1 / 4
序幕&第一幕
「おまえの幸せのためなら、オレは全て犠牲にできる。世界も、オレ自身でさえも。」~勇者の友情、魔王の涙外伝2~
しおりを挟む
序幕
突然の、夏の夕立。
急に空が暗くなったなと思ったときには、大粒の雨がラントの髪に弾けて、銀色の光を零す。
「うわ、降ってきた!」
空を見上げて叫ぶフェアを
「いいから走れ、突っ立ってたら、びしょ濡れだ。」
と、ラントが引っ張る。
すぐに、ザーッと音をたてて降り注いだ雨。白くけむるそれを避けるために走って、フェアとラントは、目についた店に飛びこむ。
一階が食堂、二階が宿屋という、よくある造りの店。
「降られてしまいましたねえ、勇者さま、魔法使いさま。」
お気の毒さま、という表情で二人を迎え入れた女将が、お茶を出してくれる。
「泊まられるんなら、上の部屋に着替えを用意しますよ。」
と、親切だが抜け目のない提案は、流石商売人だ。
路銀はたっぷりあるフェアとラントにとってはありがたい申し出だった。
「ありがとうございます、助かります。今夜の宿も決めていなかったし。」
☆
部屋には、着替えと乾いた布が用意されていた。着替えは新品ではなかったが、きちんと洗濯された清潔なものだったので、文句はない。
濡れた上着を脱いだところで、ラントは視線を感じてふりかえり、眉をひそめた。
手早く着替え終えたフェアが、妙に真剣な目で、じっとこっちを見ているのが不可解だった。
フェアの漆黒の瞳が、ラントの白い肌を凝視するように、舐めるように見ている。
「なんだ?フェア、おまえ、そういう趣味に目覚め。」
「ちっがーう!!」
とんでもない疑いをかけられ、頬を赤く染めてフェアが怒鳴る。
「傷、残んなくてよかったなって、思ってただけだっつーの!!」
「ああ。」
と、ラントが納得した。
数日前、フェアとラントはそうとは知らずに、吸血鬼の館に滞在し、ラントが傷を負ったのだ。魔術書を紐解いて試してみた治癒の魔法のおかげで、傷は完全に塞がり、後は自然に治った。ただ、戦闘中に展開するには、まだ修練が足りない。さらに、乱用すると、体に自然に備わる治癒力を損なう恐れがあり、気軽に使えるものではない。
ラントが、着替えを再開しながら、あっさり言う。
「嫁入り前の娘じゃあるまいし、男の体に傷の一つや二つ残ったところで、困ることなんてないだろう。」
「オレはイヤなんだよ。」
駄々をこねる子どもの強情さで言い切ったフェアに、ラントは思わず手を止めた。
最近、丸みが失われてきたフェアの頬。それなのに、今は、小さな子どもみたいに頬を膨らませているから、ラントは噴き出してしまう。
ラントの反応に、フェアはますます憤慨した。
「ラント、おまえ、ここ、笑うとこじゃねえだろ!」
「だって、エサを口に詰め込んでるハムスターみたいだぞ。」
ラントは、ボタンも留めないまま、肩を揺らして笑っている。
「おまえ、喧嘩売ってんのか!?」
フェアは、額に青筋を浮かべたが…その怒りは長続きしない。
ラントが笑うと、光が弾けたように、場が、パッと華やぐのだ。
しかも、フェアと二人きりのときにしか見せてくれない、ラントの素の笑顔は、ツンと澄ましているいつものラントより幼く見える。無邪気な明るさがあって、フェアは安心するのだ。
(だって、こいつ、最近どんどん綺麗になってくし。)
子どもの頃から、可憐で愛らしい、天使のような美少年だった。けれど、十代の半ばを迎えた今は、宝石が研磨されて、より強くより眩しく、その輝きを増していくよう。
時々、手を伸ばしてその体温を感じないと、幻じゃないという確信が持てなくなる。
今も、髪が長いくせに、拭き方が適当なので、滴が額や頬、うなじにかかって、水もしたたる…という状態だ。
「風邪ひくぞ。」
フェアは、ラントの腕をつかんで引き寄せ、乾いた布で銀髪をかき回すように拭いてやる。
ラントは、珍しくされるがままになりながら、恨みまがしい上目遣いでフェアを見上げた。
「?」
「同じもの食べてるのに、なんでおまえだけ、そんなにでかくなるかな。」
「んなこと言われても。」
フェアとしては、理不尽な言いがかりである。
「おまえもべつに、ちっさいわけじゃねーから、いいじゃん。」
「まさに上から目線の発言だな。」
ラントは、フェアに拭かれた銀髪をばさっと払い、
「まあいい。フェアがオレに勝てることなんて、背丈くらいだからな。それくらい許してやる。」
と、言い放つ。
「上から目線はおまえの方だろ。」
と、フェアが言い返す。
くだらないやりとりをしていたら、
「勇者さま、魔法使いさま、ちょっと開けておくれ。」
と女将からドアごしに頼まれる。
何もやましいことはしていないが、連続でその手の疑いをかけられたくなかったので、フェアは慌ててラントから離れ、
「ラント、早く服着ろ。」
と急かす。ラントがシャツのボタンを全部止めてから、フェアはドアへ向かった。
「はい。」
と、フェアがドアを開けると、女将は真紅の薔薇があふれるほどに生けられた、大ぶりの花瓶を抱えていた。ノックがなかった理由がわかる。
鮮やかな色彩、漂う甘い香り。
「すごいですね、どうしたんですか、これ。」
ぱっと見、二十本はあるだろう。高価な花を飾るような高級な宿屋には見えなかったし、示された宿代も、ごく庶民的なこの宿にふさわしい金額だった。
女将が、
「すごいだろう。」
と、得意げに笑う。
「明日から1週間、この町はお祭りなんだよ。この時期だけの限定サービスでね。街中にもこれと同じ薔薇が飾られたただろう。」
「ああ、そう言えば。」
頷くフェアに向かって、女将が言う。
「この薔薇は、明日からの祭りの主役、森の精霊の涙から生まれた花なのさ。」
☆
それは、数百年前、この町がまだ村であった頃―。
村の外れには、今と変わらず深い森が広がっていた。
豊かな森には、果実がたわわに実り、獣も鳥も肥え太っていた。
しかし、村の人々は、森の恵みを得るのは、必要最小限に留めていた。飢饉などで、村の作物が全滅し、飢えを凌ぐために不可欠になった時にだけ。
なぜなら、森は人のモノではなく、精霊のモノだと信じられていたから。森の精霊たちは、人がその領域を侵せば、天罰を与えると言い伝えられてきた。みだりに森に入ることも禁忌とされていた。
敬虔な人々は精霊を恐れ敬い、それゆえに精霊も人の領域に踏み入ることはなく、つましくも平和に時は過ぎる。
しかし、ある時村に誕生した男の子は、その禁忌に触れる。
オルテンシアと名付けられたその子どもは、好奇心旺盛でやんちゃだった。彼は言いつけを破って森の奥深くへ入り込み、そこで森の精霊の一人と出会う。
森の精霊たちのほとんどは、人に対して無関心だったが、その精霊は変わり者で、オルテンシアと意気投合する。
