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もちもちぷっちり
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「ひとり、なんこだったかしら?いつつ?むっつ?」
「バカバカ! さっきも言っただろ! 1人四つだ!」
旺仁郎に抱えられたエマの問いに、横を歩くコマが答えた。
「いいよ、エマ。僕の分もお食べ」
「ああ、ずるいずるい!」
コマは不貞腐れ、頬を膨らませている。
旺仁郎は自分の分の包みを開き、出掛けに揚げた胡麻団子をひとつづつ、コマとエマに差し出した。家を出る前に味見と称して揚げたてを一つ口に入れてから、コマとエマの頭の中は胡麻団子でいっぱいなようだ。
「この周りのぷちぷちと、もっちりとした食感がたまらない! 中の得体の知れない黒いやつも甘くて最高!」
腹が減った時のおやつにと作ってきたのだが、腹が減る前に2人が食べ尽くしてしまいそうだ。もう少し作ってくればよかったなと、旺仁郎は胡麻団子を頬張る2人を眺めた。
灯りの外は深く暗い。
ヤマが手に持つ橙色の灯りを灯した提灯を頼りに、旺仁郎たちはお互いの姿を確認していた。
旺仁郎はヤマの羽織を肩にかけ、エマを胸に抱いている。
最初にこの暗闇に放り出された時に感じていた妙な気配は今はない。今思えば、あれは旺仁郎を人か妖かと値踏みする、悪意を持ったもう一つの八百万町の妖たちだったのだろう。
「ところで闇雲に歩いたって、扉なんて見つかりっこないだろ?」
もう町の灯りが見えないほどまで進んだが、コマの言う通り扉が開く気配は全くない。
「そうだね、暗闇の中の悪意の妖たちの動きを読めば多少予想がつくかもしれない。どれ、僕が少し様子を見てこよう」
ヤマは提灯をコマに手渡した。
「その火を消してはいけないよ。僕はそれを頼りに戻ってくるから」
そう言って長い髪をするりと揺らし、美しく長い尾を垂れ流しながら、暗闇の中で雉が飛び立った。
バタバタと羽を揺らす音が徐々に灯りの外へ消えていく。
しかしどう言うわけか、ヤマはほんの僅かのうちに舞い戻り、バサバサと羽を揺らしながら地面へと降り立った。
人の姿に戻った彼はふうふうと荒い息を整えながら、額に汗を滲ませている。
「ヤマちゃま、かっこつけてはいけないわ」
「そうだぞ、そんなに自由に飛べないだろ」
「いやいや、そりゃあ、雲雀や鷹のようには行かないけどね。僕だって鳥だよ、ちゃんと飛べるさ。そう、本気を出せば!」
抱えていたエマの体をコマに預け、まだ息の整わないヤマの背中を旺仁郎はよしよしとさする。
「モモちゃま、本当なんだ。僕はもっと自由に飛べるんだよ?だけどほら、こんな暗闇じゃ飛ぶ気にもなれなくて、ちょっと翼が鈍っているだけだ」
「はいはい、わかったわかった。地道に歩こうぜ」
コマの言葉に、皆また歩みを進めたが、少々落ち込んでいる様子のヤマが気の毒である。旺仁郎は彼の隣に並んで歩き、その背中に手を添えてやった。
◇
程なくして、生ぬるい風が背中と腕と髪を撫で、それは徐々に風圧を増した。
「この粗雑な風は、悪意の妖たちの隊列かもしれない。道を開けないと轢かれてしまう。みんな少しこちらにおいで」
開けるべき道が旺仁郎にはみえなかったが、ヤマには何かわかるのかもしれない。
エマを抱えたコマがヤマの促す傍により、それに続くように旺仁郎はヤマに手を引かれた。
しかしその体が逸れるより先に、強い風が旺仁郎の背中を駆けた。
