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~出会い~
日常
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次の日の朝、体内時計で5時に目が覚めたユールは、寝ぼけ眼でベッドから起き出した。カーペットの床ではノルンが未だ爆睡している。
起こすのも悪いので、ユールはそっとベッドからおりて窓辺に行く。カーテンの隙間から覗くと、庭は人影一つなく、静まり返っていた。
少しだけ朝の散歩に行ってやろうと思い、ユールは窓を開ける。光学魔法を発動させ、窓からふわっと飛び降りる。同時に飛行魔法も発動させ、落下の衝撃を0にする。
ふわりと着地したユールは、光学魔法を発動させたまま庭を堂々と散策し始めた。途中花壇に咲いている色とりどりな花々も、気に入ったものは何輪か摘み取りながら歩く。
ぐるりと庭を一周すれば、庭の隅に蜂の巣を見つけた。どうせバレたら公爵家に処分されてしまうのなら自分がもらってしまおう、と蜂の巣も異次元収納に放り込む。生物は収納できない異次元収納は、蜂を排除し、蜂蜜の部分だけ回収してくれた。
その頃には6時に差し掛かっていたので、ユールは部屋の窓の下まで戻り、飛行魔法で再び部屋に戻る。
魔法を解除し、窓を閉めたところでノルンが起きた。窓を閉める音で目が覚めたらしい。
「んぁ~おそようさま~~」
しかし完全に寝ぼけている。
「ノルン、おはよう」
「ふぬ?あ、ユール様、おはようございます」
ポンと肩を叩くと、ノルンはすぐさま覚醒した。ちゃんと寝覚めを迎えれば、きちんと起きられる子だと確認した。
「ユール様は早起きですね」
「5時には起きてたから」
「は、早いですね………」
ノルンはこんな朝早くに起きたことがないらしい。
「そういえばノルン」
昨日聞くの、すっかり忘れていた。
「クリステル渓谷の場所、わかる?」
「クリステル渓谷、ですか?」
ノルンが不思議そうにキョトンとしている。
「どうしてですか?」
「ヒッポグリフに何かあったらそこにいるスフィンクスに会うように言われたから」
「へぇ……………え?」
納得したようにつぶやいたノルンだったが、なぜか途中で目を剥いた。
「スフィンクス?スフィンクスと言いました?」
「…?スフィンクスだよ?」
ノルンは何をそんなに驚いてるの?
「スフィンクスって、人嫌いナンバーワンの聖獣ですよ?そのスフィンクスに会いに行くんですか?」
「そうだよ?ヒッポグリフから嫌われないお守りももらってるし」
「お守り?」
「昨日見せたじゃない。ヒッポグリフの腕輪」
にわかに信じられない、と顔に書いてあるノルンとしばらくふざけた話をしていると、朝食が届けられた。パンが二枚だけだった。
「ユール様、これはどうアレンジします?」
パン二枚を指差して、ノルンが聞いた。
「ノルンはどっちがいい?ジャムを塗って食べるか、具を挟んでサンドイッチにするか」
「具、挟めるんですか?」
「たくさんは無理だけどね」
「じゃあ………サンドイッチでお願いします」
ノルンとしてはやっぱりサンドイッチは気になったらしい。ユールは異次元収納から材料を取り出し始めた。レタス、ベーコン、卵、チーズ。全て貢物だった食べ物だ。
ウィンドカッターでチーズ、卵、ベーコンをスライスし、パンをそれぞれ半分に折って具材を挟む。
「はい、どうぞ」
できたサンドイッチもどきをノルンに渡し、ユールもサンドイッチを頬張る。
「これも美味しい!聖獣様への貢物って、どんだけ質が高いんだろう?」
それはユールも思っていることだ。もっと調理法が増えればさらに美味しいものが作れるんじゃないかしら?なんて思ったりもする。
昨晩同様、わいわい話しながら食事を終え、トレーを撤収してくれるまで待機する。
「さっきの続き、聞いてもいい?」
「あぁ、クリステル渓谷の場所ですか?詳しく知らないんですが、この屋敷の南東方角にあると聞いたことはあります」
「南東、ね」
「すみません、お役に立てず」
「いや?十分よ」
そのままこの辺りの地理情報を聞いていると、トレーを引き取る音が聞こえた。時間的には7時ぐらい?
「じゃあそろそろ私は出かけるよ」
ユールは立ち上がる。残して行くノルンが退屈しないようにガルズ男爵家から持ち出してきた魔法大全を置いていく。ユールは男爵邸の図書室から、貴重な書物をいくつか持ち出していた。あのような家には勿体無いからだ。
「はい、気をつけてください。この大全も、読ませてもらいます!」
ユールを見送るために、ノルンもあとに続く。
「人がきたら、対応よろしく。何かあったら連絡を」
「もちろんです!いってらっしゃい」
気流を読んで廊下が無人であることを確認し、光学魔法を発動させてユールは廊下に滑り出る。ドアを閉めると、ノルンが閂をかける音が聞こえた。
同時にノルンから"頑張れ"の一言。
それに"ありがと"と返し、ユールは廊下を進む。途中数人の使用人とすれ違ったが、廊下の端を歩いているので誰ともぶつからない。
広すぎる屋敷を歩き回りながら、ユールは脳内で公爵邸の地図を作成する。途中からは偶然見つけた倉庫から紙とペンを拝借し、図面に表してもいた。
結論、一階は来客用、二階は仕事用、三階四階五階は公爵家や使用人の住居。つまり二階と一階は夜になるとほぼ無人となる。
三階より上はどうでもいいから抹消し、まずは二階を探る。昼間には公爵家の主な活動場所らしく、多くの人間が行き来している。
地上にいたらバレるかもしれないと思い、浮遊魔法をかけて天井付近まで浮かび上がった。これならバレる心配もないだろう。
人の行き来が多いことは、逆に部屋の特定がしやすいことも意味している。二階の部屋の割り振りがどうなっているのか、すぐにわかった。早々に地図を完成させてしまったユールは、二階にある公爵用の書斎を訪れた。
ちょうど廊下にも部屋の中にも人がいなく、ユールはまんまと部屋に侵入できた。どうもこの部屋は第二執務室も兼ねているようで、部屋正面には机と椅子がある。これからここで仕事の予定があるのか、机には書類の山が積んである。
部屋の両方の壁にある本棚から気になる本を一冊選び、ユールは本棚の上に移動する。天井までみっちりの本棚ではなく、幼いユールが体育座りできるほどのスペースはあった。
ユールが選んだ本は、経済に関する本だ。上下巻らしく、やたら分厚い。黙々と読み進めていると、部屋のドアが開き、公爵が入ってきた。公爵はユールがいることに気づくことなく、偉そうに椅子に踏ん反り返って書類を眺め始めた。読書の合間にユールが目を向けても、一行に仕事を始めない。しまいにはお茶を届けにきた執事に、「代筆しろ」と言い出す始末。もはや呆れてものも言えない。
公爵には見えていないが、彼の目の前を堂々と2、3往復してユールは経済本上下巻とコミュニケーションの取り方を書いた本を読んだ。まだ午前中だというのにもううたた寝を始めた公爵に軽蔑の眼差しを投げ、ユールは部屋をあとにする。
次に一階に移動した私は、とりあえず地図作りから始めた。一階は人が少なかったが、その代わりより自由に歩き回ることができた。厨房、食堂、図書室もこの階にある。応接室とか音楽室とか、興味のないものばかりなので忘れます。
ひっそりとしている図書室に、ユールは忍び込む。さすが公爵家の図書室、圧巻の一言である。男爵家の三倍はありそう。片っ端から読んでいこう、とユールは一番右側の本棚の一番右上にある本を手に取り、読書の世界に入っていく。
日暮れの頃、全部で42個ある本棚の1個のうちほぼ半分の本を読み尽くし、ユールは大きく背伸びする。結局図書室に人がくることはなく、事実上ここはユールの支配下にあった。
読んでいた本を片し、ユールは部屋に引き返す。食堂の方が賑やかなのをみると、どうやら食事中らしい。
部屋の前に戻り、風魔法で閂を開け、部屋に入る。部屋ではノルンが床に本を広げ、身振り手振りで何かやっている。
