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第8章 動き出す日常
第104話 指名依頼
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「ぐすん…………」
「どっと疲れたな。悪いがさっさと用件を話してくれ」
「かしこまりました。私共がこちらに来させて頂いたのは他でもありません。シンヤ様にとある依頼を引き受けて頂きたいと思ってのことです」
「それは指名依頼ってことか?」
「左様でございます」
「内容によるな」
「報酬は気にならないので?」
「ああ。最近、報奨金が大量に手に入ったんだ。まぁ、それも今から始めようと思っている事業に多少使いはするが、それでも全然減りはしないさ。仮に減ったとしても設備投資や人件費に使った分の金はいずれ回収できる。すぐに黒字にする自信もあるしな」
「ほ~…………参考までにどういった事業を展開するのかお訊きしても?」
「とりあえず今、やろうと思っているのが武器・防具関連と酒造りだな。うちにそういうのが得意な奴がいるんだ」
「なるほど。その界隈は有名どころや老舗、そのどちらもあり、競争が激しそうですが…………それと新人には厳しい目を向けてくると聞きます。下手に中途半端な商売をすれば、目をつけられ面倒臭いことになるかもしれませんが…………」
「重々承知している。市場も独占はしないさ。ちょうどいい塩梅で上手くやるつもりだ」
「シンヤ様なら、それも可能な気がしますね。ところでその事業に我々も一枚噛ませて………」
「爺や!話が脱線し過ぎだよ!今日は僕らの頼みを聞いてもらいに来たんでしょう?」
「おやおや、これは失敬。ついつい話に花が咲いてしまって」
「そうだな。なんせ、坊っちゃんはまだ子供だ。このままいけば、俺達の話についていけなくなって拗ねちまうからな」
「何だと!ぼ、僕にだってシンヤ達の話は理解できるぞ!馬鹿にするな!」
「へ~…………じゃあ、どんな話をしていたのか説明してみろよ」
「へ?…………え、えっと~………そ、そうだ!シンヤはこれから商売を始めるんだ!で、でも上手くいくか心配で…………だから僕らの助けを欲している!どうだ!当たっているだろ!」
「はぁ~」
「私共が一体いつ、そのような話をしたのやら。しかも前半はともかく後半が……………今後、リース様は大人しくなさっている方がいいでしょう。シンヤ様も含め他の方々と何か重要なことをお話する際はこの爺やめが全て行いましょう」
「何か2人の反応、おかしくないか!?な、何だ!?何か間違っていたのか!?」
「セバス、指名依頼の内容は?」
「はい。実はですね…………」
「お、おい!僕を無視するな~!!」
――――――――――――――――――――
「フォレストを何とかして欲しいだって?随分とザックリした内容だな」
「……………約2年程前のことです。リース様のお父上である国王様は次期後継者を3人いる御子息の中からお選びすると宣言なされました。その際に選定方法などは一切伝えず、2年後までに誰が最も相応しいのかを見定めると仰ったのです。そして、それから2年が経ち、そろそろ後継者を発表する時期に差し掛かっているのですが、どうにも雲行きが怪しいのです」
「どんな風に?」
「約1年前からリース様以外の2人のご兄弟にそれぞれ取り巻きの貴族達がつき、いつの間にか派閥が出来上がっていたのです。で、そこからでしょうか?お2人の仲が急激に悪くなったのは……………顔を合わせる度に牽制し合い、廊下ですれ違えば露骨に機嫌が悪くなり、終いにはリース様のことも無視する始末。おそらく彼らには後継者争いのライバルとしてお互いしか見えておらず、それ以外のことはどうでもいいのでしょう」
「僕はどれだけ無視されてもへっちゃらだ。でもお兄様達がギスギスしているのは嫌なんだ。僕はただ今も昔みたいに仲良くしていて欲しいだけなんだ。それなのにどうしてこんなことになっちゃったんだろう…………」