風だけではなく幾つもの黒い塊が通り、その勢いで旺仁郎の肩に掛けた羽織を宙へと攫って行った。
ヤマの羽織が旺仁郎の身から離れると、一泊置いてピタリと風が動きを止めた。ヤマの言ったとおり、風の原因は妖の隊列だ。その妖たちはその場に止まり、ぐるりと暗闇に浮かべた瞳を旺仁郎に向けている。
一つだったり二つだったり、はたまた三つのその不気味な瞳に、旺仁郎も、ヤマも、そしてコマもエマも凍りついて息を飲んだ。
『人か?』
『匂うぞ、人だな?』
『人なの?』
『人に違いない』
『俺にはわかるぞ、コイツは人だ』
ざわめきの後、唸るような低い声が旺仁郎の体を攫った。
低く列をなしていたはずの悪意の妖達はいつのまにか、中空へ飛び立ち、旺仁郎は体を抱えられたまま足がどんどん地面から遠のいていく。
「モモ!」
「モモちゃま!」
自らの体を捉えた妖の姿は暗闇に沈み、その容姿は見て取れない。腰に回されたのは人の腕のようでもあるが、その感触はやたら柔らかく曖昧である。
振り返って姿を確認しようとすると、その妖は旺仁郎に向けて大きく口を開いたのだ。真っ黒な口内に、禍々しい歯が並んでいる。慌てて体ごとのけぞり、その腕から逃れようと手応えの少ない妖の体を押した。
しかし一度は腕からすりぬけ、落下仕掛けた旺仁郎の腕を、逃すまいと妖が掴み上げる。
片腕だけで旺仁郎はぶら下がる形となったが、そのすぐ後にバサバサと不恰好な音を立てて現れた雉がその嘴を妖に突き立てた。
それと同時に、鐘楼の鐘が鳴り響く。妖は音と嘴に驚いたのかその腕を離し、旺仁郎の体は投げ出され、下方に向かって落ちていく。
「モモ!」
足元から声が聞こえ、その直後に獣の体毛の感覚が旺仁郎を抱き止めた。
否、抱き止めたと言うより、うまい具合に背中に乗せた。それは、最初に出会った時よりも、もう少し大きな犬に姿を変えたコマであった。
コマは旺仁郎を背中に跨らせると、そのまま速度を緩めず走り続ける。
提灯を握りしめたまま頭のあたりの毛にしがみついていたエマが、涙を浮かべながら旺仁郎に飛びついた。
「モモちゃま! こわかったわね?! もうだいじょうぶよ! あたちがモモちゃまをまもってあげるわ!」
「お前! 特に何もしてないだろうがっ!」
足元でコマが文句を垂れた。
けたたましい鐘の音に紛れ、頭上でケンケンと雉が叫ぶ。見上げると真っ黒な隊列が、一直線に同じ方向へと流れていく。
ぶっかっこうにそれを追いかけていた雉であったが、やがて転がるように高度を下げて、その姿を小さく縮め、どさりと前方の地面に着地した。
コマは鼻先でその姿を持ち上げると、背中の旺仁郎に投げてきた。バサリと一度羽ばたいて、雉は旺仁郎の肩に乗る。
「きっとどこかで扉が開いたんだ!」
雉の姿のまま、ヤマが旺仁郎の肩で言った。
「どこであいたんだ?! あいつら追いかければいい?!」
全員を背負って必死に走るコマは、少々息を切らしているが、それでもその足取りは確かだった。
「わからない! あいつらも扉の位置がわかったわけじゃないかもしれない! けど、追いかけるしかない!」
鐘の音と、蠢く妖が起こす風の音、そして足元で鳴るのは必死に駆ける、コマのパタパタと言う足音である。
そしてその音に紛れて、本当に微かなその声に旺仁郎は顔を上げた。
「モモちゃま? どうちたの?」
旺仁郎の様子に気づいたエマが胸元から見上げ、そう問いかけた。言葉で伝えるわけにもいかない旺仁郎は、ただその方向に腕を伸ばし、暗闇の先を指差している。