二人は、誰にも内緒で二人きりで遊び、交友を深めていく。命が芽吹く春、それが育つ夏、収穫の秋、雪に閉ざされる冬。巡る季節を共に過ごし、オルテンシアは、子どもから少年へと成長していく。
オルテンシアが、少年から青年へと変わる頃。彼は、精霊はいつまでも変わらないのに、自分だけが年をとっていくことに気づく。いつまでも精霊と一緒にいたいと願うオルテンシアに、精霊は、儀式を行えば、精霊になれると誘う。
それは、七の月。夏が盛りを迎える頃。
「だけど、儀式は、時も場所も大切なんだ。次の満月の晩、湖で待っている。でも、それまでは会えない。眠って、儀式に必要な力を蓄えなきゃならないから。」
「わかった。必ず行くよ。」
精霊と少年は約束を交わし、精霊は眠りに就く。再び目覚めたときには、オルテンシアが仲間になってくれると信じて。
けれど約束は果たされなかった。
精霊が眠っている間、森に行かずに村で過ごす時間が増えたオルテンシアは、村の少女に恋をする。思いを告げたオルテンシアに少女は頷き、彼らは共に生きていくことを誓う。
精霊にならないと決めたオルテンシアは、満月の夜を湖に行かず、少女と過ごす。
裏切られた森の精霊は―。
☆
「誰かに奪われるくらいなら、おまえをこの手で殺して、永遠にオレのものにしてやる。」
涼やかなはずのラントの声が、ひどく冷たく、同時に悲しく、それでいて憎悪と妄執を帯びて響き。
フェアがぎょっとして、ラントを凝視した。
「ラント、おまえ、それ…。」
「なんだ?おまえが頼むから朗読しているんだろうが。文句があるなら自分で読め。」
本から顔を上げたラントに睨まれる。
「ないない。文句なんてない。」
フェアが、ぶんぶんと首と首を振って短い黒髪を揺らし、
「続き読んでください。」
と敬語になって低姿勢で頼んだので、ラントは朗読を再開する。
フェアが、こっそり胸をなで下ろす。この間の芝居で、感情を乗せて台詞を口にするのが癖になってしまったのだろうか。もともと、フェア以外の人間の前では常に仮面をかぶっているようなラントだから、演技が巧みなのも当然か。
女将が貸してくれた本は、この地方に伝わる、夏祭りの起源となった民話だ。短い話なので、ラントは、さらっと読み終わってしまったが、文字を追うと3分で眠くなるフェアは、本を開く気になれない。それでも、話がちょっと気になるのと、意地悪な台詞じゃないラントの声を聞いていたいというのがあって、フェアはラントに朗読を頼んで今に至る。
物語は、悲しく残酷なラストを迎えていた。
「オルテンシアに裏切られた森の精霊は、怒りと悲しみに泣き叫んだ。精霊の頬から伝わった血の涙は、大地に落ちたとたんに、真紅の薔薇となって咲き誇る。薔薇の茎は、オルテンシアが少女と過ごす、彼の家まで伸びていき、その棘で、オルテンシアと少女を突き刺して殺してしまう。人と関わりがあったことが仲間に知られてしまった精霊は、森を追われ、いずこかへ姿を消す。いずれ、この地にもどってきて、この地の全てを呪ってやるという、恨みの言葉を残して。夏の祭は、精霊を慰め、その怒りを解いてほしいという願いをこめて行われるようになった。」
ラントは、パタンと薄い本を閉じ、机の上に放り出す。
フェアが腕を組んでうーんとうなる。
「かわいそうな話だな…。」
「そうか?大昔に無理心中でもあって、醜聞を隠すためにでっち上げた話じゃないのか?だいたい、殺人の道具にした薔薇を、街中に飾って、精霊の慰めになるのか?花屋の陰謀じゃないのか?そもそも、精霊は、この町にはいないのに、祭をしても無意味じゃないか?」
「なんでおまえは、身もふたもないことを言い出すんだよ…。」
フェアが、がっくりと項垂れる。もう慣れっこだが、こんなに綺麗な珊瑚色の唇から、ぽんぽん皮肉と毒舌をばら撒かれると、悲しくなってくる。それでも気を取り直して、言ってみる。
「でも、やっぱりかわいそうじゃん。」
ラントが、つ、と紅蓮の瞳をすがめた。ラントの美貌を見慣れているフェアがどきりとしたほどの凄みがあった。
「どっちが?」
「?どっちって、かわいそうなのは森の精霊だけだろ?約束破られてるんだから。」
「ふうん。おまえは、そっちに同情するわけか。今は。」
ラントがくすっと唇の端で笑う。意味ありげな笑い方だとフェアは思う。ラントは、フェアに対してだけは、裏表がないのに。フェアは不安になって、ラントの言葉をくり返す。
「今は?どういう意味だよ、ラント。」
フェアがラントに手を伸ばす。ラントがひらりと身をかわした。銀色の髪を揺らして、フェアの手をすり抜ける。
「そのうちわかるさ。」
はぐらかすように返し、ラントは花瓶の薔薇に目を向ける。
フェアは、行き場を失った手を握りしめ、ラントの視線を追う。
ラントが薔薇より赤い目を細めて言った。
「そう言えば、これと似たような薔薇だったな。」
「おまえ、もう、それ、忘れてくれよ…。」
言及されないから、安心していたら不意打ちだ。
やはり、二人同時に同じことを思い出していたらしい。
ラントがいつもの、意地悪な顔で、楽しそうに笑う。
「イヤだね。おまえがじーさんになっても、ずっとからかい続けてやる。」
「おまえ、それ本気か…?」
情けない顔になったフェアに、ラントは声を上げて笑った。銀髪をなびかせて、軽やかな足取りでフェアの隣まで戻って来ると、フェアの背中をばしばしと遠慮なく叩いた。
第一幕
神は、万物の創造主。
神は最初に、天を創り、そこに自らの姿と力を映した天使を置いた。
次に、大地や海を創りだし、天使よりも劣るが、やはり自らの姿に似せ、力を分け与えた精霊を置いた。さらに、獣や人を置いた。
神が作った種族は、皆、分をわきまえて生きていたが、人だけは違った。彼らはあっという間に数を増やし、地上を人で満たした。
神はそれを不快に思い、人の数を減らそうと考えた。
人を害する、人よりも強い力を持った種族によって。
獣は、人間の脆弱な肉体など簡単に切り裂ける、牙や爪を持っている。しかし、人は知性で獣を駆逐した。だから神は、人の知性を有し、さらに魔力を持った獣なら、逆に人を追い詰めると考えた。
しかし、それは失敗だった。獣は本来、生きるために必要な狩りしかしない。知性を持った獣が、すすんで人を襲うことはなかった。
そこで神は、人とも獣とも異なる種族を一から創りだす。人間に対する悪意と、人を凌駕する力を持った種、魔族を。
しかし、神も知らぬ間に、魔族の頂点に君臨していた魔王によって、魔族の結束が高まる。特に、知能も魔力も高い、人型の魔族ほど魔王に心酔した。その結果、人間は滅亡の一歩手前まで追い詰められ…神は今度は人間に武器を与えて、魔族を駆逐させる。魔王の存在を恐れて。
神が人間に与えた武器は二つ。
最初に与えた武器は、魔法。しかし、高度な魔法ほど習得には厳しい修行を要し、魔族を殺せるほどの魔法を扱える魔法使いはごく少数に留まった。
そこで、神は次の武器を与える。それが、「勇者の剣」。確実に魔族の息の根を止める、必殺の武器。「勇者の剣」に選ばれて、魔族を屠ることができる者こそ、勇者。
人間は知恵を絞り、いつしか勇者と魔法使いは協力して魔族を退治するようになる。
フェアとラントも、魔族から人を守る旅を続けている、勇者と魔法使いだ。
二人が十歳の夏、村が魔族に襲われて、二人以外全滅して以来、6年間、ずっと。
そして、薔薇の花にまつわる二人の思い出は、村が竜の炎に焼け落ちるより、さらに前。二人が7歳の夏―。
☆
早朝でも、窓から差し込む日射しは強く眩しく、「今日も暑くなりそうだな。」と思わせる一日の始まり。
「なあ、ラント、おきろよ。」
フェアは、ベッドで丸くなっているラントの肩を揺さぶる。
「はやくおきて、いっしょにあそぼうぜ。」
と、声をかけても、ラントは、目も開けないまま、不機嫌そうにフェアの手を払いのける。
「…やだ…。まだねむい…。」
「もう!きのうおそくまで、ほんなんかよんでるからだろー。おきろって。」
フェアは、ぴょんとベッドに跳び乗って、ラントの綺麗な銀色の髪を一束つかむ。さらさらの髪が、するんと、小さな手から抜け落ちそうだったので、しっかりつかみ直す。
朝日を浴びてきらきら光っている、プラチナの髪を、ぐいぐい引っ張ってやる。
「やめろ!いたい!!」
さすがにラントが跳び起きた。
ルビーのような赤い瞳で、ぎろっとフェアをにらみ、そのまま飛びかかってくる。
「うわっ!やったな、ラント!」
「先に手を出したのは、フェアだろ!」
取っ組み合いの喧嘩になって、フェアがラントのほっぺたを、びみょーんと伸ばす。
そして噴き出した。
「あはははは!ラント、へんなかおー。」
笑ったので力がフェアの力がゆるみ、ラントはぐいっと、フェアの両手を外した。
「フェアの馬鹿力!」
と毒づくが、フェアがあんまり楽しそうに笑っているので、ラントも毒気を抜かれてしまう。
それでも、このささいな出来事を覚えていて、何年もたってから仕返しをするラントだが、それはまた別の話。
ばたばたやっていた音が聞こえたのだろう。子ども部屋の外から、フェアの母親に声をかけられる。
「フェア、ラントくん。朝ご飯できてるから、食べにいらっしゃい。お母さんたちは、畑に行ってるわね。」
日が高くなる前に、畑仕事を済ませたいらしい。
「そのうち、ラントくんのお母さんも迎えに来るから。」
と、つけ加える。
「「はあい。」」
と、フェアとラントは声を合わせて返事をする。ラントは
「ありがとうございます。」
と、高く澄んだ声で、かわいらしくお礼を言う。横でフェアが、
「ラントって、ほんとうにねこかぶり…。」
と、ぼそっと呟く。フェアは、ラントの本性を見抜いたのは、一月ほど前のこと。それ以来、ラントは、フェアにだけは容赦がない。
(だけど、まえよりもなかよくなれたきがする。)
と、フェアはラントの顔をじっと見る。
「?」
とラントは、小首をかしげ、肩までの銀髪がさらっと揺れる。
「なんでもない。ほら、あさごはん、たべにいこうぜ。」
☆
ミルクとパンと、野菜を切っただけの、質素な朝食。けれど、パンは焼き立てて香ばしく、野菜は新鮮だ。贅沢ではないけれど、友達と食べる朝ご飯は、とても美味しい。
パンで口をぱんぱんにしながら、フェアが
「ラントのほははんほほひはん、ほほひっへふんは?」
と、言いかけたので、ラントが、遮って言う。
「呑みこんでからしゃべれよ。何言ってるかわかんないだろ。オレの母さんと父さんがなんだって?」
フェアは、ごくんと呑みこんで
「つたわってるじゃん。」
と返す。
「昨日は、結婚記念日だったんだってさ。毎年、町のレストランで食事して、その日は、父さんの実家に泊まるんだ。」
「ああ、そういえば、ラントのおとうさんって、もともとまちのひとだったよな。」
「去年まで、オレもつきあわされたんだけど、あの二人が、いちゃいちゃするのを見るのは、もう、うんざりだから、今年は、二人だけで言ってきたらいいよ、留守番してるからって、断った。」
「ラント、おまえ、なんかひどいこといってないか?」
と、フェアはじとーっとラントを見る。ラントが基本的に人間嫌いなのを見抜いたフェアだが、まさか実の両親に対してもそうだとは。
「ひどくない。いつまでも新婚気分だから、こっちがはずかしい。」
「うーん。」
フェアがうなる。フェアとラントは同い年なのだが、ラントは本が好きで、大人が読むような本もたくさん読んでいるから、圧倒的に知識と語彙が豊富で、難しい言い回しも使いこなしている。絵本すら開かないフェアは、知らない単語を駆使されると、話について行けない。だから、とりあえず、思ったままを口にする。
「でも、そのおかげで、ラントがオレのいえにとまってくれたんだから、オレはうれしいなっ!これからも、とまりにこいよ!」
ラントの両親も、七つの子どもを一人残しておくのは心配で、隣の家のフェアの両親に一晩預かってもらうことにしたのだ。
無邪気に笑うフェアに、ラントが意地悪く言う。
「やだよ。おまえ、オレが本読むの、じゃまするし。」
「だって、おまえがあそんでくれないんだもん!」
「それに、フェア、ねぞうわるいし。オレ、何回か、けられたぞ。」
「え、ほんとか?ぜんぜんきづかなかった!ごめん!」
「うん、仕返しに引っぱたいたけど、おまえ、全然起きなかったな。」
「うわ、ラント、ひどい!!」
「おまえが、オレの安眠を妨害するからだろ!」
と、子どもらしいのかくだらないのか不毛なのか、何とも言いようのない口喧嘩を繰り広げていると。
「ごめんください。」
「お邪魔します。ラント、迎えに来たわよ。」
と、玄関から声がした。ラントの父親と母親の声だ。
フェアとラントが玄関へ向かう。ドアを開けると、着飾った二人が立っていた。
ラントの父親は、町の出身なだけあって、あか抜けていて、野暮ったさがない。母親は、町に花や野菜を売りに出ていたときに、父親が一目ぼれしただけあって、村でも評判の美人だ。
二人とも、見目は良い方だが、ラントの天使のような美貌とは、全く似ていない。
「こんにちは、フェアくん。ラントと遊んでくれてありがとう。」
「こんにちは。今、お父さんもお母さんも畑に行ってて。」
「あら、そうなの。じゃあ、あらためてお礼にうかがうわ。これ、お母さんに渡しておいてくれる?」
と、ラントの母親がバスケットを差し出す。受け取ってみると、町で有名な店の焼き菓子だった。
「わーい、ありがとう、おばさん!」
「どういたしまして。じゃあ、ラント帰りましょう。」
「え、もう?」
と、言ったのは、ラントではなくフェアだ。フェアがラントの腕をがしっとつかむ。
「もうちょっとあそぼうぜ、ラント。」
ラントは、やれやれという顔を、フェアにだけ見せ、両親には子どもらしい笑顔を向ける。この辺り、ラントの基準は謎である。