「……………で?俺にどうして欲しいと?」
「はい。実はここからが問題なのですが…………彼らご兄弟の争いはどうやら、ここ1年の間で国民まで巻き込み出しているらしいのです。といっても確たる証拠はなく、全て裏で行われているとのことなのですが……………私の部下がたまたまその場面を目撃してしまって、それを聞いて初めて事の重大さを知ったのです。そして、この一連の問題を解決することの大変さもその時、痛感しました」
「で、それを俺に解決して欲しいのか?」
「左様でございます」
「何故、俺なんだ?俺なんて、ただ冒険者としての能しかない男だぞ?」
「謙遜はおやめ下さい。私は職業柄、何年・何十年と色々な方々を見てきました。その為、人を見る目には自信があります。そんな私から見てシンヤ様は冒険者としての実力は勿論のこと、それ以外の部分でもいくつも常人からは逸脱した能力があるように思われます。でなければ、これだけ多くの方々に慕われないでしょう。傘下なんて以ての外です。だから私を今までこちらに訪ねて来たミーハー冒険者達と一緒にしないで下さい。私はちゃんとあなたのことを評価させて頂いております」
「……………リース」
「ん?何だ?……………って、今、初めて僕の名前を呼んでくれた!?」
「お前、良い味方をつけてるな…………いいか?絶対にセバスだけは手放すんじゃないぞ。これほどの逸材、うちに欲しいくらいだ」
「そうだろう?僕にとっての自慢だ!いいだろう?でも、あげないぞ!」
「何でお前が得意気なんだ」
「……………シンヤ様、如何でしょうか?この依頼、事と次第によっては長期になるかもしれませんし、場所もここから移動しなくてはなりません。その代わりに報酬はたっぷりとご用意させて頂きますが……………そうですね。もし引き受けて頂けるのでしたら、期間を問わず、まずは手付金として光金貨1枚をお約束させて頂きます。それ以外ですとその後の内容次第で変わってきますが………」
「そうだな…………」
そこから、たっぷりと10秒程間を空けて、俺は2人の前でこう言った。
「お断りさせて頂く」
「どっと疲れたな。悪いがさっさと用件を話してくれ」
「かしこまりました。私共がこちらに来させて頂いたのは他でもありません。シンヤ様にとある依頼を引き受けて頂きたいと思ってのことです」
「それは指名依頼ってことか?」
「左様でございます」
「内容によるな」
「報酬は気にならないので?」
「ああ。最近、報奨金が大量に手に入ったんだ。まぁ、それも今から始めようと思っている事業に多少使いはするが、それでも全然減りはしないさ。仮に減ったとしても設備投資や人件費に使った分の金はいずれ回収できる。すぐに黒字にする自信もあるしな」
「ほ~…………参考までにどういった事業を展開するのかお訊きしても?」
「とりあえず今、やろうと思っているのが武器・防具関連と酒造りだな。うちにそういうのが得意な奴がいるんだ」
「なるほど。その界隈は有名どころや老舗、そのどちらもあり、競争が激しそうですが…………それと新人には厳しい目を向けてくると聞きます。下手に中途半端な商売をすれば、目をつけられ面倒臭いことになるかもしれませんが…………」
「重々承知している。市場も独占はしないさ。ちょうどいい塩梅で上手くやるつもりだ」
「シンヤ様なら、それも可能な気がしますね。ところでその事業に我々も一枚噛ませて………」
「爺や!話が脱線し過ぎだよ!今日は僕らの頼みを聞いてもらいに来たんでしょう?」
「おやおや、これは失敬。ついつい話に花が咲いてしまって」
「そうだな。なんせ、坊っちゃんはまだ子供だ。このままいけば、俺達の話についていけなくなって拗ねちまうからな」
「何だと!ぼ、僕にだってシンヤ達の話は理解できるぞ!馬鹿にするな!」
「へ~…………じゃあ、どんな話をしていたのか説明してみろよ」
「へ?…………え、えっと~………そ、そうだ!シンヤはこれから商売を始めるんだ!で、でも上手くいくか心配で…………だから僕らの助けを欲している!どうだ!当たっているだろ!」
