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3.素敵な旦那様
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「何だか……聞いていた通りに彼は厚かましいな。追い返すだけじゃなくて懲らしめた方がよくないか? エレノアになれなれ過ぎるし。……まさかエレノアは今でも彼が好き?」
ルカ、それは聞き捨てならないわ。
「今でも? 私がチャーリーを好きだったことなんてないわ。嫌ってもいなかったけど。なんていうか出来損ないの弟みたいでつい面倒みてただけ。私が好きなのはルカだけよ?」
ルカは嬉しそうに微笑む。
ルカと出会ったのはチャーリーを迎えに行ったあげくに婚約解消をすることになったあの時だ。あの国で観光中に屋台で串焼きを頬張っていた時に出会った。タレがこぼれてしまい慌てて拭き取ろうとしたらサッと彼がハンカチを差し出してくれた。彼はエレノアを平民か商人の娘くらいに思ったらしく気安く話しかけてくれた。
まさか公爵令嬢が地味な恰好で屋台の串焼きを食べるとは思わなかったようだ。普通は……まあそうだろ……。観光していると言えば「よかったら案内しますよ」とそのまま紳士的に連れて歩いてくれた。彼はエレノアの行きたかった美術館や博物館へ行くと詳しく説明までしてくれた。彼は仕事で絵画などの美術品の取引をしているそうだ。
すっかりと意気投合して翌日も案内をお願いしてしまった。(エレノアの護衛には離れて見守ってもらっていた)彼と過ごした2日間をエレノアはこれ以上になく楽しく過ごした。
もう会う事はないだろうと残念に思いつつルカという名前以外のことは聞かなかった。彼もまた平民っぽく貴族に見えなかったのでこれ以上親しくなっても身分差を考えれば諦めざるを得なかった。……のだが帰国後の夜会でまさかの再会を果たした。
彼は自国の伯爵家の三男だった。世間て狭い……。でもそのおかげで彼ともう一度会えた。
彼はエレノアがハリス公爵家の娘だと聞くと目を丸くした後大爆笑した。「公爵令嬢が串焼きを食べるのか」と……。告白はルカからで、串焼きを頬張る姿に惚れたと言われた時には顔が引きつった。ルカの惚れるポイントが分からない……。
それから二人は付き合いあっという間に婚約して結婚した。すぐに可愛い娘も生まれて今は幸せの絶頂にいる。
「仕方がないからおじ様に手紙を書くわ」
モーガン侯爵も結局のところチャーリーを可愛がっているから文句を言いながらも許すはず。首席で卒業したと言う話も実はモーガン侯爵から聞いたのだ。バカ息子がと言いながらとても誇らし気にしていた。手のかかる子ほど可愛いっていうからチャーリーの帰りを待っているに違いない。すでに帰国していると教えればすぐさま迎えに行くだろう。それに留学の成果(主席卒業)もあったようだしきっと心の広い素敵な令嬢が見つかって婚約出来るだろう。たぶん。
「彼だってもう大人なんだからほっとけば?」
そこまで面倒見なくてもいいのに、そう言って拗ねるルカが可愛い。
「ルカと出会えたのはチャーリーのおかげでもあるしそれくらしてもいいかなって」
エレノアはチャーリーより格段に素敵な旦那様と結婚できたことに心から感謝している。相思相愛で毎日ラブラブだし。そう思えば許してもいいと思わない? と聞けばルカは確かに一理あるかもとしぶしぶ頷いた。自分が幸せだからチャーリーに対しても寛大になれちゃう。私の心は海よりも広いのよ。
「私の妻は優しいなあ」(まあ、排除はいつでもできるから今回は見逃してやるか)
「惚れ直した?」
「ああ、愛しているよ」
後日、モーガン侯爵からはお礼の手紙が、チャーリーからはとっても長い謝罪文(たぶんおじ様の命令による)と結婚のお祝い、それにメイジ―へのプレゼントにと可愛いくまの縫いぐるみが届いた。
メイジーがとても喜んでいるので良しとした。
余談だがチャーリーはモーガン侯爵のコネで王宮騎士団の事務方に勤めることが決まった。
ちょっと甘やかし過ぎじゃない? と思ったが内容を詳しく聞くと、現団長の方針で新人は事務方といえども騎士と同じ厳しい訓練を課せられる。早朝と夕方の猛特訓! そして騎士隊長たち脳筋の溜めた書類仕事で連日の徹夜勤務が当たり前の今一番のブラックな職場らしい。おじ様は本気で鍛え直すつもりのようだ。精々扱かれて地獄を味わいなさい。
そこにいる限りもちろんご令嬢との出会いはなし。しばらくは独身で頑張れ!
自業自得! ご愁傷さまである。
(おわり)
ルカ、それは聞き捨てならないわ。
「今でも? 私がチャーリーを好きだったことなんてないわ。嫌ってもいなかったけど。なんていうか出来損ないの弟みたいでつい面倒みてただけ。私が好きなのはルカだけよ?」
ルカは嬉しそうに微笑む。
ルカと出会ったのはチャーリーを迎えに行ったあげくに婚約解消をすることになったあの時だ。あの国で観光中に屋台で串焼きを頬張っていた時に出会った。タレがこぼれてしまい慌てて拭き取ろうとしたらサッと彼がハンカチを差し出してくれた。彼はエレノアを平民か商人の娘くらいに思ったらしく気安く話しかけてくれた。
まさか公爵令嬢が地味な恰好で屋台の串焼きを食べるとは思わなかったようだ。普通は……まあそうだろ……。観光していると言えば「よかったら案内しますよ」とそのまま紳士的に連れて歩いてくれた。彼はエレノアの行きたかった美術館や博物館へ行くと詳しく説明までしてくれた。彼は仕事で絵画などの美術品の取引をしているそうだ。
すっかりと意気投合して翌日も案内をお願いしてしまった。(エレノアの護衛には離れて見守ってもらっていた)彼と過ごした2日間をエレノアはこれ以上になく楽しく過ごした。
もう会う事はないだろうと残念に思いつつルカという名前以外のことは聞かなかった。彼もまた平民っぽく貴族に見えなかったのでこれ以上親しくなっても身分差を考えれば諦めざるを得なかった。……のだが帰国後の夜会でまさかの再会を果たした。
彼は自国の伯爵家の三男だった。世間て狭い……。でもそのおかげで彼ともう一度会えた。
彼はエレノアがハリス公爵家の娘だと聞くと目を丸くした後大爆笑した。「公爵令嬢が串焼きを食べるのか」と……。告白はルカからで、串焼きを頬張る姿に惚れたと言われた時には顔が引きつった。ルカの惚れるポイントが分からない……。
それから二人は付き合いあっという間に婚約して結婚した。すぐに可愛い娘も生まれて今は幸せの絶頂にいる。
「仕方がないからおじ様に手紙を書くわ」
モーガン侯爵も結局のところチャーリーを可愛がっているから文句を言いながらも許すはず。首席で卒業したと言う話も実はモーガン侯爵から聞いたのだ。バカ息子がと言いながらとても誇らし気にしていた。手のかかる子ほど可愛いっていうからチャーリーの帰りを待っているに違いない。すでに帰国していると教えればすぐさま迎えに行くだろう。それに留学の成果(主席卒業)もあったようだしきっと心の広い素敵な令嬢が見つかって婚約出来るだろう。たぶん。
「彼だってもう大人なんだからほっとけば?」
そこまで面倒見なくてもいいのに、そう言って拗ねるルカが可愛い。
「ルカと出会えたのはチャーリーのおかげでもあるしそれくらしてもいいかなって」
エレノアはチャーリーより格段に素敵な旦那様と結婚できたことに心から感謝している。相思相愛で毎日ラブラブだし。そう思えば許してもいいと思わない? と聞けばルカは確かに一理あるかもとしぶしぶ頷いた。自分が幸せだからチャーリーに対しても寛大になれちゃう。私の心は海よりも広いのよ。
「私の妻は優しいなあ」(まあ、排除はいつでもできるから今回は見逃してやるか)
「惚れ直した?」
「ああ、愛しているよ」
後日、モーガン侯爵からはお礼の手紙が、チャーリーからはとっても長い謝罪文(たぶんおじ様の命令による)と結婚のお祝い、それにメイジ―へのプレゼントにと可愛いくまの縫いぐるみが届いた。
メイジーがとても喜んでいるので良しとした。
余談だがチャーリーはモーガン侯爵のコネで王宮騎士団の事務方に勤めることが決まった。
ちょっと甘やかし過ぎじゃない? と思ったが内容を詳しく聞くと、現団長の方針で新人は事務方といえども騎士と同じ厳しい訓練を課せられる。早朝と夕方の猛特訓! そして騎士隊長たち脳筋の溜めた書類仕事で連日の徹夜勤務が当たり前の今一番のブラックな職場らしい。おじ様は本気で鍛え直すつもりのようだ。精々扱かれて地獄を味わいなさい。
そこにいる限りもちろんご令嬢との出会いはなし。しばらくは独身で頑張れ!
自業自得! ご愁傷さまである。
(おわり)
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