、お前らがお互い殺す勢いでやんないと対象外だな。『ダメでも平気』ってことがわかってると、おもしろくないのさ」
「…………それでも」
僕は彰人さんの隣に座り、やさしく、その手を握った。……なんだかごつごつとしていて、豆がたくさんあって、シワがあって……かっこいい手だ。
人生の、50年上の先輩だ。……僕の倍以上の経験を積んだ人だ。その人が言うことは、きっと正しい。
「それでも……僕は、諦めたくないです。彰人さんの命を、諦めて先に進むなんて、出来ないです」
「……綺麗事いってるって、分かってるか? みんながみんな幸せで、みんながみんな笑っていて、みんながみんな、平和に、何事もなく生きていく……ここはそんな世の中じゃねぇ。
生きる命があれば消える命がある。命には命を。それが世界の理だ。お前一人の意思で、変えることはできない」
この言葉も、正しい。僕の力はちっぽけだ。対して世界は広大だ。こんな大きく、広大な世界を、変えるような力なんて、僕にはない。
「なんも出来ないなら、自分の命を守ってろ! 家で過ごしたっていい、外に出なくなって、引き込もったって構わない。俺らがちゃんと世話してやる。死なせることなんて絶対にねぇ。
だから…………強くならなくたって、いいんだぜ? 俺ら……」
あぁ……と、思った。
なんで、彰人さんの属性魔法の熟練度がずっと1のままだったのか。その理由が、ようやくわかった気がした。
彰人さんが、望んでいないからだ。
どんなに強い力より、どんなに偉大な権力より、一皿の料理と人々との会話を望んだ彰人さんだから、こんなステータスになったんだ。
「……僕らは、助けにいかなきゃいけません」
手を握りしめる力を、ほんの少し強くする。……というよりは、力が入ってしまった、というのに近いのだが。
「僕は、お願いされました。アリアさんと一緒にいてほしい、アリアさんを助けてあげてほしいって。……とある二人から」
彰人さんは、こちらを見ようとしない。僕は続けた。
「この願いを口に出した二人。一方は『自己犠牲』に溺れて、世界を滅ぼそうとしている。もう一方は、そんな彼に立ち向かうのを、止めている」
「…………」
「……同じです。命の価値は、同じです。僕も、彼も、彰人さんも…………。だからこんなところで一人で死んでいくなんて許しません! どっちも救うには、もうタイムリミットが近いんだ! カウントダウンが始まってる。だから彰人さん!」
「…………羽汰」
「お願いですから、『それ』、止めてください! お願いします!」
……彰人さんが、仄かに微笑んだ……気がした。
なんせ、彰人さんがあのスキルをもらったのは転生するとき。つまり、今から30年も昔のことだ。そのときと今と、ステータス的には変化がなくとも、根本的な肉体は衰えてきているのだろう。
だからこそ、このスキルは危険だ。
その当時でさえ、三時間がリミットだった。68という年齢で、発動させるようなスキルではなかったはずだ。……きっと、サラさんたちも止めただろう。こんな危険なこと、普通だったらさせられないし、出来ない。
彰人さんは、発動させた。
他のなんでもない、僕らUnfinishedのために、この危険なスキルを発動させた。
……前に、彰人さん、やるときゃやるんだよって言ってたな。……その通りだ。やるときは、本気でやる。それが彰人さんなんだ。僕よりも、個性の塊'sよりも、ずっと前にここにやってきた転生者。きっと……その胸には、大きな意思があるのだろう。
「ファイヤーウェーブ!」
僕はそれを、焼き尽くす。
ただ、自分の意思を貫くために、目の前の人間の意思を焼く。……残忍で、自分勝手だ。でも……例えそれを元に、恨まれ殺されたとしても、世間から冷たい視線を浴び続けたとしても、Unfinishedにいられなくなったとしても……彰人さんが死んでしまうより、ずっとずっといいと思った。
「ウタっ! アキヒトは頼んだぞ!」
アリアさんが僕に声をかけ、倒れこんだ、サラさんとエドさんの方へと向かう。僕はスラちゃんとフローラに目配せしてから、彰人さんの方へと向かった。
……横たわる体は、年を刻んだ老人のものだ。僕はその体に、手を翳した。
「……ケアル」
「…………羽汰……お前」
「スキル……解いてください。お願いします……」
「…………」
「お願いです彰人さん……スキル、解いてください……!」
彰人さんは、地面に仰向けに寝転がり、自虐を含む、乾いた笑いをこぼした。それから、僕らと目を合わせず空を見上げたまま、「なぁ」と話し始めた。
「それで俺が……『嫌だ』って言ったら……どうするつもりだ?」
「…………」
「説得を続けるか? 金や物でつるか? 痛めつけるか? ……どれも俺には効かないね」
「……なら」
「あぁ、Unfinishedが傷ついたところで俺はやめねぇ。心はUnfinishedなら簡単に癒せるし、体は、お前らがお互い殺す勢いでやんないと対象外だな。『ダメでも平気』ってことがわかってると、おもしろくないのさ」
「…………それでも」
僕は彰人さんの隣に座り、やさしく、その手を握った。……なんだかごつごつとしていて、豆がたくさんあって、シワがあって……かっこいい手だ。
人生の、50年上の先輩だ。……僕の倍以上の経験を積んだ人だ。その人が言うことは、きっと正しい。
「それでも……僕は、諦めたくないです。彰人さんの命を、諦めて先に進むなんて、出来ないです」
「……綺麗事いってるって、分かってるか? みんながみんな幸せで、みんながみんな笑っていて、みんながみんな、平和に、何事もなく生きていく……ここはそんな世の中じゃねぇ。
生きる命があれば消える命がある。命には命を。それが世界の理だ。お前一人の意思で、変えることはできない」
この言葉も、正しい。僕の力はちっぽけだ。対して世界は広大だ。こんな大きく、広大な世界を、変えるような力なんて、僕にはない。
「なんも出来ないなら、自分の命を守ってろ! 家で過ごしたっていい、外に出なくなって、引き込もったって構わない。俺らがちゃんと世話してやる。死なせることなんて絶対にねぇ。
だから…………強くならなくたって、いいんだぜ? 俺ら……」
あぁ……と、思った。
なんで、彰人さんの属性魔法の熟練度がずっと1のままだったのか。その理由が、ようやくわかった気がした。
彰人さんが、望んでいないからだ。
どんなに強い力より、どんなに偉大な権力より、一皿の料理と人々との会話を望んだ彰人さんだから、こんなステータスになったんだ。
「……僕らは、助けにいかなきゃいけません」
手を握りしめる力を、ほんの少し強くする。……というよりは、力が入ってしまった、というのに近いのだが。
「僕は、お願いされました。アリアさんと一緒にいてほしい、アリアさんを助けてあげてほしいって。……とある二人から」
彰人さんは、こちらを見ようとしない。僕は続けた。
「この願いを口に出した二人。一方は『自己犠牲』に溺れて、世界を滅ぼそうとしている。もう一方は、そんな彼に立ち向かうのを、止めている」
「…………」
「……同じです。命の価値は、同じです。僕も、彼も、彰人さんも…………。だからこんなところで一人で死んでいくなんて許しません! どっちも救うには、もうタイムリミットが近いんだ! カウントダウンが始まってる。だから彰人さん!」
「…………羽汰」
「お願いですから、『それ』、止めてください! お願いします!」
……彰人さんが、仄かに微笑んだ……気がした。
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