退屈令嬢のフィクサーな日々

ユウキ

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クレアの聴取

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 クレアは状況を他人事のようにぼーっとしたまま脳内で眺めていた。

 暫くすると鍵の解錠音が聞こえ、開かれた扉からマーティンと警備員、騎士の3名が入ってきた。

 警備員は書き物机に座り、対面の椅子にはマーティンが座り、マーティンの後ろに騎士が見張るように距離を置いて立つ。


「オーガスティン嬢、何があったのか正直に話してくれ」
「マーティン…!私何もっっ!信じて!」


 ガタッと音を立てて、前のめりに立ち上がったクレアを、素早く騎士が押さえて座らせた。


「落ち着いてくれ。それから私も言ったと思うが、許しもしていないのに呼び捨てにしないでくれ」
「そんあ、マーティ」
「メルウォートだ。オーガスティン嬢」
「メルウォート…様」


 なんだか既視感のあるやりとりに、眉を寄せて戸惑うクレアに、マーティンは静かに声をかける。


「君は殿下の証言により、ハーレイ嬢が転落した時に、階段の最上部からハーレイ嬢に向けて手を伸ばした状態で立っていたと聞いている。
 私たちがその場に到着した時には階段上で手を胸の前で曲げて握り込み、殿下に向けて弁明をしているところだったが…」
「わっっ私何も!突き落としたりなんてしていないわ!あの女がいきなり…!」


 クレアの言葉に騎士はスッと射抜くように目を細め、腰に下げた剣に手をかけた。それを後ろ手に手をあげて制したマーティンは、クレアに初めて厳しい視線を向けた。


「オーガスティン嬢、目上の爵位の者を『あの女』などと言うな。弁えて発言しろ」


 凍てつくような視線を向けられたクレアは、たじろいで言葉をつまらせたが、先を言うように促される。


「わたしっっっ、そう、あの…ハーレイ様に呼び止められて…」
「なぜだ?」
「え…と、殿下…の事で…?」
「そもそも君はあの授業にいなかったはずだ。あの時間にあそこにいた理由は?」
「ゃ…ぇ…」


「待ち伏せていました」と言えるはずもなく、言葉に詰まったまま沈黙してしまったクレアに、マーティンはため息を溢した。
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