夏の思い出

岡倉弘毅

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別荘

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 季節外れの別荘地に向かっていた。

 夏の間は茂っていたであろう木の葉は地面に落ち、風に吹かれてカサカサと心地良い音を立てている。

 道夫の記憶では、この辺りは木々の緑と空の青と、半袖では少々肌寒さを感じさせる澄んだ空気。

 中学生までは伯父の別荘のあるこの地に、夏休みになると遊びに来ていた。

 伯父は年の離れた弟である道夫の父親を可愛がっていた。

 そのため、道夫も随分と可愛がられたものである。

 しかし、中学三年の年に伯父が亡くなり、伯父の長男が継ぐと別荘には一切呼ばれなくなった。

 長男と仲が悪かったわけではない。十三も年が離れていたから仲が良かったというよりは、父達との関係と同じく、可愛がられたという表現があっていた。

 長男は結婚もせず、冬になるとこの別荘に二週間ほど泊まり込んでいた。
 
 誰も伴うことなく、一人で。

 長男の死によって、父親が受け継いだ財産の中に、別荘があった。

 最初こそ、久しぶりに皆で別荘に行こうか。と言っていた父親も、なぜか一人で訪れ、一週間ほどの時間を過ごしていたのだが、三年目に別荘からの帰りに交通事故で他界した。

 そうして唯一の相続人となった道夫は、十年ぶりに訪れることにしたのだ。

 心配する母親は母方の実家に送り届け、十二月の初めに取れた五連休を利用することにした。

 どうして長男と父親がたった一人で過ごそうとしたのか、どうして別荘にいる間の話を一切しようとしなかったのか、知りたかった。

 そうして、十年前に見たあの美しい……幻のように美しい姿を思い出し、道夫は枯葉を踏みしめ、別荘に向かった……。
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