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~離別~
さようなら
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一瞬で屋敷の自分の部屋に飛んだユグドラシルは、荷物の片付けを始めた。大した荷物もないのだが、絶対に持って行きたいものはある。
本当は森でポッポたちと一緒に作った服を着たかったが、家の人に見られたら騒がれると思い、もともと持っていた服の中で一番清潔なものに着替え、残りは与えられたボロいバッグに入れた。このバッグにはこれ以外は入れていない。
食べ物の入った籠はすでに異次元収納の中に入っている。念のためにヒッポグリフの腕輪とニーベルングの指輪も異次元収納に入れる。男爵家や公爵家に見つかってしまったらおしまいだからね。
ちなみに異次元収納とは、空間魔法を使って亜空間を作り出し、そこに物質を保管する魔法である。生物を収納できないというデメリットはあるが、中に入れたものが劣化しない、無限に入れることができる、どんな大きさのものも入るなど、メリットも多い。
それから今までポッポからもらってきた物も当然異次元収納に入れる。ポッポへの貢物だった布や宝石、生の食材なんかも山のようにあるのだ。それをここにおいていくわけにはいかない。
生の食材を入れることに関しては文句なしに優秀な異次元収納である。だって腐らないからね。
もちろんポッポの力で時間は止められているから、半年前の食品であるにもかかわらず、いつまでもみずみずしいままだ。あとなぜか食器の類も供物として捧げられていた。用途がないポッポは当然ユールに譲り渡してきて、ユールも念のためにと思って受け取っている。
その食器類の中に混ざっていた水差しで、泉の水も汲んでいる。その数16本。なぜこんなに水差しがあるのかは近隣の方々に聞いてください。これも当然異次元収納行き。ユール的には美味しいお水だからうれしいけどね。
着替えも準備も終わり、ちょうど髪を留め終えたタイミングでドアがノックされた。ドアを開けるとメイドが一人。
「迎えの馬車がきております」
ユールは返事をすることなくメイドの後ろをついていく。人を相手にすると、相変わらず氷の人形となるユールであった。
エントランスまでくると、メイドは去って行った。ここまでが仕事だったらしい。ユールはいなくなったメイドなど気にすることなく、あっさりと屋敷を出ていく。もともとここに愛着も何もない。
正門の前にはとてつもなく豪華な馬車が止まっていた。手荷物一つのユールは、そのまま馬車に乗せられた。ドアが閉まり、ガタゴトと馬車が動き出す。
4年間住んでいたこの館とも、永遠にお別れだ。ユールは妙に清々しい気分だった。
本当は森でポッポたちと一緒に作った服を着たかったが、家の人に見られたら騒がれると思い、もともと持っていた服の中で一番清潔なものに着替え、残りは与えられたボロいバッグに入れた。このバッグにはこれ以外は入れていない。
食べ物の入った籠はすでに異次元収納の中に入っている。念のためにヒッポグリフの腕輪とニーベルングの指輪も異次元収納に入れる。男爵家や公爵家に見つかってしまったらおしまいだからね。
ちなみに異次元収納とは、空間魔法を使って亜空間を作り出し、そこに物質を保管する魔法である。生物を収納できないというデメリットはあるが、中に入れたものが劣化しない、無限に入れることができる、どんな大きさのものも入るなど、メリットも多い。
それから今までポッポからもらってきた物も当然異次元収納に入れる。ポッポへの貢物だった布や宝石、生の食材なんかも山のようにあるのだ。それをここにおいていくわけにはいかない。
生の食材を入れることに関しては文句なしに優秀な異次元収納である。だって腐らないからね。
もちろんポッポの力で時間は止められているから、半年前の食品であるにもかかわらず、いつまでもみずみずしいままだ。あとなぜか食器の類も供物として捧げられていた。用途がないポッポは当然ユールに譲り渡してきて、ユールも念のためにと思って受け取っている。
その食器類の中に混ざっていた水差しで、泉の水も汲んでいる。その数16本。なぜこんなに水差しがあるのかは近隣の方々に聞いてください。これも当然異次元収納行き。ユール的には美味しいお水だからうれしいけどね。
着替えも準備も終わり、ちょうど髪を留め終えたタイミングでドアがノックされた。ドアを開けるとメイドが一人。
「迎えの馬車がきております」
ユールは返事をすることなくメイドの後ろをついていく。人を相手にすると、相変わらず氷の人形となるユールであった。
エントランスまでくると、メイドは去って行った。ここまでが仕事だったらしい。ユールはいなくなったメイドなど気にすることなく、あっさりと屋敷を出ていく。もともとここに愛着も何もない。
正門の前にはとてつもなく豪華な馬車が止まっていた。手荷物一つのユールは、そのまま馬車に乗せられた。ドアが閉まり、ガタゴトと馬車が動き出す。
4年間住んでいたこの館とも、永遠にお別れだ。ユールは妙に清々しい気分だった。
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