「もうちょっとあそんでから帰るよ。」
ラントの両親としては、隣家にあまり迷惑をかけたくはないというのが本音だが、結局折れてくれた。
「お昼ごはんはうちで食べるのよ。」
「はあい。」
と、ラントはかわいらしく返事をする。
「じゃあ、フェアくん。お父さんとお母さんによろしく。」
と、去ろうとしたラントの父親に、
「ねえ、おじさん。おじさんは、どうして、おばさんとけっこんしたの?」
と、フェアが問いかけた。
ラントの父親は突然の問いかけに面食らったようだが、すぐに、結婚記念日の食事のために息子を隣家に預けたことと結びつける。そこから発生した、子どもらしい無邪気な疑問だと。
どう答えたものか、ラントの父親は少し悩み、それでも誠実に答えた。
「ずっと一緒にいたかったからだよ。」
フェアの大きな丸い瞳、磨かれた黒曜石のように相手を映す瞳が瞬く。ラントの父親は、それを見て言葉を継いだ。
「ほら、おじさんは町に住んでいて、おばさんは村の娘さんだっただろう。ぐずぐずしていたら、村の誰かと結婚してしまうんじゃないかと焦ってね。」
「あのときは驚いたわぁ。いきなり、薔薇の花を差し出されて、お嫁さんになってください、ですもの。」
年若い恋人どうしのように頬を染めて見つめ合う二人。
彼らの子どもは、(あーまた始まった。)という醒めた目で両親を眺めている。
そんなラントの隣で、フェアは、よし、と一人、頷いたのだった。
☆
その後、フェアがラントの読書の邪魔をし、ラントがそれを追い払うのに疲れて、結局一緒に遊び、あっという間に昼前になった。
緑豊かな村は、日射しは厳しいが、木陰にいれば倒れるほどの暑さではない。
二人が遊んでいたのは村の外れ、森の入り口近くだ。あまり森の奥へ行ってはいけないと言われているが、この辺りなら怒られることもない。
今の季節の森は、色とりどりの花が咲き乱れて、華麗にその美を競っている。
薫り高いクチナシ、朱色のラッパのようなノウセンカズラ、無数の花びらが重なるダリア。
「フェア、そろそろ帰るぞ。」
と、ラントはまだ遊び足りない様子のフェアを呼ぶ。昼には帰る約束だし、一日で気温が最高になる時間には、流石に外にいない方がいい。
「あ、ちょっとまって。」
と、言って、フェアが今が盛りと咲き誇る、真紅の薔薇に手を伸ばす。咲き競う花々の中でも、真っ赤な薔薇は一際鮮烈な存在感を放っている。
フェアは、茎をつかみ、ぷちっと千切る。
「いてっ!」
と言ったので、棘が刺さったのだろう。ラントは呆れながらフェアに近づいて、
「なにやってるんだよ、バラはトゲがあるんだから気をつけろ。」
と、言ったところで、
「はい。」
と、フェアに、その薔薇を差し出される。それだけでも、ちょっと驚いたのだが、その後のフェアの発言に、ラントは心底度肝を抜かれた。
「ラント、これあげるから、オレのおよめさんになってくれよ。」
「はあ!?」
ラントが、真紅の目を丸くして絶句する。
たいていのことには動じない、子どもらしくない子どもだったラントだが、これには完全に真っ白になった。
「…えーと…オレは男だから、フェアのおよめさんにはなれないぞ。」
7歳にしては博識だったラントだが、同性どうしで結婚できる国もあると知ったのは、もっと成長してからだった。(その場合でも「およめさん」とは呼ばないだろう。)と、後年のラントは述懐することになるのだが。
ラントの返答に、フェアの眉が悲しそうに下がる。泣きそうな顔になったフェアに、ラントは慌てたが、ラントも動揺していて、かける言葉が出てこない。
フェアは、黒い瞳を潤ませて、呟く。
「じゃあ、オレは、ラントとずっといっしょにいられないのか…?」
(そういうことか!)
そこで、やっとラントは、フェアに意図に気づいた。だから、安心させるような、元気づけるような笑顔になった。ラントが、フェアにだけ向ける、本当に優しい目をして。
「フェアはバカだなあ。」
「バカってなんだよ!」
「友達だって、ずっと一緒にいられるんだぞ。」
フェアの瞳が、パッと輝いた。
夜空に瞬く星のように、鮮烈な光が。
「ほんとに?じゃあ、オレ、ずっとラントといっしょにいられる?」
「当たり前だろ。だいたい、結婚したって、離婚することだってあるだろ。だから、友達の方がずっといいんだぞ。」
と、ラントは力強く頷く。
「そっかあ。」
と、フェアは心底安堵したように笑い、
「じゃあ、これ、どうしよう。」
と、手にしていた薔薇に視線を落とす。
ラントが、パッと手を伸ばして、フェアの手から薔薇の花を取り上げた。
「せっかくだから、もらっといてやるよ。」
今の季節、村のどこにでも咲いている薔薇が、急に惜しくなったのは、どうしてだろう。ラントの目には、急に、フェアの手にある一輪の薔薇が、ひどく特別な、世界に一つしかないものに見えて。
その後、ラントは家にもどって昼食を食べ、その後、やって来たフェアと夕飯までまた遊んだ。
遠い夏の日、故郷の村が竜の炎に焼かれる前の、小さな出来事。
フェアが勇者でなく、ラントが魔法使いではなかった頃。一切の悲劇が起こる前。二人がただの子どもでいられた夏。
突然の、夏の夕立。
急に空が暗くなったなと思ったときには、大粒の雨がラントの髪に弾けて、銀色の光を零す。
「うわ、降ってきた!」
空を見上げて叫ぶフェアを
「いいから走れ、突っ立ってたら、びしょ濡れだ。」
と、ラントが引っ張る。
すぐに、ザーッと音をたてて降り注いだ雨。白くけむるそれを避けるために走って、フェアとラントは、目についた店に飛びこむ。
一階が食堂、二階が宿屋という、よくある造りの店。
「降られてしまいましたねえ、勇者さま、魔法使いさま。」
お気の毒さま、という表情で二人を迎え入れた女将が、お茶を出してくれる。
「泊まられるんなら、上の部屋に着替えを用意しますよ。」
と、親切だが抜け目のない提案は、流石商売人だ。
路銀はたっぷりあるフェアとラントにとってはありがたい申し出だった。
「ありがとうございます、助かります。今夜の宿も決めていなかったし。」
☆
部屋には、着替えと乾いた布が用意されていた。着替えは新品ではなかったが、きちんと洗濯された清潔なものだったので、文句はない。
濡れた上着を脱いだところで、ラントは視線を感じてふりかえり、眉をひそめた。
手早く着替え終えたフェアが、妙に真剣な目で、じっとこっちを見ているのが不可解だった。
フェアの漆黒の瞳が、ラントの白い肌を凝視するように、舐めるように見ている。
「なんだ?フェア、おまえ、そういう趣味に目覚め。」
「ちっがーう!!」
とんでもない疑いをかけられ、頬を赤く染めてフェアが怒鳴る。
「傷、残んなくてよかったなって、思ってただけだっつーの!!」
「ああ。」
と、ラントが納得した。
