チート能力解放するにはヘタレを卒業しなきゃいけない

植木鉢たかはし

文字の大きさ
362 / 387
自分の声は聞こえますか?

カウントダウン

しおりを挟む
 時間は、限りなく短い。
 なんせ、彰人さんがあのスキルをもらったのは転生するとき。つまり、今から30年も昔のことだ。そのときと今と、ステータス的には変化がなくとも、根本的な肉体は衰えてきているのだろう。

 だからこそ、このスキルは危険だ。

 その当時でさえ、三時間がリミットだった。68という年齢で、発動させるようなスキルではなかったはずだ。……きっと、サラさんたちも止めただろう。こんな危険なこと、普通だったらさせられないし、出来ない。
 彰人さんは、発動させた。
 他のなんでもない、僕らUnfinishedのために、この危険なスキルを発動させた。

 ……前に、彰人さん、やるときゃやるんだよって言ってたな。……その通りだ。やるときは、本気でやる。それが彰人さんなんだ。僕よりも、個性の塊'sよりも、ずっと前にここにやってきた転生者。きっと……その胸には、大きな意思があるのだろう。


「ファイヤーウェーブ!」


 僕はそれを、焼き尽くす。
 ただ、自分の意思を貫くために、目の前の人間の意思を焼く。……残忍で、自分勝手だ。でも……例えそれを元に、恨まれ殺されたとしても、世間から冷たい視線を浴び続けたとしても、Unfinishedにいられなくなったとしても……彰人さんが死んでしまうより、ずっとずっといいと思った。


「ウタっ! アキヒトは頼んだぞ!」


 アリアさんが僕に声をかけ、倒れこんだ、サラさんとエドさんの方へと向かう。僕はスラちゃんとフローラに目配せしてから、彰人さんの方へと向かった。
 ……横たわる体は、年を刻んだ老人のものだ。僕はその体に、手を翳した。


「……ケアル」

「…………羽汰……お前」

「スキル……解いてください。お願いします……」

「…………」

「お願いです彰人さん……スキル、解いてください……!」


 彰人さんは、地面に仰向けに寝転がり、自虐を含む、乾いた笑いをこぼした。それから、僕らと目を合わせず空を見上げたまま、「なぁ」と話し始めた。


「それで俺が……『嫌だ』って言ったら……どうするつもりだ?」

「…………」

「説得を続けるか? 金や物でつるか? 痛めつけるか? ……どれも俺には効かないね」

「……なら」

「あぁ、Unfinishedが傷ついたところで俺はやめねぇ。心はUnfinishedなら簡単に癒せるし、体は、お前らがお互い殺す勢いでやんないと対象外だな。『ダメでも平気』ってことがわかってると、おもしろくないのさ」

「…………それでも」


 僕は彰人さんの隣に座り、やさしく、その手を握った。……なんだかごつごつとしていて、豆がたくさんあって、シワがあって……かっこいい手だ。
 人生の、50年上の先輩だ。……僕の倍以上の経験を積んだ人だ。その人が言うことは、きっと正しい。


「それでも……僕は、諦めたくないです。彰人さんの命を、諦めて先に進むなんて、出来ないです」

「……綺麗事いってるって、分かってるか? みんながみんな幸せで、みんながみんな笑っていて、みんながみんな、平和に、何事もなく生きていく……ここはそんな世の中じゃねぇ。
 生きる命があれば消える命がある。命には命を。それが世界の理だ。お前一人の意思で、変えることはできない」


 この言葉も、正しい。僕の力はちっぽけだ。対して世界は広大だ。こんな大きく、広大な世界を、変えるような力なんて、僕にはない。


「なんも出来ないなら、自分の命を守ってろ! 家で過ごしたっていい、外に出なくなって、引き込もったって構わない。俺らがちゃんと世話してやる。死なせることなんて絶対にねぇ。
 だから…………強くならなくたって、いいんだぜ? 俺ら……」