「きこえたのね? モモちゃま! きこえたんだわ!」
「えっ? なんて?! 鐘の音が煩くてよく聞こえない!」
足元でコマが叫んだ。
エマはフンと鼻から息を吐き、旺仁郎に提灯を手渡すと、するりと胸元から降りていった。そして再びコマの頭のあたりに跨ると、その体毛をぐいと旺仁郎が指差した右の方へと引っ張っている。
「こっちよ! コマちゃま!」
それを合図に、コマはぐいと体を傾けて、その進む方向を右方向へと変えていった。
「モモちゃま、方向はあっているかい?あっちの方から聞こえるんだね?」
肩に乗ったヤマの言葉に旺仁郎は強く頷いた。
上空を隊列をなして飛んでいた妖は、一度向こうの方へと通り過ぎたが、突然ぐるりと列を曲げた。その先頭は旺仁郎たちと同じ方向に向けて進んでおり、どうやら扉の位置に気がついたようである。
「うわぁっ! 見ろよあれ! すごいすごい!」
コマが走りながら感嘆の声を上げた。
目の前には一筋の光が浮かんでいるが、その距離を縮めるごとに、それは大きくなっていく。
「ちゅごいわ! とびらなのね! とびらがあいてるひかりだわ!」
それは細く開かれた、扉の隙間から漏れる光である。旺仁郎はその光の先から聞こえる自分の名を呼ぶ声に、胸が燃えそうなほどに熱くなった。
「どうするんだ?! このままだと、あの上の妖と一緒に飛び出す感じになるぞっ?!」
コマの問いに、肩でヤマが息を飲んだ。
「とにかく出よう! このまま突っ込むんだ、コマ!」
ヤマの言葉に、ガウッ!と力強く答えたコマは、三人を背に乗せたまま、その後ろ足で暗い暗い地面を蹴った。そして前足を伸ばし、その光の中へと身を投じる。
長い暗闇の中にいたせいでその目は眩み、思わず、コマもヤマもその姿を人に戻し、体はバランスを崩して中空に投げ出された。
八百万町妖奇譚
-ぷちぷちもっちり-
「バカバカ! さっきも言っただろ! 1人四つだ!」
旺仁郎に抱えられたエマの問いに、横を歩くコマが答えた。
「いいよ、エマ。僕の分もお食べ」
「ああ、ずるいずるい!」
コマは不貞腐れ、頬を膨らませている。
旺仁郎は自分の分の包みを開き、出掛けに揚げた胡麻団子をひとつづつ、コマとエマに差し出した。家を出る前に味見と称して揚げたてを一つ口に入れてから、コマとエマの頭の中は胡麻団子でいっぱいなようだ。
「この周りのぷちぷちと、もっちりとした食感がたまらない! 中の得体の知れない黒いやつも甘くて最高!」
腹が減った時のおやつにと作ってきたのだが、腹が減る前に2人が食べ尽くしてしまいそうだ。もう少し作ってくればよかったなと、旺仁郎は胡麻団子を頬張る2人を眺めた。
灯りの外は深く暗い。
ヤマが手に持つ橙色の灯りを灯した提灯を頼りに、旺仁郎たちはお互いの姿を確認していた。
旺仁郎はヤマの羽織を肩にかけ、エマを胸に抱いている。
最初にこの暗闇に放り出された時に感じていた妙な気配は今はない。今思えば、あれは旺仁郎を人か妖かと値踏みする、悪意を持ったもう一つの八百万町の妖たちだったのだろう。
「ところで闇雲に歩いたって、扉なんて見つかりっこないだろ?」
もう町の灯りが見えないほどまで進んだが、コマの言う通り扉が開く気配は全くない。
「そうだね、暗闇の中の悪意の妖たちの動きを読めば多少予想がつくかもしれない。どれ、僕が少し様子を見てこよう」
ヤマは提灯をコマに手渡した。
「その火を消してはいけないよ。僕はそれを頼りに戻ってくるから」
そう言って長い髪をするりと揺らし、美しく長い尾を垂れ流しながら、暗闇の中で雉が飛び立った。
