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第11章. 愛をちょうだい
【傷】
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舞と過ごした余韻がまだ抜けきらない
そんな心持ちで
男子二人の冴えない話を聞くのは
正直、少し億劫だった。
どうせ女の子に関する愚痴か何かだろう。
「なぁ?コウイチはどう思う?」
いきなり話を切り出したのは悟史
「どうって、何の話だよ?」
悟史は亮二に視線を送りながらこう言った。
「サカキのことだよ」
亮二はやまちゃんからは名字を文字って
" サカキ "と呼ばれている。
「え?何があったんだ?」
「彼女と大喧嘩したんだってよ」
やや神経質で細かいところを気にする、
そして妙なこだわりの強い亮二の性格は
今、共に音楽をやっている仲だから
よく知っていた。
あの感じで和花に接しているのなら
彼女が辟易する時も多々あるだろう。
「で、何が原因なんだ?」
「・・・」
尋ねてみたが亮二は答えない。
「こいつ、さっきから『あいつが悪い』の一点張りでさ」
悟史も半ば呆れ気味だ。
「とりあえず、訳を聞かなきゃ俺らも解決策が見つからないだろ」
二人とも随分と酒臭かった
よほど長時間飲んでいるのだろう。
酔いの勢いもあってか
ようやく亮二は渋々と喧嘩の原因を話し始めた。
「実はさ・・・」
僕は思わず
「くだらない」と口にしそうになったが
亮二の思いも尊重しよう、とグッと堪えた。
“つまらない”
僕にとっては実につまらない理由なのだが
亮二にとっては大問題、なのだろう。
何と、和花が亮二にとって
"初めての人"
ではなかったのをずっと黙っていたこと、
それを今日知ったことが大喧嘩の原因らしい。
「何だそれ?」
それを聞いた悟史は
吐き出すようにそう言った。
「『何だそれ』で済む話じゃないだろ!」
悟史の素っ気ないリアクションに
亮二が激昂して詰め寄った。
正直、僕も悟史と同じ思いだったが
ここで彼に同意するのは
何だか気の毒にも思えたので静観していた。
「あいつが、和花がそんなヤツだなんて、俺はガッカリだ」
その言葉を聞いた途端、悟史の表情が一変した。
「サカキ、一言だけ言っとくけど・・・それは」
「何だよ?」
「お前が悪い!!さっさと謝れ、彼女に!」
悟史のあまりの剣幕に呆気に取られたのか
亮二は何も言い返さず
「あ…えっ?」
ぽかんと口を開けたままだった。
「だよな」
ここに来てようやく僕も
悟史の言葉に賛成の意を表した。
「多分、傷ついたのは和花ちゃんの方だろな」
「小さいヤツだな、お前は彼女の過去も受け止められないのか?」
「あ…いや、そんなことは」
さっきまでの亮二の威勢の良さはまるでなく
気づけば部屋の片隅で小さくなっていた。
「これで解決したな、でさ、俺も聞いてほしいことがあって・・・」
ここから悟史の恋愛相談が始まった。
今まで散々説教していた相手に
悩みを話しても解決しないだろう、
僕は笑いをこらえるのに必死だった。
するとそんな悟史は急に僕へと踵を返し
「コウイチ、お前はいいよな、女の子取っ替え引っ替えしてんだろ」
何と標的がいつしか僕にすり変わっていた
しかも何とも聞き捨てならない台詞まで
投げ掛けられて。
僕も黙っている訳にはいかなくなった。
そんな心持ちで
男子二人の冴えない話を聞くのは
正直、少し億劫だった。
どうせ女の子に関する愚痴か何かだろう。
「なぁ?コウイチはどう思う?」
いきなり話を切り出したのは悟史
「どうって、何の話だよ?」
悟史は亮二に視線を送りながらこう言った。
「サカキのことだよ」
亮二はやまちゃんからは名字を文字って
" サカキ "と呼ばれている。
「え?何があったんだ?」
「彼女と大喧嘩したんだってよ」
やや神経質で細かいところを気にする、
そして妙なこだわりの強い亮二の性格は
今、共に音楽をやっている仲だから
よく知っていた。
あの感じで和花に接しているのなら
彼女が辟易する時も多々あるだろう。
「で、何が原因なんだ?」
「・・・」
尋ねてみたが亮二は答えない。
「こいつ、さっきから『あいつが悪い』の一点張りでさ」
悟史も半ば呆れ気味だ。
「とりあえず、訳を聞かなきゃ俺らも解決策が見つからないだろ」
二人とも随分と酒臭かった
よほど長時間飲んでいるのだろう。
酔いの勢いもあってか
ようやく亮二は渋々と喧嘩の原因を話し始めた。
「実はさ・・・」
僕は思わず
「くだらない」と口にしそうになったが
亮二の思いも尊重しよう、とグッと堪えた。
“つまらない”
僕にとっては実につまらない理由なのだが
亮二にとっては大問題、なのだろう。
何と、和花が亮二にとって
"初めての人"
ではなかったのをずっと黙っていたこと、
それを今日知ったことが大喧嘩の原因らしい。
「何だそれ?」
それを聞いた悟史は
吐き出すようにそう言った。
「『何だそれ』で済む話じゃないだろ!」
悟史の素っ気ないリアクションに
亮二が激昂して詰め寄った。
正直、僕も悟史と同じ思いだったが
ここで彼に同意するのは
何だか気の毒にも思えたので静観していた。
「あいつが、和花がそんなヤツだなんて、俺はガッカリだ」
その言葉を聞いた途端、悟史の表情が一変した。
「サカキ、一言だけ言っとくけど・・・それは」
「何だよ?」
「お前が悪い!!さっさと謝れ、彼女に!」
悟史のあまりの剣幕に呆気に取られたのか
亮二は何も言い返さず
「あ…えっ?」
ぽかんと口を開けたままだった。
「だよな」
ここに来てようやく僕も
悟史の言葉に賛成の意を表した。
「多分、傷ついたのは和花ちゃんの方だろな」
「小さいヤツだな、お前は彼女の過去も受け止められないのか?」
「あ…いや、そんなことは」
さっきまでの亮二の威勢の良さはまるでなく
気づけば部屋の片隅で小さくなっていた。
「これで解決したな、でさ、俺も聞いてほしいことがあって・・・」
ここから悟史の恋愛相談が始まった。
今まで散々説教していた相手に
悩みを話しても解決しないだろう、
僕は笑いをこらえるのに必死だった。
するとそんな悟史は急に僕へと踵を返し
「コウイチ、お前はいいよな、女の子取っ替え引っ替えしてんだろ」
何と標的がいつしか僕にすり変わっていた
しかも何とも聞き捨てならない台詞まで
投げ掛けられて。
僕も黙っている訳にはいかなくなった。
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