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第9章 フォレスト国
第119話 お化け屋敷
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探偵事務所の開業と時を同じくして、始まったもう1つのサービスがある。その名も"イヴの館"と呼ばれるお化け屋敷である。館長をイヴとする、このアトラクションでは白組の組員達がお化け役として、中で働いている。場所は探偵事務所の近くだ。というかクランメンバーが関わる事業は全て1つのエリアに纏まっている。ちなみにどういったタイプのお化け屋敷かというといわゆる"ウォークスルー型"と呼ばれるタイプで決められた通路を歩いて進む最も一般的なものである。人形や音響効果などを使った仕掛けの他、組員達がお化け役として所々に配置されており、客を時折驚かしたりもする。万が一、途中でリタイアしたいという客の為には救済措置として、各通路のすぐ近くに外へと出られる非常口があり、異変を察知した組員がすぐに駆けつけ、誘導できるよう常に気を配っている。ちなみに人形や仕掛け等は全て魔道具を用いており、人体に悪影響を及ぼさない安全なものとなっている。そもそもこれをやりたいといったイヴが"安全安心を大前提として多くの人々に楽しんで欲しい"と言っていたのだから、そこら辺で手を抜いたりはしていない。では一体何故、このようなアトラクションをやりたいと思ったのか、本人に直接訊いてみたところ返ってきた答えはシンプルに"自分のできることで人々を楽しませたいから"というものだった。邪神の件によって被害を被った人々を見て、改めて何気ない日常の大切さを知ったイヴは少しでも息抜きや娯楽の一環として楽しんでもらえるものは何かないかと俺に訊いてきたのだ。で少し考えた結果、俺が提案したのがお化け屋敷だった。イヴ自体が吸血鬼、それと直属の部下である白組の組員達が妖怪であることを活かすというのであれば、それが最初に思い付いたのだ。とは言ってもこの世界にお化け屋敷なんてものはない。やる余裕がないというよりもその発想自体がまずないだろう。この世界での娯楽といえば武闘や飲食、その他生活に直結する何かであることがほとんどだ。したがってイヴもその単語を初めて聞いた時は意味がよく分からないという顔をしていた。しかし、俺がどういったものか丁寧に説明していき、やがてそれが終わる頃には顔を赤くして興奮しながら"是非やりたい"と息巻いていた。そして、その日のうちに白組に自分のやりたいことを伝え、一緒にやりたい者はいるかと訊いたところ、全員が手を挙げたらしい。そこからは必要なスキルを身に付ける為、皆が役者としての腕を磨いていった。俺もサポートとして元いた世界でのお化け屋敷に関しての知識を出来る範囲で教えていった。だが、生涯でお化け屋敷には一度も行ったことがない為、全て本で得た知識に過ぎないのだがそれでもないよりは幾分かマシではあった。そんなこんながあって、イヴが俺に相談をしてきてから1ヶ月が経った頃、ようやくお化け屋敷をオープンすることができたのである。その頃には酒屋や武器・防具店、塾が開業してから既に1週間が経っており、噂や体験談が人を呼び、そのエリア一帯は少し賑やかになっていた為、初日から客に多く来てもらえるようになった。そして、肝心の評判だが………………すこぶる良かった。イヴや組員達の演技はもちろんのこと、恐怖から途中リタイアしてしまった客のサポート、逆に怖いものが得意な客の為に用意された謎解き要素など全てにおいて満足のいくものだったようだ。現に俺も………………
「はぁ……………シンヤ、お主、これで何回目じゃ?」
「あれ?そんなに並んでたか?」
気付かぬうちに通い過ぎせいか、イヴからは呆れた顔で見られていたのだった。
「はぁ……………シンヤ、お主、これで何回目じゃ?」
「あれ?そんなに並んでたか?」
気付かぬうちに通い過ぎせいか、イヴからは呆れた顔で見られていたのだった。
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