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最終戦9

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 ルカが棒を振るう。魔術的な付与などは何も施されていない、ただの棒だ。レオンフォルテの剣に比べて三分の一程度の長さしかなくリーチも短い。当然、レオンフォルテの体には届かない。それ故――ルカは、その棒を投げた。正確に言えば、二本ある棒の内の一本を投げた。

(…あ?)

 レオンフォルテは、ますます意味が分からない…といった表情だ。こんな木の棒を投げられた所で痛くも痒くもない。だが、少年はさらなる動きを見せた。投げなかった方の棒を横に振るったのだ。その動きにあわせて、先に投げた棒が円を描くように舞った。何故そんな動きをしたのかといえば、先に投げた棒と今手に持っている棒は鎖で繋がれているからだ。

「なっ…!」

 棒の見せた予想外の動きに、レオンフォルテは後ろへ下がる。だが――少年の追撃の方が一足早い。再び棒を振るう。その先端が、レオンフォルテの肩を僅かに掠めた。

「貴様…っ」

 レオンフォルテが怒りに一瞬我を忘れたその時…、棒に付いている鎖がレオンフォルテの剣を絡め取った。

(まずい――!)

 と思った時には、もう遅い。レオンフォルテの剣は彼の手から奪い取られている。

(なんだ、何をやった、こいつ…!?)

 奇術でも見せられたかのように、レオンフォルテは唖然とした表情だ。それもそのはず、こんな武器、こんな戦い方は今まで見た事がない。それはこの会場にいる殆どの人間が同じ感想を抱いただろう。

 だが――ルカにこの武器を伝授した張本人、来島安鶴沙は違う。彼女は…いや、彼女のみならず彼女のいた世界、彼女の住んでいた国であれば誰でもその武器を知っている。

 二本の棒を鎖で繋げた、古流武器。それは…ヌンチャクだった。
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