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トーナメント終了2

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 レオンフォルテは10名近い護衛を引き連れ、救護室にずかずかと足を踏み入れた。

 アレクシアはルカを庇うように立ち上がる。

「兄上…!いったいどうされたのですか」

「どうしたのかだと?」

 レオンフォルテは妹に視線を向けた。

「決まっている、お前を連れて帰るために来たのだ。さあ、王都に帰るぞ!バウムガルデン大臣との婚姻を進めなければ」

「待ってください…!」

 ルカがベッドから体を起こした。

「その話はなくなったはずです!」

 ルカは自分の冒険者資格とアレクシアの自由を賭けレオンフォルテと戦い、そして勝利した――つまり、

「アレクシアさんは自由なはずです!」

「はぁ?余が貴様如き庶民との約束を守ると思ったか!むしろ余に危害を加えた罪で貴様に制裁を加えてもいいんだぞ!ええ!?」

 レオンフォルテの理屈は筋が通っていない。ルカがレオンフォルテに危害を加えたと言うが、それは両者合意した試合においての事だ。

「まあまあ、レオンフォルテフォルテ…」

 逆上するレオンフォルテをなだめるように話しかけた者があった。彼の後ろに立っていたレオンゼーレだ。

「そんなに怒鳴るなよ、アレクシアはお前の妹だろ?兄妹きょうだいはもっと仲良く…」

「叔父上!」

 レオンフォルテは振り返り叔父を睨みつける。

「いちいち口を挟まないでもらおうか!何度も以前も言ったように、これはシュタインベルグ王家の問題だ!」

「だがな、俺は親父殿にお前たちの事を…」

「黙れ!」

 レオンフォルテが剣を抜き放ち、その切先をレオンゼーレに突き付けた。

「余はシュタインベルグ家王子がひとり、レオンフォルテ・ツヴァイク・フォン・シュタインベルグである!庶民が口出しを…!」

 そこまで言ったその時、

(え…)

 ルカは、その背に氷柱でも押し当てられたかのような寒気を憶えた。その正体は…、

(殺気…!)

 レオンフォルテの発したものではない。その殺気は、レオンフォルテの物とは比べ物にならない程に鋭い。アレクシアや安鶴沙、そしてレオンフォルテすらもそれを感じ取っていたようで、身を固くしている。

「おい…」

 と、その殺気の主――レオンゼーレ・ツヴァイクは言った。

「俺に剣を向けたな…秘伝剣士であるこの俺に」
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