俺は善人にはなれない

気衒い

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第11章 軍団戦争

第230話 とある冒険者達のファン

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「へ~こりゃ、たまげたもんだな」

冒険者ギルドの掲示板。そこにはとある

冒険者達のことが載った記事が貼られて

いた。現在、その一角は内容を一目見よ

うとする多くの冒険者達で溢れ返ってい

た。

「え~っとなになに…………|軍団戦争

《レギオン・ウォー》、大差をつけ"黒

の系譜"が勝利!あの大物|軍団《レギ

オン》"碧い鷹爪"をトップ争いから引

きずりおろす!……………か」

「おいおい、これまじかよ」

「下手したら、勢力図が変わるかもしれ

ないぞ」

「"碧い鷹爪"って言えば、"|獣の狩

場《ビースト・ハント》"や"紫の蝋

"、"殲滅連合"と肩を並べる程の|軍

団《レギオン》だろ?」

「ああ。そこに今度は"黒の系譜"が入

ってくると。まぁ、いくら作られたばか

りの軍団レギオンとはいえ親クラ

ンのランクがSSSなんだ。いずれはそ

うなっていたと思うぜ」

「まぁな。今回みたいにどこかの|軍団

《レギオン》に生意気だから潰してやる

とか目をつけられて、それを返り討ちと

かな……………そう考えると"碧い鷹爪"

レベルの軍団レギオンで他にちょ

っかいをかけたのがいないのは何でだ?

もしかして、嗅覚が鋭いとか?」

「それもあるだろうな。"黒の系譜"は

不確定要素が多すぎる。奴らが結成され

るまでの軌跡を吟遊詩人が歌っていたん

だが、それを聴けば不用意に手を出して

はいけない連中だということが分かる。

そのラインを見誤ったのが今回の"碧い

鷹爪"だろう。惜しいな。やっぱり長く

冒険者をやっていると感覚が鈍るものな

のか」

「やっぱり情報って大事だよな。それで

いうと"黒の系譜"より下のクランや冒

険者が喧嘩をふっかけないのもちゃんと

下調べをしているからってことか」

「だろうな。特に邪神の件以降、あいつ

らの知名度は上がり、周りからの見方も

変わった。運だけで生き残っていた訳で

はないとな。高ランク冒険者ほど警戒を

するようになり、低ランクの冒険者も野

生の勘を働かせ、今のままでは勝てない

と自己研鑽に励むようになった。だか

ら、しばらくは表立って喧嘩を売るよう

なマネをせず、様子見をしていたんだろ

う」

「それに痺れを切らしたのが"碧い鷹爪

"と」

「かもな。だが、それにしても時期が悪

すぎる。もう少し待てば良かったもの

を……………おそらく、他の|軍団《レギ

オン》を出し抜こうと焦ったんだろう」

「……………お前、さっきから、やけに詳

しいな。もしかして、"黒の系譜"の関

係者か?」

「いや、ただのファンだ!」

「ファンかよ!」

「ああ!それもゴリゴリのな!"黒の系

譜"に関するありとあらゆる情報は一通

り、頭に入っているし、あいつらが訪れ

た場所や拠点も巡礼済みだ!ちなみに俺

の推しは"紫円"レオナだ!」

「誰も聞いてねぇよ!」

「だからこそ、今回の|軍団全然《レギ

オン・ウォー》関しても色々と調べさせ

てもらったんだ。"碧い鷹爪"のことは

これっぽっちも好きじゃないが、一応"

黒の系譜"と一戦交えるということで現

在の奴らの状態やこれまでの成り立ち、

そして、この戦いを行うにあたっての動

機などをな!」

「好きでもない奴らのことを嫌々調べ

る、その精神が凄いわ」

「だって、"黒の系譜"に少しとはいえ

関わるんだもん。これはファンとして当

たり前な行いだ」

「当たり前じゃねぇよ!その熱量をもっ

と他のことに活かせよ!」

「は?お前、俺の本業を何だと思ってん

の?」

「いや、れっきとした冒険者だろ」

「いや、違うぞ?」

「は?」

「俺の本業は"黒の系譜ファンクラブ"

の会長だから。冒険者なんてのはその片

手間でやってるだけだ」

「お前、どうなっちゃってんの~!」

「レオナたん、はぁ……はぁ………」

「急にどうした~!」

そこから5分後、十字固めをきめられた

冒険者はようやく現世へと戻ってきた。

「すまん、つい我を忘れた」

「しっかりしてくれよ」

「で?何故、"黒天の星"はあれだけの

事業を展開できるのかって?」

「いや、聞いてねぇよ!しかもいきなり

真面目な話題だな!」

「確かにお前の疑問も尤もだ。いくら、

あいつらが人数の多いクランとはいえ、

あれだけの事業を回すには限界がある。

ましてや、最近では他の街や都市にも2

号店を出したり、他の事業の試運転まで

している始末。だが、物事にはちゃんと

したカラクリがある。安心しろ」

「別に心配はしてねぇよ」

「まず、基本事項のおさらいだ。通常、

1つの事業につき1つの組で回す。これ

があいつらのスタイルだ。もちろん、手

が足りない時は他の組員にヘルプを頼む

こともあるし、余裕がある組員は自ら志

願して、手伝う時もある。例えば、依頼

で遠くに出かけて欠員が出てしまう時と

かだな」

「いや、初めて知ったんだけど」

「しかし、有能な者がいくらいようが数

的問題というものは必ず付き纏ってく

る。ましてや、噂が噂を呼び、客が日に

日に増えている現状では猫の手も借りた

い状態だ。そこで奴らが出した結論とい

うのが"みんなでお店を回していこう!

"だ」

「みんなで?」

「ああ。傘下のクラン達にも手伝っても

らってだ。つまり、"黒の系譜"全体で

回していこうってことになったんだ。も

ちろん、これは強制した訳ではなく、傘

下側からの申し出だったらしい。なんで

も"自分達が傘下としてできていること

は少ない。だから、力になりたい。それ

にいずれ自分達が事業を展開する時がく

るかもしれない。その下積みだと思え

ば、むしろ楽しみだ"とかなんとか」

「へ~いいチームじゃないか」

「その結果、数的問題は解決された。流

石に仕事の手際や理解度は"黒天の星"

のメンバー程ではないが、それでも今の

ところは苦情もなく、やっていけている

そうだ。でないと安心して他の街に2号

店を出したりできないからな」

「なるほど。そんな事情があったのか。

面白いな」

「だろ?お前もあいつらの魅力が分かっ

てきたか。"黒の系譜"は調べれば調べ

るほどハマっていくからな」

「………………」

「ん?どうした?」

「いや、まだ一番の疑問が残っているん

だが」

「何だ?」

「なんでお前がそこまで詳しく知ってい

るのかってことだよ」

「ん?」

「いや、だっておかしいだろ。いくらフ

ァンクラブの会長とはいえ、流石に知り

すぎてる!傘下クランの申し出に至って

は裏側で行われた会議かなんかの台詞を

そのまま暗記していたような感じだし」

「………………」

「どうなんだよ」

「…………さてね」

「お前、まさか……………」

「ん?」

「犯罪っぽいことに手を染めたりしてな

いだろうな?」

「してるか!」
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