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第15章 親子喧嘩
第343話 花と散る
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「死ぬって……………どういうことだよ」
シンヤの低い声が辺りに響き渡る。静ま
り返ったその場において、その声はよく
響いた。
「そのままの意味だ。今回のシンヤとの
戦いで俺はスキルを酷使しすぎて、身体
にガタがきた。それに元々、"世界旅行
"の次の代償が命そのものだったんだ。
だから、俺が死ぬのは元から決まってい
た」
「さっきの戦いで"世界旅行"は使って
いないだろ?」
「ああ。だが、つい最近使ったからな」
「それこそ、おかしい。俺はこっちにい
るのに使う必要がないだろ」
「お前も知っての通り、固有スキルは進化する。すると、大抵は効果の範囲や威力が変わる…………俺の"世界旅行"は進化した結果、異世界だけではなく、自分のいる世界の様子も観察できるようになったんだ」
「っ!?まさか!?」
「ああ、そうだ。異世界こっちに来たお
前をちょくちょく観察させてもらってい
た」
「ストーカーかよ…………良く言えば、過
保護すぎんだろ」
「俺に残された唯一の楽しみだからな」
「ふんっ、そうかよ……………そんなに息
子のことが好きなのかよ」
「当たり前だろ。愛おしくて愛おしくて
たまらないさ………………まぁ、お前も親
になれば分かる」
「そういうもんか」
「ああ」
途中、シンヤが恥ずかしさからキョウヤ
の抱擁を振り解いた為、2人は現在離れ
ていたが心は繋がったままだった。そし
て、そんな状況で2人は至近距離から見
つめ合っていた。
「……………そろそろだ」
「何とかならないのか?」
「こればっかりはな……………まぁ、お前
にこうして会えて触れることができた。
俺にはもう思い残すことはない」
「俺はまだ納得していないぞ」
「そう言われてもな…………はぁ、仕方が
ない。じゃあ…………」
その後、キョウヤから告げられた言葉は
驚くべきものだった。
「父親には会ったから、次は母親に会い
に行け」
「……………は?母親?」
まるで意味が分からないと言いたげな顔
でキョウヤを見るシンヤ。しかし、そん
なシンヤの反応を意に介さず、キョウヤ
はティア達の方を向いて、こう言った。
「シンヤの父、キョウヤだ。うちの息子
を今日まで支えてくれて本当にありがと
う」
頭を深々と下げてお礼を言うキョウヤ。
代表して、ティアがそれに反応した。
「ティアと申します。私達の方こそ、シ
ンヤさんにはいつもお世話になりっぱな
しで………………本当にありがとうござい
ます。それから先程は失礼致しました」
「いやいや…………それにしても君らがシ
ンヤの嫁さん達か……………なるほど。こ
れからもシンヤをよろしくな」
「もちろんでございます、お義父様」
「ふっ、お義父様か…………まさか、俺が
そう呼ばれる時がくるとはな……………そ
れに最期にシンヤの嫁さんを直で見れる
なんて嬉しいな」
感慨深そうに頷くと今度はブロン達の方
へと身体を向けるキョウヤ。途端、ブロ
ン達は身体をビクッとさせながらキョウ
ヤの言葉を待った。
「次はブロン達だが………………すまんな」
「な、何をでしょうか?」
キョウヤの謝罪に代表してブロンが反応
する。その表情は戸惑いのものだった。
「もっと一緒に色々なことができたら良
かったんだがな…………………俺にも余裕
がなかったしな」
「とんでもない!!ワシらの毎日はあな
たと出会えたその時から、楽しくて嬉し
くて、とても幸せなものへと彩られまし
た!!あなたがいなければ、ここにいる
ワシらは誰1人として今日までやってこ
れなかったでしょう!!だか
ら……………」
そこから先は12人全員が揃って頭を下
げながら、
「「「「「ありがとうございまし
た!!!!!」」」」」
訓練場が震える程、大きな声でお礼を叫
んだ。
「こっちこそ、ありがとな。俺もお前ら
と過ごす日々はとても良かったぜ」
キョウヤの表情と言葉から本当に最期な
のだと確信したブロン達はもれなく全員
が涙を流して佇んでいた。
「………………最後にシンヤ」
「…………何だよ」
「俺の息子に生まれてきてくれて、あり
がとう。辛いことが沢山あったろうに今
日まで生きていてくれて、ありがとう。
そして………………こんな立派な姿を俺に
見せてくれてありがとう」
「っ!?」
キョウヤの言葉はシンヤの耳の中にしっ
かりと入り、それは胸をきつく締め付け
た。それによって、シンヤは険しい表情
になりながらもちゃんと反応は返した。
「…………お前が俺の父親で良かっ
た………………ありがとよ」
「っ!?ああっ!!」
キョウヤは段々と意識が薄れていき視界
が霞がかっていく中、大きく返事をし
た。それと同時に自身の終わりが近いこ
とを察した。
「そろそろ迎えが来たようだ………………
そうだ、シンヤ」
「ん?」
「さっき、言ったお前の母親だ
が……………」
キョウヤはその続きを途切れながらもし
っかりと告げた。
「彼女は……………神だ………………そし
て、これは……………俺のわがままだ
が……………もし、どこかで会うことがあ
れば……………助けてやってくれ」
それがキョウヤの最期の言葉となり、彼
は訓練場の床へゆっくりと倒れていっ
た。気が付けば外の雨は止み、開いた窓
から花びらが入り込んでヒラヒラと舞い
