390 / 416
〜After story〜
第32話:クロガネ
しおりを挟む「それじゃあ、お前はリョウマが20歳の時に作った刀でそこから、ずっとあいつと一緒にいたのか」
「シンヤの言う通りちゃき。とはいっても人の姿になれたのは今回が初めてちゃき………………あと、お前じゃなくて、余の名前は"クロガネ"だちゃき」
「ちゃきちゃき、うるさいな。まるで刀を抜く時の音みたい………………まさか、それでか?」
「ふぇ?」
「……………いや、それはないな」
大口開けて、とうもろこしに齧り付くクロガネを見て、俺は自分の考えを撤回した。こいつがそんなところまで考えている訳がない。
「そんなことよりもクロガネ!さっきも言ったが、ぼくの方が君よりも先輩だからな!!」
「まだ、言ってんのかこいつ」
「でも、人生の先輩は余ちゃき!」
「人生って…………人になったのは今回が初めてと言ったじゃないか!だったら、せいぜい30分程度だろう?」
「理屈っぽい奴ちゃきね!それは言葉の綾ちゃきよ!余は刀としての年数も数えれば、とっくにビオラよりも上ちゃき」
「気安く名前を呼ぶな!」
「最初に呼んできたのはそっちちゃき」
「ちゃきちゃき、うるさい奴だな!」
「あ、それシンヤが先に言ったちゃきよ。他人と同じことしか言えないなんて、オリジナリティのないつまらん奴ちゃきね~」
「なんだと!子供だと思って、優しくしていれば、いい気になって!」
「どこが甘いんだちゃき?シンヤの方がよっぽど余に優しいちゃき…………ね~?シン……………げばっ!?」
「いでっ!?」
あまりにも聞くに耐えなかった為、俺はビオラとクロガネ、両方の頭を叩いた。
「いい加減にしろ、お前ら」
「「……………」」
「これ以上、言い合いをするのなら、両方ともここに置いていくからな」
「「そ、それだけはっ!!」」
「はぁ~」
一体、いつからここは託児所になったんだ?
「…………シャウ、こいつらについて、何か感じることは?」
「えっ!?ぼ、僕ですか?そ、そうですね。え~っと………………まぁ、いいんじゃないですかね?」
「「……………」」
そこには10歳に気を遣われる24歳と76歳の姿があった。
―――――――――――――――――――――
「おっ!シンヤ!あれじゃないかちゃき?」
俺に肩車をされた状態のクロガネがそう叫ぶ。あまり足をパタパタせず、大人しくしていて欲しいもんだ。
「そうだな」
次の目的地は"金鎧の籠手"がある場所だった。そこはどうやら、火山らしくまだ登っていないにも関わらず、ここまで熱気が伝わってきた。
「シンヤ、どうするんだ?」
ドルツが小声でそう訊いてくる。一応、ビオラとクロガネに聞こえないよう配慮して、そうしていた。ちなみにそんな2人だが、今では仲良く"凄~い!凄~い!"と言いながら、火山を見ていた。あの時の喧嘩は一体、何だったんだ?
「まぁ、クロガネもいるからな……………今回ばかりはいいだろ」
俺がそう言って、後ろへと振り返った時だった………………2人が腕を組みながら仁王立ちしていたのは。
「心配には及ばないよ!」
「なんせ、余達は……………」
そこから、2人して変な踊りを始め、最後に何やらポーズを決めていた……………何がしたいんだ、こいつら?
「「自分の身は自分で守れるのだから!!…………ちゃき」」
「あ、さいですか」
深く追求したら、面倒臭いことになりそうだった為、俺は軽く流して火山を見据えた。
「あそこにあるのか」
「うん…………そうだね」
俺の言葉に対して、真剣な表情で答えるビオラは何と魔法で結界を張っていた………………いつの間にできるようになったんだ、こいつ。
「あ、これ?やっぱり、ぼくだけできないのは悔しいからさ!練習したら、できるようになったよ!!」
「余もできるちゃきよ!ほれ!!」
そこへビオラに続くようにクロガネも結界を張っていた。凄いな……………ってか、こいつはいつまで擬人化しっぱなしなんだ?
「……………シャウ、こいつらについて、何か感じることは?」
「いいんじゃないですかね!!」
シャウのそれは言葉は同じでもニュアンスがこの間とはまるで違っていたのだった。
0
あなたにおすすめの小説
ハーレムキング
チドリ正明@不労所得発売中!!
ファンタジー
っ転生特典——ハーレムキング。
効果:対女の子特攻強制発動。誰もが目を奪われる肉体美と容姿を獲得。それなりに優れた話術を獲得。※ただし、女性を堕とすには努力が必要。
日本で事故死した大学2年生の青年(彼女いない歴=年齢)は、未練を抱えすぎたあまり神様からの転生特典として【ハーレムキング】を手に入れた。
青年は今日も女の子を口説き回る。
「ふははははっ! 君は美しい! 名前を教えてくれ!」
「変な人!」
※2025/6/6 完結。
レベルアップに魅せられすぎた男の異世界探求記(旧題カンスト厨の異世界探検記)
荻野
ファンタジー
ハーデス 「ワシとこの遺跡ダンジョンをそなたの魔法で成仏させてくれぬかのぅ?」
俺 「確かに俺の神聖魔法はレベルが高い。神様であるアンタとこのダンジョンを成仏させるというのも出来るかもしれないな」
ハーデス 「では……」
俺 「だが断る!」
ハーデス 「むっ、今何と?」
俺 「断ると言ったんだ」
ハーデス 「なぜだ?」
俺 「……俺のレベルだ」
ハーデス 「……は?」
俺 「あともう数千回くらいアンタを倒せば俺のレベルをカンストさせられそうなんだ。だからそれまでは聞き入れることが出来ない」
ハーデス 「レベルをカンスト? お、お主……正気か? 神であるワシですらレベルは9000なんじゃぞ? それをカンスト? 神をも上回る力をそなたは既に得ておるのじゃぞ?」
俺 「そんなことは知ったことじゃない。俺の目標はレベルをカンストさせること。それだけだ」
ハーデス 「……正気……なのか?」
俺 「もちろん」
異世界に放り込まれた俺は、昔ハマったゲームのように異世界をコンプリートすることにした。
たとえ周りの者たちがなんと言おうとも、俺は異世界を極め尽くしてみせる!