「あ、ユール様、おかえりー」
声をかけると、ノルンは元気良く返事する。何をしているのか問えば、魔法の練習をしていたらしい。
「この魔法大全、無属性でも使える魔法がたくさんあったんです!」
余りに嬉しそうに語るので、なんの魔法を習得したのか聞くと、何個か披露してくれた。衝撃波を生み出す魔法、念力のようなもの、他にもいくつかあった。
「この短時間でよくこれだけ習得したね」
「ユール様にはまだまだ叶いませんよ」
そんなほのぼのとした会話をしながら、ユールもまた今日の出来事を話す。二階と一階の地図を作ったことを告げると、光学魔法を教えて欲しいと頼まれた。理由を聞いたところ、そうすれば好き放題屋敷を歩き回れるようになるから、と。
光学魔法はもう少し魔力制御がうまくならないとできないのでお預けとし、いつの間に来ていた夕飯を食べる。今日の夕飯は黒パン二切れのみという、粗末すぎるものだったので、異次元収納に入っているポッポからもらった籠よりステーキを二切れ取り出し、これまた異次元収納から取り出した皿に乗せる。当然ナイフとフォークも用意する。
「聖獣って、どんだけすごいものを貢がれてるんですか?」
「貢がれる、とは失礼よ。ポッポは私以外の人間を邪見してるし、人間が一方的に媚売ろうとしているだけ」
黒パンの方をお口直しに、ステーキを平らげて行く二人。公爵が知ったらきっと怒り狂いそうなほどちゃんとした生活をしている。ポッポの森の近くに、確か牛肉が有名な村があったはず。これはおそらくその村最高の牛肉だろう。
食べ終わってからはいつもの如く自由時間だ。ユールは引き続きノルンに魔力制御を教えたり、一般社会の話を聞かせたりした。
そして明日の朝はどんなご飯にするか話しながら、二人は布団に潜り込む。
起こすのも悪いので、ユールはそっとベッドからおりて窓辺に行く。カーテンの隙間から覗くと、庭は人影一つなく、静まり返っていた。
少しだけ朝の散歩に行ってやろうと思い、ユールは窓を開ける。光学魔法を発動させ、窓からふわっと飛び降りる。同時に飛行魔法も発動させ、落下の衝撃を0にする。
ふわりと着地したユールは、光学魔法を発動させたまま庭を堂々と散策し始めた。途中花壇に咲いている色とりどりな花々も、気に入ったものは何輪か摘み取りながら歩く。
ぐるりと庭を一周すれば、庭の隅に蜂の巣を見つけた。どうせバレたら公爵家に処分されてしまうのなら自分がもらってしまおう、と蜂の巣も異次元収納に放り込む。生物は収納できない異次元収納は、蜂を排除し、蜂蜜の部分だけ回収してくれた。
その頃には6時に差し掛かっていたので、ユールは部屋の窓の下まで戻り、飛行魔法で再び部屋に戻る。
魔法を解除し、窓を閉めたところでノルンが起きた。窓を閉める音で目が覚めたらしい。
「んぁ~おそようさま~~」
しかし完全に寝ぼけている。
「ノルン、おはよう」
「ふぬ?あ、ユール様、おはようございます」
ポンと肩を叩くと、ノルンはすぐさま覚醒した。ちゃんと寝覚めを迎えれば、きちんと起きられる子だと確認した。
「ユール様は早起きですね」
「5時には起きてたから」
「は、早いですね………」
ノルンはこんな朝早くに起きたことがないらしい。
「そういえばノルン」
昨日聞くの、すっかり忘れていた。
「クリステル渓谷の場所、わかる?」
「クリステル渓谷、ですか?」
ノルンが不思議そうにキョトンとしている。
「どうしてですか?」
「ヒッポグリフに何かあったらそこにいるスフィンクスに会うように言われたから」
「へぇ……………え?」
納得したようにつぶやいたノルンだったが、なぜか途中で目を剥いた。
「スフィンクス?スフィンクスと言いました?」
「…?スフィンクスだよ?」
ノルンは何をそんなに驚いてるの?
