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第9章 フォレスト国
第153話 宴
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「シンヤ殿、こちらです」
現在、俺達は長老代理であるガルという男に里の中を案内してもらっていた。里の住人の興味津々な眼差しを受けながらではあったが特に危害を加えられることもなかった為、スムーズに進むことができている。景観だが、自然豊かな場所であり、自給自足が主軸であるのか作物が多く育っていた。すぐ側をとても綺麗な川が流れており、水浴びをしている者もいる。また遠くの方では酒樽が転がっており、どうやらカグヤだけが酒好きという訳でもないようだ。俺が以前いた世界ではこういうのを田舎と呼んだが果たしてこの世界ではどうなんだろうか
「良い場所だな」
「気に入って頂けたようで何よりです。ちなみにこの後、何かご予定は?」
「特に決まってはいないな」
「でしたら、1つお願いしたいことがあるのですが…………」
「何だ?」
「せっかくカグヤも帰ってきたことですし、帰還祝いの宴を開きたいのです。気が向きましたら、そちらへご参加して頂きたく……………」
「宴か……………だったら、その前にやることがあるな」
「はい?」
「まずはお前達の長老の病を治す。宴はその後だ」
「っ!?そのことを一体どこで!?」
「カグヤから元々、事情を聞いていたのもあるが里の中でやけに生命力の弱い反応があるからな……………おそらく、あそこだろ?」
「!?そ、そうです。流石はシンヤ殿」
「とにかくまずは長老の件が先だ。じゃないと気になって宴が楽しめないからな」
「ありがとうございます」
「それにカグヤの仲間だ。見過ごす訳にはいかない」
「こちらです」
「この人が長老か」
里の中で最も大きな家に長老はいた。白髪で痩せ細った身体をしており、角に至っては2本の内の1本が半ばから折れている。筋肉のつき方から見て、以前は歴戦の戦士だったと思われるが今では見る影もなく、ただただ心身共に弱りきり、浅い呼吸を繰り返しながら眠っている。
「ある日突然、不治の病に罹りまして……………特効薬など手に入れる手段がなく、我々にはどうすることもできませんでした。それでも今日までどうにか温かい食事や薬草でなんとか凌いできましたがそれもどれほど効果があるのやら…………ここ数日間はずっとこの調子で眠っています」
そこで膝をついたガルは涙を流しながら、こう訴えてきた。
「正直、もう心が折れました。今まで何度思ったことか。我々がしていることは無駄なのではないか?そもそもこれは先祖の行いが返ってきたツケなだけではないのかと……………それだったら、いっそ、このまま……………その方が父・も苦しまずに」
「ならば何故、お前は泣く?受け入れ難いことだからじゃないのか?口では心が折れたと言うがお前の心はそう言っていない。どうしても受け入れることができないんだ」
「……………」
「お前達のしてきたことは無駄じゃない。ちゃんと長老に届いているさ。だからこそ、こうして今も生きている。お前達の想いが絆が努力が長老を生かし続けているんだ。そして、長老もまたそれに応えようと必死で生き続けている。頑張っているのは何もお前達だけじゃない。全てを諦めるということはそれこそ長老の想いを頑張りを無駄にする行為だ。その点、今回はまだ救いがある。お前達が未だ諦めていないのと…………俺がここにやって来たからだ」
「本当に父は…………助かるんでしょうか?」
「ああ、任せろ」
「ありがとうございます!本当に…………お願い致します」
――――――――――――――――――――
「ん?ここは……………」
「お、親父!」
「む?おい、ガル。私のことは長老と呼べと何度言えば…………」
「身体はもう平気か?苦しいとか体調が悪いとかはないか?」