数日前、フェアとラントはそうとは知らずに、吸血鬼の館に滞在し、ラントが傷を負ったのだ。魔術書を紐解いて試してみた治癒の魔法のおかげで、傷は完全に塞がり、後は自然に治った。ただ、戦闘中に展開するには、まだ修練が足りない。さらに、乱用すると、体に自然に備わる治癒力を損なう恐れがあり、気軽に使えるものではない。
ラントが、着替えを再開しながら、あっさり言う。
「嫁入り前の娘じゃあるまいし、男の体に傷の一つや二つ残ったところで、困ることなんてないだろう。」
「オレはイヤなんだよ。」
駄々をこねる子どもの強情さで言い切ったフェアに、ラントは思わず手を止めた。
最近、丸みが失われてきたフェアの頬。それなのに、今は、小さな子どもみたいに頬を膨らませているから、ラントは噴き出してしまう。
ラントの反応に、フェアはますます憤慨した。
「ラント、おまえ、ここ、笑うとこじゃねえだろ!」
「だって、エサを口に詰め込んでるハムスターみたいだぞ。」
ラントは、ボタンも留めないまま、肩を揺らして笑っている。
「おまえ、喧嘩売ってんのか!?」
フェアは、額に青筋を浮かべたが…その怒りは長続きしない。
ラントが笑うと、光が弾けたように、場が、パッと華やぐのだ。
しかも、フェアと二人きりのときにしか見せてくれない、ラントの素の笑顔は、ツンと澄ましているいつものラントより幼く見える。無邪気な明るさがあって、フェアは安心するのだ。
(だって、こいつ、最近どんどん綺麗になってくし。)
子どもの頃から、可憐で愛らしい、天使のような美少年だった。けれど、十代の半ばを迎えた今は、宝石が研磨されて、より強くより眩しく、その輝きを増していくよう。
時々、手を伸ばしてその体温を感じないと、幻じゃないという確信が持てなくなる。
今も、髪が長いくせに、拭き方が適当なので、滴が額や頬、うなじにかかって、水もしたたる…という状態だ。
「風邪ひくぞ。」
フェアは、ラントの腕をつかんで引き寄せ、乾いた布で銀髪をかき回すように拭いてやる。
ラントは、珍しくされるがままになりながら、恨みまがしい上目遣いでフェアを見上げた。
「?」
「同じもの食べてるのに、なんでおまえだけ、そんなにでかくなるかな。」
「んなこと言われても。」
フェアとしては、理不尽な言いがかりである。
「おまえもべつに、ちっさいわけじゃねーから、いいじゃん。」
「まさに上から目線の発言だな。」
ラントは、フェアに拭かれた銀髪をばさっと払い、
「まあいい。フェアがオレに勝てることなんて、背丈くらいだからな。それくらい許してやる。」
と、言い放つ。
「上から目線はおまえの方だろ。」
と、フェアが言い返す。
くだらないやりとりをしていたら、
「勇者さま、魔法使いさま、ちょっと開けておくれ。」
と女将からドアごしに頼まれる。
何もやましいことはしていないが、連続でその手の疑いをかけられたくなかったので、フェアは慌ててラントから離れ、
「ラント、早く服着ろ。」
と急かす。ラントがシャツのボタンを全部止めてから、フェアはドアへ向かった。
「はい。」
と、フェアがドアを開けると、女将は真紅の薔薇があふれるほどに生けられた、大ぶりの花瓶を抱えていた。ノックがなかった理由がわかる。
鮮やかな色彩、漂う甘い香り。
「すごいですね、どうしたんですか、これ。」
ぱっと見、二十本はあるだろう。高価な花を飾るような高級な宿屋には見えなかったし、示された宿代も、ごく庶民的なこの宿にふさわしい金額だった。
女将が、
「すごいだろう。」
と、得意げに笑う。
「明日から1週間、この町はお祭りなんだよ。この時期だけの限定サービスでね。街中にもこれと同じ薔薇が飾られたただろう。」
「ああ、そう言えば。」
頷くフェアに向かって、女将が言う。
「この薔薇は、明日からの祭りの主役、森の精霊の涙から生まれた花なのさ。」
☆
それは、数百年前、この町がまだ村であった頃―。
村の外れには、今と変わらず深い森が広がっていた。
豊かな森には、果実がたわわに実り、獣も鳥も肥え太っていた。
しかし、村の人々は、森の恵みを得るのは、必要最小限に留めていた。飢饉などで、村の作物が全滅し、飢えを凌ぐために不可欠になった時にだけ。
なぜなら、森は人のモノではなく、精霊のモノだと信じられていたから。森の精霊たちは、人がその領域を侵せば、天罰を与えると言い伝えられてきた。みだりに森に入ることも禁忌とされていた。
敬虔な人々は精霊を恐れ敬い、それゆえに精霊も人の領域に踏み入ることはなく、つましくも平和に時は過ぎる。
しかし、ある時村に誕生した男の子は、その禁忌に触れる。
オルテンシアと名付けられたその子どもは、好奇心旺盛でやんちゃだった。彼は言いつけを破って森の奥深くへ入り込み、そこで森の精霊の一人と出会う。
森の精霊たちのほとんどは、人に対して無関心だったが、その精霊は変わり者で、オルテンシアと意気投合する。
二人は、誰にも内緒で二人きりで遊び、交友を深めていく。命が芽吹く春、それが育つ夏、収穫の秋、雪に閉ざされる冬。巡る季節を共に過ごし、オルテンシアは、子どもから少年へと成長していく。
オルテンシアが、少年から青年へと変わる頃。彼は、精霊はいつまでも変わらないのに、自分だけが年をとっていくことに気づく。いつまでも精霊と一緒にいたいと願うオルテンシアに、精霊は、儀式を行えば、精霊になれると誘う。
それは、七の月。夏が盛りを迎える頃。
「だけど、儀式は、時も場所も大切なんだ。次の満月の晩、湖で待っている。でも、それまでは会えない。眠って、儀式に必要な力を蓄えなきゃならないから。」
「わかった。必ず行くよ。」
精霊と少年は約束を交わし、精霊は眠りに就く。再び目覚めたときには、オルテンシアが仲間になってくれると信じて。
けれど約束は果たされなかった。
精霊が眠っている間、森に行かずに村で過ごす時間が増えたオルテンシアは、村の少女に恋をする。思いを告げたオルテンシアに少女は頷き、彼らは共に生きていくことを誓う。
精霊にならないと決めたオルテンシアは、満月の夜を湖に行かず、少女と過ごす。
裏切られた森の精霊は―。
☆
「誰かに奪われるくらいなら、おまえをこの手で殺して、永遠にオレのものにしてやる。」
涼やかなはずのラントの声が、ひどく冷たく、同時に悲しく、それでいて憎悪と妄執を帯びて響き。
フェアがぎょっとして、ラントを凝視した。
「ラント、おまえ、それ…。」
「なんだ?おまえが頼むから朗読しているんだろうが。文句があるなら自分で読め。」
本から顔を上げたラントに睨まれる。
「ないない。文句なんてない。」
フェアが、ぶんぶんと首と首を振って短い黒髪を揺らし、
「続き読んでください。」
と敬語になって低姿勢で頼んだので、ラントは朗読を再開する。