踊っていた。やがて、それらは倒れたキ
ョウヤの周りに落ちて積もっていく。そ
の間、誰もが言葉を発することなく、そ
の様子をただただ見つめて立っていた。
シンヤの低い声が辺りに響き渡る。静ま
り返ったその場において、その声はよく
響いた。
「そのままの意味だ。今回のシンヤとの
戦いで俺はスキルを酷使しすぎて、身体
にガタがきた。それに元々、"世界旅行
"の次の代償が命そのものだったんだ。
だから、俺が死ぬのは元から決まってい
た」
「さっきの戦いで"世界旅行"は使って
いないだろ?」
「ああ。だが、つい最近使ったからな」
「それこそ、おかしい。俺はこっちにい
るのに使う必要がないだろ」
「お前も知っての通り、固有スキルは進化する。すると、大抵は効果の範囲や威力が変わる…………俺の"世界旅行"は進化した結果、異世界だけではなく、自分のいる世界の様子も観察できるようになったんだ」
「っ!?まさか!?」
「ああ、そうだ。異世界こっちに来たお
前をちょくちょく観察させてもらってい
た」
「ストーカーかよ…………良く言えば、過
保護すぎんだろ」
「俺に残された唯一の楽しみだからな」
「ふんっ、そうかよ……………そんなに息
子のことが好きなのかよ」
「当たり前だろ。愛おしくて愛おしくて
たまらないさ………………まぁ、お前も親
になれば分かる」
「そういうもんか」
「ああ」
途中、シンヤが恥ずかしさからキョウヤ
の抱擁を振り解いた為、2人は現在離れ
ていたが心は繋がったままだった。そし
て、そんな状況で2人は至近距離から見
つめ合っていた。
「……………そろそろだ」
「何とかならないのか?」
「こればっかりはな……………まぁ、お前
にこうして会えて触れることができた。
俺にはもう思い残すことはない」
「俺はまだ納得していないぞ」
「そう言われてもな…………はぁ、仕方が
ない。じゃあ…………」
その後、キョウヤから告げられた言葉は
驚くべきものだった。
「父親には会ったから、次は母親に会い
に行け」
「……………は?母親?」
まるで意味が分からないと言いたげな顔
でキョウヤを見るシンヤ。しかし、そん
なシンヤの反応を意に介さず、キョウヤ
はティア達の方を向いて、こう言った。
「シンヤの父、キョウヤだ。うちの息子
を今日まで支えてくれて本当にありがと
う」
頭を深々と下げてお礼を言うキョウヤ。
代表して、ティアがそれに反応した。
「ティアと申します。私達の方こそ、シ
ンヤさんにはいつもお世話になりっぱな
しで………………本当にありがとうござい
ます。それから先程は失礼致しました」
「いやいや…………それにしても君らがシ
ンヤの嫁さん達か……………なるほど。こ
れからもシンヤをよろしくな」
「もちろんでございます、お義父様」
「ふっ、お義父様か…………まさか、俺が
そう呼ばれる時がくるとはな……………そ
れに最期にシンヤの嫁さんを直で見れる
なんて嬉しいな」
感慨深そうに頷くと今度はブロン達の方
へと身体を向けるキョウヤ。途端、ブロ
ン達は身体をビクッとさせながらキョウ
ヤの言葉を待った。
「次はブロン達だが………………すまんな」
「な、何をでしょうか?」
キョウヤの謝罪に代表してブロンが反応
する。その表情は戸惑いのものだった。
「もっと一緒に色々なことができたら良
かったんだがな…………………俺にも余裕
がなかったしな」
「とんでもない!!ワシらの毎日はあな
たと出会えたその時から、楽しくて嬉し
くて、とても幸せなものへと彩られまし
た!!あなたがいなければ、ここにいる
ワシらは誰1人として今日までやってこ
れなかったでしょう!!だか
ら……………」
そこから先は12人全員が揃って頭を下
げながら、
「「「「「ありがとうございまし
た!!!!!」」」」」
訓練場が震える程、大きな声でお礼を叫
んだ。
「こっちこそ、ありがとな。俺もお前ら
と過ごす日々はとても良かったぜ」
キョウヤの表情と言葉から本当に最期な
のだと確信したブロン達はもれなく全員
が涙を流して佇んでいた。
「………………最後にシンヤ」
「…………何だよ」
「俺の息子に生まれてきてくれて、あり
がとう。辛いことが沢山あったろうに今
日まで生きていてくれて、ありがとう。
そして………………こんな立派な姿を俺に
見せてくれてありがとう」
「っ!?」
キョウヤの言葉はシンヤの耳の中にしっ
かりと入り、それは胸をきつく締め付け
た。それによって、シンヤは険しい表情
になりながらもちゃんと反応は返した。
「…………お前が俺の父親で良かっ
た………………ありがとよ」
「っ!?ああっ!!」
キョウヤは段々と意識が薄れていき視界
が霞がかっていく中、大きく返事をし
た。それと同時に自身の終わりが近いこ
とを察した。
「そろそろ迎えが来たようだ………………
そうだ、シンヤ」
「ん?」
「さっき、言ったお前の母親だ
が……………」
キョウヤはその続きを途切れながらもし
っかりと告げた。
「彼女は……………神だ………………そし
て、これは……………俺のわがままだ
が……………もし、どこかで会うことがあ
れば……………助けてやってくれ」
それがキョウヤの最期の言葉となり、彼
は訓練場の床へゆっくりと倒れていっ
た。気が付けば外の雨は止み、開いた窓
から花びらが入り込んでヒラヒラと舞い
踊っていた。やがて、それらは倒れたキ
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