 あぁ……と、思った。
 なんで、彰人さんの属性魔法の熟練度がずっと1のままだったのか。その理由が、ようやくわかった気がした。

 彰人さんが、望んでいないからだ。
 どんなに強い力より、どんなに偉大な権力より、一皿の料理と人々との会話を望んだ彰人さんだから、こんなステータスになったんだ。


「……僕らは、助けにいかなきゃいけません」


 手を握りしめる力を、ほんの少し強くする。……というよりは、力が入ってしまった、というのに近いのだが。


「僕は、お願いされました。アリアさんと一緒にいてほしい、アリアさんを助けてあげてほしいって。……とある二人から」


 彰人さんは、こちらを見ようとしない。僕は続けた。


「この願いを口に出した二人。一方は『自己犠牲』に溺れて、世界を滅ぼそうとしている。もう一方は、そんな彼に立ち向かうのを、止めている」

「…………」

「……同じです。命の価値は、同じです。僕も、彼も、彰人さんも…………。だからこんなところで一人で死んでいくなんて許しません! どっちも救うには、もうタイムリミットが近いんだ! カウントダウンが始まってる。だから彰人さん!」

「…………羽汰」

「お願いですから、『それ』、止めてください! お願いします!」


 ……彰人さんが、仄かに微笑んだ……気がした。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

3点スキルと食事転生。食いしん坊の幸福無双。〜メシ作るために、貰ったスキル、完全に戦闘狂向き〜

幸運寺大大吉丸◎ 書籍発売中
ファンタジー
伯爵家の当主と側室の子であるリアムは転生者である。 転生した時に、目立たないから大丈夫と貰ったスキルが、転生して直後、ひょんなことから1番知られてはいけない人にバレてしまう。 - 週間最高ランキング:総合297位 - ゲス要素があります。 - この話はフィクションです。

【本編完結】転生令嬢は自覚なしに無双する

ベル
ファンタジー
ふと目を開けると、私は7歳くらいの女の子の姿になっていた。 きらびやかな装飾が施された部屋に、ふかふかのベット。忠実な使用人に溺愛する両親と兄。 私は戸惑いながら鏡に映る顔に驚愕することになる。 この顔って、マルスティア伯爵令嬢の幼少期じゃない? 私さっきまで確か映画館にいたはずなんだけど、どうして見ていた映画の中の脇役になってしまっているの?! 映画化された漫画の物語の中に転生してしまった女の子が、実はとてつもない魔力を隠し持った裏ボスキャラであることを自覚しないまま、どんどん怪物を倒して無双していくお話。 設定はゆるいです

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

御家騒動なんて真っ平ごめんです〜捨てられた双子の片割れは平凡な人生を歩みたい〜

伽羅
ファンタジー
【幼少期】 双子の弟に殺された…と思ったら、何故か赤ん坊に生まれ変わっていた。 ここはもしかして異世界か?  だが、そこでも双子だったため、後継者争いを懸念する親に孤児院の前に捨てられてしまう。 ようやく里親が見つかり、平和に暮らせると思っていたが…。 【学院期】 学院に通い出すとそこには双子の片割れのエドワード王子も通っていた。 周りに双子だとバレないように学院生活を送っていたが、何故かエドワード王子の影武者をする事になり…。  

第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。

黒ハット
ファンタジー
 前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。  

悪徳領主の息子に転生しました

アルト
ファンタジー
 悪徳領主。その息子として現代っ子であった一人の青年が転生を果たす。  領民からは嫌われ、私腹を肥やす為にと過分過ぎる税を搾り取った結果、家の外に出た瞬間にその息子である『ナガレ』が領民にデカイ石を投げつけられ、意識不明の重体に。  そんな折に転生を果たすという不遇っぷり。 「ちょ、ま、死亡フラグ立ち過ぎだろおおおおお?!」  こんな状態ではいつ死ぬか分かったもんじゃない。  一刻も早い改善を……!と四苦八苦するも、転生前の人格からは末期過ぎる口調だけは受け継いでる始末。  これなんて無理ゲー??

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

侯爵家の愛されない娘でしたが、前世の記憶を思い出したらお父様がバリ好みのイケメン過ぎて毎日が楽しくなりました

下菊みこと
ファンタジー
前世の記憶を思い出したらなにもかも上手くいったお話。 ご都合主義のSS。 お父様、キャラチェンジが激しくないですか。 小説家になろう様でも投稿しています。 突然ですが長編化します!ごめんなさい!ぜひ見てください!

処理中です...