フェアが、こっそり胸をなで下ろす。この間の芝居で、感情を乗せて台詞を口にするのが癖になってしまったのだろうか。もともと、フェア以外の人間の前では常に仮面をかぶっているようなラントだから、演技が巧みなのも当然か。
女将が貸してくれた本は、この地方に伝わる、夏祭りの起源となった民話だ。短い話なので、ラントは、さらっと読み終わってしまったが、文字を追うと3分で眠くなるフェアは、本を開く気になれない。それでも、話がちょっと気になるのと、意地悪な台詞じゃないラントの声を聞いていたいというのがあって、フェアはラントに朗読を頼んで今に至る。
物語は、悲しく残酷なラストを迎えていた。
「オルテンシアに裏切られた森の精霊は、怒りと悲しみに泣き叫んだ。精霊の頬から伝わった血の涙は、大地に落ちたとたんに、真紅の薔薇となって咲き誇る。薔薇の茎は、オルテンシアが少女と過ごす、彼の家まで伸びていき、その棘で、オルテンシアと少女を突き刺して殺してしまう。人と関わりがあったことが仲間に知られてしまった精霊は、森を追われ、いずこかへ姿を消す。いずれ、この地にもどってきて、この地の全てを呪ってやるという、恨みの言葉を残して。夏の祭は、精霊を慰め、その怒りを解いてほしいという願いをこめて行われるようになった。」
ラントは、パタンと薄い本を閉じ、机の上に放り出す。
フェアが腕を組んでうーんとうなる。
「かわいそうな話だな…。」
「そうか?大昔に無理心中でもあって、醜聞を隠すためにでっち上げた話じゃないのか?だいたい、殺人の道具にした薔薇を、街中に飾って、精霊の慰めになるのか?花屋の陰謀じゃないのか?そもそも、精霊は、この町にはいないのに、祭をしても無意味じゃないか?」
「なんでおまえは、身もふたもないことを言い出すんだよ…。」
フェアが、がっくりと項垂れる。もう慣れっこだが、こんなに綺麗な珊瑚色の唇から、ぽんぽん皮肉と毒舌をばら撒かれると、悲しくなってくる。それでも気を取り直して、言ってみる。
「でも、やっぱりかわいそうじゃん。」
ラントが、つ、と紅蓮の瞳をすがめた。ラントの美貌を見慣れているフェアがどきりとしたほどの凄みがあった。
「どっちが?」
「?どっちって、かわいそうなのは森の精霊だけだろ?約束破られてるんだから。」
「ふうん。おまえは、そっちに同情するわけか。今は。」
ラントがくすっと唇の端で笑う。意味ありげな笑い方だとフェアは思う。ラントは、フェアに対してだけは、裏表がないのに。フェアは不安になって、ラントの言葉をくり返す。
「今は?どういう意味だよ、ラント。」
フェアがラントに手を伸ばす。ラントがひらりと身をかわした。銀色の髪を揺らして、フェアの手をすり抜ける。
「そのうちわかるさ。」
はぐらかすように返し、ラントは花瓶の薔薇に目を向ける。
フェアは、行き場を失った手を握りしめ、ラントの視線を追う。
ラントが薔薇より赤い目を細めて言った。
「そう言えば、これと似たような薔薇だったな。」
「おまえ、もう、それ、忘れてくれよ…。」
言及されないから、安心していたら不意打ちだ。
やはり、二人同時に同じことを思い出していたらしい。
ラントがいつもの、意地悪な顔で、楽しそうに笑う。
「イヤだね。おまえがじーさんになっても、ずっとからかい続けてやる。」
「おまえ、それ本気か…?」
情けない顔になったフェアに、ラントは声を上げて笑った。銀髪をなびかせて、軽やかな足取りでフェアの隣まで戻って来ると、フェアの背中をばしばしと遠慮なく叩いた。
第一幕
神は、万物の創造主。
神は最初に、天を創り、そこに自らの姿と力を映した天使を置いた。
次に、大地や海を創りだし、天使よりも劣るが、やはり自らの姿に似せ、力を分け与えた精霊を置いた。さらに、獣や人を置いた。
神が作った種族は、皆、分をわきまえて生きていたが、人だけは違った。彼らはあっという間に数を増やし、地上を人で満たした。
神はそれを不快に思い、人の数を減らそうと考えた。
人を害する、人よりも強い力を持った種族によって。
獣は、人間の脆弱な肉体など簡単に切り裂ける、牙や爪を持っている。しかし、人は知性で獣を駆逐した。だから神は、人の知性を有し、さらに魔力を持った獣なら、逆に人を追い詰めると考えた。
しかし、それは失敗だった。獣は本来、生きるために必要な狩りしかしない。知性を持った獣が、すすんで人を襲うことはなかった。
そこで神は、人とも獣とも異なる種族を一から創りだす。人間に対する悪意と、人を凌駕する力を持った種、魔族を。
しかし、神も知らぬ間に、魔族の頂点に君臨していた魔王によって、魔族の結束が高まる。特に、知能も魔力も高い、人型の魔族ほど魔王に心酔した。その結果、人間は滅亡の一歩手前まで追い詰められ…神は今度は人間に武器を与えて、魔族を駆逐させる。魔王の存在を恐れて。
神が人間に与えた武器は二つ。
最初に与えた武器は、魔法。しかし、高度な魔法ほど習得には厳しい修行を要し、魔族を殺せるほどの魔法を扱える魔法使いはごく少数に留まった。
そこで、神は次の武器を与える。それが、「勇者の剣」。確実に魔族の息の根を止める、必殺の武器。「勇者の剣」に選ばれて、魔族を屠ることができる者こそ、勇者。
人間は知恵を絞り、いつしか勇者と魔法使いは協力して魔族を退治するようになる。
フェアとラントも、魔族から人を守る旅を続けている、勇者と魔法使いだ。
二人が十歳の夏、村が魔族に襲われて、二人以外全滅して以来、6年間、ずっと。
そして、薔薇の花にまつわる二人の思い出は、村が竜の炎に焼け落ちるより、さらに前。二人が7歳の夏―。
☆
早朝でも、窓から差し込む日射しは強く眩しく、「今日も暑くなりそうだな。」と思わせる一日の始まり。
「なあ、ラント、おきろよ。」
フェアは、ベッドで丸くなっているラントの肩を揺さぶる。
「はやくおきて、いっしょにあそぼうぜ。」
と、声をかけても、ラントは、目も開けないまま、不機嫌そうにフェアの手を払いのける。
「…やだ…。まだねむい…。」
「もう!きのうおそくまで、ほんなんかよんでるからだろー。おきろって。」
フェアは、ぴょんとベッドに跳び乗って、ラントの綺麗な銀色の髪を一束つかむ。さらさらの髪が、するんと、小さな手から抜け落ちそうだったので、しっかりつかみ直す。
朝日を浴びてきらきら光っている、プラチナの髪を、ぐいぐい引っ張ってやる。
「やめろ!いたい!!」
さすがにラントが跳び起きた。
ルビーのような赤い瞳で、ぎろっとフェアをにらみ、そのまま飛びかかってくる。
「うわっ!やったな、ラント!」
「先に手を出したのは、フェアだろ!」
取っ組み合いの喧嘩になって、フェアがラントのほっぺたを、びみょーんと伸ばす。
そして噴き出した。
「あはははは!ラント、へんなかおー。」
笑ったので力がフェアの力がゆるみ、ラントはぐいっと、フェアの両手を外した。
