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――割れる。
この空間が、割れていく。
あぁ……私は、結局、誰も守ることができなかった。それどころか……守られてばかりのまま、なにも変わっていない。守られて、周りが傷ついていくのを、黙ってみているしかない。そんな存在だった。
……ウタくんは、すごく、強くなった。私なんかが、守らなくてもいいくらいに、強く。勝てないくらいに強く。
あの日、転生してきたばかりで、レベル1で、あまりにも弱くて……守ろうと思った。アリアと同じように、守らなきゃいけないと思った。
なぜかと今考えてみたら……ディランと似ていたからかもしれない。同じ『勇気』を操る存在。外見は似ていないけれど、中身がよく似ていた。優しすぎて、損しちゃうところとか。変なところ押しが弱くて、振り回されたりだとか。
(……信じて、大丈夫、かな? いなく、ならないかな)
一番臆病なのは、私だ。頼りなくて弱くって、どうしようもないのは私だ。怖くてしかたがないのだ。これ以上、誰かを失いたくない。
ウタくんがいくら言葉で伝えてきたって、私は、それを手放しに喜んで、信じることはできない。ディランはいなくなった。これは、紛れもない事実で、私にとっての大きなトラウマになった。
……それでも、この空間がこうして崩れ去っていくのは、私が、ウタくんの『生きて帰ってくる』という言葉を信じたからに違いない。
ごめんなさい、みんな。でも……一度信じてしまったものを否定するって言うのは、そう簡単にできることじゃないの。だから……私は、Unfinishedを信じることにした。
怒られたって構わない。私の、大切な人たちのためだから。
そしてあわよくば……この『大切な人』たちが、私のもう一人の大切な人を、救ってくれますように。……そんな、淡い期待を胸に抱いて、私はこの空間を、打ち砕いた。
「エマさん……」
「…………ウタ、くん……」
崩れる空間の中、ウタくんと眼があった。……苦しませてしまったかな。身内と戦わせて、傷つけて、操って……。
そんな私に向かって、ウタくんはにこりと微笑んだ。
「僕らは、嘘はつきませんからね!」
……私は、微笑み返した。
「……分かってるわ」
◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈
「シエルトっ!」
「アリア殿、フローラ、左右に避けろ!」
「わかりましたっ!」
「ありがとう……セイントエレキテルっ!」
終わらない攻防。止まらない動き。これをいつまで続ければいいのか……。なんせ、ウタの一撃はどれも比べ物にならないほど重い。これを耐えるだけでも精一杯なのだ。
シエルトを張って、回復して、避けて、魔法を放つ。……それさえも、簡単にできない。
(なんとか……ここを乗りきれれば、大丈夫なはずなんだ……! だから……耐えるぞ、ウタ。私は諦めないさ。お前が戻ってくるって、信じてるから)
……そのとき、エマがポツリと呟いたのが聞こえた。
「……みんな、ごめんね」
「……エマ?」
突然のことで、みんな理解が追い付いていないようだった。……でも、私には分かる。エマが、何を謝ったのか。
そして……小さく、微笑んだ。
――勝った。
「…………この勝負、私たちの勝ちだな」
私が何気なく呟くと、隣からクスクスという笑い声が聞こえた。見れば、ポロんくんとフローラが、二人でなにやら笑いあっていた。
「やったな! おいらたち、もう大丈夫だ」
「ですね! 私、わかっちゃいましたもん! 流石ウタさんですね!」
「あーっ! 二人も気づいたんだね! へへん、ぼくも気づいちゃったんだー!」
「ウタ殿はそう簡単にとは思っていたが……予想通りだったな」
……なんだ、みんな気づいてるじゃないか。
そうこうしている間に、ウタが魔法を放つ。協力な光魔法だ。シエルトなんかあっという間に貫通してしまうような……。
しかしそれは、私たちに届く前に、弾け、消え去ってしまった。
「……まさか、本当なのか!?」
アキヒトが驚いたような声をあげる。……それは、そうなのかもしれない。私たちが驚いていないだけだ。
普通に考えたら、まず、不可能なことなのだから。限界を越えたウタが、さらにその上をいく、だなんて。そんなこと、ありえないはずだったのだ。
「――陰陽進退!」
降り注ぐ斬擊。それは、エドたちに向けられたものだ。的確なコントロールをされたそれは、相手の武器を確実に落としていった。それくらい……ウタには、楽なことだろう。
私たちの前に立ちふさがったのは、ウタだ。疑心暗鬼を振り払って、戻ってきたのだ……Unfinishedに。
……さすが私が信じた男だ。
「ウタ! 私たちなら大丈夫だ! 終わらせてくれ! 今すぐに!」
急ぐのには理由がある。……先程から、アキヒトの様子がどことなくおかしい。スキルの副作用が出てきているのかもしれない。早く助けなければ……!
