俺は善人にはなれない

気衒い

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第14章 獣人族領

第324話 全面戦争6

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「はぁ、はぁ、はぁ…………」

軍団レギオン"赤き剣群"の傘下ク

ランのクランマスター、ドソーは息も絶

え絶えになりながら、自身が所有するク

ランハウス内へと駆け込んだ。そもそも

現在、戦場にいるはずの彼が一体何故こ

んなところにいるのか………………それは

"赤き剣群"の軍団長レギオンマスター、レッドにより"作戦E"が発令

されたからである。"作戦E"の内容と

連盟ユニオンに所属する傘下ク

ランのクランマスター及び軍団長レギオンマスターは至急速やかにクラン

ハウスまたは軍団レギオンハウス

へと帰還しろというものだった。これは

万が一にも此度の戦争で敗北の色が濃く

なりそうになった時に発令されるもので

あり、部下達を時間稼ぎに使い、拠点へ

一時帰還して全財産を持って逃げ延びた

後、どこかで落ち合おうと事前に取り決

められたものだった。とはいっても彼ら

としてはその万が一が起こるとは到底思

えず、3つの軍団レギオンが一緒

になって戦えば、いくらとんでもない噂

がいくつもある敵であろうとも恐るるに

足らないと高を括っていたのだ。しか

し………………

「まさか、こんなことになるとはな。だ

が、事前に作戦会議をしておいて正解だ

った。よし。あとは急いでみんなと合流

を……………」

ドソーは懐にいそいそと何かを忍ばせ

て、今にもクランハウスを飛び出そうと

した………………と、その時だった。

「おいおい。そんな大金を持って一体ど

こに行こうというんだ?」

彼以外、誰もいないはずの部屋に誰かの

声が響いたのは……………

「っ!?だ、誰だっ!?」

ドソーは焦りながらも目をよく凝らして

部屋の中を見回した。すると、そこにい

たのはこれまた先程まで同じ戦場にいた

はずの"黒の系譜"……………それも傘下

クランのクランマスターだった。

「お、お前は"剣聖"ギース!な、何故

ここにいる!?」

「それはこちらの台詞だ、"剣の申し子

"ドソー。お前の方こそ、こっそりと戦

場から抜け出して一体どこに行くのかと

思えば、こんな場所まで………………どう

した?今は戦争のお時間だぞ?」

「ちっ、厄介なことになった……………そ

れにしてもおかしいな。来る時、追手は

なかったはずだが」

「確かにお前程の相手に生半可な尾行は

不可能だろう。だが、忘れたのか?俺

の……………俺達のトップが誰であるのか

を」

「…………なるほど。"黒締"に何か仕

込まれているのか」

「いいのか?最期に考えていることがそ

んなことで?」

「は?最期?」

ドソーの問いかけに対して、ゆっくりと

剣を引き抜きながらギースはこう言っ

た。

「ここから逃げ延びられる訳がないだろ

う。残念だが、お前はここで終わりだ」








―――――――――――――――――――――







「遅い!全然来ないじゃないか!」

レッドは思わず、怒鳴った。現在、レッ

ド・アレイ・ヘビーの3人は落ち合い場

所となっている森の中にいた。既に集合

時間から10分は経っているのだが、こ

の3人以外の者は一向に現れる気配がな

く、だんだんと彼らに苛立ちが募ってき

ていたのだ。

「……………やっぱり、通信の魔道具にも

反応しないな」

「こちらもだ」

「一体今、あいつらに何が起きているん

だ」

傘下クランのクランマスターへと魔道具

を使い、連絡をしようとしていたヘビー

とアレイであったが、向こうがちっとも

反応しない為、何かトラブルがあったの

ではないかと思い、彼らは段々と不安を

感じ始めた。

「おかしい…………これはおかしいぞ。

なんだか嫌な予感がしてきた。おい、お

前ら……………っ!?」

そして、レッドが焦った声を出し、2人

へ確認を取ろうと思い、振り返った次の

瞬間、彼は驚くべき光景をそこで目の当

たりにして息を呑んだ。

「「……………」」

「OK~お前もそのまま静かにしてろ

よ?命が惜しければな」

そこにはヘビーとアレイに武器を突き付

けたアスカとノエが立っており、

「さて……………お前ら、ここに全財産を

置いていけ」

一方のレッドには刀を向けて不敵に笑う

カグヤがいたのだった。






―――――――――――――――――――――







「お、カグヤか。どうした?」

「いや、例の件が終わったから報告をと

な」

「そうか。俺達の方ももう少しでここを

発つ予定だ」

「全く、そっちはいい気なもんだぜ。こ

っちは戦争してるってのに。3TOPが

いなくてどうすんだよ」

「だが、お前らに経験を積ませるチャン

スだからな。それに困る程の相手ではな

いだろう?」

「まぁな。アタシらの相手をしたきゃ、

それこそ"神"でも呼んでくれないと話

にならんからな」

「ちなみに奴ら、妙な動きは見せた

か?」

「ああ。シンヤの言った"後半の変な動

き"をしてきたよ」

「やっぱりか。で?あいつら、自分達の

拠点へといそいそ帰っていっただろ?」

「そうだよ。全く……………ヒントしか与

えてくれないのは意地悪だろ。全部教え

てくれればいいのに」

「だから、いつも言ってるだろ。固有スキルや魔法に頼りすぎるなと。ましてや、戦争に参加しない俺の固有スキル・・・・・を当てにするな」

「うっ…………ごめん」

「まぁ、いい。カグヤ、今回はよく頑張

ったな」

「シンヤ……………」

「それで?…………奴ら、一体いくら隠

し持ってた?」

「結局、金かよ!情緒もへったくれもね

ぇな!!」









「おいおい……………」

「これは本当にとんでもないことだぞ」

冒険者ギルドに貼られたとある記事に群

がる冒険者達。その記事を見た彼らは

皆、驚いた表情を浮かべて開いた口が塞

がらなかった。

「だから、俺は言っただろ。"碧い鷹爪

"はたまたまじゃねぇ。やられるべくし

てやられたってな」

「お前、そんなこと一言も言ってなかっ

たじゃねぇか!それに今回はよりにもよ

って、あの3軍団レギオンだぞ!

それをまとめて相手して全滅させるっ

て……………聞いたことがない」

「とにもかくにも俺達が言えることは1

つだな」

最後に発言した冒険者はその後、こう締

め括った。

「"黒の系譜"には絶対に手を出しちゃ

いけねぇ。あいつらが正真正銘、NO.1

だ」
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