「ん?そういえば何ともないな。それどころかより若々しく元気になった気がするな。何だ、これは。まるで全盛期の時のように身体が軽いな」
「ほ、本当に治った!凄い!シンヤ殿はやっぱり英雄だ!」
「シンヤ殿?そういえば何やら見慣れない者達がいるが……………」
「彼らはカグヤが所属するクランのメンバー達だ。そして、そのマスターであるシンヤ殿こそがたった今、親父の病を治したんだよ!」
「なんと!?そのようなことが!?」
「俺もびっくりしたよ!あんな魔法を扱えるなんてさ!」
「シンヤ殿と言ったか…………。私はこの里で長老を務めているギルだ。この度は本当に本当にありがとう。このご恩は一生忘れない。何かあったら、いつでも言ってくれ。力になろう」
「カグヤの仲間は俺の仲間も同然だ。力を貸すに決まってるだろ」
「シンヤ殿、父の命を救って頂いて本当にありがとうございます」
「礼なら宴の飯で頼む」
「はい!それならば喜んで!」
「……………それにしても私の病は治すのが困難なはず。一体どうやって…………」
「"天使の蘇生"を使った。ただそれだけだ」
「何だと!?最上級の光魔法じゃないか!一説によるとどんな欠損や状態異常・病も治し、また死者すらも蘇らすことができるというが……………光魔法のL vをMAXまで上げ、尚且つMPの値が1000はないと使えないはず…………実際に扱える者はここ数百年ほど確認されていないし、私も長く生きているが未だかつて見たことがない」
「そうか」
「軽っ!?何故だ!?」
「そんなことより、治ったばかりだから、急に身体を動かすなよ?調子に乗って怪我しても治してやらんぞ」
「そんなことよりって……………まぁ、いい。とにかく助かった。この礼は宴とそれから、我が里の自慢のもてなしで返すとしよう」
「それは楽しみだ。カグヤの帰還祝いに加えて、ギルの完治祝いもあることだしな」
その後は里の者達全員が宴の準備に追われた。全員が参加する宴だ。昼前とはいえ、早く準備しなければ夜には間に合わない。そこで俺達も一応手伝った。クラン内で料理は交代で行っており、全員がシェフも顔負けの腕前だった為、非常に驚かれた。手際や容量の良さから、結果的に夕方前には終わらせることができ、夜までは時間が余った為、模擬戦を申し込まれた。里の好戦的な戦士達が一斉に襲いかかってくるのを相手したのはセバスだった。純粋な体術のみで叩きのめされた戦士達はすっかり自信を失ってしまったのか、しょんぼりしていたがセバスの冒険者適正ランクを聞くと納得し、気持ちを無理矢理落ち着かせた。それからあっという間に夜になり、俺達が持ってきた土産の"フォレストフィッシュ"を使った料理やニーベルの作った酒がテーブルの上に所狭しと並んだ。乾杯の音頭を取るのはカグヤとギルだった。カグヤは突然、里からいなくなったことの理由とこれまでの経緯を説明し、謝罪した。そして、俺達を紹介し、自身の今の生活や想いについて話した。紹介を受けた俺達は1人ずつ自己紹介をし、カグヤが自分達にとって、どのような存在なのかを伝えた。ギルの番になると里の者達は目を潤ませながら、しっかりと話に耳を傾けた。その状態でギルは治ったことの報告とその経緯について話をした。その中で治したのが俺だと分かると今日一番の盛り上がりをみせた。長い口上ではあったものの誰一人として文句を言うことなく、ただただこの現状をとても幸せなものだと感じ、最後に"乾杯"の言葉を合図に宴は開かれた。直後、模擬戦終わりの者は燃料を投下するかのごとく、減った腹に料理を勢いよく詰め込んでいった。そんな様子を料理人達は離れたところから微笑ましく見つめていた。一方、酒好きな者達は料理を少しずつ、つまみながら大勢で飲み比べをしていた。それを見て、俺達も自分達のペースで楽しもうと席に着いていたのだが、何故か里の者達に囲まれて質問責めに遭っていた為、それが収まるまでは落ち着くことが出来なかった。ちなみにカグヤは家族や親族などに挨拶するということで同じ席にはいなかった。そうして、どんどんと夜は更けていった。