「フェアの馬鹿力!」
と毒づくが、フェアがあんまり楽しそうに笑っているので、ラントも毒気を抜かれてしまう。
それでも、このささいな出来事を覚えていて、何年もたってから仕返しをするラントだが、それはまた別の話。
ばたばたやっていた音が聞こえたのだろう。子ども部屋の外から、フェアの母親に声をかけられる。
「フェア、ラントくん。朝ご飯できてるから、食べにいらっしゃい。お母さんたちは、畑に行ってるわね。」
日が高くなる前に、畑仕事を済ませたいらしい。
「そのうち、ラントくんのお母さんも迎えに来るから。」
と、つけ加える。
「「はあい。」」
と、フェアとラントは声を合わせて返事をする。ラントは
「ありがとうございます。」
と、高く澄んだ声で、かわいらしくお礼を言う。横でフェアが、
「ラントって、ほんとうにねこかぶり…。」
と、ぼそっと呟く。フェアは、ラントの本性を見抜いたのは、一月ほど前のこと。それ以来、ラントは、フェアにだけは容赦がない。
(だけど、まえよりもなかよくなれたきがする。)
と、フェアはラントの顔をじっと見る。
「?」
とラントは、小首をかしげ、肩までの銀髪がさらっと揺れる。
「なんでもない。ほら、あさごはん、たべにいこうぜ。」
☆
ミルクとパンと、野菜を切っただけの、質素な朝食。けれど、パンは焼き立てて香ばしく、野菜は新鮮だ。贅沢ではないけれど、友達と食べる朝ご飯は、とても美味しい。
パンで口をぱんぱんにしながら、フェアが
「ラントのほははんほほひはん、ほほひっへふんは?」
と、言いかけたので、ラントが、遮って言う。
「呑みこんでからしゃべれよ。何言ってるかわかんないだろ。オレの母さんと父さんがなんだって?」
フェアは、ごくんと呑みこんで
「つたわってるじゃん。」
と返す。
「昨日は、結婚記念日だったんだってさ。毎年、町のレストランで食事して、その日は、父さんの実家に泊まるんだ。」
「ああ、そういえば、ラントのおとうさんって、もともとまちのひとだったよな。」
「去年まで、オレもつきあわされたんだけど、あの二人が、いちゃいちゃするのを見るのは、もう、うんざりだから、今年は、二人だけで言ってきたらいいよ、留守番してるからって、断った。」
「ラント、おまえ、なんかひどいこといってないか?」
と、フェアはじとーっとラントを見る。ラントが基本的に人間嫌いなのを見抜いたフェアだが、まさか実の両親に対してもそうだとは。
「ひどくない。いつまでも新婚気分だから、こっちがはずかしい。」
「うーん。」
フェアがうなる。フェアとラントは同い年なのだが、ラントは本が好きで、大人が読むような本もたくさん読んでいるから、圧倒的に知識と語彙が豊富で、難しい言い回しも使いこなしている。絵本すら開かないフェアは、知らない単語を駆使されると、話について行けない。だから、とりあえず、思ったままを口にする。
「でも、そのおかげで、ラントがオレのいえにとまってくれたんだから、オレはうれしいなっ!これからも、とまりにこいよ!」
ラントの両親も、七つの子どもを一人残しておくのは心配で、隣の家のフェアの両親に一晩預かってもらうことにしたのだ。
無邪気に笑うフェアに、ラントが意地悪く言う。
「やだよ。おまえ、オレが本読むの、じゃまするし。」
「だって、おまえがあそんでくれないんだもん!」
「それに、フェア、ねぞうわるいし。オレ、何回か、けられたぞ。」
「え、ほんとか?ぜんぜんきづかなかった!ごめん!」
「うん、仕返しに引っぱたいたけど、おまえ、全然起きなかったな。」
「うわ、ラント、ひどい!!」
「おまえが、オレの安眠を妨害するからだろ!」
と、子どもらしいのかくだらないのか不毛なのか、何とも言いようのない口喧嘩を繰り広げていると。
「ごめんください。」
「お邪魔します。ラント、迎えに来たわよ。」
と、玄関から声がした。ラントの父親と母親の声だ。
フェアとラントが玄関へ向かう。ドアを開けると、着飾った二人が立っていた。
ラントの父親は、町の出身なだけあって、あか抜けていて、野暮ったさがない。母親は、町に花や野菜を売りに出ていたときに、父親が一目ぼれしただけあって、村でも評判の美人だ。
二人とも、見目は良い方だが、ラントの天使のような美貌とは、全く似ていない。
「こんにちは、フェアくん。ラントと遊んでくれてありがとう。」
「こんにちは。今、お父さんもお母さんも畑に行ってて。」
「あら、そうなの。じゃあ、あらためてお礼にうかがうわ。これ、お母さんに渡しておいてくれる?」
と、ラントの母親がバスケットを差し出す。受け取ってみると、町で有名な店の焼き菓子だった。
「わーい、ありがとう、おばさん!」
「どういたしまして。じゃあ、ラント帰りましょう。」
「え、もう?」
と、言ったのは、ラントではなくフェアだ。フェアがラントの腕をがしっとつかむ。
「もうちょっとあそぼうぜ、ラント。」
ラントは、やれやれという顔を、フェアにだけ見せ、両親には子どもらしい笑顔を向ける。この辺り、ラントの基準は謎である。
「もうちょっとあそんでから帰るよ。」
ラントの両親としては、隣家にあまり迷惑をかけたくはないというのが本音だが、結局折れてくれた。
「お昼ごはんはうちで食べるのよ。」
「はあい。」
と、ラントはかわいらしく返事をする。
「じゃあ、フェアくん。お父さんとお母さんによろしく。」
と、去ろうとしたラントの父親に、
「ねえ、おじさん。おじさんは、どうして、おばさんとけっこんしたの?」
と、フェアが問いかけた。
ラントの父親は突然の問いかけに面食らったようだが、すぐに、結婚記念日の食事のために息子を隣家に預けたことと結びつける。そこから発生した、子どもらしい無邪気な疑問だと。
どう答えたものか、ラントの父親は少し悩み、それでも誠実に答えた。
「ずっと一緒にいたかったからだよ。」
フェアの大きな丸い瞳、磨かれた黒曜石のように相手を映す瞳が瞬く。ラントの父親は、それを見て言葉を継いだ。
「ほら、おじさんは町に住んでいて、おばさんは村の娘さんだっただろう。ぐずぐずしていたら、村の誰かと結婚してしまうんじゃないかと焦ってね。」
「あのときは驚いたわぁ。いきなり、薔薇の花を差し出されて、お嫁さんになってください、ですもの。」
年若い恋人どうしのように頬を染めて見つめ合う二人。
彼らの子どもは、(あーまた始まった。)という醒めた目で両親を眺めている。
そんなラントの隣で、フェアは、よし、と一人、頷いたのだった。
☆
その後、フェアがラントの読書の邪魔をし、ラントがそれを追い払うのに疲れて、結局一緒に遊び、あっという間に昼前になった。
緑豊かな村は、日射しは厳しいが、木陰にいれば倒れるほどの暑さではない。
二人が遊んでいたのは村の外れ、森の入り口近くだ。あまり森の奥へ行ってはいけないと言われているが、この辺りなら怒られることもない。
今の季節の森は、色とりどりの花が咲き乱れて、華麗にその美を競っている。
薫り高いクチナシ、朱色のラッパのようなノウセンカズラ、無数の花びらが重なるダリア。
「フェア、そろそろ帰るぞ。」
と、ラントはまだ遊び足りない様子のフェアを呼ぶ。昼には帰る約束だし、一日で気温が最高になる時間には、流石に外にいない方がいい。
「あ、ちょっとまって。」
と、言って、フェアが今が盛りと咲き誇る、真紅の薔薇に手を伸ばす。咲き競う花々の中でも、真っ赤な薔薇は一際鮮烈な存在感を放っている。
フェアは、茎をつかみ、ぷちっと千切る。
「いてっ!」
と言ったので、棘が刺さったのだろう。ラントは呆れながらフェアに近づいて、
「なにやってるんだよ、バラはトゲがあるんだから気をつけろ。」
と、言ったところで、
「はい。」
と、フェアに、その薔薇を差し出される。それだけでも、ちょっと驚いたのだが、その後のフェアの発言に、ラントは心底度肝を抜かれた。
「ラント、これあげるから、オレのおよめさんになってくれよ。」
「はあ!?」
ラントが、真紅の目を丸くして絶句する。
たいていのことには動じない、子どもらしくない子どもだったラントだが、これには完全に真っ白になった。
「…えーと…オレは男だから、フェアのおよめさんにはなれないぞ。」
7歳にしては博識だったラントだが、同性どうしで結婚できる国もあると知ったのは、もっと成長してからだった。(その場合でも「およめさん」とは呼ばないだろう。)と、後年のラントは述懐することになるのだが。
ラントの返答に、フェアの眉が悲しそうに下がる。泣きそうな顔になったフェアに、ラントは慌てたが、ラントも動揺していて、かける言葉が出てこない。
フェアは、黒い瞳を潤ませて、呟く。
「じゃあ、オレは、ラントとずっといっしょにいられないのか…?」
(そういうことか!)
そこで、やっとラントは、フェアに意図に気づいた。だから、安心させるような、元気づけるような笑顔になった。ラントが、フェアにだけ向ける、本当に優しい目をして。
「フェアはバカだなあ。」
「バカってなんだよ!」
「友達だって、ずっと一緒にいられるんだぞ。」
フェアの瞳が、パッと輝いた。
夜空に瞬く星のように、鮮烈な光が。
「ほんとに?じゃあ、オレ、ずっとラントといっしょにいられる?」
「当たり前だろ。だいたい、結婚したって、離婚することだってあるだろ。だから、友達の方がずっといいんだぞ。」
と、ラントは力強く頷く。
「そっかあ。」
と、フェアは心底安堵したように笑い、
「じゃあ、これ、どうしよう。」
と、手にしていた薔薇に視線を落とす。
ラントが、パッと手を伸ばして、フェアの手から薔薇の花を取り上げた。
「せっかくだから、もらっといてやるよ。」
今の季節、村のどこにでも咲いている薔薇が、急に惜しくなったのは、どうしてだろう。ラントの目には、急に、フェアの手にある一輪の薔薇が、ひどく特別な、世界に一つしかないものに見えて。
その後、ラントは家にもどって昼食を食べ、その後、やって来たフェアと夕飯までまた遊んだ。
遠い夏の日、故郷の村が竜の炎に焼かれる前の、小さな出来事。
フェアが勇者でなく、ラントが魔法使いではなかった頃。一切の悲劇が起こる前。二人がただの子どもでいられた夏。
0
あなたにおすすめの小説
英雄一家は国を去る【一話完結】
青緑 ネトロア
ファンタジー
婚約者との舞踏会中、火急の知らせにより領地へ帰り、3年かけて魔物大発生を収めたテレジア。3年振りに王都へ戻ったが、国の一大事から護った一家へ言い渡されたのは、テレジアの婚約破棄だった。
- - - - - - - - - - - - -
ただいま後日談の加筆を計画中です。
2025/06/22
後日譚追加【完結】冤罪で追放された俺、真実の魔法で無実を証明したら手のひら返しの嵐!! でももう遅い、王都ごと見捨てて自由に生きます
なみゆき
ファンタジー
魔王を討ったはずの俺は、冤罪で追放された。 功績は奪われ、婚約は破棄され、裏切り者の烙印を押された。 信じてくれる者は、誰一人いない——そう思っていた。
だが、辺境で出会った古代魔導と、ただ一人俺を信じてくれた彼女が、すべてを変えた。 婚礼と処刑が重なるその日、真実をつきつけ、俺は、王都に“ざまぁ”を叩きつける。
……でも、もう復讐には興味がない。 俺が欲しかったのは、名誉でも地位でもなく、信じてくれる人だった。
これは、ざまぁの果てに静かな勝利を選んだ、元英雄の物語。
【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました
ツカノ
ファンタジー
とある国の王太子が、卒業パーティーの日に最愛のスワロー・アーチェリー男爵令嬢を虐げた婚約者のロビン・クック公爵令嬢を断罪し婚約破棄をしようとしたが、何故か公爵令嬢は現れない。これでは断罪どころか婚約破棄ができないと王太子が焦り始めた時、招かれざる客が現れる。そして、招かれざる客の登場により、彼らの運命は転がる石のように急転直下し、恐怖が始まったのだった。さて彼らの運命は、如何。
卒業パーティでようやく分かった? 残念、もう手遅れです。
柊
ファンタジー
貴族の伝統が根づく由緒正しい学園、ヴァルクレスト学院。
そんな中、初の平民かつ特待生の身分で入学したフィナは卒業パーティの片隅で静かにグラスを傾けていた。
すると隣国クロニア帝国の王太子ノアディス・アウレストが会場へとやってきて……。
魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。
カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。
だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、
ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。
国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。
そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。
魔王を倒した手柄を横取りされたけど、俺を処刑するのは無理じゃないかな
七辻ゆゆ
ファンタジー
「では罪人よ。おまえはあくまで自分が勇者であり、魔王を倒したと言うのだな?」
「そうそう」
茶番にも飽きてきた。処刑できるというのなら、ぜひやってみてほしい。
無理だと思うけど。
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる