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8 家族との別れ
オルコット伯爵に結婚を了承する手紙を送ってから15日程で伯爵から迎えの馬車がやってきた。
昼も過ぎた午後の時間だったので、ローゼリアは夕食の準備をするために畑に出ていて、その時にオルコット伯爵からの迎えの馬車と行き会った。
「こちらはフォレスター子爵のお住まいでしょうか?」
護衛と思われる男の一人が馬から降りてローゼリアに尋ねる。貴族の家とは思えないくらい小さくて古い家だったから護衛の男も戸惑っているが、この辺りにある家はここだけなのでローゼリアに尋ねたのだろう。
「はい、当主は在宅しておりますので、すぐにお呼び致します。恐れ入りますが、オルコット家のお方でしょうか?」
ローゼリアは家紋を見てすぐにオルコット伯爵の馬車だと分かったので、護衛にそう答えた。ひと目でオルコット家の馬車だと判断したことと立ち居振る舞いから護衛は目の前にいる娘が侍女や村娘ではないと判断した。
「もしや、ローゼリア嬢でしょうか?」
「ええ、このような身なりをしておりますが、クレメンス・フォレスターが娘のローゼリアでございます」
今のローゼリアはチュニック風のワンピースにエプロン姿で、この辺りの村娘と同じ格好をしていたが、公爵令嬢だった時と変わらない優雅なカーテシーをして見せた。
「失礼しました。私は義父であるエドモンド・オルコットの名代で参りました、イアン・オルコットと申します」
護衛だと思っていた男はオルコット伯爵の養子だった。
「まあ、伯爵令息様ですのね。初めまして」
ローゼリアはオルコット伯爵が自身の甥を養子に迎えた事を知ってはいたが、養子が社交界に顔を出す事は無かったので、自分よりもずっと年下の少年だと思っていたので驚いた。
イアン・オルコットは20歳になったばかりのローゼリアの兄であるエーヴェルトよりも少し年上に思われた。おそらくは20代半ばくらいだろうか。
大柄でしっかりした身体つきに、濡れた鴉の羽根のような黒い髪色。瞳はにエメラルドのような綺麗な色を持っていた。
「フォレスター卿からは早急の婚姻を望まれる旨が手紙に書かれていました。義父も同じ考えでしたので、早急に準備を致しまして、本日は足の悪い父に代わりローゼリア嬢をお迎えに上がりました次第でございます」
そう言ってイアンは事務的にローゼリアに頭を下げる。養子とはいえ彼は伯爵令息だ。貴族というよりも騎士のような動作にローゼリアはどう対応していいのか迷った。
(私はこの方の義母となるのよね。兄さまよりもお年が上の男性を息子だなんて思えないし、イアン様だって複雑な心境よね)
「遠いところをご令息様自らのお迎えをいただき、ありがとうございます。このような寂れた家ですがご案内致します」
オルコット領から今のフォレスター領まで馬車で7日はかかる場所だ。父が手紙を出した日を考えると、婚姻の返事が届いてすぐに準備をしてここまできたと思われる日数だった。
◆◆◆
六人掛けの木のテーブルにローゼリア、クレメンス、エーヴェルトと並んで座り、テーブルを挟んで対面の椅子にイアンが座った。
今のフォレスター家に応接間は無いので、ダイニングテーブルに腰掛けての顔合わせになってしまった。イアンは元公爵だったフォレスター家がここまで貧困に陥っているとは思わなかったらしく、平民の家と大差無いダイニングの様子を見て驚いた表情を浮かべている。
「こちらが義父のエドモンドとローゼリア嬢の婚姻証明書になります。フォレスター卿とローゼリア嬢のサインを頂きましたら後ほど我が領の教会に届け出て、婚姻の成立と致します」
イアンの出した婚姻証明書の夫の欄には既にオルコット伯爵のサインが書かれてあった。
(オルコット伯爵ってどのような方なのかしら?夜会でご一緒した事があるはずだけれど、同じ派閥でも無かったし、良い意味でも悪い意味でもこれといった印象に残るような事をされていらっしゃらなかったからまるで分からないのよね)
ローゼリアは婚姻証明書に自分の名前をサインしながら、オルコット伯爵について考えていた。
今のフォレスター家には客間と呼べるような部屋も無いので、イアンと共に付いてきた数人の護衛たちには家から一番近い町の宿に泊まってもらい、翌日の午後にオルコット領に向けて出発する事になった。
母のナタリーにはまさかローゼリアが30歳も年上の伯爵家に嫁ぐとは言えなかったので、ローゼリアは王都で家庭教師の仕事が見つかったから家を出る事になったと伝え、本当の事はエルランドへ行ってから伝えてもらう事にした。
ローゼリア・フォレスターとしての母との最後の挨拶は母が休んでいる寝室で、固い木のベッドに横になったままでとなってしまった。
母のナタリーは弱々しそうな声でひと事「ごめんね」と言って涙を流していた。
持参金どころか今はデイドレスすら持っていない花嫁の支度に、父のクレメンスは眉間にシワをずっと寄せていた。鞄も持っていないローゼリアの荷物は、布袋がひとつだけだった。
「お父さま、お兄さま、このような形で家を出る事になるとは思いませんでしたが、ローゼリアはフォレスター家の娘として生まれて幸せでした。けれどお母さまのことだけが心配です。私が嫁ぎましたら一日でも早くエルランドへ向かって下さい。17年間育てて下さってありがとうございました」
ローゼリアは胸から込み上げてくるものがあったが、農作物しか育てていない農家のような庭で、精一杯のカーテシーを父と兄に披露した。彼女が今持っているものは自身が身に付けた知識や品格だけだった。エーヴェルトが優しくローゼリアを抱きしめる。それに続くように父が子供二人を涙を流しながら抱き締めるのだった。
ひとり娘を送り出すのにこんなに不本意な結婚はないだろう。小刻みに震えて耐える父からは悔しいという思いがローゼリアにはよく伝わってきた。
ローゼリアも自身の目頭が熱くなるのを感じていた。普段は冷静な兄も既に涙を流していて、兄の涙なんてほとんど見た事が無いローゼリアは驚いてしまった。
「ロゼ、兄さまはお前の幸せをずっと祈っている」
「ローゼリア、本当に済まない。国や世間は我々がお前を切り捨てたと思うだろうが、今だけは耐えてもらいたい。ピオシュ家の名前を出してナタリーの療養を訴えれば、王家もきっと我々の亡命を受け入れるだろう。冬になる前には我々はこの国を出るつもりだ」
「お母様を、よろしくお願い致します」
「ああ」
イアンは庭の少し離れた場所からフォレスター家のやり取りを見ていた。別れの挨拶を終えて家族と離れたローゼリアが馬車へ向かうと、イアンはクレメンスとエーヴェルトに頭を下げて、馬車のドアを開けてローゼリアを乗せると自分は馬に跨った。
花嫁の荷物を運ぶための荷馬車も付いて来ていたのだが、何も乗せないままの出発となった。
そして何も持たない花嫁となったローゼリアは、30歳も年上のオルコット伯爵へ嫁ぐために家族と別れたのだった。
昼も過ぎた午後の時間だったので、ローゼリアは夕食の準備をするために畑に出ていて、その時にオルコット伯爵からの迎えの馬車と行き会った。
「こちらはフォレスター子爵のお住まいでしょうか?」
護衛と思われる男の一人が馬から降りてローゼリアに尋ねる。貴族の家とは思えないくらい小さくて古い家だったから護衛の男も戸惑っているが、この辺りにある家はここだけなのでローゼリアに尋ねたのだろう。
「はい、当主は在宅しておりますので、すぐにお呼び致します。恐れ入りますが、オルコット家のお方でしょうか?」
ローゼリアは家紋を見てすぐにオルコット伯爵の馬車だと分かったので、護衛にそう答えた。ひと目でオルコット家の馬車だと判断したことと立ち居振る舞いから護衛は目の前にいる娘が侍女や村娘ではないと判断した。
「もしや、ローゼリア嬢でしょうか?」
「ええ、このような身なりをしておりますが、クレメンス・フォレスターが娘のローゼリアでございます」
今のローゼリアはチュニック風のワンピースにエプロン姿で、この辺りの村娘と同じ格好をしていたが、公爵令嬢だった時と変わらない優雅なカーテシーをして見せた。
「失礼しました。私は義父であるエドモンド・オルコットの名代で参りました、イアン・オルコットと申します」
護衛だと思っていた男はオルコット伯爵の養子だった。
「まあ、伯爵令息様ですのね。初めまして」
ローゼリアはオルコット伯爵が自身の甥を養子に迎えた事を知ってはいたが、養子が社交界に顔を出す事は無かったので、自分よりもずっと年下の少年だと思っていたので驚いた。
イアン・オルコットは20歳になったばかりのローゼリアの兄であるエーヴェルトよりも少し年上に思われた。おそらくは20代半ばくらいだろうか。
大柄でしっかりした身体つきに、濡れた鴉の羽根のような黒い髪色。瞳はにエメラルドのような綺麗な色を持っていた。
「フォレスター卿からは早急の婚姻を望まれる旨が手紙に書かれていました。義父も同じ考えでしたので、早急に準備を致しまして、本日は足の悪い父に代わりローゼリア嬢をお迎えに上がりました次第でございます」
そう言ってイアンは事務的にローゼリアに頭を下げる。養子とはいえ彼は伯爵令息だ。貴族というよりも騎士のような動作にローゼリアはどう対応していいのか迷った。
(私はこの方の義母となるのよね。兄さまよりもお年が上の男性を息子だなんて思えないし、イアン様だって複雑な心境よね)
「遠いところをご令息様自らのお迎えをいただき、ありがとうございます。このような寂れた家ですがご案内致します」
オルコット領から今のフォレスター領まで馬車で7日はかかる場所だ。父が手紙を出した日を考えると、婚姻の返事が届いてすぐに準備をしてここまできたと思われる日数だった。
◆◆◆
六人掛けの木のテーブルにローゼリア、クレメンス、エーヴェルトと並んで座り、テーブルを挟んで対面の椅子にイアンが座った。
今のフォレスター家に応接間は無いので、ダイニングテーブルに腰掛けての顔合わせになってしまった。イアンは元公爵だったフォレスター家がここまで貧困に陥っているとは思わなかったらしく、平民の家と大差無いダイニングの様子を見て驚いた表情を浮かべている。
「こちらが義父のエドモンドとローゼリア嬢の婚姻証明書になります。フォレスター卿とローゼリア嬢のサインを頂きましたら後ほど我が領の教会に届け出て、婚姻の成立と致します」
イアンの出した婚姻証明書の夫の欄には既にオルコット伯爵のサインが書かれてあった。
(オルコット伯爵ってどのような方なのかしら?夜会でご一緒した事があるはずだけれど、同じ派閥でも無かったし、良い意味でも悪い意味でもこれといった印象に残るような事をされていらっしゃらなかったからまるで分からないのよね)
ローゼリアは婚姻証明書に自分の名前をサインしながら、オルコット伯爵について考えていた。
今のフォレスター家には客間と呼べるような部屋も無いので、イアンと共に付いてきた数人の護衛たちには家から一番近い町の宿に泊まってもらい、翌日の午後にオルコット領に向けて出発する事になった。
母のナタリーにはまさかローゼリアが30歳も年上の伯爵家に嫁ぐとは言えなかったので、ローゼリアは王都で家庭教師の仕事が見つかったから家を出る事になったと伝え、本当の事はエルランドへ行ってから伝えてもらう事にした。
ローゼリア・フォレスターとしての母との最後の挨拶は母が休んでいる寝室で、固い木のベッドに横になったままでとなってしまった。
母のナタリーは弱々しそうな声でひと事「ごめんね」と言って涙を流していた。
持参金どころか今はデイドレスすら持っていない花嫁の支度に、父のクレメンスは眉間にシワをずっと寄せていた。鞄も持っていないローゼリアの荷物は、布袋がひとつだけだった。
「お父さま、お兄さま、このような形で家を出る事になるとは思いませんでしたが、ローゼリアはフォレスター家の娘として生まれて幸せでした。けれどお母さまのことだけが心配です。私が嫁ぎましたら一日でも早くエルランドへ向かって下さい。17年間育てて下さってありがとうございました」
ローゼリアは胸から込み上げてくるものがあったが、農作物しか育てていない農家のような庭で、精一杯のカーテシーを父と兄に披露した。彼女が今持っているものは自身が身に付けた知識や品格だけだった。エーヴェルトが優しくローゼリアを抱きしめる。それに続くように父が子供二人を涙を流しながら抱き締めるのだった。
ひとり娘を送り出すのにこんなに不本意な結婚はないだろう。小刻みに震えて耐える父からは悔しいという思いがローゼリアにはよく伝わってきた。
ローゼリアも自身の目頭が熱くなるのを感じていた。普段は冷静な兄も既に涙を流していて、兄の涙なんてほとんど見た事が無いローゼリアは驚いてしまった。
「ロゼ、兄さまはお前の幸せをずっと祈っている」
「ローゼリア、本当に済まない。国や世間は我々がお前を切り捨てたと思うだろうが、今だけは耐えてもらいたい。ピオシュ家の名前を出してナタリーの療養を訴えれば、王家もきっと我々の亡命を受け入れるだろう。冬になる前には我々はこの国を出るつもりだ」
「お母様を、よろしくお願い致します」
「ああ」
イアンは庭の少し離れた場所からフォレスター家のやり取りを見ていた。別れの挨拶を終えて家族と離れたローゼリアが馬車へ向かうと、イアンはクレメンスとエーヴェルトに頭を下げて、馬車のドアを開けてローゼリアを乗せると自分は馬に跨った。
花嫁の荷物を運ぶための荷馬車も付いて来ていたのだが、何も乗せないままの出発となった。
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