現在、俺達は長老代理であるガルという男に里の中を案内してもらっていた。里の住人の興味津々な眼差しを受けながらではあったが特に危害を加えられることもなかった為、スムーズに進むことができている。景観だが、自然豊かな場所であり、自給自足が主軸であるのか作物が多く育っていた。すぐ側をとても綺麗な川が流れており、水浴びをしている者もいる。また遠くの方では酒樽が転がっており、どうやらカグヤだけが酒好きという訳でもないようだ。俺が以前いた世界ではこういうのを田舎と呼んだが果たしてこの世界ではどうなんだろうか
「良い場所だな」
「気に入って頂けたようで何よりです。ちなみにこの後、何かご予定は?」
「特に決まってはいないな」
「でしたら、1つお願いしたいことがあるのですが…………」
「何だ?」
「せっかくカグヤも帰ってきたことですし、帰還祝いの宴を開きたいのです。気が向きましたら、そちらへご参加して頂きたく……………」
「宴か……………だったら、その前にやることがあるな」
「はい?」
「まずはお前達の長老の病を治す。宴はその後だ」
「っ!?そのことを一体どこで!?」
「カグヤから元々、事情を聞いていたのもあるが里の中でやけに生命力の弱い反応があるからな……………おそらく、あそこだろ?」
「!?そ、そうです。流石はシンヤ殿」
「とにかくまずは長老の件が先だ。じゃないと気になって宴が楽しめないからな」
「ありがとうございます」
「それにカグヤの仲間だ。見過ごす訳にはいかない」
「こちらです」
「この人が長老か」
里の中で最も大きな家に長老はいた。白髪で痩せ細った身体をしており、角に至っては2本の内の1本が半ばから折れている。筋肉のつき方から見て、以前は歴戦の戦士だったと思われるが今では見る影もなく、ただただ心身共に弱りきり、浅い呼吸を繰り返しながら眠っている。
「ある日突然、不治の病に罹りまして……………特効薬など手に入れる手段がなく、我々にはどうすることもできませんでした。それでも今日までどうにか温かい食事や薬草でなんとか凌いできましたがそれもどれほど効果があるのやら…………ここ数日間はずっとこの調子で眠っています」
そこで膝をついたガルは涙を流しながら、こう訴えてきた。
「正直、もう心が折れました。今まで何度思ったことか。我々がしていることは無駄なのではないか?そもそもこれは先祖の行いが返ってきたツケなだけではないのかと……………それだったら、いっそ、このまま……………その方が父・も苦しまずに」
「ならば何故、お前は泣く?受け入れ難いことだからじゃないのか?口では心が折れたと言うがお前の心はそう言っていない。どうしても受け入れることができないんだ」
「……………」
「お前達のしてきたことは無駄じゃない。ちゃんと長老に届いているさ。だからこそ、こうして今も生きている。お前達の想いが絆が努力が長老を生かし続けているんだ。そして、長老もまたそれに応えようと必死で生き続けている。頑張っているのは何もお前達だけじゃない。全てを諦めるということはそれこそ長老の想いを頑張りを無駄にする行為だ。その点、今回はまだ救いがある。お前達が未だ諦めていないのと…………俺がここにやって来たからだ」
「本当に父は…………助かるんでしょうか?」
「ああ、任せろ」
「ありがとうございます!本当に…………お願い致します」
――――――――――――――――――――
「ん?ここは……………」
「お、親父!」
「む?おい、ガル。私のことは長老と呼べと何度言えば…………」
「身体はもう平気か?苦しいとか体調が悪いとかはないか?」
「ん?そういえば何ともないな。それどころかより若々しく元気になった気がするな。何だ、これは。まるで全盛期の時のように身体が軽いな」
「ほ、本当に治った!凄い!シンヤ殿はやっぱり英雄だ!」
「シンヤ殿?そういえば何やら見慣れない者達がいるが……………」
「彼らはカグヤが所属するクランのメンバー達だ。そして、そのマスターであるシンヤ殿こそがたった今、親父の病を治したんだよ!」
「なんと!?そのようなことが!?」
「俺もびっくりしたよ!あんな魔法を扱えるなんてさ!」
「シンヤ殿と言ったか…………。私はこの里で長老を務めているギルだ。この度は本当に本当にありがとう。このご恩は一生忘れない。何かあったら、いつでも言ってくれ。力になろう」
「カグヤの仲間は俺の仲間も同然だ。力を貸すに決まってるだろ」
「シンヤ殿、父の命を救って頂いて本当にありがとうございます」
「礼なら宴の飯で頼む」
「はい!それならば喜んで!」
「……………それにしても私の病は治すのが困難なはず。一体どうやって…………」
「"天使の蘇生"を使った。ただそれだけだ」
「何だと!?最上級の光魔法じゃないか!一説によるとどんな欠損や状態異常・病も治し、また死者すらも蘇らすことができるというが……………光魔法のL vをMAXまで上げ、尚且つMPの値が1000はないと使えないはず…………実際に扱える者はここ数百年ほど確認されていないし、私も長く生きているが未だかつて見たことがない」
「そうか」
「軽っ!?何故だ!?」
「そんなことより、治ったばかりだから、急に身体を動かすなよ?調子に乗って怪我しても治してやらんぞ」
「そんなことよりって……………まぁ、いい。とにかく助かった。この礼は宴とそれから、我が里の自慢のもてなしで返すとしよう」
「それは楽しみだ。カグヤの帰還祝いに加えて、ギルの完治祝いもあることだしな」
その後は里の者達全員が宴の準備に追われた。全員が参加する宴だ。昼前とはいえ、早く準備しなければ夜には間に合わない。そこで俺達も一応手伝った。クラン内で料理は交代で行っており、全員がシェフも顔負けの腕前だった為、非常に驚かれた。手際や容量の良さから、結果的に夕方前には終わらせることができ、夜までは時間が余った為、模擬戦を申し込まれた。里の好戦的な戦士達が一斉に襲いかかってくるのを相手したのはセバスだった。純粋な体術のみで叩きのめされた戦士達はすっかり自信を失ってしまったのか、しょんぼりしていたがセバスの冒険者適正ランクを聞くと納得し、気持ちを無理矢理落ち着かせた。それからあっという間に夜になり、俺達が持ってきた土産の"フォレストフィッシュ"を使った料理やニーベルの作った酒がテーブルの上に所狭しと並んだ。乾杯の音頭を取るのはカグヤとギルだった。カグヤは突然、里からいなくなったことの理由とこれまでの経緯を説明し、謝罪した。そして、俺達を紹介し、自身の今の生活や想いについて話した。紹介を受けた俺達は1人ずつ自己紹介をし、カグヤが自分達にとって、どのような存在なのかを伝えた。ギルの番になると里の者達は目を潤ませながら、しっかりと話に耳を傾けた。その状態でギルは治ったことの報告とその経緯について話をした。その中で治したのが俺だと分かると今日一番の盛り上がりをみせた。長い口上ではあったものの誰一人として文句を言うことなく、ただただこの現状をとても幸せなものだと感じ、最後に"乾杯"の言葉を合図に宴は開かれた。直後、模擬戦終わりの者は燃料を投下するかのごとく、減った腹に料理を勢いよく詰め込んでいった。そんな様子を料理人達は離れたところから微笑ましく見つめていた。一方、酒好きな者達は料理を少しずつ、つまみながら大勢で飲み比べをしていた。それを見て、俺達も自分達のペースで楽しもうと席に着いていたのだが、何故か里の者達に囲まれて質問責めに遭っていた為、それが収まるまでは落ち着くことが出来なかった。ちなみにカグヤは家族や親族などに挨拶するということで同じ席にはいなかった。そうして、どんどんと夜は更けていった。
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