異世界転移「スキル無!」~授かったユニークスキルは「なし」ではなく触れたモノを「無」に帰す最強スキルだったようです~
夢・風魔
ファンタジー
林間学校の最中に召喚(誘拐?)された鈴村翔は「スキルが無い役立たずはいらない」と金髪縦ロール女に言われ、その場に取り残された。
しかしそのスキル鑑定は間違っていた。スキルが無いのではなく、転移特典で授かったのは『無』というスキルだったのだ。
とにかく生き残るために行動を起こした翔は、モンスターに襲われていた双子のエルフ姉妹を助ける。
エルフの里へと案内された翔は、林間学校で用意したキャンプ用品一式を使って彼らの食生活を改革することに。
スキル『無』で時々無双。双子の美少女エルフや木に宿る幼女精霊に囲まれ、翔の異世界生活冒険譚は始まった。
*小説家になろう・カクヨムでも投稿しております(完結済み
アイテムボックスの最も冴えた使い方~チュートリアル1億回で最強になったが、実力隠してアイテムボックス内でスローライフしつつ駄竜とたわむれる~
うみ
ファンタジー
「アイテムボックス発動 収納 自分自身!」
これしかないと思った!
自宅で休んでいたら突然異世界に拉致され、邪蒼竜と名乗る強大なドラゴンを前にして絶対絶命のピンチに陥っていたのだから。
奴に言われるがままステータスと叫んだら、アイテムボックスというスキルを持っていることが分かった。
得た能力を使って何とかピンチを逃れようとし、思いついたアイデアを咄嗟に実行に移したんだ。
直後、俺の体はアイテムボックスの中に入り、難を逃れることができた。
このまま戻っても捻りつぶされるだけだ。
そこで、アイテムボックスの中は時間が流れないことを利用し、チュートリアルバトルを繰り返すこと1億回。ついにレベルがカンストする。
アイテムボックスの外に出た俺はドラゴンの角を折り、危機を脱する。
助けた竜の巫女と共に彼女の村へ向かうことになった俺だったが――。
レベルを上げて通販で殴る~囮にされて落とし穴に落とされたが大幅レベルアップしてざまぁする。危険な封印ダンジョンも俺にかかればちょろいもんさ~
喰寝丸太
ファンタジー
異世界に転移した山田(やまだ) 無二(むに)はポーターの仕事をして早6年。
おっさんになってからも、冒険者になれずくすぶっていた。
ある日、モンスター無限増殖装置を誤って作動させたパーティは無二を囮にして逃げ出す。
落とし穴にも落とされ絶体絶命の無二。
機転を利かせ助かるも、そこはダンジョンボスの扉の前。
覚悟を決めてボスに挑む無二。
通販能力でからくも勝利する。
そして、ダンジョンコアの魔力を吸出し大幅レベルアップ。
アンデッドには聖水代わりに殺菌剤、光魔法代わりに紫外線ライト。
霧のモンスターには掃除機が大活躍。
異世界モンスターを現代製品の通販で殴る快進撃が始まった。
カクヨム、小説家になろう、アルファポリスに掲載しております。
クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~
いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。
他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。
「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。
しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。
1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化!
自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働!
「転移者が世界を良くする?」
「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」
追放された少年の第2の人生が、始まる――!
※本作品は他サイト様でも掲載中です。
荷物持ちの代名詞『カード収納スキル』を極めたら異世界最強の運び屋になりました
夢幻の翼
ファンタジー
使い勝手が悪くて虐げられている『カード収納スキル』をメインスキルとして与えられた転生系主人公の成り上がり物語になります。
スキルがレベルアップする度に出来る事が増えて周りを巻き込んで世の中の発展に貢献します。
ハーレムものではなく正ヒロインとのイチャラブシーンもあるかも。
驚きあり感動ありニヤニヤありの物語、是非一読ください。
※カクヨムで先行配信をしています。
イレギュラーから始まるポンコツハンター 〜Fランクハンターが英雄を目指したら〜
KeyBow
ファンタジー
遡ること20年前、世界中に突如として同時に多数のダンジョンが出現し、人々を混乱に陥れた。そのダンジョンから湧き出る魔物たちは、生活を脅かし、冒険者たちの誕生を促した。
主人公、市河銀治は、最低ランクのハンターとして日々を生き抜く高校生。彼の家計を支えるため、ダンジョンに潜り続けるが、その実力は周囲から「洋梨」と揶揄されるほどの弱さだ。しかし、銀治の心には、行方不明の父親を思う強い思いがあった。
ある日、クラスメイトの春森新司からレイド戦への参加を強要され、銀治は不安を抱えながらも挑むことを決意する。しかし、待ち受けていたのは予想外の強敵と仲間たちの裏切り。絶望的な状況で、銀治は新たなスキルを手に入れ、運命を切り開くために立ち上がる。
果たして、彼は仲間たちを救い、自らの運命を変えることができるのか?友情、裏切り、そして成長を描くアクションファンタジーここに始まる!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる