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それは一輪の花のように
祈り
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「…………あなたは、やはり、私が見込んだ通りの人間でしたね、柳原羽汰」
一人の女性が、どこかを見つめ、そうこぼした。透き通るような白い肌に、金色の髪の美しい女性だ。
仄かに微笑みながら何かを見ていた彼女は、はっと息をつき、姿形を変える。そして振り向き、無理矢理作ったような笑顔を、背後の人物に向けた。
「はぁぁぁっ、青年! まだこっちに来るのは若すぎるぞー! 神様だってね、誰もかれも転生させてあげられないんだから、もっと命大事にしなきゃだーめっ! これ女神様とのお約束だぞ!」
「…………」
「あれー? 黙り込んじゃってどうしたの? 混乱してる? 自分が死んだって、分かってない……?」
「いや、分かってる……分かってるさ……とっくに…………」
その男性……マルティネス・エヴァンは、頭を抱えた。そして、その場に崩れ落ちる。
「えっ?! ね、ねぇ、大丈夫? 痛いところあるの? いたいのいたいのとんでけーっ! ……元気になった? 大丈夫?」
「…………俺は……もっと早く、気づけたはずなのに……」
「…………エヴァン?」
「こんな……お前にこんなところで、下手な演技をさせる前に…………俺は、気づけた、はずなのに……」
「…………」
彼女はその言葉に、なにか返そうとして、口をつぐんだ。
そしてなにも言えないまま、姿を本来のものに変えると、うなだれるエヴァンの顔を、そっと胸に寄せた。
「…………謝らなきゃいけないのは、私の方。……ごめんなさい、あなたを死なせたくなんてなかった。守ろうとしたの……本当よ……。でも、守れなかった……」
「……そんなことないさ。守れなかったのは、こっちの方だ。…………ずっと、ここにいたのか? 一人で?」
エヴァンの言葉に、彼女はうなずく。うなずいてから、小さく微笑んだ。
「私は、『女神』だから。一人でいるのが運命。ずっと一人だから、名前なんてものも必要ないの。もう私には、なにも必要ない。ただ一つ…………」
彼女は視線を、『なにか』へ再び向けた。悲しげにも見えたその瞳は、確かな希望に燃えていた。
「あの子達を除いては」
「……アリア、ウタくん…………」
「……Unfinishedは、私たちの希望の光であり、絶望の種。世界を創る存在になり得ながら、世界を破滅へと導きかねない存在でもある」
エヴァンはその言葉を聞くと、彼女に向かってなにかを叫びそうになり、こらえた。そして、絞り出すように言う。
「……女神。俺には、何ができるだろうか。たいして強くもなかった。あっさりと殺されてアリアを傷つけられ、それを知りながら、『殺されている』という理由一つで、助けにいくことが出来なかった」
「……あなたは、悪くないのですよ。最後まであなたは、彼女たちを守ろうとしていた。……その想いは、アリアたちに届いている。絶対に」
二人が見つめる先に『ある』のは、Unfinishedのメンバー六人である。ここから、彼らがどんな場所に向かうのか、そこでどんな目に遭うのか、二人には簡単に想像できた。
「……女神であるあなたから見て……彼らは、Unfinishedは、生きて帰ってこれると思うか? 全員、無事に」
「…………」
彼女は、すぐには答えない。その意味を理解するのは、あまりに容易い。
「……それだけ、強いのか」
「えぇ……。羽汰くんがどう動くかが大切だと思っていたけれど……アリアの行動にも左右されそうね。『彼』はあまりにも強くて、あまりにも弱い。
前から叩いても傷一つつかないけれど、後ろから触れたら、あっという間に崩れてしまう。全員を救うには、『横』から手を伸ばすしかない」
「なるほど……難しいな。背後をとるよりも、ずっとずっと難しい。Unfinishedに……出来るだろうか」
「私は出来ると……信じるだけしか出来ないの」
そこまで二人で話したところで、ふと、彼女はなにかに気づく。『彼』はただの死人である。神ではない。だとしたら……なぜ彼はここにいられるのだろう。神が呼び寄せなければ、ただの死人は、ここには来ることが出来ない。
「エヴァン…………なぜあなたが、ここにいるの……?」
「分かっているんじゃなかったのか?」
「…………」
彼女は、首を振る。それを見たエヴァンは、ぷっと吹き出して笑った。やはり彼女は『神』ではないのだと。
「何を笑って……からかわないでください」
「いや、すまない……『女神』が神じゃなかったことに安心してな」
「…………それは、どう、いう……」
彼は、彼女の手を引き、抱き締める。もう二度と、手離さないように。
「……死んだすぐあと、君に会いたいと思った。きっと、ここにいると思ったんだ。だからここに来た」
「……エヴァン」
「同じ道を選んだだけだ。……力は君に及ばないが、君は自分を守らないだろう?」
彼は、彼女の名前を呼ぶ。確かめるように、一度、二度……三度……。
「……いつから?」
「彼が現れたときからさ。……近いうちに、彼も気づくだろうね」
「……そう」
彼女は、彼を抱き締め返す。
「ありがとう、エヴァン……」
一人の女性が、どこかを見つめ、そうこぼした。透き通るような白い肌に、金色の髪の美しい女性だ。
仄かに微笑みながら何かを見ていた彼女は、はっと息をつき、姿形を変える。そして振り向き、無理矢理作ったような笑顔を、背後の人物に向けた。
「はぁぁぁっ、青年! まだこっちに来るのは若すぎるぞー! 神様だってね、誰もかれも転生させてあげられないんだから、もっと命大事にしなきゃだーめっ! これ女神様とのお約束だぞ!」
「…………」
「あれー? 黙り込んじゃってどうしたの? 混乱してる? 自分が死んだって、分かってない……?」
「いや、分かってる……分かってるさ……とっくに…………」
その男性……マルティネス・エヴァンは、頭を抱えた。そして、その場に崩れ落ちる。
「えっ?! ね、ねぇ、大丈夫? 痛いところあるの? いたいのいたいのとんでけーっ! ……元気になった? 大丈夫?」
「…………俺は……もっと早く、気づけたはずなのに……」
「…………エヴァン?」
「こんな……お前にこんなところで、下手な演技をさせる前に…………俺は、気づけた、はずなのに……」
「…………」
彼女はその言葉に、なにか返そうとして、口をつぐんだ。
そしてなにも言えないまま、姿を本来のものに変えると、うなだれるエヴァンの顔を、そっと胸に寄せた。
「…………謝らなきゃいけないのは、私の方。……ごめんなさい、あなたを死なせたくなんてなかった。守ろうとしたの……本当よ……。でも、守れなかった……」
「……そんなことないさ。守れなかったのは、こっちの方だ。…………ずっと、ここにいたのか? 一人で?」
エヴァンの言葉に、彼女はうなずく。うなずいてから、小さく微笑んだ。
「私は、『女神』だから。一人でいるのが運命。ずっと一人だから、名前なんてものも必要ないの。もう私には、なにも必要ない。ただ一つ…………」
彼女は視線を、『なにか』へ再び向けた。悲しげにも見えたその瞳は、確かな希望に燃えていた。
「あの子達を除いては」
「……アリア、ウタくん…………」
「……Unfinishedは、私たちの希望の光であり、絶望の種。世界を創る存在になり得ながら、世界を破滅へと導きかねない存在でもある」
エヴァンはその言葉を聞くと、彼女に向かってなにかを叫びそうになり、こらえた。そして、絞り出すように言う。
「……女神。俺には、何ができるだろうか。たいして強くもなかった。あっさりと殺されてアリアを傷つけられ、それを知りながら、『殺されている』という理由一つで、助けにいくことが出来なかった」
「……あなたは、悪くないのですよ。最後まであなたは、彼女たちを守ろうとしていた。……その想いは、アリアたちに届いている。絶対に」
二人が見つめる先に『ある』のは、Unfinishedのメンバー六人である。ここから、彼らがどんな場所に向かうのか、そこでどんな目に遭うのか、二人には簡単に想像できた。
「……女神であるあなたから見て……彼らは、Unfinishedは、生きて帰ってこれると思うか? 全員、無事に」
「…………」
彼女は、すぐには答えない。その意味を理解するのは、あまりに容易い。
「……それだけ、強いのか」
「えぇ……。羽汰くんがどう動くかが大切だと思っていたけれど……アリアの行動にも左右されそうね。『彼』はあまりにも強くて、あまりにも弱い。
前から叩いても傷一つつかないけれど、後ろから触れたら、あっという間に崩れてしまう。全員を救うには、『横』から手を伸ばすしかない」
「なるほど……難しいな。背後をとるよりも、ずっとずっと難しい。Unfinishedに……出来るだろうか」
「私は出来ると……信じるだけしか出来ないの」
そこまで二人で話したところで、ふと、彼女はなにかに気づく。『彼』はただの死人である。神ではない。だとしたら……なぜ彼はここにいられるのだろう。神が呼び寄せなければ、ただの死人は、ここには来ることが出来ない。
「エヴァン…………なぜあなたが、ここにいるの……?」
「分かっているんじゃなかったのか?」
「…………」
彼女は、首を振る。それを見たエヴァンは、ぷっと吹き出して笑った。やはり彼女は『神』ではないのだと。
「何を笑って……からかわないでください」
「いや、すまない……『女神』が神じゃなかったことに安心してな」
「…………それは、どう、いう……」
彼は、彼女の手を引き、抱き締める。もう二度と、手離さないように。
「……死んだすぐあと、君に会いたいと思った。きっと、ここにいると思ったんだ。だからここに来た」
「……エヴァン」
「同じ道を選んだだけだ。……力は君に及ばないが、君は自分を守らないだろう?」
彼は、彼女の名前を呼ぶ。確かめるように、一度、二度……三度……。
「……いつから?」
「彼が現れたときからさ。……近いうちに、彼も気づくだろうね」
「……そう」
彼女は、彼を抱き締め返す。
「ありがとう、エヴァン……」
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