「スフィンクスって、人嫌いナンバーワンの聖獣ですよ?そのスフィンクスに会いに行くんですか?」
「そうだよ?ヒッポグリフから嫌われないお守りももらってるし」
「お守り?」
「昨日見せたじゃない。ヒッポグリフの腕輪」
にわかに信じられない、と顔に書いてあるノルンとしばらくふざけた話をしていると、朝食が届けられた。パンが二枚だけだった。
「ユール様、これはどうアレンジします?」
パン二枚を指差して、ノルンが聞いた。
「ノルンはどっちがいい?ジャムを塗って食べるか、具を挟んでサンドイッチにするか」
「具、挟めるんですか?」
「たくさんは無理だけどね」
「じゃあ………サンドイッチでお願いします」
ノルンとしてはやっぱりサンドイッチは気になったらしい。ユールは異次元収納から材料を取り出し始めた。レタス、ベーコン、卵、チーズ。全て貢物だった食べ物だ。
ウィンドカッターでチーズ、卵、ベーコンをスライスし、パンをそれぞれ半分に折って具材を挟む。
「はい、どうぞ」
できたサンドイッチもどきをノルンに渡し、ユールもサンドイッチを頬張る。
「これも美味しい!聖獣様への貢物って、どんだけ質が高いんだろう?」
それはユールも思っていることだ。もっと調理法が増えればさらに美味しいものが作れるんじゃないかしら?なんて思ったりもする。
昨晩同様、わいわい話しながら食事を終え、トレーを撤収してくれるまで待機する。
「さっきの続き、聞いてもいい?」
「あぁ、クリステル渓谷の場所ですか?詳しく知らないんですが、この屋敷の南東方角にあると聞いたことはあります」
「南東、ね」
「すみません、お役に立てず」
「いや?十分よ」
そのままこの辺りの地理情報を聞いていると、トレーを引き取る音が聞こえた。時間的には7時ぐらい?
「じゃあそろそろ私は出かけるよ」
ユールは立ち上がる。残して行くノルンが退屈しないようにガルズ男爵家から持ち出してきた魔法大全を置いていく。ユールは男爵邸の図書室から、貴重な書物をいくつか持ち出していた。あのような家には勿体無いからだ。
「はい、気をつけてください。この大全も、読ませてもらいます!」
ユールを見送るために、ノルンもあとに続く。
「人がきたら、対応よろしく。何かあったら連絡を」
「もちろんです!いってらっしゃい」
気流を読んで廊下が無人であることを確認し、光学魔法を発動させてユールは廊下に滑り出る。ドアを閉めると、ノルンが閂をかける音が聞こえた。
同時にノルンから"頑張れ"の一言。
それに"ありがと"と返し、ユールは廊下を進む。途中数人の使用人とすれ違ったが、廊下の端を歩いているので誰ともぶつからない。
広すぎる屋敷を歩き回りながら、ユールは脳内で公爵邸の地図を作成する。途中からは偶然見つけた倉庫から紙とペンを拝借し、図面に表してもいた。
結論、一階は来客用、二階は仕事用、三階四階五階は公爵家や使用人の住居。つまり二階と一階は夜になるとほぼ無人となる。
三階より上はどうでもいいから抹消し、まずは二階を探る。昼間には公爵家の主な活動場所らしく、多くの人間が行き来している。
地上にいたらバレるかもしれないと思い、浮遊魔法をかけて天井付近まで浮かび上がった。これならバレる心配もないだろう。
人の行き来が多いことは、逆に部屋の特定がしやすいことも意味している。二階の部屋の割り振りがどうなっているのか、すぐにわかった。早々に地図を完成させてしまったユールは、二階にある公爵用の書斎を訪れた。
ちょうど廊下にも部屋の中にも人がいなく、ユールはまんまと部屋に侵入できた。どうもこの部屋は第二執務室も兼ねているようで、部屋正面には机と椅子がある。これからここで仕事の予定があるのか、机には書類の山が積んである。