……そんな私の心を読み取ったのか、ウタは真剣な眼差しで手をかざした。
「ファイヤーウェーブ!」
この空間が、割れていく。
あぁ……私は、結局、誰も守ることができなかった。それどころか……守られてばかりのまま、なにも変わっていない。守られて、周りが傷ついていくのを、黙ってみているしかない。そんな存在だった。
……ウタくんは、すごく、強くなった。私なんかが、守らなくてもいいくらいに、強く。勝てないくらいに強く。
あの日、転生してきたばかりで、レベル1で、あまりにも弱くて……守ろうと思った。アリアと同じように、守らなきゃいけないと思った。
なぜかと今考えてみたら……ディランと似ていたからかもしれない。同じ『勇気』を操る存在。外見は似ていないけれど、中身がよく似ていた。優しすぎて、損しちゃうところとか。変なところ押しが弱くて、振り回されたりだとか。
(……信じて、大丈夫、かな? いなく、ならないかな)
一番臆病なのは、私だ。頼りなくて弱くって、どうしようもないのは私だ。怖くてしかたがないのだ。これ以上、誰かを失いたくない。
ウタくんがいくら言葉で伝えてきたって、私は、それを手放しに喜んで、信じることはできない。ディランはいなくなった。これは、紛れもない事実で、私にとっての大きなトラウマになった。
……それでも、この空間がこうして崩れ去っていくのは、私が、ウタくんの『生きて帰ってくる』という言葉を信じたからに違いない。
ごめんなさい、みんな。でも……一度信じてしまったものを否定するって言うのは、そう簡単にできることじゃないの。だから……私は、Unfinishedを信じることにした。
怒られたって構わない。私の、大切な人たちのためだから。
そしてあわよくば……この『大切な人』たちが、私のもう一人の大切な人を、救ってくれますように。……そんな、淡い期待を胸に抱いて、私はこの空間を、打ち砕いた。
「エマさん……」
「…………ウタ、くん……」
崩れる空間の中、ウタくんと眼があった。……苦しませてしまったかな。身内と戦わせて、傷つけて、操って……。
そんな私に向かって、ウタくんはにこりと微笑んだ。
「僕らは、嘘はつきませんからね!」
……私は、微笑み返した。
「……分かってるわ」
◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈
「シエルトっ!」
「アリア殿、フローラ、左右に避けろ!」
「わかりましたっ!」
「ありがとう……セイントエレキテルっ!」
終わらない攻防。止まらない動き。これをいつまで続ければいいのか……。なんせ、ウタの一撃はどれも比べ物にならないほど重い。これを耐えるだけでも精一杯なのだ。
シエルトを張って、回復して、避けて、魔法を放つ。……それさえも、簡単にできない。
(なんとか……ここを乗りきれれば、大丈夫なはずなんだ……! だから……耐えるぞ、ウタ。私は諦めないさ。お前が戻ってくるって、信じてるから)
……そのとき、エマがポツリと呟いたのが聞こえた。
「……みんな、ごめんね」
「……エマ?」
突然のことで、みんな理解が追い付いていないようだった。……でも、私には分かる。エマが、何を謝ったのか。
そして……小さく、微笑んだ。
――勝った。
「…………この勝負、私たちの勝ちだな」
私が何気なく呟くと、隣からクスクスという笑い声が聞こえた。見れば、ポロんくんとフローラが、二人でなにやら笑いあっていた。
「やったな! おいらたち、もう大丈夫だ」
「ですね! 私、わかっちゃいましたもん! 流石ウタさんですね!」
「あーっ! 二人も気づいたんだね! へへん、ぼくも気づいちゃったんだー!」
「ウタ殿はそう簡単にとは思っていたが……予想通りだったな」
……なんだ、みんな気づいてるじゃないか。
そうこうしている間に、ウタが魔法を放つ。協力な光魔法だ。シエルトなんかあっという間に貫通してしまうような……。
しかしそれは、私たちに届く前に、弾け、消え去ってしまった。
「……まさか、本当なのか!?」
アキヒトが驚いたような声をあげる。……それは、そうなのかもしれない。私たちが驚いていないだけだ。
普通に考えたら、まず、不可能なことなのだから。限界を越えたウタが、さらにその上をいく、だなんて。そんなこと、ありえないはずだったのだ。
「――陰陽進退!」
降り注ぐ斬擊。それは、エドたちに向けられたものだ。的確なコントロールをされたそれは、相手の武器を確実に落としていった。それくらい……ウタには、楽なことだろう。
私たちの前に立ちふさがったのは、ウタだ。疑心暗鬼を振り払って、戻ってきたのだ……Unfinishedに。
……さすが私が信じた男だ。
「ウタ! 私たちなら大丈夫だ! 終わらせてくれ! 今すぐに!」
急ぐのには理由がある。……先程から、アキヒトの様子がどことなくおかしい。スキルの副作用が出てきているのかもしれない。早く助けなければ……!
……そんな私の心を読み取ったのか、ウタは真剣な眼差しで手をかざした。
「ファイヤーウェーブ!」
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