バタバタと羽を揺らす音が徐々に灯りの外へ消えていく。
しかしどう言うわけか、ヤマはほんの僅かのうちに舞い戻り、バサバサと羽を揺らしながら地面へと降り立った。
人の姿に戻った彼はふうふうと荒い息を整えながら、額に汗を滲ませている。
「ヤマちゃま、かっこつけてはいけないわ」
「そうだぞ、そんなに自由に飛べないだろ」
「いやいや、そりゃあ、雲雀や鷹のようには行かないけどね。僕だって鳥だよ、ちゃんと飛べるさ。そう、本気を出せば!」
抱えていたエマの体をコマに預け、まだ息の整わないヤマの背中を旺仁郎はよしよしとさする。
「モモちゃま、本当なんだ。僕はもっと自由に飛べるんだよ?だけどほら、こんな暗闇じゃ飛ぶ気にもなれなくて、ちょっと翼が鈍っているだけだ」
「はいはい、わかったわかった。地道に歩こうぜ」
コマの言葉に、皆また歩みを進めたが、少々落ち込んでいる様子のヤマが気の毒である。旺仁郎は彼の隣に並んで歩き、その背中に手を添えてやった。
◇
程なくして、生ぬるい風が背中と腕と髪を撫で、それは徐々に風圧を増した。
「この粗雑な風は、悪意の妖たちの隊列かもしれない。道を開けないと轢かれてしまう。みんな少しこちらにおいで」
開けるべき道が旺仁郎にはみえなかったが、ヤマには何かわかるのかもしれない。
エマを抱えたコマがヤマの促す傍により、それに続くように旺仁郎はヤマに手を引かれた。
しかしその体が逸れるより先に、強い風が旺仁郎の背中を駆けた。
風だけではなく幾つもの黒い塊が通り、その勢いで旺仁郎の肩に掛けた羽織を宙へと攫って行った。
ヤマの羽織が旺仁郎の身から離れると、一泊置いてピタリと風が動きを止めた。ヤマの言ったとおり、風の原因は妖の隊列だ。その妖たちはその場に止まり、ぐるりと暗闇に浮かべた瞳を旺仁郎に向けている。
一つだったり二つだったり、はたまた三つのその不気味な瞳に、旺仁郎も、ヤマも、そしてコマもエマも凍りついて息を飲んだ。
『人か?』
『匂うぞ、人だな?』
『人なの?』
『人に違いない』
『俺にはわかるぞ、コイツは人だ』
ざわめきの後、唸るような低い声が旺仁郎の体を攫った。
低く列をなしていたはずの悪意の妖達はいつのまにか、中空へ飛び立ち、旺仁郎は体を抱えられたまま足がどんどん地面から遠のいていく。
「モモ!」
「モモちゃま!」
自らの体を捉えた妖の姿は暗闇に沈み、その容姿は見て取れない。腰に回されたのは人の腕のようでもあるが、その感触はやたら柔らかく曖昧である。
振り返って姿を確認しようとすると、その妖は旺仁郎に向けて大きく口を開いたのだ。真っ黒な口内に、禍々しい歯が並んでいる。慌てて体ごとのけぞり、その腕から逃れようと手応えの少ない妖の体を押した。
しかし一度は腕からすりぬけ、落下仕掛けた旺仁郎の腕を、逃すまいと妖が掴み上げる。
片腕だけで旺仁郎はぶら下がる形となったが、そのすぐ後にバサバサと不恰好な音を立てて現れた雉がその嘴を妖に突き立てた。
それと同時に、鐘楼の鐘が鳴り響く。妖は音と嘴に驚いたのかその腕を離し、旺仁郎の体は投げ出され、下方に向かって落ちていく。
「モモ!」
足元から声が聞こえ、その直後に獣の体毛の感覚が旺仁郎を抱き止めた。
否、抱き止めたと言うより、うまい具合に背中に乗せた。それは、最初に出会った時よりも、もう少し大きな犬に姿を変えたコマであった。
コマは旺仁郎を背中に跨らせると、そのまま速度を緩めず走り続ける。
