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第二十四章 死神たちの観測
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第二十四章一話 死神たちの観測
川原に、遠ざかるサイレンの音が響いていた。
赤色灯がいくつも明滅し、救急隊員たちが少年たちと、そして意識の戻らぬままの二人の若者――陸翔と奏を次々に担架へ乗せていく。
野次馬も、近隣の通行人も、ざわめきの渦の中にいた。
騒然としたその光景を、少し離れた小高い土手の上から見つめる二つの影があった。
一人は漆黒のスーツ姿、冷たい目をした死神・烏牙(うが)。
もう一人は、銀色の髪を後ろで束ねた鋭い眼光の男――死神・那刃(なじん)である。
「……こうなることを、お前は知っていたのか?」
沈黙を破った那刃が、視線を下の騒動へ向けたまま尋ねた。
「いや」烏牙は静かに答えた。
「可能性は五分五分だと思っていたよ」
「へえ、思ったより弱気だな」
「運命が変わるかどうか――それは“人が本当に変われるか”にかかってる」
「人間が変わる……?」
「そうだ。遥が生き延びたのは、碧人が変われたからだ。心の底から。だから、彼女に“新たな影響”が生まれた」
烏牙の瞳が、かすかに微笑んだように見えた。
「今回も同じだ。あの陸翔という少年が、己の業と真正面から向き合って、変わった。だから彼の“変化”が、奏に作用したんだ。碧人が遥に与えたのと同じように」
那刃はふっと鼻で笑った。
「そんなことで変わるのかね、運命ってのは」
「“そんなこと”が、一番難しいことなんだよ。人間にとって」
川辺では救急車が発進し、パトカーが交通を誘導していた。遥は救急隊員に付き添い、奏の手を握ったままだ。
「……お前、また関与したな」
那刃が皮肉混じりに呟く。
「死神クビになるな、きっと」
「それはお互い様だろ。今回はお前も関与した」
「なんだよそれ」
「陸翔に飛び込む勇気を与えたのは誰だと思ってる。あの“静かな観測者”を背中押したのは……お前だよ」
那刃は口を開きかけたが、言葉に詰まり、やがて苦笑いした。
「……そうか。お前にしては、うまい手を打ったな」
二人は目を合わせた。
そして同時に、小さく笑った。
「で――」那刃が尋ねる。
「さっき言ってた“もっと大事なアレ”って何だ?」
烏牙はその質問に、にやりと意味深な笑みで答えた。
「……今に分かるさ。俺が仕掛けた“策略”だよ」
那刃は眉を上げる。
「まだ何かあるってのか?」
「あるとも。観測は、これからが本番だ」
そう言うと、烏牙の姿が、薄く空気に溶けていくように霞んだ。
那刃もそれに続くように、ぼそりと呟いた。
「やれやれ……死神ってのも、楽じゃないな」
そして――
二人の死神は、川原から姿を消した。
運命の最終観測地へと向かって。
第二十四章二話 夢の中の男
黒田は最近、眠るのが怖くなっていた。
目を閉じると――“あの夢”がやってくるからだ。
何度も何度も、まったく同じ光景。
薄暗い部屋、動かない仲間たちの姿。そして、自分の腹を踏みつける誰かの黒い靴。
声は聞こえない。だが“何かを伝えようとしている”ことだけは分かる。
そのたびに黒田は汗びっしょりになって目覚めるのだった。
――夢だけじゃない。
昼間でも、気配を感じるようになった。
背後に、誰かが立っている気がする。
振り向いても、誰もいない。
けれどある日――
ほんの一瞬だが、“男”がいた。
真っ黒なスーツに、冷たい目。
表情はないのに、なぜか黒田の心を凍らせた。
何かを言ったような気がする。
いや――確かに、言った。
> 「君の行き先は、もう決まっている」
その言葉だけが、脳内で何度もリピートされていた。
黒田は自分が“何かを選ばされている”ことに気づき始めた。
怯えながらも、何かを決めなくてはならない、という強迫観念に襲われる。
第二十四章三話 選ばされた男
黒田はここ数日、まともに眠れていなかった。
まぶたを閉じるたび、浮かぶのは三枝組の名前と、血まみれの自分だった。
やっていない、未遂に終わった。
でも――連中はそう簡単に信じる相手じゃない。
噂じゃ、あの組は“疑ったら殺す”ってやつだ。