「はぁ~」
「私共が一体いつ、そのような話をしたのやら。しかも前半はともかく後半が……………今後、リース様は大人しくなさっている方がいいでしょう。シンヤ様も含め他の方々と何か重要なことをお話する際はこの爺やめが全て行いましょう」
「何か2人の反応、おかしくないか!?な、何だ!?何か間違っていたのか!?」
「セバス、指名依頼の内容は?」
「はい。実はですね…………」
「お、おい!僕を無視するな~!!」
――――――――――――――――――――
「フォレストを何とかして欲しいだって?随分とザックリした内容だな」
「……………約2年程前のことです。リース様のお父上である国王様は次期後継者を3人いる御子息の中からお選びすると宣言なされました。その際に選定方法などは一切伝えず、2年後までに誰が最も相応しいのかを見定めると仰ったのです。そして、それから2年が経ち、そろそろ後継者を発表する時期に差し掛かっているのですが、どうにも雲行きが怪しいのです」
「どんな風に?」
「約1年前からリース様以外の2人のご兄弟にそれぞれ取り巻きの貴族達がつき、いつの間にか派閥が出来上がっていたのです。で、そこからでしょうか?お2人の仲が急激に悪くなったのは……………顔を合わせる度に牽制し合い、廊下ですれ違えば露骨に機嫌が悪くなり、終いにはリース様のことも無視する始末。おそらく彼らには後継者争いのライバルとしてお互いしか見えておらず、それ以外のことはどうでもいいのでしょう」
「僕はどれだけ無視されてもへっちゃらだ。でもお兄様達がギスギスしているのは嫌なんだ。僕はただ今も昔みたいに仲良くしていて欲しいだけなんだ。それなのにどうしてこんなことになっちゃったんだろう…………」
「……………で?俺にどうして欲しいと?」
「はい。実はここからが問題なのですが…………彼らご兄弟の争いはどうやら、ここ1年の間で国民まで巻き込み出しているらしいのです。といっても確たる証拠はなく、全て裏で行われているとのことなのですが……………私の部下がたまたまその場面を目撃してしまって、それを聞いて初めて事の重大さを知ったのです。そして、この一連の問題を解決することの大変さもその時、痛感しました」
「で、それを俺に解決して欲しいのか?」
「左様でございます」
「何故、俺なんだ?俺なんて、ただ冒険者としての能しかない男だぞ?」
「謙遜はおやめ下さい。私は職業柄、何年・何十年と色々な方々を見てきました。その為、人を見る目には自信があります。そんな私から見てシンヤ様は冒険者としての実力は勿論のこと、それ以外の部分でもいくつも常人からは逸脱した能力があるように思われます。でなければ、これだけ多くの方々に慕われないでしょう。傘下なんて以ての外です。だから私を今までこちらに訪ねて来たミーハー冒険者達と一緒にしないで下さい。私はちゃんとあなたのことを評価させて頂いております」
「……………リース」
「ん?何だ?……………って、今、初めて僕の名前を呼んでくれた!?」
「お前、良い味方をつけてるな…………いいか?絶対にセバスだけは手放すんじゃないぞ。これほどの逸材、うちに欲しいくらいだ」
「そうだろう?僕にとっての自慢だ!いいだろう?でも、あげないぞ!」
「何でお前が得意気なんだ」
「……………シンヤ様、如何でしょうか?この依頼、事と次第によっては長期になるかもしれませんし、場所もここから移動しなくてはなりません。その代わりに報酬はたっぷりとご用意させて頂きますが……………そうですね。もし引き受けて頂けるのでしたら、期間を問わず、まずは手付金として光金貨1枚をお約束させて頂きます。それ以外ですとその後の内容次第で変わってきますが………」
「そうだな…………」
そこから、たっぷりと10秒程間を空けて、俺は2人の前でこう言った。
「お断りさせて頂く」
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