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桜の木の下で
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「そうよ、ひらり…!記事も出回らないことだし、これに懲りたら、今後こんな遊びはやめて――」
「…遊びなんかじゃないっ!」
社長とママの言葉に堪えきれなくなったわたしは、机を叩いて立ち上がった。
これまで、事務所の言うままに素直に芸能活動をしてきた。
それこそ、キスシーンOKと言われたら、やるしかなかった。
だから、そんなわたしが声を荒げて反抗したのが予想外だったのが、あの社長が驚いている。
「ひらり、落ち着きなさい。なにも、こんな写真が撮られたからって、お前を解雇しようとは言っていない。だが、いつかはお前の立場を危ぶむものになるから、この男のことはさっさと切れと言っているだけだ」
「ひらりだって、これまでたくさんがんばってきたじゃない。アイドルでここまで活躍できるようになったのも、みんな事務所の言うように――」
もう…社長の言葉もママの言葉も耳には入らない。
ママの言う通り、わたしはこれまで事務所の言う通りに仕事をしてきた。
べつに反抗するつもりもなかった。
だって、仕事をすることが楽しかったし。
恋ができないことに窮屈さはあったけど、それよりなにより仕事に夢中だった。
…だけど、わたしは知ってしまった。
『恋』というものを。
人を好きになるということを。
それは、どんな仕事よりも比べものにならないくらい楽しくて。
そばにいるだけでうれしくて。
好きな人の笑った顔を見ると、とてつもなく幸せな気持ちになる。
わたしにとっては、初めての経験だった。
それで、…気づいてしまったんだ。
わたしは、好きな人のそばにいて、好きな人と笑って過ごす…平凡な毎日を送りたかったんだって。
アイドルだなんだともてはやされる日々じゃなくて、ごく普通の女の子でいたかったんだって。
「社長…。“恋愛禁止”という約束を守れなくて……ごめんなさい。だけど…わたし、好きなんです!彼のことがっ!」
「…ひらり!なに言って――」
「遊びなんかじゃありませんっ!遊ばれてるわけでもありません!彼は、わたしのことを一番に想ってくれています!…だから、わたしも本気なんです!」
ママの制止を振り切って、わたしは社長に訴えかけた。
この恋を許してほしい、認めてほしいなんて思っていない。
ただ、わたしは自分の気持ちに正直でいたかっただけ。
たとえ相手が社長であっても、この恋を終わらせるつもりはない。
社長は、わたしの話を目を逸らさずに聞いてくれていた。
しかし、重いため息をつく。
「…ひらりの気持ちはわかった。だが、“恋愛禁止のアイドル”という肩書きを売りにしている以上、ひらりの好き勝手にさせるわけにはいかない」
社長の言葉は、わたしに重くのしかかる。
「だれしも、恋をすれば楽しくなるしうれしくなる。それがずっと続くと思っている。…だが、現実はそう甘いものではない」
社長は、わたしに恋愛の厳しさを語る。
いろいろなタレントのスキャンダルの話を交えながら。
熱愛が発覚した当初は恋に燃えていた2人だったけど、たった数ヶ月で別れてしまったとか。
しかし、スキャンダルの代償は大きく、ファンは激減。
スキャンダル記事のせいでこれまでのイメージも崩れ、仕事もなくなったとか。
そんな話はよく聞くことだけど、改めて聞かされると嫌になってくる。
社長にはわたしの気持ちはわかってもらえず、このまま平行線をたどるのかと思っていたとき――。
「実はひらりに、いい報告があるんだ」
先程まで険しい表情だった社長が、頬を緩ませた。
「この前、ドラマを担当していた監督を覚えているか?」
怜也と共演したドラマだ。
普段はにこやかだけど、熱が入るととたんに厳しくなる監督だった。
「その監督が、ひらりの演技を気に入ってくださってね。来年、映画とドラマを撮るから、その主役にぜひひらりをと言ってくださってるんだよ」
「…ひらりが、映画の主役にですか!?」
ママは前のめりになって、社長の話を食い入るように聞く。
わたしが、…映画とドラマの主役。
今までにない大きな仕事だ。
「それだけじゃない。水面下で、ひらりをソロデビューさせようという話も進めていた。だからこれを機に、来年はソロでの活動もがんばってみないか?」
女優業に加え、ソロとしてもデビュー。
まるで、夢のような話。
…だけど、これは現実。
「少し冷静になって考えてほしい。ひらりにとって、なにが“一番”大切かを」
社長は、その場で答えを求めなかった。
夏休みの間にゆっくり考えてほしいと。
「…遊びなんかじゃないっ!」
社長とママの言葉に堪えきれなくなったわたしは、机を叩いて立ち上がった。
これまで、事務所の言うままに素直に芸能活動をしてきた。
それこそ、キスシーンOKと言われたら、やるしかなかった。
だから、そんなわたしが声を荒げて反抗したのが予想外だったのが、あの社長が驚いている。
「ひらり、落ち着きなさい。なにも、こんな写真が撮られたからって、お前を解雇しようとは言っていない。だが、いつかはお前の立場を危ぶむものになるから、この男のことはさっさと切れと言っているだけだ」
「ひらりだって、これまでたくさんがんばってきたじゃない。アイドルでここまで活躍できるようになったのも、みんな事務所の言うように――」
もう…社長の言葉もママの言葉も耳には入らない。
ママの言う通り、わたしはこれまで事務所の言う通りに仕事をしてきた。
べつに反抗するつもりもなかった。
だって、仕事をすることが楽しかったし。
恋ができないことに窮屈さはあったけど、それよりなにより仕事に夢中だった。
…だけど、わたしは知ってしまった。
『恋』というものを。
人を好きになるということを。
それは、どんな仕事よりも比べものにならないくらい楽しくて。
そばにいるだけでうれしくて。
好きな人の笑った顔を見ると、とてつもなく幸せな気持ちになる。
わたしにとっては、初めての経験だった。
それで、…気づいてしまったんだ。
わたしは、好きな人のそばにいて、好きな人と笑って過ごす…平凡な毎日を送りたかったんだって。
アイドルだなんだともてはやされる日々じゃなくて、ごく普通の女の子でいたかったんだって。
「社長…。“恋愛禁止”という約束を守れなくて……ごめんなさい。だけど…わたし、好きなんです!彼のことがっ!」
「…ひらり!なに言って――」
「遊びなんかじゃありませんっ!遊ばれてるわけでもありません!彼は、わたしのことを一番に想ってくれています!…だから、わたしも本気なんです!」
ママの制止を振り切って、わたしは社長に訴えかけた。
この恋を許してほしい、認めてほしいなんて思っていない。
ただ、わたしは自分の気持ちに正直でいたかっただけ。
たとえ相手が社長であっても、この恋を終わらせるつもりはない。
社長は、わたしの話を目を逸らさずに聞いてくれていた。
しかし、重いため息をつく。
「…ひらりの気持ちはわかった。だが、“恋愛禁止のアイドル”という肩書きを売りにしている以上、ひらりの好き勝手にさせるわけにはいかない」
社長の言葉は、わたしに重くのしかかる。
「だれしも、恋をすれば楽しくなるしうれしくなる。それがずっと続くと思っている。…だが、現実はそう甘いものではない」
社長は、わたしに恋愛の厳しさを語る。
いろいろなタレントのスキャンダルの話を交えながら。
熱愛が発覚した当初は恋に燃えていた2人だったけど、たった数ヶ月で別れてしまったとか。
しかし、スキャンダルの代償は大きく、ファンは激減。
スキャンダル記事のせいでこれまでのイメージも崩れ、仕事もなくなったとか。
そんな話はよく聞くことだけど、改めて聞かされると嫌になってくる。
社長にはわたしの気持ちはわかってもらえず、このまま平行線をたどるのかと思っていたとき――。
「実はひらりに、いい報告があるんだ」
先程まで険しい表情だった社長が、頬を緩ませた。
「この前、ドラマを担当していた監督を覚えているか?」
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「その監督が、ひらりの演技を気に入ってくださってね。来年、映画とドラマを撮るから、その主役にぜひひらりをと言ってくださってるんだよ」
「…ひらりが、映画の主役にですか!?」
ママは前のめりになって、社長の話を食い入るように聞く。
わたしが、…映画とドラマの主役。
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まるで、夢のような話。
…だけど、これは現実。
「少し冷静になって考えてほしい。ひらりにとって、なにが“一番”大切かを」
社長は、その場で答えを求めなかった。
夏休みの間にゆっくり考えてほしいと。
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