俺は善人にはなれない

気衒い

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第6章 裏切りは突然に

第77話 顔合わせ

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 悪の組織の思惑によって、ブロン・レジスターの姿が世界中へと発信されるよりも3日前のこと。アスターロ教幹部、ダートとの戦闘を終え、満身創痍な身体を横たえた"四継"の近くをある者達が通りかかった。

「お、お前らは…………"黒天の星"!?」

「ん?誰だ、お前ら?」

「お、俺達を知らないだと!?」

「ああ。どこかで会ったこと、あるか?」

「ないが……………」

「おい、ギース。自意識過剰はやめようぜ。噂じゃ、こいつらはつい最近、冒険者になったそうじゃないか。全員が全員、俺達を知っている訳ではないだろ……………さっき、無様に負けて、プライドも何もかもへし折られた直後だぞ?こんなところでつまんないプライドを掲げて、こいつらに八つ当たりはもっとカッコ悪いぞ」

「俺は別に…………」

「何年の付き合いだと思ってるんだ?お前の顔を見てたら、何が言いたいかってことぐらい分かるさ」

「…………すまん」

「謝る相手が違うだろ?」

「そうだな…………"黒天の星"の諸君、すまなかった。気を悪くしないでもらいたい」

「いや、いきなり謝られても状況がサッパリなんだが…………」

「ああ、悪い。実はな…………」






「なるほど。そんなことが」

「ああ。あんなことがあった後だからな……………気が立っていたのは事実だ」

「一ついいか?」

「何だ?」

「これは俺からの提案なんだが」

「?」

「今日から3日後、フリーダムにてブロン・レジスターの公開処刑が行われ、それが世界中へと発信されることになっている。俺達はそれをぶち壊す為にやって来たんだ……………で、その作戦に協力しろ」

「な、何だと!?処刑!?」

「どういうことだ!?」

「ぶち壊す!?どうやって!?」

「ってか、提案じゃなくてもはや命令だろ!」

「必ず成功させるにはお前らが鍵を握っていると言っても過言ではない。うってつけの役があるんだ。頼むぞ………………っと、その前に回復してやる。"神の恵みゴッド・ラブ"」

「「「「それはありがとう!!!!」」」」

 ――――――――――――――――――――





 それから当日を迎えるまでの期間は情報収集や作戦の確認、食料や物資集めなどに費やした。気付いていないだけでフリーダムのどこに敵の構成員が紛れ込んでいるかは分からない。なんせ、目的の為に様々な職業に就かせるぐらいだ。全ての可能性を考えていたら、キリがない程であろう。その為、同行していたアスカの固有スキルによって、認識を阻害し、俺達の存在を感知させないようにする必要があった。街の人々のステータスを覗いて、確かめるという方法が案に上がってはいたが、数値が高いからといって間違いなく敵であると判断はできない為、却下された。それが現役を引退した元冒険者や違う事情の者かもしれないし、もしこちらを害する気のない者の個人情報を勝手に閲覧してしまえば、寝覚めが悪い。そんなこんなで敵側に俺達のことがバレることはなく、すぐに当日がやってきた。ちなみに作戦協力者であるブロンの弟子の"四継"曰く、

ダートと戦った後だからこそ、分かる。お前らの強さが……………正直、想像以上だ」

 とのこと。俺達はそのダートとかいう男を見たことすら、ないんだが一緒に連れてきたラミュラが軽く見かけたことがあるということだったから、当日は相手を任せることにした。そして、迎えた奴らにとっての運命の日。作戦通り、"四継"にダートを引きつけてもらっている間、特設台の一番上へと姿を現した俺達はというと……………

 ――――――――――――――――――――





「" 壊磔薙かいたくち"!!」

「" 亡颯隠ぼうさつおん!!」

「" 三射燦耀さんしゃさんよう"!!」

 ブロンが磔にされている十字架を壊し、周りにいる黒ローブを1人残して全滅させた。やったのはアスカ・ティア・サラである。そんな中、俺はある人物へと刀を向けていた。

「な…………一体、いつの間に!?というより、どこから!?」

「風邪薬みたいな聞き方してんじゃねぇよ。お前だろ?"人猟役者"とかいうクランのトップは」

「い、いかにも…………そういうお前はクラン"黒天の星"の"黒締"だな?」

「俺のことを知っているってことは噂とかも聞いてるだろ?だったら、この後、お前がどうなるか分かるよな?」

「ひぃっ!ち、ちょっと待て!私は」

「黙れ。そして、今からする質問に答えろ」

 この数分後、離れた場所で小競り合いをしていたダートが特設台の方を振り返った時には全てが終わり、立っているのはブロンを含めた4人だけだったのである。
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