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「っ!」
バチン、と世界が切り替わるような衝撃。
目を開くと、そこはいつもの真昼の町中。
ざわざわと聞こえてくる、人々の楽しそうなさざめき。
それをバクバクとうるさい心臓の音がかき消している。
「……なに、が」
起きた……?
冷や汗がにじむ額をぬぐい、そっと胸を押さえる。
どくどくと煩いくらいに主張してくる鼓動は、確かに俺が生きていることを伝えてくる。
今までループを繰り返す中で、何度も死ぬことはあった。
けれども、それはどれも『教会を出てから』の話だ。
まだ平和と信じていた春先の強襲は、あまりにも今までと違い過ぎた。
「……何が、起きている?」
何かが、変わっている。
確かめるように呟いた問いかけに、応えてくれる存在は、いない。
「見てみて、イキシア! かわいい!」
「かわいい……?」
突然の『やりなおし』に戸惑いつつも、時間は進んでいくし、やらなきゃいけないことも、見つけなきゃいけないものも待ってはくれない。
俺は前回と同じようにラーレに関することを皆から調べつつ、穏やかな日々を送っていた。
服の下には、俺と彼女のロザリオがふたつ、揺れている。
今日は神父様にレリアの荷物持ちを指名され、買い出しの真っ最中だ。
……きっと、最近ラーレのことを調べてばかりだったから、気分転換にと言ってくれたのだろう。
神父様の優しさは、心地良い。
レリアが見せてくるのは、パン屋に並ぶ人気商品のひとつだ。
動物の顔の描かれたチョコパンだが……これはなんの顔なんだろうな。カバだろうか。
なんの顔かもわからないが、どことなく見覚えのあるのは何故だろう。
こんな特徴的すぎる顔、一度見たら忘れないと思うんだが。
「猫ちゃんの商品に弱いんだよね~、この顔、マシロにそっくり!」
「……猫だったのか、これ」
そして彼女はマシロがこんなふうに見えているのか。
……神父様に一度病院に連れていくようお願いした方がいいのかもしれない。
思わず真剣にそんなことを考えていると、近くの雑貨屋が視界に入った。
太陽の光に反射して、何かがきらりと光った気がして。
そちらに足を進めた、その時。
どん。
「、すなま──」
「そのまま歩け」
誰かにぶつかってしまい、咄嗟に口から出た謝罪は、最後まで音になることなく喉の奥に引っ込んだ。
腰あたりに押し付けられる、冷たい鋼の感触。
幾度となくこの体を引き裂いたそれを、俺の身体は覚えている。
目だけで振り返った視界に映るのは、短めの茶髪。
その下にあるピンクの瞳は、笑っているのに、全く温度が感じられない。
記憶にあるこの男にも、俺は何度も殺された。
「──プラム」
「ああ、やっぱあの人の言う通りなんですねぇ……ご同行願います」
なぁんちゃって。
おどけたように続けられた声は、あまりにも無機質だ。
「ねぇ、イキシア! ……あれ?」
パン屋の商品を吟味していたレリアが振り返った店先。
そこに先ほど前いた青年の姿はなく、行きかう人の雑踏があるだけだった。
※ ※ ※
プラムに促されたどり着いたのは、崖の上。
前回俺が死んだそこに、その男は立っていた。
春風になびく金の髪も、気高さを指し示す白の衣装も、変わらない。
「──来たか」
けれど、なぜだろう。
「……カラン」
こちらを見る、オレンジの瞳は。
今までにない、見たことのない色を宿しているような、そんな気がした。
バチン、と世界が切り替わるような衝撃。
目を開くと、そこはいつもの真昼の町中。
ざわざわと聞こえてくる、人々の楽しそうなさざめき。
それをバクバクとうるさい心臓の音がかき消している。
「……なに、が」
起きた……?
冷や汗がにじむ額をぬぐい、そっと胸を押さえる。
どくどくと煩いくらいに主張してくる鼓動は、確かに俺が生きていることを伝えてくる。
今までループを繰り返す中で、何度も死ぬことはあった。
けれども、それはどれも『教会を出てから』の話だ。
まだ平和と信じていた春先の強襲は、あまりにも今までと違い過ぎた。
「……何が、起きている?」
何かが、変わっている。
確かめるように呟いた問いかけに、応えてくれる存在は、いない。
「見てみて、イキシア! かわいい!」
「かわいい……?」
突然の『やりなおし』に戸惑いつつも、時間は進んでいくし、やらなきゃいけないことも、見つけなきゃいけないものも待ってはくれない。
俺は前回と同じようにラーレに関することを皆から調べつつ、穏やかな日々を送っていた。
服の下には、俺と彼女のロザリオがふたつ、揺れている。
今日は神父様にレリアの荷物持ちを指名され、買い出しの真っ最中だ。
……きっと、最近ラーレのことを調べてばかりだったから、気分転換にと言ってくれたのだろう。
神父様の優しさは、心地良い。
レリアが見せてくるのは、パン屋に並ぶ人気商品のひとつだ。
動物の顔の描かれたチョコパンだが……これはなんの顔なんだろうな。カバだろうか。
なんの顔かもわからないが、どことなく見覚えのあるのは何故だろう。
こんな特徴的すぎる顔、一度見たら忘れないと思うんだが。
「猫ちゃんの商品に弱いんだよね~、この顔、マシロにそっくり!」
「……猫だったのか、これ」
そして彼女はマシロがこんなふうに見えているのか。
……神父様に一度病院に連れていくようお願いした方がいいのかもしれない。
思わず真剣にそんなことを考えていると、近くの雑貨屋が視界に入った。
太陽の光に反射して、何かがきらりと光った気がして。
そちらに足を進めた、その時。
どん。
「、すなま──」
「そのまま歩け」
誰かにぶつかってしまい、咄嗟に口から出た謝罪は、最後まで音になることなく喉の奥に引っ込んだ。
腰あたりに押し付けられる、冷たい鋼の感触。
幾度となくこの体を引き裂いたそれを、俺の身体は覚えている。
目だけで振り返った視界に映るのは、短めの茶髪。
その下にあるピンクの瞳は、笑っているのに、全く温度が感じられない。
記憶にあるこの男にも、俺は何度も殺された。
「──プラム」
「ああ、やっぱあの人の言う通りなんですねぇ……ご同行願います」
なぁんちゃって。
おどけたように続けられた声は、あまりにも無機質だ。
「ねぇ、イキシア! ……あれ?」
パン屋の商品を吟味していたレリアが振り返った店先。
そこに先ほど前いた青年の姿はなく、行きかう人の雑踏があるだけだった。
※ ※ ※
プラムに促されたどり着いたのは、崖の上。
前回俺が死んだそこに、その男は立っていた。
春風になびく金の髪も、気高さを指し示す白の衣装も、変わらない。
「──来たか」
けれど、なぜだろう。
「……カラン」
こちらを見る、オレンジの瞳は。
今までにない、見たことのない色を宿しているような、そんな気がした。
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