部屋の両方の壁にある本棚から気になる本を一冊選び、ユールは本棚の上に移動する。天井までみっちりの本棚ではなく、幼いユールが体育座りできるほどのスペースはあった。
ユールが選んだ本は、経済に関する本だ。上下巻らしく、やたら分厚い。黙々と読み進めていると、部屋のドアが開き、公爵が入ってきた。公爵はユールがいることに気づくことなく、偉そうに椅子に踏ん反り返って書類を眺め始めた。読書の合間にユールが目を向けても、一行に仕事を始めない。しまいにはお茶を届けにきた執事に、「代筆しろ」と言い出す始末。もはや呆れてものも言えない。
公爵には見えていないが、彼の目の前を堂々と2、3往復してユールは経済本上下巻とコミュニケーションの取り方を書いた本を読んだ。まだ午前中だというのにもううたた寝を始めた公爵に軽蔑の眼差しを投げ、ユールは部屋をあとにする。
次に一階に移動した私は、とりあえず地図作りから始めた。一階は人が少なかったが、その代わりより自由に歩き回ることができた。厨房、食堂、図書室もこの階にある。応接室とか音楽室とか、興味のないものばかりなので忘れます。
ひっそりとしている図書室に、ユールは忍び込む。さすが公爵家の図書室、圧巻の一言である。男爵家の三倍はありそう。片っ端から読んでいこう、とユールは一番右側の本棚の一番右上にある本を手に取り、読書の世界に入っていく。
日暮れの頃、全部で42個ある本棚の1個のうちほぼ半分の本を読み尽くし、ユールは大きく背伸びする。結局図書室に人がくることはなく、事実上ここはユールの支配下にあった。
読んでいた本を片し、ユールは部屋に引き返す。食堂の方が賑やかなのをみると、どうやら食事中らしい。
部屋の前に戻り、風魔法で閂を開け、部屋に入る。部屋ではノルンが床に本を広げ、身振り手振りで何かやっている。
「あ、ユール様、おかえりー」
声をかけると、ノルンは元気良く返事する。何をしているのか問えば、魔法の練習をしていたらしい。
「この魔法大全、無属性でも使える魔法がたくさんあったんです!」
余りに嬉しそうに語るので、なんの魔法を習得したのか聞くと、何個か披露してくれた。衝撃波を生み出す魔法、念力のようなもの、他にもいくつかあった。
「この短時間でよくこれだけ習得したね」
「ユール様にはまだまだ叶いませんよ」
そんなほのぼのとした会話をしながら、ユールもまた今日の出来事を話す。二階と一階の地図を作ったことを告げると、光学魔法を教えて欲しいと頼まれた。理由を聞いたところ、そうすれば好き放題屋敷を歩き回れるようになるから、と。
光学魔法はもう少し魔力制御がうまくならないとできないのでお預けとし、いつの間に来ていた夕飯を食べる。今日の夕飯は黒パン二切れのみという、粗末すぎるものだったので、異次元収納に入っているポッポからもらった籠よりステーキを二切れ取り出し、これまた異次元収納から取り出した皿に乗せる。当然ナイフとフォークも用意する。
「聖獣って、どんだけすごいものを貢がれてるんですか?」
「貢がれる、とは失礼よ。ポッポは私以外の人間を邪見してるし、人間が一方的に媚売ろうとしているだけ」
黒パンの方をお口直しに、ステーキを平らげて行く二人。公爵が知ったらきっと怒り狂いそうなほどちゃんとした生活をしている。ポッポの森の近くに、確か牛肉が有名な村があったはず。これはおそらくその村最高の牛肉だろう。
食べ終わってからはいつもの如く自由時間だ。ユールは引き続きノルンに魔力制御を教えたり、一般社会の話を聞かせたりした。
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