【完結】社長、俺のこと好きすぎじゃないですか?―キスから始まる溺愛オフィス―

砂原紗藍

文字の大きさ
10 / 24

10.素面の時に、もう一度

しおりを挟む
翌日、俺は朝からソワソワしていた。

九時前にオフィスに到着すると、翔はもう来ていた。

「おはよう、颯真」
「……おはようございます」

俺が自分の席に座ると、翔はじっとこちらを見ている。

「颯真、顔色悪いじゃないか。どうした?」
「あ、いえ……ちょっと寝不足で」
「無理するなよ。辛かったら言って」

翔の声に、胸がぎゅっと締め付けられる。
やっぱり優しいんだ、この人は。

「……翔」
「ん?」
「あの、聞きたいことがあるんですけど」

俺は覚悟を決めて口を開いた。

「何?」
「一昨日の夜、俺……何て言ったんですか」

翔の表情が変わった。
少し驚いたような、でも嬉しそうな顔。

「思い出した?」
「少しだけ……」

翔は立ち上がり、俺の方へ歩いてきた。
そして、俺の椅子の肘掛けに手をついて、顔を近づけた。

「本当に、聞きたい?」
「……はい」

翔は俺の目をまっすぐ見つめた。

「お前は、俺にこう言ったんだ」

翔の声が、耳元で響く。

「『社長のこと、ずっと好きでした』」

俺の心臓が止まりそうになった。
……やっぱり、言ったんだ。

「『入社前から、雑誌で見て、ずっと憧れてて』」

翔は続ける。

「『だから、この会社を選んだんです』」
「……っ」
「そして、お前は俺に――キスをした」

翔の指が、俺の唇に触れた。

「柔らかくて、甘いキスだった」
「……っ」

心臓がバクバクして、呼吸が乱れる。

「そして最後に、お前は言ったんだ」

翔の顔が、もっと近づいた。

「『俺のこと、抱いてください』って」

俺の頬が熱を帯びて真っ赤になる。
それを見た翔は、にこっと優しく微笑んだ。

「でも、お前は酔ってた。だから、俺は何もしなかった」

翔の手が、俺の頬に触れる。

「酔ってる時じゃなくて、ちゃんと、素面の時に聞きたかったから」
「……素面の時……」
「颯真」

翔は、俺の目をじっと見つめた。

「今、お前はどう思ってる?」

翔を見ると、胸が苦しくなる。
翔の声を聞くと、身体が熱くなる。

「翔……、俺……」

翔は黙って、俺の言葉を待っている。

「翔のこと……」

言葉を探していると、オフィスのドアがノックされた。

「黒崎社長、お時間よろしいですか」

翔は一瞬、名残惜しそうな表情を浮かべたが、すぐに切り替えてプロフェッショナルな顔に戻った。

「今行く」

翔は俺から離れ、ゆっくりとドアの方へ歩いていった。

「颯真」

振り返ったその目が、柔らかく微笑む。

「続きは、あとでね」

そう言い残して、翔は去っていった。

「っ、マジか……」

オフィスに残された俺は、一人で息を整えるしかなかった。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

竜帝陛下の愛が重すぎて身代わりの落ちこぼれ薬師は今日も腰が砕けそうです 〜呪いを解いたら一生離さないと宣言されました〜

レイ
BL
「死ぬ覚悟はできています。でも、その前に……お口、あーんしてください」 魔力を持たない「無能」として実家で虐げられていた薬師のエリアン。 彼に下されたのは、触れるものすべてを焼き尽くす「死の竜帝」ヴァレリウスへの、身代わりの婚姻だった。

のほほんオメガは、同期アルファの執着に気付いていませんでした

こたま
BL
オメガの品川拓海(しながわ たくみ)は、現在祖母宅で祖母と飼い猫とのほほんと暮らしている社会人のオメガだ。雇用機会均等法以来門戸の開かれたオメガ枠で某企業に就職している。同期のアルファで営業の高輪響矢(たかなわ きょうや)とは彼の営業サポートとして共に働いている。同期社会人同士のオメガバース、ハッピーエンドです。両片想い、後両想い。攻の愛が重めです。

溺愛じゃおさまらない

すずかけあおい
BL
上司の陽介と付き合っている誠也。 どろどろに愛されているけれど―――。 〔攻め〕市川 陽介(いちかわ ようすけ)34歳 〔受け〕大野 誠也(おおの せいや)26歳

ヤンデレ執着系イケメンのターゲットな訳ですが

街の頑張り屋さん
BL
執着系イケメンのターゲットな僕がなんとか逃げようとするも逃げられない そんなお話です

オメガ大学生、溺愛アルファ社長に囲い込まれました

こたま
BL
あっ!脇道から出てきたハイヤーが僕の自転車の前輪にぶつかり、転倒してしまった。ハイヤーの後部座席に乗っていたのは若いアルファの社長である東条秀之だった。大学生の木村千尋は病院の特別室に入院し怪我の治療を受けた。退院の時期になったらなぜか自宅ではなく社長宅でお世話になることに。溺愛アルファ×可愛いオメガのハッピーエンドBLです。読んで頂きありがとうございます。今後随時追加更新するかもしれません。

若さまは敵の常勝将軍を妻にしたい

雲丹はち
BL
年下の宿敵に戦場で一目惚れされ、気づいたらお持ち帰りされてた将軍が、一週間の時間をかけて、たっぷり溺愛される話。

付き合っているのに喧嘩ばかり。俺から別れを言わなければならないとさよならを告げたが実は想い合ってた話。

雨宮里玖
BL
サラリーマン×サラリーマン 《あらすじ》 恋人になってもうすぐ三年。でも二人の関係は既に破綻している。最近は喧嘩ばかりで恋人らしいこともしていない。お互いのためにもこの関係を終わらせなければならないと陸斗は大河に別れを告げる——。 如月大河(26)営業部。陸斗の恋人。 小林陸斗(26)総務部。大河の恋人。 春希(26)大河の大学友人。 新井(27)大河と陸斗の同僚。イケメン。

相性最高な最悪の男 ~ラブホで会った大嫌いな同僚に執着されて逃げられない~

柊 千鶴
BL
【執着攻め×強気受け】 人付き合いを好まず、常に周囲と一定の距離を置いてきた篠崎には、唯一激しく口論を交わす男がいた。 その仲の悪さから「天敵」と称される同期の男だ。 完璧人間と名高い男とは性格も意見も合わず、顔を合わせればいがみ合う日々を送っていた。 ところがある日。 篠崎が人肌恋しさを慰めるため、出会い系サイトで男を見繕いホテルに向かうと、部屋の中では件の「天敵」月島亮介が待っていた。 「ど、どうしてお前がここにいる⁉」「それはこちらの台詞だ…!」 一夜の過ちとして終わるかと思われた関係は、徐々にふたりの間に変化をもたらし、月島の秘められた執着心が明らかになっていく。 いつも嫌味を言い合っているライバルとマッチングしてしまい、一晩だけの関係で終わるには惜しいほど身体の相性は良く、抜け出せないまま囲われ執着され溺愛されていく話。小説家になろうに投稿した小説の改訂版です。 合わせて漫画もよろしくお願いします。(https://www.alphapolis.co.jp/manga/763604729/304424900)

処理中です...