提灯を握りしめたまま頭のあたりの毛にしがみついていたエマが、涙を浮かべながら旺仁郎に飛びついた。
「モモちゃま! こわかったわね?! もうだいじょうぶよ! あたちがモモちゃまをまもってあげるわ!」
「お前! 特に何もしてないだろうがっ!」
足元でコマが文句を垂れた。
けたたましい鐘の音に紛れ、頭上でケンケンと雉が叫ぶ。見上げると真っ黒な隊列が、一直線に同じ方向へと流れていく。
ぶっかっこうにそれを追いかけていた雉であったが、やがて転がるように高度を下げて、その姿を小さく縮め、どさりと前方の地面に着地した。
コマは鼻先でその姿を持ち上げると、背中の旺仁郎に投げてきた。バサリと一度羽ばたいて、雉は旺仁郎の肩に乗る。
「きっとどこかで扉が開いたんだ!」
雉の姿のまま、ヤマが旺仁郎の肩で言った。
「どこであいたんだ?! あいつら追いかければいい?!」
全員を背負って必死に走るコマは、少々息を切らしているが、それでもその足取りは確かだった。
「わからない! あいつらも扉の位置がわかったわけじゃないかもしれない! けど、追いかけるしかない!」
鐘の音と、蠢く妖が起こす風の音、そして足元で鳴るのは必死に駆ける、コマのパタパタと言う足音である。
そしてその音に紛れて、本当に微かなその声に旺仁郎は顔を上げた。
「モモちゃま? どうちたの?」
旺仁郎の様子に気づいたエマが胸元から見上げ、そう問いかけた。言葉で伝えるわけにもいかない旺仁郎は、ただその方向に腕を伸ばし、暗闇の先を指差している。
「きこえたのね? モモちゃま! きこえたんだわ!」
「えっ? なんて?! 鐘の音が煩くてよく聞こえない!」
足元でコマが叫んだ。
エマはフンと鼻から息を吐き、旺仁郎に提灯を手渡すと、するりと胸元から降りていった。そして再びコマの頭のあたりに跨ると、その体毛をぐいと旺仁郎が指差した右の方へと引っ張っている。
「こっちよ! コマちゃま!」
それを合図に、コマはぐいと体を傾けて、その進む方向を右方向へと変えていった。
「モモちゃま、方向はあっているかい?あっちの方から聞こえるんだね?」
肩に乗ったヤマの言葉に旺仁郎は強く頷いた。
上空を隊列をなして飛んでいた妖は、一度向こうの方へと通り過ぎたが、突然ぐるりと列を曲げた。その先頭は旺仁郎たちと同じ方向に向けて進んでおり、どうやら扉の位置に気がついたようである。
「うわぁっ! 見ろよあれ! すごいすごい!」
コマが走りながら感嘆の声を上げた。
目の前には一筋の光が浮かんでいるが、その距離を縮めるごとに、それは大きくなっていく。
「ちゅごいわ! とびらなのね! とびらがあいてるひかりだわ!」
それは細く開かれた、扉の隙間から漏れる光である。旺仁郎はその光の先から聞こえる自分の名を呼ぶ声に、胸が燃えそうなほどに熱くなった。
「どうするんだ?! このままだと、あの上の妖と一緒に飛び出す感じになるぞっ?!」
コマの問いに、肩でヤマが息を飲んだ。
「とにかく出よう! このまま突っ込むんだ、コマ!」
ヤマの言葉に、ガウッ!と力強く答えたコマは、三人を背に乗せたまま、その後ろ足で暗い暗い地面を蹴った。そして前足を伸ばし、その光の中へと身を投じる。
長い暗闇の中にいたせいでその目は眩み、思わず、コマもヤマもその姿を人に戻し、体はバランスを崩して中空に投げ出された。
八百万町妖奇譚
-ぷちぷちもっちり-
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