(なんで俺、あんな計画に関わっちまったんだ……)
黒田の額を冷や汗が伝う。
昼間も、背後に視線を感じる。誰かに尾けられてる気がする。
実際には誰もいないのに、それが逆に怖い。
そして、あの夢。
黒いスーツの男。
まったく見知らぬ顔――だが、なぜか“人間じゃない”と直感させる存在。
> 「君の恐怖は、始まりにすぎない」
> 「選べ。正しい道を」
毎晩、同じ言葉。
黒田はとうとう、自分が“何かを選ばされている”と信じ始めていた。
深夜。限界の精神状態で鳴るスマホ
部屋の明かりを消しても眠れず、ただ布団の中で天井を見つめていたときだった。
スマホの振動音が静寂を裂いた。
(……なんだよ)
恐る恐る画面を開く。
そこには、見知らぬアカウントからのメッセージ。添付ファイルがひとつと、短い文章。
> 「これを送れば、助かる」
> 「送信先:MGC_FrontSec@saegusa-group.jp」
ファイルを開くと、そこには田沼が語る映像。
「例の店な。あれが終わったら、マジでボロ儲けだぞ」と笑いながら計画を話している。
さらに、計画書のPDF、現場の写真、仲間とのLINEスクショもあった。
(……これ、三枝のフロント企業のアドレスだ……)
黒田の指が震える。
(こんなもん送ったら、終わる。……いや、逆か。送れば、俺は“仲間を売ったやつ”じゃなく、“真実を告げたやつ”になる……)
「これを送れば、助かる」
再びその言葉が脳裏で響いた。
誰の声だったかはわからない。
ただ、“選べ”と告げていたあの男が、今もどこかで見ている気がした。
送信――その瞬間、静寂
黒田は迷わなかった。
ただ、怖かった。
スマホの送信ボタンをタップ。
ファイルは、確かに送信された。
その瞬間、全身の緊張が抜けていく。
(……これで、助かる)
黒田はそのまま、深く眠った。
その夢の中には、もう“黒いスーツの男”はいなかった。
第二十四章四話 ニュース速報
大阪 ミナミ。
ホテルの薄暗い部屋に、テレビの音声が響いていた。
>「――暴力団の抗争が都内で発生しました。関係者によると、白浜会傘下・三枝組と、山際組系列とされる詐欺グループの衝突が発端で、これにより双方に死者が出ている模様です」
画面には、血の跡が残るビジネスビル前の映像。
警察車両、救急隊、報道陣の騒ぎ――。
>「死亡が確認されたのは、詐欺グループの中心人物とされる田沼和真(41)、加藤裕二(38)、黒田賢司(31)、中野雅彦(34)の4人と、三枝組の構成員1名。
現在、警視庁は抗争の原因とみられる強盗未遂事件との関連性を捜査中です」
「……あいつら、全員……死んだ……?」
テレビを呆然と見つめていた陸翔は、椅子にもたれていた背中をわずかに起こした。
目の奥がじんわり熱い。
「嘘……だろ……」
口から漏れた言葉は震えていた。
「あいつら、死んだ? マジで?」
(ほんとに……終わったのか?
これで、逃げ回らなくてよくなったのか?)
ポケットのスマホを取り出し、表示された履歴の中から、一番上の名前を押す。
すぐに着信音が鳴った。1コール、2コール――
「……あ、かあちゃん? 今日、そっち行ってもいい?」
スマホを持つ手が、微かに震えていた。
第二十四章五話 正しい選択
空が群青色に染まりゆく夕刻。
1か月前、あの奏と陸翔の運命が変わった川原に、誰にも見えぬ二つの影が立っていた。
ひとりは漆黒の服に黒髪の男。
もうひとりは、白銀の長い髪を持つ、静かな死神。
「おまえ……権限、はみ出しすぎてないか」
那刃が、わざとらしく息をつく。
「対象者以外の前に姿現すなんて、ご法度中のご法度だぞ。観測者の掟、全部無視かよ」
烏牙は肩をすくめて、笑った。
「実際には“姿”は出してないさ。精神をちょっと撫でてやっただけ。……ああいうビビりには、それが一番効く」
「それで結局……二人救って、五人殺したってことか。
どう見ても釣り合わないぞ」
「いや、救ったのは三人だ。遥も入れてな」
「……そうだったな」
那刃は一拍置き、表情を消したまま問う。
「で、それは――正しいことだったのか?」
風が川面をなでる。誰の声もない静寂が数秒、夜に沈んだ。
烏牙は、低く、しかし迷いなく答えた。
「――ああ。これが俺の“正しい選択”だよ」
遠く、救急車のサイレンが聞こえて遠ざかっていく。
そして空には、どこまでも高く、星のひとつが瞬いていた。
川原に、遠ざかるサイレンの音が響いていた。
赤色灯がいくつも明滅し、救急隊員たちが少年たちと、そして意識の戻らぬままの二人の若者――陸翔と奏を次々に担架へ乗せていく。
野次馬も、近隣の通行人も、ざわめきの渦の中にいた。
騒然としたその光景を、少し離れた小高い土手の上から見つめる二つの影があった。
一人は漆黒のスーツ姿、冷たい目をした死神・烏牙(うが)。
もう一人は、銀色の髪を後ろで束ねた鋭い眼光の男――死神・那刃(なじん)である。
「……こうなることを、お前は知っていたのか?」
沈黙を破った那刃が、視線を下の騒動へ向けたまま尋ねた。
「いや」烏牙は静かに答えた。
「可能性は五分五分だと思っていたよ」
「へえ、思ったより弱気だな」
「運命が変わるかどうか――それは“人が本当に変われるか”にかかってる」
「人間が変わる……?」
「そうだ。遥が生き延びたのは、碧人が変われたからだ。心の底から。だから、彼女に“新たな影響”が生まれた」
烏牙の瞳が、かすかに微笑んだように見えた。
「今回も同じだ。あの陸翔という少年が、己の業と真正面から向き合って、変わった。だから彼の“変化”が、奏に作用したんだ。碧人が遥に与えたのと同じように」
那刃はふっと鼻で笑った。
「そんなことで変わるのかね、運命ってのは」
「“そんなこと”が、一番難しいことなんだよ。人間にとって」
川辺では救急車が発進し、パトカーが交通を誘導していた。遥は救急隊員に付き添い、奏の手を握ったままだ。
「……お前、また関与したな」
那刃が皮肉混じりに呟く。
「死神クビになるな、きっと」
「それはお互い様だろ。今回はお前も関与した」
「なんだよそれ」
「陸翔に飛び込む勇気を与えたのは誰だと思ってる。あの“静かな観測者”を背中押したのは……お前だよ」
那刃は口を開きかけたが、言葉に詰まり、やがて苦笑いした。
「……そうか。お前にしては、うまい手を打ったな」
二人は目を合わせた。
そして同時に、小さく笑った。
「で――」那刃が尋ねる。
「さっき言ってた“もっと大事なアレ”って何だ?」
烏牙はその質問に、にやりと意味深な笑みで答えた。
「……今に分かるさ。俺が仕掛けた“策略”だよ」
那刃は眉を上げる。
「まだ何かあるってのか?」
「あるとも。観測は、これからが本番だ」
そう言うと、烏牙の姿が、薄く空気に溶けていくように霞んだ。
那刃もそれに続くように、ぼそりと呟いた。
「やれやれ……死神ってのも、楽じゃないな」
そして――
二人の死神は、川原から姿を消した。
運命の最終観測地へと向かって。
第二十四章二話 夢の中の男
黒田は最近、眠るのが怖くなっていた。
目を閉じると――“あの夢”がやってくるからだ。
何度も何度も、まったく同じ光景。
薄暗い部屋、動かない仲間たちの姿。そして、自分の腹を踏みつける誰かの黒い靴。
声は聞こえない。だが“何かを伝えようとしている”ことだけは分かる。
そのたびに黒田は汗びっしょりになって目覚めるのだった。
――夢だけじゃない。
昼間でも、気配を感じるようになった。
背後に、誰かが立っている気がする。
振り向いても、誰もいない。
けれどある日――
ほんの一瞬だが、“男”がいた。
真っ黒なスーツに、冷たい目。
表情はないのに、なぜか黒田の心を凍らせた。
何かを言ったような気がする。
いや――確かに、言った。
> 「君の行き先は、もう決まっている」
その言葉だけが、脳内で何度もリピートされていた。
黒田は自分が“何かを選ばされている”ことに気づき始めた。
怯えながらも、何かを決めなくてはならない、という強迫観念に襲われる。
第二十四章三話 選ばされた男
黒田はここ数日、まともに眠れていなかった。
まぶたを閉じるたび、浮かぶのは三枝組の名前と、血まみれの自分だった。
やっていない、未遂に終わった。
でも――連中はそう簡単に信じる相手じゃない。
噂じゃ、あの組は“疑ったら殺す”ってやつだ。
(なんで俺、あんな計画に関わっちまったんだ……)
黒田の額を冷や汗が伝う。
昼間も、背後に視線を感じる。誰かに尾けられてる気がする。
実際には誰もいないのに、それが逆に怖い。
そして、あの夢。
黒いスーツの男。
まったく見知らぬ顔――だが、なぜか“人間じゃない”と直感させる存在。
> 「君の恐怖は、始まりにすぎない」
> 「選べ。正しい道を」
毎晩、同じ言葉。
黒田はとうとう、自分が“何かを選ばされている”と信じ始めていた。
深夜。限界の精神状態で鳴るスマホ
部屋の明かりを消しても眠れず、ただ布団の中で天井を見つめていたときだった。
スマホの振動音が静寂を裂いた。
(……なんだよ)
恐る恐る画面を開く。
そこには、見知らぬアカウントからのメッセージ。添付ファイルがひとつと、短い文章。
> 「これを送れば、助かる」
> 「送信先:MGC_FrontSec@saegusa-group.jp」
ファイルを開くと、そこには田沼が語る映像。
「例の店な。あれが終わったら、マジでボロ儲けだぞ」と笑いながら計画を話している。
さらに、計画書のPDF、現場の写真、仲間とのLINEスクショもあった。
(……これ、三枝のフロント企業のアドレスだ……)
黒田の指が震える。
(こんなもん送ったら、終わる。……いや、逆か。送れば、俺は“仲間を売ったやつ”じゃなく、“真実を告げたやつ”になる……)
「これを送れば、助かる」
再びその言葉が脳裏で響いた。
誰の声だったかはわからない。
ただ、“選べ”と告げていたあの男が、今もどこかで見ている気がした。
送信――その瞬間、静寂
黒田は迷わなかった。
ただ、怖かった。
スマホの送信ボタンをタップ。
ファイルは、確かに送信された。
その瞬間、全身の緊張が抜けていく。
(……これで、助かる)
黒田はそのまま、深く眠った。
その夢の中には、もう“黒いスーツの男”はいなかった。
第二十四章四話 ニュース速報
大阪 ミナミ。
ホテルの薄暗い部屋に、テレビの音声が響いていた。
>「――暴力団の抗争が都内で発生しました。関係者によると、白浜会傘下・三枝組と、山際組系列とされる詐欺グループの衝突が発端で、これにより双方に死者が出ている模様です」
画面には、血の跡が残るビジネスビル前の映像。
警察車両、救急隊、報道陣の騒ぎ――。
>「死亡が確認されたのは、詐欺グループの中心人物とされる田沼和真(41)、加藤裕二(38)、黒田賢司(31)、中野雅彦(34)の4人と、三枝組の構成員1名。
現在、警視庁は抗争の原因とみられる強盗未遂事件との関連性を捜査中です」
「……あいつら、全員……死んだ……?」
テレビを呆然と見つめていた陸翔は、椅子にもたれていた背中をわずかに起こした。
目の奥がじんわり熱い。
「嘘……だろ……」
口から漏れた言葉は震えていた。
「あいつら、死んだ? マジで?」
(ほんとに……終わったのか?
これで、逃げ回らなくてよくなったのか?)
ポケットのスマホを取り出し、表示された履歴の中から、一番上の名前を押す。
すぐに着信音が鳴った。1コール、2コール――
「……あ、かあちゃん? 今日、そっち行ってもいい?」
スマホを持つ手が、微かに震えていた。
第二十四章五話 正しい選択
空が群青色に染まりゆく夕刻。
1か月前、あの奏と陸翔の運命が変わった川原に、誰にも見えぬ二つの影が立っていた。
ひとりは漆黒の服に黒髪の男。
もうひとりは、白銀の長い髪を持つ、静かな死神。
「おまえ……権限、はみ出しすぎてないか」
那刃が、わざとらしく息をつく。
「対象者以外の前に姿現すなんて、ご法度中のご法度だぞ。観測者の掟、全部無視かよ」
烏牙は肩をすくめて、笑った。
「実際には“姿”は出してないさ。精神をちょっと撫でてやっただけ。……ああいうビビりには、それが一番効く」
「それで結局……二人救って、五人殺したってことか。
どう見ても釣り合わないぞ」
「いや、救ったのは三人だ。遥も入れてな」
「……そうだったな」
那刃は一拍置き、表情を消したまま問う。
「で、それは――正しいことだったのか?」
風が川面をなでる。誰の声もない静寂が数秒、夜に沈んだ。
烏牙は、低く、しかし迷いなく答えた。
「――ああ。これが俺の“正しい選択”だよ」
遠く、救急車のサイレンが聞こえて遠ざかっていく。
そして空には、どこまでも高く、星のひとつが瞬いていた。
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